021 マショー/ノートルダム・ミサ/ドミニク・ヴェラール
初めの頃取り上げたノートルダム楽派(ペロティヌスら)からほぼ2世紀が経った14世紀のフランスでは、アルス・ノヴァ(新芸術)と呼ばれる時代に入っていました。 新なら旧もあるのか、と聞かれれば、もちろんあります。 こちらはアルス・アンティカ(旧芸術)と呼ばれます。 ここではノヴァの方を。
この時代には大発明がありました。 定量記譜法と呼ばれるものです。 音の相対的な長さを楽譜に定着さすことに成功したのです。 これにより、より複雑な多声の音楽が可能となりました。
ギョーム・ド・マショー(1300?-1377)は音楽家であると同時にすぐれた詩人でもあったようです。 ですから彼の世俗歌曲には優れたものが多いし、僕もわりと良く聞く。 だけれど、ここではやはりノートルダム・ミサを取り上げなければいけないでしょう。 これは歴史上はじめて、ミサの通常文を全部通して作られたものだから。
僕はどういう訳か、かのグレゴリオ聖歌というものに、まだぴったりくるものがない。 しかしこの曲はそれらとは反対にというか、とても好きな曲だ。 そしてこれには、他のどんなミサ曲とも違うなにかを感じる。
このレコードについて
ちょっとこれは正直いって迷う。 でもここでは、ドミニク・ヴェラール指揮のアンサンブル・ジル・バンショワのものを揚げます。 これは珍しく最近の録音で手元に置きたいと思ったものの一つだから。 この曲は、ヴェンツィンガーのものでずいぶん聴いたし、今でももしかしたらそれが一番好きかもしれないけど、ヴェラールのにはそれとはまったく違った、もっと静謐ななにかを感じたから。
レーベル:cantus
僕は実は、最近の演奏というものを良くは知らない。 最近というのはまあ、ここ15年くらいになるけれど、その主な理由は、『ゆっくり』と『一人』で音楽を聴く環境がないからだ。 それと、自分の中で、あるイメージが出来上がってしまった曲については、他の演奏を聴いてみようと積極的にはしなくなったから。 僕はもう、手持ちのレコードを聴くのに手一杯だ。 だけれど、時に運良く新しい発見をすることがある。 これはそんなものの一つです。
やはりアウグスト・ヴェンツィンガー+バーゼル・スコラ・カントルムのものも、ついでだからあげておく。
レーベル:ARCHIV
マショーについては、やはり世俗歌曲も逃せない。 それでこれを。
『宮廷の愛』と題された3枚組のLPのもので、その1枚目が『マショーとその時代』
例のマンロウ+ロンドン古楽コンソートのものです。
レーベル:EMI