025 ヴァイス/リュート作品集/佐藤豊彦
バッハと同時代のシルヴィウス・レオポルド・ヴァイスのリュートの作品集を取り上げます。 この人のことはあまり紹介されていないようですね。
ヴァイスはバッハより1年遅い1686年、ブレスラウというところに生まれ、バッハと同年の1750年にドレスデンで死んだ、リュートの名手でした。 リュートという楽器は古くから宮廷や上流階級の社会では非常にポピュラーで、現在でいえば僕達が習うピアノのようなものだったようです。 これは古い絵画に良くこの楽器が描かれていることからも推測できるでしょう。
イタリアやイギリスのリュート音楽にもすばらしいものがあるけれど、この人の曲には、しっとりとしたファンタジーがあり、そして全体の構成がいかにもドイツらしい、もう少し私見で言えばバッハ的な、しっかりしたものを感じる。 バッハはあまりこの楽器の曲を残さなかったけれど、ヴァイスがいるからいいことにする。 僕にとってはヴァイスはリュートのバッハなのです。
このレコードについて
佐藤豊彦が入れたものがとてもいい。 リュートにはルネッサンス・リュートと呼ばれるものとバロック・リュートと呼ばれるものがある。 前者は主に16世紀に、後者はその後18世紀ころまで使われたもので、ここでは当然後者のタイプが使われている。(詳細は他に譲ります。) 佐藤以前のリュート奏者で著明な人のほとんどは、ルネッサンス・リュートを得意としていたと思う。 佐藤の出現でバロック期のリュート音楽は、一躍日の目を見るようになったと言ったら言い過ぎになるのかな。
僕はかつて、これの元の『ヴァイス作品集』という3枚組のレコードを図書館から借りて愛聴していた。 その図書館を離れるとき、テープに採らせてもらってしばらく聴いた。 例によってテープがダメになった時、もうレコードはなかったけれど、運良くこのCD化された選集を見つけることができた。 レコードのような鋭い立ち上がりには欠けるけれど、まあこれでもいい。 だけれど、曲が減ってしまったのはとても残念だ。 元のレコードを中古ででも見つけたら、僕は迷わず買うだろう。
レーベル:PHILIPS