037 J.S.バッハ/ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロの為のソナタ/ビルスマ
この曲を僕はしばらく、バッハにしてはめずらしく、駄作だと思っていた。 この録音が出る前の、一般的に聴ける録音のたいていのものは聴いたのではないかと思う。 当時はまだガンバで入れたものは少なかったけれど、それでもヴェンツィンガーやコッホなんかはあった。 そしてチェロではカザルスはもちろん、フルニエ、トルトゥリエ、めずらしいところではグールドと入れたローズなんかもあった。
だけれど、僕にはみんなどうもぴったりこなかった。 それでこの曲のことは暫く忘れていた。 ある日立ち寄ったレコード店でこれが流れてきた時、僕はびっくりした。 演奏はビルスマのだろうとは察しが付いたけれど、一般的にはチェンバロで弾かれるパートの音が全然違う。 それがそもそもこの音楽を、これまでのものとまったく違うものにしている。
僕はその場でこれを買い求めた。 はじめてのCDだった。 それで、仕方がないのでようやくCDプレーヤーを買うことにしたのでした。
このレコードについて
ここでアンナ・ビルスマが弾いているのはヴィオラ・ダ・ガンバではなく、彼のもっとも得意とするピッコロ・チェロ。 通常のチェロより小さく、しかも5本(通常のは4本)の弦が張られたやつだ。 これは以前紹介した『無伴奏』のなかの6番でも使われていた。 少し聴けばわかるけれど、通常のチェロより響きが軽く、俊敏な感じ。 そして、相手はボブ・ヴァン・アスペレン。 ポータブルなオルガンが使われている。 チェロもオルガンも軽い響きで、それがこの曲によく合っているような気がする。 これは1990年の録音で、ビルスマがあの語るような音楽から歌うような音楽へと変遷する途中のころのなのだろう。 僕はこれは大好きです。
レーベル:SONY