049 J.S.バッハ/フーガの技法/ヴァルヒャ

アルバムの写真J.S.バッハはもう取り上げるスペースがないくらい揚げてしまいました。 しかしこれだけは絶対に外せない。

『フーガの技法』と題されたこの曲はバッハの絶筆であるということはともかくとしても、バッハの、対位法の、そしてバロックの一つの頂点です。 まあそんなことより、僕はこの曲が大好きなのです。

この曲には楽器の指定がありません。 ですからいろいろな編成のものが出ています。 チェンバロ、ピアノ、小さな編成の合奏、大きなオーケストラ、変わったところではブラスバンドや弦楽四重奏なんていうのもありました。 僕はそのなかでオルガンによるものを一番よく聴きます。

それから、この曲に関しては楽譜を良く眺めます。 バッハの曲というのは、楽譜だけを読んでも全然イメージできないものもあるけれど、この曲のように比較的簡単なものもある。 この楽譜は本当に美しい。 一つのメロディーがどのように展開されてゆくのかがはっきりわかります。 そして僕はこれの一部を少しだけ奏してみる。 他の声部を頭の中に響かせながら。 そうすればそこに、はっきりとバッハを感じることができる。

このレコードについて

ヘルムート・ヴァルヒャがオルガンで入れたもの。 このレコードは僕が生まれてはじめて買ったものの次ぎに買ったもので、バッハのものとしては初めてのものです。 当時僕はすっかりバッハに夢中になっていました。 ラジオでやるバッハというバッハはラジカセで全部テープに採って聴いていました。 家にステレオ(今でいうオーディオ装置)がなかったわけではないのですが、おそろしく程度の悪いそれは、LPをかける度にその削り滓が出てくるのではないか、というようなもので、音も僕の小さなラジカセのほうがいいくらいのものでした。 そんな訳で僕はLPは買わずにずっとテープで聴いていました。 もちろん経済的な理由もありましたが。 しかしこの曲をやってくれない、ラジオは。 僕はどうしてもこれが聴きたかった。 図書館にもこの名作がないときた。 それでついに我慢しきれなくなって買った。 高校生の時です。 僕はその日、まっすぐに家に帰らず、音楽好きの大分年上の友人のところへ向かいました。 そこにはりっぱなオーディオ装置があったから。 最初の音が発せられた。 僕はその透明で柔らかな響きに魅せられた。 一気にすべてを聴き終わると、その友人(テノール歌手(もちろん本業ではない)でこれまであまりバッハは聴いていない)は、『バッハ、いいかも…』

ヴァルヒャは今ではどのような評価をされているのでしょう。 当時でも、新即物主義だのなんだのとの批判があった人です。 だけれど僕はそのような括りでいうならトスカニーニは好きだしな。

残念ながら僕はいまだにこれ以外に、この曲を積極的に聴こうと思う録音はない。

レーベル:ARCHIV

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uploaded:2004