B ATOMOS/ヴィトゥス+ガルバレク

アルバムの写真ヤン・ガルバレクとの出会いはなんだったろう。

これかもしれないし、他のだったかもしれない。 ジャズはきらいじゃあなかったけれど、ある演奏家に入れ込むようなことはなかった。 それは多分、僕がクラッシックのように『曲』を聴く、ということからなかなか抜け出さなかったからだと思う。 ジャズにも一応『曲』はある訳だけれど、それはベートーベンの『運命』などの『曲』とはかなり、あるいは全然といってもいいくらい、違う。 ジャズでの『曲』はある意味で、演奏の下敷きでしかない。 いつか、『曲』を聴くということから脱却した僕は、ようやく何人かのお気に入りのジャズの演奏家を発見した。 その一人がガルバレクでした。

僕は時々、これをかける。
透明で、朝靄の彼方から響くような、幻想的な彼の音が、好きだ。
このアルバムの主役はベースのヴィトゥスらしいのだけれど、僕が出会った事実上の最初のガルバレクだから。

ヴィトゥス:ベース
ガルバレク:ソプラノ&テナー・サックス

レーベル:ECM

彼の演奏は、たった一度だけれど、小さなライヴハウスで聴いた。 目の前、3mほどのところに彼は立っていた。 何気なくというくらいにあっさり、彼は最初の音を発した。 そのとき、僕は久々にぞくっとした。 ジャズの多くを、そして古楽の一部は、ここのような小さな会場で、ちょっとざわめきはあってもいい、演奏会を聴きましょう、という感じではなく、時にはお酒でも飲みながら、時には隣の友人と一言二言交わしながら、肩のちからを抜いて楽しめるシチュエーションで聴きたいとおもう。

ガルバレクというのは、今までのどんな演奏家ともちがう、独特の『音』を持った人だ。
そして、彼の音楽には本当に特別のものを感じる。


アルバムの写真2グレゴリオ聖歌は僕には本当に気に入ったものがないので紹介しないことにしたけれど、これなら問題あるまい。

ガルバレクは、古楽の合唱団であるヒリアード・アンサンブルとの共演で『オフィチウム』というアルバムを出している。 グレゴリオ聖歌やペロティヌスなんかが入っている。 ヒリアードは男性ばかりの合唱団で、非常にやわらかで軽やかなそして繊細な演奏をするグループ。 この組み合わせを思い付いた天才に拍手を送ろう。 この演奏に理屈は不要だ。 果てしない彼方へとあなたをいざなうだろう。

レーベル:ECM

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uploaded:2004