D パコ・デ・ルシア
それはグラナダの山の中の、洞穴のタブラオだった。
まだ少女のような娘が、少し恥じらいながら、足を鳴らす。
真っ赤な衣装に身を包んだ女が、炎となる。
ほとんど黒に近い衣装の老女が、わずか30秒だけで宇宙をつくる。
そこには、女という生き物のすべてがあった。
僕のフラメンコのはじめては、こうしたものでした。 そこにあった音楽に少しだけ近づいた瞬間でもあります。
パコ・デ・ルシアのこのライヴ。 その道の人なら知らない人はいないくらいに有名なものらしい。
これは、踊りの伴奏ではない。 強烈な音楽としてのフラメンコ。
レーベル:PHILIPS
彼のコンサートには何度か足を運んだ。 チック・コリアとなんかもやっていたけれど、やっぱりそんな異音を入れない、フラメンコがいい。 そこにはいつも、激しく情熱的な音楽がある。 そして突然踊り出すペペの愛嬌。 僕は日本でしか彼の演奏を聴いたことがない。 そこで少しだけ感じるものがある。 これは『コンサート』だと。 この人が故郷でやるとき、そこにある音楽はどんなだろうかと。