私たちの小さな車セアット・イビザは渓谷の上に建つロンダを離れ、アンダルシアの道をひたすら次の街、アルコス・デ・ラ・フロンテーラに向けて走っています。
灼熱の太陽に照らされた車内は暑い暑い! 窓から見えるのは、これは石ころ?と思えるような水分を一滴も含んでいないようなごろごろした土の塊ばかり。これでも畑だというのでびっくり仰天です。
まっすぐ伸びた道に突然どこから現れたのか、手を挙げて佇む人。
車を止めると、途中まで乗せていってほしいとのこと。なんと生まれてはじめて、ここスペインでヒッチハイカーを拾うことになりました。
14時ごろ、岩山の上にあるアルコスに到着。
昨日は日曜日で銀行が休みだったのでお金を下ろそうと思ったのですが、どうしたわけかここの銀行は休み。ありゃ、ま。仕方なくクレジットカードが使えるレストランで昼食です。1,000ptsとちょっと高かったけれど、味は良かったのでいいことにします。
アルコスには特別な物はありません。
アンダルシアの他の村と同様、ただ白い家が立ち並んでいるだけです。
そんな家と家の間の道はどこも狭く、うねうねとうねっています。
通りの上に両側の家どうしをつなぐアーチが出てきました。城壁かなにか、都市的な構造物がかつてここにあったと思われますが、それがなんなのかはわかりません。
そうそう、アルコス・デ・ラ・フロンテーラ(Arcos de la Frontera)のアルコスは『アーチ』を意味しますから、この都市にはかなり古くからアーチが架かっていたのかもしれません。ちなみにフロンテーラは境界のことですから、アルコス・デ・ラ・フロンテーラは『国境のアーチ』といった意味になります。
アルコスには特別な物はないと言いましたが、ここはアンダルシアの白い街として有名だそうです。
しかしこのあたりの村はどこも白いので、すでに多くのそれを見てきた私たちは、あまり心を動かされませんでした。しかし、やっぱりちょっとかわいらしい家があると、パチリ。
旧市街はどこでもたいていそうですが、ちょっと狭い入り組んだ路地が多く、先が開けるとそこは教会ということが多いです。
先ほどはサンタ・マリア教会でしたが、今度はサン・ペドロ教会が見えてきました。
サンペドロ教会はイスラムとカトリックの建築様式とが融合したムデハル様式で16世紀に建てられました。
ファサードは18世紀のバロック様式のようです。
アルコスの歴史は古く、先史時代から人が定住しており、ローマ人もやってきていたようです。
このあたりの建物は何世紀ごろのものかはわかりませんが、ギリシャっぽいこんな柱が白い壁の中にあったりします。
サンタ・マリア教会の前のカビルド広場の奥はちょっとした展望台になっています。
そこから郊外を見渡せば
下にはグアダレーテ川が流れ、その周囲にオリーブの畑があり、遠方まで緑の絨毯が続いています。
ほとんどは赤茶けた大地が広がるアンダルシアですが、ここからの眺めはめずらしく緑です。
アルコスの次はヘレス・デ・ラ・フロンテーラに向かいます。
ヘレスは言わずと知れたシェリー酒の産地。スペインでシェリーは単にヘレス、またはビノ・デ・ヘレス(ヘレスのワイン)と呼ばれます。ヘレスは酒精強化ワインで、辛口のフィノから極甘口のペドロ・ヒメネスまで様々なタイプがあります。
ヘレスがブドウの産地になったのは、アルバリサと呼ばれる保水力に優れた真っ白で純度の高い石灰質の土壌があったからです。この土壌は世界的に珍しく、ブドウの産地ではこのあたり以外にはフランスのシャンパーニュ地方やイギリス南部にしか見られません。
ということでここではボデガ(ワイン醸造所)巡りでしょう。日本で有名なティオ・ペペ(TIO PEPE )のゴンザレス・ビアス社(Gonzalez Byass)も、もちろんここにあります。
その前に、今までお世話になったレンタカーを返却します。これで心置きなく、充分に飲めます!
ボデガはたいていどこでも見学できるようになっていますが、メーカーによって案内の仕方が違うのがちょっと面白いです。
上の写真の Williams&Hunbert では、気のいいおじさんが作業着姿で熱心に解説(しかしスペイン語)してくれました。 薄暗い貯蔵庫に入ると、
『これは若いワインでこっちは年寄り、これくらい年を取ると飲んでもおいしくない、香りを楽しむのさ。』
と言って、長い柄の付いたベネンシアという柄杓のようなもので樽からワインを取り出し、グラスに移してくれます。
この古いブドウの木に覆われた中庭がある方は Jhon Harvey's。ここは甘めの Harveys Bristol Cream が特に有名なボデガです。
Jhon Harvey's は見学ルートがきちんと決められていて、若き美女が6名の客を纏めて英語できっちり説明してくれました。
シェリー酒は普通のワインとは製造方法がずいぶん違います。
ぶどうの品種は3種だけで、一般のワインは収穫した年ごとに瓶詰めされるのでビンテージ・イヤーができますが、シェリーは単年のぶどうだけで作られるのではなく、古いものから新しいものまでがブレンドされます。
そういえばシェリーの瓶には収穫年が書いてありませんね。
ボデガ内の建物の間にはたいていこんなふうに樽が積まれていて、その脇を作業員がごろごろと樽を運んで行きます。
そうそう、このあたりのバルやレストランでワインと言うと、ほとんどの場合はシェリーが出てきます。こちらではごく普通のワインとして飲まれているのです。
さて、ヘレスをたっぷり頂いたら、電車に乗ってセビーリャへ。アンダルシアも佳境に入ります。