今日はウランバートルを離れ、かつてモンゴル帝国の首都があったハラホリンの入口になるブルドへ向かいます。最初はローカル・バスを考えていたのですが、これはなんと週3便しかない。それにホテルが問題。電話はあるにはあるらしいのですが、普及が遅れているこの国ではなかなか通じないようなのです。
一般的には旅行社のパッケージに乗るか、旅行社でホテルを押さえてもらい、車と運転手をチャーターするかしかないらしい。前日ボロルマに相談すると、『バスは絶対やめたほうがいいです。ものすごく混むし、道はガタボコでとても絶えられるようなものじゃあないですよ。』 というわけで、彼女が現地旅行社から情報を仕入れてくれました。
『結構高いわね。そうだ、彼に運転手をしてもらってみんなで行きましょう。4人で行ってもこの半分くらいで済むわ。』 おいおい、そうは言っても彼氏の都合はつくの? それからドタバタと彼氏に連絡。ボロルマも急遽臨時休暇を取りに。これはどうやらどちらもうまくいったらしい。
翌朝、ロシア製ジープでやってきたボロルマの彼氏。
『モンゴルを走るならこれが一番さ。ここにはでこぼこ道がたくさんあるからね。』
ジープに乗るのはサイダーもサリーナも始めてとあって、どんな乗り心地なのか楽しみ、というか、ちょっとドキドキ。
四人を乗せた車はウランバートルの町を抜け、郊外に出ました。見渡す限り、構造物は今自分たちが走っている道路以外になんにもなし。
5分も飛ばせば、もう辺りは草原です。
その草原の中では牛や馬、羊がのんびりと草を食んでいます。これぞモンゴルという風景の中をジープは快適に進んでいきます。しかししばらくすると、ジープは飛んだり跳ねたりするようになってきました。舗装路だというのに。。昨日ボロルマが言っていたように、確かに路面は相当に荒れています。
ともかく、がったんごとん言いながらも私たちのジープはモンゴルの大地を走って行きます。しばらく走ると、ここら辺でちょっと休憩を、と路肩に車が停まります。
ジープを降りたボロルマは突然、『お花摘みに行ってきま〜す。』と。 えっ、お花摘み? 『じゃあ僕達は馬を見に行こう。』 と彼氏はサイダーを誘います。
『えっ、馬? ここにはどこにもいないけどな〜』と思いつつも、女性陣と反対の方向へ進む彼氏のあとについて行くと、茂みで『ジョ〜』。『モンゴルでは普通のことだよ。男はたいてい馬を見に行くって言うんだ。女性にはあまり決った言い方はないけれどね。』
モンゴルの道端にはよくオボーというケルンのようなものがあります。石を円錐状に積み重ね、まん中には青(モンゴルでは神聖な色とされる)い布で装飾された棒切れが立っています。旅人はオボーの周りを3度時計廻りに廻り、地面の石を拾ってオボーの上に置くのがならわしだそうです。
このオボーの横では犬が三匹ひなたぼっこ。
小休止のあとも草原の旅は続きます。天井に頭をぶつけないようにジープにしがみつき、何時間も走った後、到着したのがこちら。ここまで村らしい村には出会いませんでした。
『遊牧民が定住した村もあります。学校や病院はそんな村にあるんですよ。』 とボロルマ。
ここはどうやらドライブインの集合体のようなものらしく、キオスクのような小さな店が数軒と、それよりちょっと大きめ小屋のレストランがありました。
ちょうどおなかが空いてきたところでベストタイミング。
ボーズ(羊肉の蒸し餃子のようなもの)とチャーハン(何と言う名だったか忘れた)を頼んだら、お茶が出てきました。このお茶、薄い黄色で少し塩が入っていてしょっぱい。
草原の中にモコッとした穴が。『あっ、あそこにいるのはタルバガン。大きなリスみたいなものですよ。英語ではマーモットかな? 美味しいんだけれどペスト菌を持っていることがあって、たまに一家全員が死ぬなんてことがあります。最近も事件が起りましたから食べないようにね。』
え〜、怖い〜。でも美味しいんだよねぇ〜(笑)
昼食後も『お花摘み』休憩をしながら車を飛ばします。しかしとにかく何もないんです、草原と時たま現れるゲル以外は。
草原の向こうの小高い山は森林限界を超えているのか、下のほうには少し木々があるものの頂部は草だけです。
そんな山にも放牧された家畜達はいるらしいのです。
『私のおばあさんはよく、あそこの山のあのあたりにうちの羊がいる、って言っていました。私にはわからないんだけれどね。』 とボロルマ。遊牧民の視力は7.0あるってどこかで聞いたような。
『キャー、かわいい!』 とラクダを発見し擦り寄るサリーナ。
近づくと『結構おおきいわね〜。』 と恐る恐る。
350kmほど走ってようやく到着したところは、ブルドのバヤン・ゴビというツーリスト・キャンプ。草原の中にこれだけがポツンとあるすばらしいロケーションです。私たちはここに二泊することになりました。
ちなみに『ゴビ』はモンゴル語で『砂漠』という意味だそうです。ですからここは『砂漠のバヤン』ということでしょうか。なぜこんな名前なのかは後ほどわかります。
ゲートのすぐ先に見えるでっかいゲルは食堂で、その周りにいくつもの小さな宿泊用のゲルが散らばっています。
トイレとシャワーは共同ですが清潔なものでした。
私達が泊まったゲルはこちら。
外から見ると狭いようだけれど、身をかがめて入り口の戸を潜ると…
とっても広〜い。周囲にベッド4つ置いて、まん中にストーブとテーブル。モンゴルではこのテーブルの周りに座って食事するのだそうです。衣装箪笥もあって快適なことこの上なし!
暑い日中はテントの下部をスカートをめくるように外側にめくり上げ、風を入れます。昼の突き刺すような太陽でも涼しく、朝晩の凍えるような寒さでも暖かいという素晴らしさ!
バヤン・ゴビの辺りは現地ではエルスン・タサルハイ(砂の飛び地)と呼ばれており、小さな砂漠が草原の中に突然姿を現します。
美しい風紋がその姿を少しづつ変えるのをじっと眺めていると、時が止ったように感じられます。
ここは美しい草原と美しい砂丘が一度に楽しめる素敵なところです。
『きゃー、砂漠、楽しい〜〜』 と、初砂漠体験のサリーナ。
ボロルマと彼もこの景色にうっとり。
いいところに連れて来てくれてありがとう。
砂漠に太陽が落ちて行く。
日が暮れ、夜になるころにはゲルのストーブに火が焼べられ、煙突からは白い煙がほんわか立ち上ります。
あたりはひっそりと静まり返っていて、ほとんど物音がしません。
空は夕やけ。このあと夜中に外に出て空を見上げれば、満天の星!
ああ、ここはモンゴルなんだ。