大月駅付近の山並み
紅葉の季節、早い日光や谷川岳はもう落葉だといいます。近くで紅葉を始めていそうなところはないかなと探すと、河口湖はそろそろ見頃だとの情報。そこでもう少し近いところへ行ってみることにしました。
都心から一時間と少しの山梨県は大月駅。八王子を過ぎたあたりから、ちょっとした山並みが見えるようになります。大月駅周辺の山はごく僅かに色づき始めています。
中央自動車道と山並
大月駅から中央本線の線路を越え、桂川の北側に出ます。この桂川を東に向かい、葛野川と合流した先に最初の目的地、猿橋があります。川向かいが猿橋駅になるころ、道は葛野川を渡ります。その上には中央自動車道の巨大なピンクの橋が架かっていました。
猿橋と桂川の紅葉
この橋の下を潜り5~600mほど行くと、黄色や赤に色づき始めた木々がある橋に出ました。これが猿橋かと思えばこちらは新しい橋で、木々の間から下を覗くと渓流の上に日本三奇橋の一つという猿橋が架かっていました。
この猿橋は木造で、刎橋(はねばし)というめずらしい構造だそうです。山口県の大寧寺には盤石橋(ばんじゃくばし)という石造の刎橋がありましたが、木造で現存するものは国内ではこの猿橋だけのようです。
猿橋の向こうに見えるのは水路橋、さらに奥は国道20号線に架かる赤い新しい猿橋です。
猿橋
猿橋は長さ31m、幅3.3mと一見どこにでもあるような橋ですが、そのスパン間に橋脚はなく、両側から持ち出した四層のはね木によって支えられているのです。谷までは30mほどと、結構な高さに架かっています。
はね木
そのはね木には屋根が掛かっていて、雨から守るように工夫されていました。この橋の起源は不詳のようですが、少なくとも18世紀半ばには現在のような構造形式だったそうです。
県道509号
猿橋の後は南に向かい、県道509号朝日小沢猿橋線に入ります。正面に見えてきた小高い山は九鬼山でしょうか。脇には刈り取られた稲から新しい芽が出た、小さな緑の田んぼが続いています。
ちょっと紅葉
山の木々はようやく色づき始めたところで、花で言えば三部咲きといったところでしょうか。
紅葉の中を上る
このあたりの勾配は穏やかで3~5%といったところ。紅葉を眺めながらのんびり行きます。
林道鈴懸峠線
ガードレールがなくなり道幅が狭くなったと思ったら、立て札に県道はここまで、というような案内がありました。ほどなく今度は林道鈴懸峠線と書かれた案内板が現れました。このあたりからが林道です。
上る
林道になり道幅は変わったものの、始めのうちは勾配は穏やかで視界も開けています。竹は落葉の準備を始めたようで、陽を透かすようなきれいな薄緑になっています。
奥へ
道が大きくうねり方向を変えると勾配もぐ~んとアップ、7~8%と本格的な上りになってきます。杉林の中に染まってきた広葉樹がちらほらする森の奥へと進めば、所々で10%近くのところも現れます。
鈴ヶ音峠
二度三度とヘアピンを上りつつしばらくえっちらおっちらすると勾配が緩くなり、小さな切り通しに道はカーブして消えて行きます。そこには木の案内板が建っていて恩賜林の説明書きがありました。
どうやらここが峠のようで、先は視界が開け都留側の山々の眺望がありました。この峠は鈴ヶ音峠(すずがねとうげ)というらしいのですが、林道の名は鈴懸峠線、どうやら鈴ヶ音峠とも鈴懸峠とも呼ぶようです。
下り
下りになると、赤く染まりつつある広葉樹が陽を浴びて輝いています。左手は山、右手は谷で、木々の合間から谷向こうがちらっちらっと見えます。
落ち葉の中を行く
下りの勾配は上ってきた側より穏やかで、道脇にはもう落ち葉が積もっていました。落ち葉を踏むとサクサクと気持ち良い音をたてます。
下の集落と山
下への見晴らしはこんな感じで、ちょっとした集落の向こうに、こちらも色づき始めた山が見えます。
もみじ
落ち葉で滑らないように慎重に下ります。ゴルフ場の入口まで下ると勾配はさらに緩くなり、民家が現れるようになります。その民家の庭にはきれいに紅葉したもみじが、逆光の中に浮かんでいました。
さらに下る
ゴルフ場からは道幅が広がり、もう林道という雰囲気ではなくなります。先には山が幾重にも連なっていていい雰囲気です。空気が澄んでいればこの方向に富士山が見えるのだろうと思いますが、この日は残念ながら見えませんでした。
県道35号
下った先でぶつかるのは朝日馬場の県道35号、四日市場上野原線です。小さな大旅川がこの県道に沿って流れていて、なごやかな感じです。
色づいたいちょう
県道に出たところには大きないちょうの木が立っていました。ちょうどいい具合に黄色く色づいています。
石船神社
このいちょうの木があるのは石船神社です。こじんまりした神社ですが、後醍醐天皇の第一皇子、護良親王の首が祀られているというからびっくりです。
県道35号を行く
石船神社で小休止のあとは県道を東に向かいます。大旅川沿いのこの県道の路面状態は良く、ごく緩い上りです。交通量はさほど多くはないのですが、どこかで工事でもしているのか、時折大きなトラックが通るのが少々鬱陶しい。
トンネルへ
先に高速道路のような高架の施設が現れたと思ったら、それはリニアモーターカーの車両基地でした。トラックはこの中に入って行くので、ここで工事でもしているのでしょう。
この施設のあたりからやや勾配が増し、6~7%になってきます。
新雛鶴トンネル
車両基地のすぐ先には旧雛鶴トンネルに向かう細い道があるのですが、こちらの古いトンネルにはがっちりした冊が設けられ通行止めとのことなので、県道をそのまま進み新雛鶴トンネルに向かうことにしました。
道がぐわっとUターンすると勾配は8%ほどになったでしょうか。最後の新雛鶴トンネル前の上りです。カーブを抜けるとすぐ先に新雛鶴トンネルが見えてきました。ここが一般に雛鶴峠と呼ばれている標高約700mのところです。
石船神社からは4kmで200mほどの上り、平均斜度5%といったところなので、初級者でもなんとかなるでしょう。
下り始め
新雛鶴トンネルは長さ602mで歩道はありませんが、交通量はあまりないのでさして不安を感じることなく通れました。
トンネルを抜けると下りです。このあたりはロードレーサーのトレーニングのメッカなのか、下から次々にレーサーがやってきます。
民家と紅葉
ここからは長い下りが続きます。こちら側の2~3kmの区間には上ってきた側よりかなり勾配がきつい所があるようです。
その区間を過ぎると勾配は3%ほどと緩くなり、下の集落が現れるようになります。周辺はこのあたりでも紅葉が始まっていました。
紅葉とサリーナ
道脇には小川が流れています。トンネルからこちら側は秋山川で、ちょうどトンネルのところが分水嶺のようです。川沿いの山にも染まりつつある広葉樹がひしめいています。
秋山川とサイダー
下るにはちょうど良い勾配の道をどんどん行きます。レーサーたちはもの凄い勢いでカッ飛んで下って行きますが、私たちはペダルを回すことなく、周囲の紅葉を眺めながら地球の力だけでゆるりと下ります。
12時半も過ぎてそろそろ昼食にしたいと思いましたが、小さな集落にそれらしいお店はなかなか現れません。旧秋山村に入ったらしいところでようやく一軒の寿司屋を見つけ、なんとかお昼にあずかりました。
県道76号から西の山を望む
昼食のあとも下りが続きます。上野原への分岐を過ぎ神奈川県の県道517号に入り、秋山川を渡るところまで、この下りは続きます。新雛鶴トンネルから高度400mほどの壮快な下りでした。
ここから高度100mに満たないちょっとした上りを終えると、藤野に下りる神奈川県の県道76号山北藤野線に突き当たります。
相模川
この県道を北へ向かうと藤野へはすぐですが、近くに温泉があるので寄ってみることにしました。藤野やまなみ温泉は県道517号が県道76号にぶつかってから南に1kmほどのところにありました。内風呂は岩風呂風で、露天風呂はちょっとした木立に囲まれたなかなか良いロケーションで、ぬるめの湯で長風呂を楽しみました。
温泉のあとは藤野駅まで5kmほどの道のりで、穏やかな下りが続きます。途中、川幅が広がった秋山川の向こうの山に、傾いた太陽が沈みかけていました。この秋山川が相模川に合流すると藤野駅です。帰りの電車はなんと40分待ち。ここはローカルなのでした。
この日はちょうど木々が紅葉を始めた時期で山々が美しく、交通量も多くないので快適でした。特に猿橋の紅葉は見応えがありました。林道鈴懸峠線はちょっとだけきついところがありますが山の中の雰囲気が楽しめます。朝日馬場から雛鶴峠を越える県道35号は、紅葉や山笑う季節はきれいですが、それ以外の季節はさほどでもなさそうです。