袋田から滝川に沿って袋田の滝へ向かいます。朝はちょっともやっていて、山が少し霞んで見えます。間近に流れる川の音が清々しい朝の気分をより一層強くしているようです。
滝の入口となるトンネルは進行方向川の左側にあり、その手前には土産物屋がずらっと並びます。私たちはその手前で川の右側へ渡り、滝へ渡る吊り橋の近くの茶店まで進みました。川の両岸に岩山が迫り、下には渓流。ひっそりとした山奥という雰囲気ですが、ここにはすでに観光客が大勢やってきていました。
茶店の奥に駐輪して歩き出すとすぐ、吊り橋と袋田の滝が見え出します。その周囲には赤や黄に色付いた木々が。
人が多いにもかかわらず、印象としては静かでしっとりとしたいい感じの空間が広がっています。
ごく一般的なアプローチだと土産物屋の先でトンネルに入り、その出口の真正面に滝が現れますが、これは便利ではあるけれど、渓谷もまったく見えず味気ないものです。かつてトンネルが出来る前は、沢の際の人一人がようやく通れるくらいの狭い岩場を上ってアプローチしたのですが、その道はもう使われなくなっているようです。吊り橋でアプローチすると渓流も見えるので、少しそれに近い感じがします。私はトンネルよりも吊り橋からのアプローチの方が好きです。
その吊り橋を渡り滝に近づくと、まず滝を斜め下から見上げるようになります。滝が一番美しく見える角度だと思います。
その先でトンネルに入ると滝のすぐ前の展望台に出ることができます。ここでは滝を真正面から見上げることになります。ここから見る滝はかなり迫力がありました。吊り橋からもこの展望台からも滝は三段しか見えません。袋田の滝は別名を『四度の滝』といい、この名は滝が四段あることから付けられたとも言われています。最上段の一段は下からでは見えないんですね。
その最上段も見られるもう一つの展望台がありますが、そこへはエレベーターに乗らなければ行けません。この時エレベーターの運転は9時からとのことなので、その展望台に行くのはやめて、滝の上部へ続くハイキングコースを行ってみることにしました。その終点には生瀬の滝というもう一つの滝があるそうです。
このハイキングコース、山道を行くのかと思ったら、全部鉄骨の階段でした。へいへいしながらその階段を上って行くと、袋田の滝の二段目、そして最上段が見えてきます。展望台に行くより近くに滝が見えて、こちらの方が楽しいこと間違いなし。
そして滝の一番上まで来ると、そこには黒い岩の合間を縫って流れる川がありました。
その川の上流に向かって行くと、生瀬の滝が落ちています。規模は小さいものの袋田の滝に良く似た、幾段にもなった滝です。朝もやの中に落ちるこの生瀬の滝はとてもきれいです。
この周囲は切り立った岩山で広葉樹が多く、落葉した木々もありますが、紅葉の盛りのものも多く、きれいです。
マイナスイオンをたっぷり浴びながら二つの滝を堪能して、いざ出発です。
生瀬の滝へのハイキングで上った月居山(つきおれさん)をぐるっと廻るようにしてR461を行きます。ここには雰囲気の良い細い旧道もありますが、そちらは昨日通ったし、袋田側からは厳しい上りとなるので、国道を通ることにしたのです。観光日和の日中は大変混雑するというこの道も、まだこの時間帯はそれほどの交通量ではありません。
入合からは国道を離れ安寺方面へ向かいます。火の見やぐらがまだ残っている感じのいい道が山奥へと続いています。
周囲の山は針葉樹と広葉樹が半分づつくらいで、広葉樹はほぼ紅葉のピークです。始めの方には民家が建ち、その脇に小さな田畑が広がっています。
『え~ところじゃの~、こんくらいの坂ならなんとか上って行けるわい。』 と久しぶりに登場のペタッチは、この先とんでもない展開になろうとは予想もせず、ルンルンと行きます。
穏やかだった上り勾配がややきつくなってくると、周囲の山も深くなってきます。
7~8%から10%を超えるような坂が現れるようになり、あへあへもがきつつ上ると安寺の集落です。赤いケヤキに黄色からオレンジの山、下には茶畑と、いかにも山間の集落といった趣です。
近くに石碑があり、そこには『電気導入記念 安寺部落 昭和三十年十一月十六日』とあります。この集落に電気が来たのは昭和三十年のことだったのですね。
安寺の集落はちょっとしたピークで、そこからしばらくは下りです。ほどなく持方の集落と武生神社(たきうじんじゃ)を結ぶ道にぶつかりました。この道が武生林道(たきゅうりんどう)のようです。
左手武生神社方面の道は拡幅済みできれいに舗装されているものの、右手持方方面は道路拡幅の工事中です。ちょうどそこへやってきた工事のおじさん、
『この道は奥久慈グリーンラインに繋げる工事をしているんだ。あと7~8年かかるよ。あっちでも工事しているけど、自転車なら通れるのかな?』
下にあった看板にはこれから行くルート上のあるところに通行止めとありましたが、その下に『解除中』の文字が確かにありました。この時はこの先の工事は一時中断しているのだろうと思って先へと進みます。
下り切ってからの上り返しはものすごくきつかった。10%超えの激坂が続いています。
『え~、いったいどこまで上るの~』 とふらつき気味のマーコン。
この激坂は1kmほど続いたでしょうか。ようやく西の展望が開け、ほぼ山の頂上に到達したようです。ここで小休止をと、きれいな山を背景にパチリ。
『もうすぐ頂上でしょう。少ししたら下りになるからもう安心だね。』 とここではのんきなことを言い合っていたのですが、、、
ところがである、このすぐ先の奥久慈見晴らし台のところには『全面通行止め』の看板が。
『あれ~、通行止めは解除じゃあなかったの?』 と先の様子を見に行くと、
『ぎゃ~、み、道がない~~っ!』
かつて奥久慈見晴し台があった場所には砂利が堆く積まれ、その脇の山の斜面は削り取られ荒々しい地肌をむき出しにしている。さらにその先ではショベルカーがガリガリと山の斜面を剥ぎ取り、かつて道だったところは山の斜面の一部と化している。
完全に通行不可能!
迂回ルートはない。唯一の可能性はかつての山道を行くことだが、これは現在はまったく使われておらず獣道のようになっている。ここで武生林道を断念。
止むなく武生林道を引き返します。行きはかなり時間が掛かったけれど、下り基調の戻りはスイスイ。ちょっと気が抜けたので入合のラーメン屋で昼食。偶然入ったこの店、かなりgoodでした。
入合からはR461で竜神峡へ向かいます。
R461は少々車の通りが多いのですが、周囲の山がきれいです。R461がr33に変わると道幅はぐっと狭くなり、観光の車が多くなります。
そこに現れたのは武生神社の入口、つまり私たちが通ろうとした武生林道の出口です。かなり時間をロスしましたが、なんとかここまでやってきました。
r33からちょっとした坂を上ると竜神ダムに到着。その上には歩行者用としては国内有数の長さの竜神大吊橋が架かっています。
竜神ダムの先には亀ヶ淵まで4kmほどの遊歩道が続いているので、これを行きます。竜神大吊橋の下に来ると、これはさすがに巨大で高さもあり、ぐっと見上げざるを得ません。
ダムができる以前のここは、山奥のまさに渓谷でした。ダムができ、水が蓄えられて渓流は川のようになりましたが、山々の美しさだけは変わりがないようです。
この時期、遊歩道を歩く人の数はダム付近にはそれなりにいますが、奥に進むにつれどんどん少なくなります。下に渓流を見、山の紅葉を楽しみながらゆっくり進みます。
途中、『竜神ふるさと村』へ抜ける鉄骨の階段がありました。武生林道から竜神峡へアクセスできるルートの一つですが、急峻な階段で歩いて上るのも大変なほどで、自転車ではとても無理です。
この遊歩道、川縁にあるのでフラットかと思ったら、結構なアップダウンがありました。亀ヶ淵はその終点で、ここから奥へは自転車では行けません。ここから武生神社に抜けるハイキングルートがありますが、これはあまり使われていないようで、こちらも自転車では無理そうです。
亀ヶ淵とはこのあたり一帯の名なのか、それともより限定的なところの名なのかわかりませんが、この小さな滝のすぐ側に、丸っこい壷の口のような形をした岩の割れ目から水が落ちるところがあります。
亀ヶ淵からほんの少し山を登ってみると、そこには奥へと続く渓流が流れていました。落ち葉が積もるこの沢はとても神秘的です。
亀ヶ淵で少々休憩したあとは、やってきた遊歩道を引き返します。行きと帰りはまったく同じ道を通りますが、周囲を見る角度が違うので飽きることはありません。
写真ではなかなかここの景色の全貌を捉えることができないのですが、とてもいいところです。企て人サイダーも満足げにこの遊歩道を楽しんでいます。
竜神峡で本日の観光地巡りはおしまい。ここからは順当にはr33を南下すればいいのですが、そのr33は道幅が狭く観光の車で大変な混雑ぶりです。
そこでr33の東にある田舎道を行くことにしました。こちらは大変のどかな道でほとんど車は通りません。
でもこの道、山の裾野にあるのでアップダウンの連続! ちょっとあへあへしつつも、あまりにものんびりした道だから、あくびがボワ~~ン。
この田舎道からr33へ出たのち、西染から一山越えて山方宿へ向かいます。この道は針葉樹の林の中にうねうねとした激坂の上りが続きます。これはちょっときつかった!
へこへこしながらもなんとか大和田に抜けることができました。しかしもう限界。大和田からは生井沢を越える山道を行くつもりでしたが日没も迫ってきたので、これはやめてr29を使うことにしました。この道も前半は上りですが勾配が緩いのでなんとかなりました。
r29の終盤はぐ~っと下って久慈川の流れに出会います。このあたりからさらに上流を奥久慈というように、この川はこの地方最大の流れです。日没をやや過ぎたころなんとか山方宿駅に到着。
通行止めのアクシデントがあったけれど、紅葉がとても楽しめた一日でした。山のアップダウンはちょっぴりきつかったけれどね。
ひとこと by マーコン
お天気に恵まれ、青空の下、色とりどりの紅葉を愛でながら一日堪能いたしました。
印象的だったのは、やはり何度見ても素晴らしい袋田の滝。展望台から見下ろした川のせせらぎが、紅葉した葉っぱの間から見えて、金糸の入った錦織のようでした。
竜神峡の亀ヶ淵のたたずまいは、日常とはかけ離れた別世界でした。
予想外の坂道の多さを、覚悟していなかった私は一人落ちこぼれてとぼとぼと自転車を押しました。久々のポタに体力のなさを痛感し情けなく意気消沈でしたが、お昼の美味しいラーメンと、居酒屋の美食に気を取り戻したのでした。
つかれたっちゃー。