静かなカントリーロードを行く
今日は昨日に引き続き古い石造のめがね橋巡りを続けたのち、宇土半島に入り、天草の大矢野島に渡ってまた温泉に浸かります。
昨夜はかなり激しい風雨だったようで、部屋付きの露天風呂には木の葉がたっぷり舞い込んでいました。その葉っぱを取り去って、ひんやりとした空気の中で浸かる朝風呂は最高です。朝ご飯もたっぷり戴き、美里町安部の宿をいざ出発。
まずは山の裾野をぐるっと廻るようにして進みます。道の山側には針葉樹、反対側は畑になったり竹林になったりと、変化があり楽しい。
大窪橋
視界が開け畑を下に見ながら進むと、この道とR218を結ぶ小さな道に架かる大窪橋が現れます。
え~、こんなところにこんな立派な橋が、、と思わせるような鄙びた畑の中に、この橋はポツンとあります。昨日見た通潤橋や靈台橋から比べればずいぶん小さく、石の積み方も粗雑に見えますが、どことなく品がありある種の風格を漂わせています。
穏やかなカーブを持つ欄干の石の間はかつては漆喰かモルタルが詰まっていたのでしょうが、今日それらは見られず大きな隙間ができています。ちょっと押したら落っこちてしまいそう。
さらにカントリーロードを進む
大窪橋からもまったく車が通らないこれまでの道をゆったりと進みます。
このあたりの民家はみんな昔ながらの造りで瓦屋根。田畑に山に瓦屋根の景色は心が静まります。
津留川
しばらくこのカントリーロードを進み津留川を渡ります。
津留川は先の大窪橋の下を流れていた川ですが、ほんのちょっとの間にこんな渓谷になっていました。
馬門橋
R218に出ると、見過ごしそうなくらい小さな馬門橋の標識が。そこから薮を掻き分けて少し下ったところに馬門橋があります。
周囲を木々に覆われたこの橋の脇には小さな滝が落ち、下には渓流。この流れは大窪橋と同じ津留川です。ここはとてもひっそりとしていて、すぐ近くに国道が走っているのが信じられないほど。橋に続く道はまったく使われなくなっていて、打ち捨てられたようになっているのがとても残念です。
二俣橋
馬門橋からR218を西に向かい枝道に入ると、すぐに二俣橋が現れます。
この橋は二本の川に沿ってほぼ直角に架けられた独立した二つの橋からなり、江戸時代には右手の釈迦院川に架かるの方の橋を二俣渡、左手の津留川に架かる方のそれを二俣福良渡と呼んだようですが、現在は中央で折れ曲がった一つの橋のように見えることから、この二本の橋をまとめて二俣橋と呼んでいるようです。また別名を双子橋とも言うそうで、まさにぴったりのネイミングですね。
二俣福良渡のすぐ後ろには新しい橋が架けられています。
R218の後ろに年祢橋
そして二俣渡の後方には、R218に平行して年祢(としね)橋が架かっています。
この橋は石橋としては新しく大正時代のもので、とても大きく立派です。江戸時代の二俣橋と比べると、雰囲気がずいぶん違いますね。
二俣橋を渡る
二俣渡を渡り津留川沿いを下ります。ここの銀杏の若葉はとてもきれいです。この川は昨日通った緑川の支流で、この先で本流に注ぎ込みます。
小筵橋
道がR443にぶつかったところで進路を変え南に向かうと、R218を越えた先に小筵橋があります。ここも銀杏がきれい。
ここからは上りです。ちょっとアヘアヘしつつ、ゆっくり坂道を上ります。そのうち急に空が暗くなり雨模様となってきたので、バス停の小さな小屋で様子を伺います。
山間ののどかな風景
しかしすぐには降り出しそうにないことから、行けるところまで行くことにしました。周辺は山間に開かれた小さな田畑で、のどかな景色です。
枝道に入り、松野原の木早川内橋の袂に辿り着いたところでザザーと降ってきました。これは本降り。近くの民家の軒下をお借りして雨宿りです。
雨のカントリーロード
40分ほどすると小降りになったので、再出発。周辺は相変わらす山間の鄙びた農村でなかなかいい雰囲気のところですが、微妙にその姿を変えて行きます。
ちょっとした上りをこなし、いよいよ下りになると思ったらジークがパンク。小降りとはいえ、雨の中のパンク修理は辛い。
緑の中のダウンヒル
やっとこパンク修理が終わり雨の中を再スタート。
ここからは壮快なダウンヒル! と思いきや、再びジークがパンク。おいおい、やってらんねーぜ!!
下った村にあっためがね橋
またまたパンク修理をし、こんどは間違いなく楽しいダウンヒル。
グワ~ンと下って、最初の村に入ったところでめがね橋を発見。このあたりは本当に石橋が多いんですね。
雨の中を行く面々
雨はパラパラですが降り止みません。路面は鏡のようになり、周囲の風景を写し出しています。
雨に洗われた田畑や山はとてもきれいになり、これぐらいの雨ならばしっとりとして意外と気持ちがいい。雨の日に走るなら五月が一番いいですね。
萩尾大溜池
下って下って再びR218に出ると、そこは萩尾大溜池。池の上ではたくさんの鯉のぼりが雨に濡れていました。
ここは農業用の人工池だそうで、上方を鐙ヶ池上堤、中程にあるのを鐙ヶ池中堤と呼ぶようです。ブラックバスなどの釣りで人気のところだそうですが、この日は雨降りで人気はなし。お天気ならば湖畔で休憩するのも楽しそうですが、この日湖畔へ下りる道はドロドロだったので素通り。
松橋近くの小川沿い
いつの間にか雨は上がったようです。
萩尾大溜池からは裏道で松橋の市街地をパスします。この小川沿いのカントリーロードはまったく車が通らず快適。
大野川
鹿児島本線の線路を越え大野川を渡ると、正面に九州新幹線の高架が現れます。そこを開通したばかりの新幹線が通り過ぎて行きました。
足元の大野川は干潟状になっており、なんだかごそごそとうごめく生物が。ん~ん、ムツゴロウかな?
八代海
大野川から先は宇土半島です。
ここで今回の旅で初めて海が現れます。八代海。入り江状の八代海は干潟になっていて、ほとんど海という感じがしません。それでもこれまでの山の中の雰囲気からは一変した空気が流れます。
松合
ここからはR266の一本道。道沿いの道の駅で昼食をとったあと、R266をほんの少し逸れて松合の集落を通り抜けます。
この集落はちょっとした歴史がある街のようで、あちこちに蔵やちょっと古い民家が建ち並んでいます。
R266
R266は狭く交通量もそこそこにあるので慎重に進みます。
堤防の上を行けるところも少しありますが、これは連続していないのでちょっとかったるい。お天気は回復してきていて少し日差しもあるのですが、この道の景色は悪くはないものの風光明媚とは行かず、とにかくどんどこと前に進みます。
船津からのカントリーロード
どうにも単調なR266に飽きたので、群浦から脇道に入り船津で一休み。
船津からのカントリーロードは少し高台を行くので、景色に変化が生まれて楽しい。車もまったくといっていいほど通りません。
三角線沿いを行く
その後もカントリーロードで田んぼを突っ切り、ちょっとした丘越えをして三角線沿いに出、その終着駅がある三角(みすみ)に到着です。
三角には三角西港という歴史ある港があるというので寄ってみることにしました。
三角築港記念館
この三角西港へ向かうR57はとても狭い上に大変な交通量なので、ゆっくり慎重に進みます。
三角西港は明治期に造られた港ですが、その後時代から取り残され、結果、築港当時の姿を今に良く残しています。石積の埠頭を始め、明治天皇頌徳記念館である龍驤館、小泉八雲が『夏の日の夢』で書いた浦島屋、旧三角簡易裁判所、旧宇土郡役所の海技学院などがあります。
私たちは、かつては荷役倉庫だった三角築港記念館のカフェで港を眺めながらまったり。ここからは天草五橋の一号橋である天門橋が間近に見えます。
三角西港から天門橋を望む
あの橋を渡ればいよいよ天草です。
三角西港からは三角に戻って天門橋を渡り、上天草の大矢野島に入ります。この天門橋、狭く路肩もほとんどなく、交通量が多いのでとても走りにくい。自転車には最悪の橋で、景色を楽しむような余裕はありませんでした。
天草パールライン
大矢野島ではまず天草パールライン(R266)を進みます。このパールラインも狭く交通量多し。
大矢野島の東海岸
その天草パールラインを離脱し、東海岸に出るとそこは交通量が少なく、景色もまずまずの快適な道になります。
海の向こうには三角近くの戸馳島、ちいさな寺島、維和島などが現れます。複雑に入り組んだここの海岸線には様々な養殖場が作られていて、筏や網などがあちこちに見られます。
彼方に天草五橋の四号橋前島橋を望む
野牛島に架かる東大維橋と西大維橋が見え出し、最後にちょっとした丘を越えて再び海が見えると、大矢野島の南端の浜辺に建つ今宵の宿に到着。彼方には天草五橋の四号橋、前島橋がうっすらと見えています。
海に沈む夕日を感じながら、屋上に設えられた酒樽の露天風呂で、アプゥー! としたあとは天草の魚介を堪能。鯛の姿造りに蛸ステーキ(実は煮込んだものらしい)、そして車エビの踊り喰い。車エビの頭をバキッってやるのは怖いから調理場でやってきてってサイダーが頼んだら、仲居さんに笑われました。
え~、だってこわいよ~
◆ひとこと by ムカエル
ムカエル的には今回のポタの最大のポイントは飛行機輪行。実は今まで飛行機に自転車を乗せた事が無いのです。
「日本の飛行機会社は自転車を丁寧に扱うから全然心配無い」とは聞いていたものの、ちょっぴり不安。でもやってみたらスーツケースを預けるのと全く一緒で実にあっけなく成功。熊本空港では最終バス出発まであまり時間が無いのに中々荷物が出てこなくて冷や汗でしたが、自転車は係の人が丁寧に抱えて裏から運んできてくれたのでした。
石橋って不思議ですよね。どうやったら崩れる事無くアーチ型に組み上げる事が出来るのかしら、と思ってサイダーに聞いたら木枠を最初に組んでから石を積み上げて行き、最後に「キーストーン」ってのを入れるんだって。それが橋を支える肝なんだそうです。ドーム型の屋根を持つイスラム教のモスクなんかも基本的には同じなんだって。重機も無い時代に大変な工事だったろうなー、と思っていたらうまく行かなくて崩れ落ちる事も結構有ったらしい。大変大変。
今回の旅のもう一つのポイントは宿。前泊した熊本スーパーホテルは何と朝食付で一人2990円! 部屋はちょっとしたビジネスホテル並の品質で朝食も種類はそれ程では無いにしてもバイキング形式。これはお得です。そして初日の宿は部屋毎に露天風呂が付いている! 食事も囲炉裏端で目の前で食材を焼きながらの食事。これで一泊1万円は超お得。出来れば次回は家族を連れてきてあげたい程です。二日目の宿もGEOポタでは通常ありえない様な大きな観光ホテルでこれまた中々グー。そして圧巻は牛深での宿。いや何と言うか、壊れかけた銭湯の様な温泉での地元の方々との交流(何を言っているのか良く分からない)は120パーセントのローカル度だったのでした。
5月4日、皆はまだ先が有るけど私は都合が有って河浦という町で離脱。そこからバスを乗り継いで熊本まで戻り、飛行機で東京まで。羽田空港では自転車はターンテーブルに載って出てきました。それにしても一人になった時の何と心細い事。
やはり旅は仲間と連れ立ってが良いですね。また行こうね!!