立山駅
今日は富山側から立山黒部アルペンルートで黒部ダムを渡り、長野側に抜けます。
立山山麓スキー場にある宿から立山駅にマイクロバスで送ってもらいます。というのは、立山駅から先は車も自転車も乗り入れできないからです。立山黒部アルペンルートは自転車輪行が可能なので、このルートで一気に長野側に抜けることにしたのです。
ロッジ風の立山駅は富山地方鉄道の終着駅であると同時に、立山黒部アルペンルートの富山側の出発駅でもあります。WEB上で申し込んだ切符を窓口で受け取る再、一本前のものに空きがあったのでこちらに変更してもらい、駅の2階に上がります。立山黒部アルペンルートの立山-扇沢間は6つの乗り物で繋がれていますが、その始めはケーブルカーです。
ケーブルカーで立山駅を出発
このケーブルカーはよくある交走式で、ケーブルで繋がれた二台の車両が、一方が下るともう一方が上るというもの。フニクリ・フニクラのフニクラですね。
ちょっと変わっているのは、客車の下にオープンエアの小さな貨車が付いていることです。このケーブルカーは元は『くろよん』こと黒部川第四発電所建設のために作られたものでしょうか? 私たちの自転車はこの貨車に積み込まれました。
立山駅と美女平駅間の1.3km、高度差500m、平均勾配24度の激坂を7分で上り、途中では柱状節理の岩肌を見ることができます。
美女平
美女平でバスに乗り換えます。
弥陀ヶ原を経由して室堂まで行くこのバスは富山側のハイライトで、一気に標高差1500mを上ります。
透き通るような空の下で、周囲の山々は清々しく輝いています。
美女平付近
周囲に雪が現れ、樹齢200年を越えるブナの原生林の中をどんどん上って行きます。
巨大な立山杉と呼ばれる杉の木の脇をかすめ、
左に称名滝、正面にハンノキ滝、右にソーメン滝
350mという日本一の落差を誇る称名滝と、融雪期だけ見られる落差500mの幻の滝とも言われるハンノキ滝、そしてさらになかなか現れない超幻のソーメン滝を眺めます。
写真左の雪のところにたぶん称名滝が流れているのだと思いますが、もしかしたら正面のがそれで、ソーメン滝は見えなかったのかもしれません。
車窓から見る雪原と雪山
ヘアピンカーブが続く七曲がり、
高度を上げて行くにしたがい登場する高い雪の壁は滅多に経験できないもの。
そして最後は除雪によって出来た高さ20m近くにもなる『雪の大谷』。
雪の大谷
バスに揺られて50分、室堂に到着です。
ここは立山黒部アルペンルートの最高地点2,450m。すぐ脇には標高3,015mの立山が聳えています。
さきほどバスから眺めた雪の壁の中を歩いて行けば、
雪のジオポタマーク
その壁にはいろいろな落書きが。ここは私たちもちょっといたずらを。
雪壁の高さは5mから10mになり、
17mの雪の壁
本日の最高高さ17m!
パノラマロードから見る立山
『雪の大谷』の後ろにはパノラマロードがあり、間近に立山連峰を眺めることができます。
ジークとサリーナの後ろの山のさらに真ん中の頂が、立山連峰の最高峰、大汝山(おおなんじやま)3,015m。左の頂は富士ノ折立(ふじのおりたて)、そして右の頂が雄山(おやま)で、立山とは厳密にはこの3つの峰の総称だそうです。
それにしても大汝山って、目立たないね。
トンネルを走る立山トロリーバス
雪遊びを充分楽しんだあとは、室堂のターミナルに戻り立山トロリーバスに乗ります。このバスが通るトンネルはなんと立山山頂の直下を通っているそうです。
トロリーバスは道路上の架線から電気を取って走るバスで、半世紀ほど前には日本各地で見ることができましたが、現在は全国で、この路線とちょうど黒部ダムの反対側を走る路線の二つしか残っていないそうです。
このトンネルを掘る時に遭遇し、難工事の元となった破砕帯が途中でちらっと見られます。
針ノ木岳と黒部湖
このバスでトンネルの中を10分ほど揺られて出たのは大観峰(だいかんぼう)。
駅の屋上展望台に上れば、眼下には黒部湖、そして後ろには後立山連峰(うしろたてやまれんぽう)の大パノラマが素晴らしい。
鹿島槍ヶ岳
こちらは後立山連峰の盟主と言われる鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)で、南峰(2,889m)と北峰(2,842m)からなる双耳峰(そうじほう)。
南へ伸びる後立山連峰
とにかくここは絶景!
立山黒部アルペンルートの運賃は高額で、通るか通るまいか迷ったのですが、この景色を見ればその迷いも吹き飛びます。
立山ロープウェイ
大観峰の展望台からはこれから乗る立山ロープウェイが下に見えます。
なんとこのロープウェイは1.7kmに渡り無柱!
黒部平で立山を背後に
その立山ロープウェイからの360度のパノラマも素晴らしく、7分ほどで黒部平に到着。
この駅の外にはちょっとした庭園と高山植物観察園があるようですが、この時期はご覧のように雪に埋もれています。ここでは立山が一つの塊となり、背後に迫ります。
この景色を楽しんだあと、駅の二階の食堂でお昼に。
黒部ケーブルカー
黒部平からはトンネル内を走るケーブルカーです。
なんと地下を走るケーブルカーは日本ではここだけだとか。
急な階段を自転車を持って上り下りするのはちょっと大変ですが。。
このケーブルカー、最大斜度31度という恐ろしいほどの坂をかけ下って行きます。
黒部湖
5分ほどで到着した黒部湖は地下駅で、ここから地上に出れば、エメラルドに輝く黒部湖が。と思ったら、湖には雪が浮かんでいてエメラルドじゃなかった。
目の前にはきれいな道があります。なんとそれは歴史に残る難工事だった黒部ダムの上!
黒部ダムから立山を望む
このダムの上を、ぐるりと360度取り囲む山々を眺めながら、歩いて渡ります。
黒部ダムから黒部川、白馬方面を望む
周辺は黒部川を挟んで西に立山連峰、東に後立山連峰。
先に見える白い山は白馬あたりのよう。
黒部ダム
黒部ダムは観光用の放水をしており、よくその写真を見ますが、それは6月からでこの時期は放水されないそうです。
黒部ダム駅の上にある『くろよん記念室』を覗き、展望台に上れば黒部ダムが一望に。
右下に下の廊下
昨秋にペタッチとマーコンはここから欅平まで続く断崖絶壁の『下の廊下』を歩き、その時の写真を見せてくれましたが、それはこの時期は雪に埋もれていました。
下の廊下
参考にペタッチとマーコンが歩いた時の写真を一枚。
この『下の廊下』は黒部川第三発電所建設の時、測量用、資材運搬用として開かれたものだそうで、その工事ではここで何人もの方々が転落して犠牲になっています。ここは本当に恐ろしいところです。
『下の廊下』があるなら『上の廊下』もあるのか? 果たしてそれはありました。黒部峡谷の黒部湖を境に上流側をそう呼ぶようですがこちらには登山道はなく、沢登りで有名な場所だとか。
扇沢の関電トンネルトロリーバス
黒部ダム駅からはトンネル内を走る関電トンネルトロリーバスで富山と長野の県境を潜り抜けます。
このトンネルは黒部ダム建設時に資材搬送用として掘削されたもので、難工事の末突破した破砕帯が見られます。 破砕帯とは、岩盤の中で岩が細かく割れ地下水を大量に溜め込んだ軟弱な地層のことだそうで、その時の工事の様子は木本正次著『黒部の太陽』で伺い知ることが出来ます。下流にある黒部川第三発電所のトンネル工事が灼熱地獄なら、こちらは破砕帯と摂氏4度、660L/Sというとてつもない量の冷水との戦いだったようです。
難工事の様子を想像しながらこのトンネルの中を行くと、16分ほどで扇沢駅に到着。
扇沢駅から大町方面を望む
立山黒部アルペンルートはここから信濃大町駅まで路線バスとなりますが、自転車も通行可の一般道となるので、自転車を組み立て本日の初走行に移ります。
今回のツアーで初めての全行程下りのらくちんコースです。
籠川
扇沢から大町まで続くr45扇沢大町線は、元は黒部ダム建設のための工事用として作られた道路で、現在は立山黒部アルペンルートのアクセス路となっています。
この道を扇沢から大町に向けて下り出します。
後立山連峰を背にして下る
籠川の谷に沿って下るこの道はヘアピンカーブもなく、ほど良い勾配で高速の下りが楽しめます。
後ろには後立山連峰の鳴沢岳あたりが見えています。
谷間を抜け、大町温泉で鹿島川に出合った先で、北の白馬方面へ。
爺ヶ岳
畑の向こうには爺ヶ岳ががっちりと座っています。
その先には大観峰から見た鹿島槍ヶ岳がその裏側を見せています。
田園と山
そして後ろ見えるのは唐沢岳あたりでしょうか。
田んぼと畑ばかりの田園地帯をこうした山々を眺めつつ、木崎湖へ向かいます。
木崎湖
国道を避け、仁科三湖の一番南に位置する木崎湖の西湖岸を通り、
ちょっとだけ地道を行く
JR大糸線の線路を越えると、ちょっとだけ地道に突入。
ありゃりゃ。
中網湖
谷間が迫ったところでR148に合流します。
ここからはほんの少し上りが。
その谷間が少し開けると中網湖です。
この湖は仁科三湖の中で最も小さく、ひっそりしていていい感じです。
中網湖から青木湖へ
中網湖からもほんのちょっとだけ上りがあり、青木湖へと進みます。
青木湖
青木湖には東岸、西岸ともに道があるのですが、本日帰宅するジークとムカエルの電車の時間があるので、安全を取って広い東岸を進みます。
ここは国道の内側、あまり車が通らない湖畔の旧道を行きます。
湖の西には後立山連峰の山々があるのですが、いつの間にか雲が低くなってきて、その山頂は判然としません。
そのかわり、先に別の白い山が見え始めます。
青木湖から白馬の山々を望む
湖畔を進むにつれ、前方の白い山が徐々に大きくなってきます。
あれは白馬の山々に違いありません。
しかし白馬岳はまだ見えないよう。
白馬の山々を目掛けて下る
青木湖を出ると穏やかな下りとなり、真正面に白馬の山々が。
田んぼの中を行く
先にちょっとした平地が開けると、田んぼの中を抜けて進みます。
どうやらあの山塊のなかでちょこっと飛び出したのが白馬岳のようです。
地道の自転車道?
田んぼの中の道の脇に小さなサインがあり、それによればどうやらここは自転車道のようです。
しかしこの道、幅員が狭まりついに砂利道に。
砂利道の自転車道って、めずらしいですね。
脇も後ろも山だらけ
道が90度方向を変えると、左に見えていた山々が後ろに屏風のように並びます。
黒部から見えた後ろ立山連峰は険しく、恐ろしいようにも見えましたが、この長野側から見えるそれは、手前の低い山もあり、どこか優しげです。
唐松岳
道が姫川沿いを行くようになると、左手には下部に八方尾根スキー場のリフトが見える唐松岳が現れます。
このあたりはとにかく山が途切れることなく連続してします。
姫川沿いを行く
姫川はこのあたりから糸魚川向かって流れ、日本海に注いでいます。
かつてこの姫川沿いを日本海から松本あたりまで、塩を始めとする物資が運ばれていました。その道は『塩の道』と呼ばれています。
また、姫川は何度も水質ランキング日本一になったことがあるきれいな流れのようですが、このあたりはちょっと濁っているように見えます。
飯森駅
姫川沿いの自転車道は飯森駅近くでおしまいとなります。
ちょうどここでジークとムカエルは時間切れとなり、飯森駅で上がることにします。
その飯森駅は無人の小さな駅でした。
唐松岳と遠方に白馬岳
飯森でジークとムカエルと分れたサイダーとサリーナは白馬の村中へと向かいます。
平川からは形を変えた唐松岳、そしてその肩越しに白馬岳が。
その白馬岳を目指して走ると八方尾根スキー場の麓の今宵の宿に到着。
この日のコースは前半の立山黒部アルペンルート、そして後半の扇沢から白馬への走行という二部構成でした。
立山黒部アルペンルートは噂に違わぬ魅力がありました。黒部ダムに関連するもろもろの乗り物、そして大観峰からの見事な後立山連峰の眺め。もちろん黒部ダムは一度は見ておきたいところです。このルートだけでも行って損はなし。
第二部は黒部ダムから見た後立山連峰の反対側が見られるというのがミソで、この日は生憎雲が低くなってしましましたが、晴れていればより素晴らしい山々が望めると思います。最後にはツアー前半の糸魚川で出会った姫川に再会でき、後立山連峰最北端に位置する白馬岳が望めるというのが本ツアーの〆に相応しいと感じました。