秋田駅の男鹿線
東京から秋田へは新幹線で四時間。盛岡までは二時間半なのに、そのあと秋田まで一時間半もかかります。なんと秋田新幹線は単線なのでした。知らなかった...
さて、ともかく秋田駅に着いたらローカル線の男鹿線に乗り換えます。
男鹿線の赤鬼くん
二両編成のディーゼルカーの車輛の入口には男鹿らしく、なまはげさんが描かれています。車輛によって赤鬼くんと青鬼くんがいます。この男鹿線の愛称は『男鹿なまはげライン』。なるほどね。
ガタゴトと音をたてて秋田駅を出発した男鹿線は民家の脇をすり抜けて進んで行きます。日本海が見えるかな、と思って窓の外を見ていましたが、まったくその姿は見えません。男鹿線は海岸から少し離れたところを走っているようです。
八郎潟の水門
天王駅を過ぎると大きな川を渡ります。その内陸側には巨大な工作物が見えています。どうやらこれは八郎潟の水門のようです。八郎潟はかつては琵琶湖に次ぐ大きさの湖でしたが、戦後の食糧難を解消するため干拓され、今は田んぼになっているのでしたね。その八郎潟に海水が浸入しないように作られたのが、この水門です。
男鹿駅となまはげ像
秋田から一時間ほど男鹿線に揺られるとその終着駅、男鹿半島の付け根にある男鹿駅に到着です。
男鹿駅ではかわいらしいなまはげくんが出迎えてくれました。
男鹿駅付近
駅を出るとパラパラと小雨で気温は7°Cとかなり低い。しかし自転車を組み立てているうちに雨は上がってくれました。
男鹿駅のすぐ近くには船川港があります。この港は小さな漁船はもちろん、大型客船も入れる大きな港で、マリーナもあるようなのでちょっと覗いてみようと思っていたのですが、なんせ寒いのでこれはパスして先を急ぐことにします。
海岸に出る
船川港を横目に、いよいよ2013年GWツーリーングのはじまりです。今日は男鹿半島の南岸を廻って入道崎で日本海に沈む夕日を眺め、半島北部にある男鹿温泉まで。でもこのお天気では入道崎での夕日は望めそうもありません。
駅前は港の施設があるため海は良く見えませんが、2kmほど走るとそれらの施設がなくなり、鈍色の日本海に出会います。
穏やかな海岸線を行く
男鹿駅を出て最初に出会う海岸線は穏やか。
『ずっとこんな海岸線なら、今日は楽勝ね。』 と、まだ行く手を知らぬサリーナがどんどこ。
灯台に向かって
地図に南磯とあるところに灯台が見えてきました。その足下にあるのは女川の集落です。
遠目には鈍色に見える日本海も、よく見ればきれいなエメラルド色をしています。
鵜ノ崎海岸
灯台を過ぎるとそこは鵜ノ崎海岸で、この1.5kmに渡る海岸線は『日本の渚・百選』に選定されており、ちょっと変わった風景が見られるとのこと。確かに海の中には小さな岩があちこちに点在していて、これはちょっと珍しいかもしれませんが、この日はあいにくの天気で、ここの魅力は今ひとつ感じられませんでした。
とにかく風が強くて、のんびり海を眺めるような気分ではないのでした。
鵜ノ崎海岸を行く
海岸からすぐに小高い山になるここの地形は、海沿いに防風林を植えるまでもないのか、また防風林を植えるだけの余地がないのかわかりませんが、とにかく風よけになる物がなにもないのです。ここは珍しく松の木が数本並べて植えられているところです。
椿の漁村
びゅうびゅういう風の中を進んで、椿という小さな漁港を通り抜けます。
又六
椿から中山峠とある本当にちっちゃな坂を上り、湾の反対側に出ると、そこにはまた別の小さな港があります。このあたりは又六という集落のようです。
先に帆掛島
この入り江を廻って進めば、先に屏風のように立つ岩が見えだします。潮瀬崎の入口にある帆掛島です。
帆掛島に向かうジークとサリーナ
又六の先の集落小浜からはごく穏やかな上りとなります。
帆掛島とサリーナ
その穏やかな上りの先で帆掛島が大きくなりました。帆掛島は島という名は付いていますが、実際は陸続きで、ちょっと大きな岩という印象です。
潮瀬崎
帆掛島の手前を廻るようにして進むと、そこは潮瀬崎で小さな灯台があります。ここはごつごつとした岩場でその中にちょっとしたものがあるというので探しに向かいます。
ゴジラ岩
潮瀬崎を一躍観光名所にしたのがこのゴジラ岩です。この岩は夕日を背景にすると、ゴジラが火を吐いているように見えるそうな。ゴジラ岩は道路からは見えず、ちょっと海側に入らないと見つからないのですが、足下には海水が流れ込むようなところで足場も悪く、探すのにちょっと苦労しました。満潮の時はここまで辿り着けないかも。
潮瀬崎を廻る
ゴジラ岩はこうした岩の奥にあるのでした。
潮瀬崎と本山門前間の海
潮瀬崎でゴジラ岩を見たあとは、本山門前に向かいます。潮瀬崎を出るとものすごい風。強風というより烈風です。とても自転車に乗ってはいられず、下りて自転車を押しますが、それでも前に進めないくらいの風です。しかもここは上りとあって、これにはまいった。
本山門前の集落
自転車を押したり引いたり、乗ったりしてなんとか前に進むと、本山門前の港と集落が見え始めます。
本山門前のなまはげ像
一漕ぎしてなんとか本山門前に到着です。そこには巨大ななまはげ像が。
この像の高さは9.99mで、この高さはこの上にある五社堂までの999段あるという石段の数にちなんだものだそうです。
本山門前からの上り
なまはげ像の前で一休みして、さあこれからが男鹿半島の中核部です。本山門前からは強烈な上りとなるのです。
五社堂への999の石段
えっさえっさと上り始め、道が大きくUターンした先には長楽寺があります。この長楽寺の上には国指定重要文化財の五社堂が建ち、そこまで鬼が積んだという999の石段が続くのです。
時間があれば五社堂まで行きたいところですが、このお天気では・・・ということで、石段だけちょっと覗いてみました。ごつごつしたこの石段はかなり上りにくく、これを999も上るのはちょっと大変そうです。
上りと烈風に耐える
鬼の石段も見たし、さあ先を急ごう、と長楽寺をあとにするも、そこからはずっと上り。それに加えてものすごい風。
『ひゃー、こらたまらん!』 と自転車を降りて飛ばされないように押し歩き。
美しい海岸線
お天気は良くないものの、風は強いものの、海岸線の景色はすばらしい!
上りと烈風に耐えるpart2
ちょっと乗って、風が吹けば降り、ちょっと乗って、風が吹けば降り...
それでも前に進めばいつかは目的地に到着する...
美しい海岸線part2
しかし道にはアップダウンが現れ始めます。それも上り基調できつい。
すばらしい景色! お天気だったら、もっとすばらしいのでしょうね。
雲に突入か?
えっこらよっこらと徐々に高度を上げて行くと、もう雲がつかめそうな高さになりました。本日の最高地点までもうすぐです。
このあたりには大桟橋という、波の浸食によって中がくり貫かれた岩があり、遊覧船からはその穴が見えるようなのですが、残念ながらこの上部の道からは岩の頭しか見えません。またその少し先には白糸の滝があるのですが、これも海からしか見えないようです。
加茂青砂の先の岬
しかしとにかく、このあたりは絶景に次ぐ絶景が続きます。
加茂青砂への下り
大桟橋のあたりから道は下り出しますが、その先にはちょっときつい上り返しが待っていました。もう一漕ぎえっこらよっこらすれば、今度は間違いなしの下りです。
展望所から加茂青砂漁港を望む
その下り坂の途中に展望所が現れます。ここからは下の加茂青砂(かもあおさ)漁港が良く見えます。この展望所からもう一下りすると、加茂青砂の集落への分岐に到着。加茂青砂の砂浜はその名の通り、青い砂だそうですが、時間の関係でこの日は海岸には下りず、先を急ぎます。
加茂青砂の北の海岸線
加茂青砂で標高30mまで落っこちてしまったので、そこからはまた上り。えっこらえっこらと坂を上っていると、またしてもごつごつ岩が並んだ海岸線が現れます。
慎重に下る
標高90mまで上り返して金ケ崎温泉に下る駐車場を過ぎるとようやく道は下りに転じました。しかし相変わらずの強風で、下りといえどもあまりスピードを出すわけにはいきません。風で飛ばされないように慎重に下ります。
絶景海岸
しかもその後もアップダウンは続くのです。
このあたりの海岸線は形容する言葉がみつかりません。
ジークとサリーナ
『男鹿半島、最高~』 と、このお天気にもかかわらず、美しい海岸線に満足、笑顔のジークとサリーナ。
絶景海岸part2
とにかくこんなのや、
絶景海岸part3
こんな景色が続くのです。
サイダー
『男鹿半島は日本のベストサイクリングコースの一つですね~』 と、サイダーも満足げ。
先に男鹿水族館がある半島
いくつかのピークを越えて、ようやく先に男鹿水族館がある半島が見えてきました。ここからはしばらく下りです。
絶景海岸part4
見飽きることのない絶景海岸が続きます。
男鹿水族館へ下るサイダー
『もうすぐ戸賀湾。入道崎はカットして男鹿温泉に直行しようよ~』 と、ここまででへろへろのサイダーでした。
戸賀湾
ぐわ~んと大きなカーブを下ると男鹿水族館の脇をかすめ、さらにその先に静かな戸賀湾が現れます。戸賀湾はこの上にある一ノ目潟や二ノ目潟と同じく、噴火による爆裂火口でできた湾のようで、その昔は四ノ目潟と呼ばれていたとか。 ここはこれまで通ってきたごつごつした海岸線とは異なり、穏やかな湾です。時間が許せばここから遊覧船に乗り、海から男鹿半島を眺めたいところですが、本日これは叶わず。なんと強風のため運行中止だそうです。そんな強烈な風の中、よくここまで辿り着きました。
戸賀湾を行く
全員、入道崎カット案に賛成ということでここで一休みし、男鹿温泉に向かうことにします。
戸賀湾を行くpart2
穏やかな戸賀湾を眺めながら、のんびりその北端まで進みます。
戸賀湾からの上り
湾の反対側には急斜面の山が迫っています。本日の宿がある男鹿温泉はこの山の反対側なので、どうしてもこれを越えなければなりません。戸賀湾からの上りは二本あります。一般的には大きな道の方が勾配が穏やかですが、r59は上って下ってまた上ってというちょっといやな道なので、ここは細い方の道を選択。こちらはちょっと勾配はきついのですが、一本調子の上りです。とにかくえっこらよっこらと上って、どうにかピークに到達。ここはきつかった。もうへろへろです。
男鹿温泉のなまはげ像(翌日撮影)
このピークで一休みし、男鹿温泉へと急ぎます。これまでなんとか保っていたお天気がかなりあやしいくなってきたのです。
男鹿温泉は、現在多くのホテルや旅館が建ち並ぶ石山地区と、古くから湯治場として知られる湯本地区の二つからなります。その石山地区の入口に辿り着くと、そこにはまたしてもなまはげ像が。ちらっとこのなまはげさんに挨拶をして、男鹿半島ではもっとも古い温泉地だという湯本地区に向かいます。今宵の宿はそこに一軒だけ残る温泉旅館です。ちょうど宿に到着したとたんに、空からザーと降ってきました。
この日お天気はあまり良くなく、残念ながら入道崎は廻れませんでしたが、それでもこのコースは魅力いっぱいでした。晴れていなくても★★★、晴れていれば★★★★コースですね。
◆ひとこと by サリーナ
西日本出身の私にとって、今回のルートは全く未知のエリアです。海岸沿いの絶景、湖、温泉など、すばらしいものをたくさん発見できました。
ますは初日。対向列車待ちするのんびりムードの秋田新幹線を乗り換えて、やってきました男鹿半島。強風向かい風に悩まされたものの、海岸線の断崖や岩場の荒々しい景色と波しぶきを見下ろしながら走るルートは特筆もの。翌日の八望台、寒風山も、海と潟との希少な景色が眼下に広がり楽しめます。
海岸線の絶景がずっと続くなか、少し内陸を上ってブナの林とエメラルドの池を散策した3日目の十二湖はステキなアクセントでした。散歩している時間帯に雲が晴れて青空が広がり、芽吹きの木々を抱えた山々は薄い霞がかかったような姿を湖に映し、美しい日本画そのものでした。
津軽半島の先端、竜飛崎の上り九十九折りでも強風に苦しめられましたが、頂上からはすばらしい景色で北海道も臨め、達成感に浸れます。走り続けた最終日はかなり疲労がたまっていましたが、何とか完走したあとに「三内丸山遺跡」というすばらしいご褒美が待っていました。遺跡の屋外での復元展示や発掘した貴重な品々の屋内展示、思わず地面を掘りたい気分になります。
盛りだくさんで楽しい旅でしたが、自転車としてのお勧めは何と言っても男鹿半島。初日の南海岸と2日目の八望台、寒風山を合わせると、世界に誇れる自転車ロードレースのコースにできるんじゃないかな。