秋は紅葉。
東京の紅葉なら奥多摩、ということで、今回は武蔵五日市に。
武蔵五日市駅から秋川左岸を西へ向かえば、この道は車が少ない快適路。
秋川の対岸には城山が見えています。
里の紅葉はまだこれからですが、もうすぐそこまでやって来ているようです。
気持ちのいい道を進んで、秋川の支流の養沢川に出れば、渓流の上にオレンジに色付いた木々が見えます。
ここからちょっと自転車を担ぎ上げて山道風のところを上れば、『瀬音の湯』に出ます。
その先には石舟橋が架かっています
イチョウは黄色に、カエデは赤く色付いてきており、下にはごつごつした岩場を流れる秋川のせせらぎが見えます。
カエデはこんな調子。
石舟橋からは、再び秋川の左岸を行きます。
この先の乙訓(おとくに)おやき店でおいしい『おやき』を買う予定でしたが、この日はおばあちゃんが朝寝坊したのか、店に出るのは9時ごろになるというので、これは断念。
おかげでそのすぐ近くにある、紅葉がいいという龍珠院もすっ飛ばしてしまった。
こうした失敗もあったのですが、とにかく秋川の左岸をどんどこ行くと、乙津で最終的に西青木平橋に出ます。この橋は左岸の道の突き当たりにあり、左岸の集落もここで一旦潰えます。
西青木平橋の袂からは階段で秋川に下りられるようになっているので、ちょっと下りてみます。静かな流れと、紅葉をはじめた木々の表情が魅力的なところです。
西青木平橋からは、時坂峠の上り口にある払沢の滝(ほっさわのたき)を目指します。
ここからは秋川の右岸に渡り、r33檜原街道を進むしかありません。この道は交通量が多いので注意が必要です。
ここは東京都檜原村。東京の村は、島部を除けば、ここ檜原村しかありません。
このあたりは、東京でもっとも奥地といえるところです。
檜原街道は村役場の先で突き当たり、南と北に別れます。秋川もここで二手に分かれ、南は南秋川、北は北秋川となります。
ここを北に進めば、道はr205水根元宿線となり、かなり交通量が少なくなります。
水根元宿線を500mほど進むと、有名なとうふ店『ちとせ屋』のところで道は二手に別れ、r205は右へ、私たちが進む林道浅間線は左手となります。
この左手の道に入れば、まずは急激な上り。そしてすぐ先に『←払沢の滝』の標識が現れます。
この標識に誘われて左折すると、そこには、静かで鄙びた空気が流れています。
道端にはたくさん落ち葉が積もり、カサコソと音を立てます。
落差60mで4段に落ちるという払沢の滝は日本の滝百選にも選定されており、なかなか素敵そうなので、ちょっと寄って見ることにします。
払沢の滝というのだから、この流れは払沢ということになるでしょうか。
入口のモミジはまだ青いけれど、なかなかいい感じです。
ここから滝までは1km弱、徒歩15分ほどのようです。入口の喫茶店の前に自転車を置き、ちょっとしたハイキングに出かけます。
歩き始めるとすぐ、オレンジ色の雰囲気のある紅葉が日に照らされていて、きれい。
振り返れば、北側の山を背景に、ほぼピークの紅葉が見られます。
郵便マークのあるレトロな雑貨屋の前を通り、山道を進んで行くと、こんな小さな滝が落ちているところに出ます。ここは忠助淵というようです。
このあたりの紅葉もなかなかきれいでした。
忠助淵からさらに奥に進めば、今度はちょっと開けたところに出ます。
ここには、中央のメインの流れの他に、左右からちょっとした流れが集まってきています。
この開けたところのすぐ先に、払沢の滝は落ちていました。
あまり大きくない滝ですが、気品のあるいい姿をしています。主要な滝は上から二番目の段差のところで、この上に一段、下に二段あります。真冬になるとこの滝は凍るそうです。
しばらくこの払沢の滝を眺め、やってきた道を戻れば、そこには先ほどとはまた違った紅葉があります。
払沢の滝、なかなかよかったね、などと語らいながら、出発準備を整えます。ここからいよいよ、時坂峠への上り道、 林道浅間線です。
時坂峠までは平均勾配8%と、初級者にはちょっときついのですが、距離3.6km、標高差300mと短いので、息が上がったら押しても辿り着けます。払沢の滝の入口付近は針葉樹林の中を行きます。最初からかなりの勾配で、ちょっとあへあへ。こんなんで本当に時坂峠に辿り着けるのかと心配になってきます。
最初は穏やかなカーブが続き、空が開くと左手に谷を見ながら上るようになります。
目の前に茅葺きの民家が現れました。こんな山奥で生活するのは大変だろうとは思いますが、この民家はこの場所にぴったりの雰囲気です。
この民家を過ぎると、いよいよ坂も本番。
勾配が一層きつくなったような気がしだすと、ヘアピンカーブが現れるようになります。ここの勾配は12%以上はあるでしょうか。
へろへろしてきたので、ペアピンの直線部分で一休みすることにします。たまたま停止したところは、これまで上ってきた道が見える、眺望が開けたところでした。
この休憩ポイントからさらにもう一つヘアピンを描くと、南の山々が見え出します。
ここの標高は495m。車が2~3台停まれるスペースがあり、標識には『武蔵野水道・時坂の森』とあります。払沢の滝入口の標高は300m弱なので、200mほど上ってきたことになります。
ここからの眺めはなかなかよろしい。
坂もここで一息ついたようで、ここからはかなり緩やかになります。
そうはいっても時坂峠までは、ここまでで2/3を上ったに過ぎません。まだ1/3残っているのです。
しかし、緩くなった坂は上りやすく、道脇の紅葉も盛りで、心理的にはかなり楽になってきました。ここから道はかなり狭くなり、車はすれ違えないほどになります。
カーブを三つ四つほど過ぎると、右手に中峰平林道の分岐が現れます。この道を行けば本来の時坂峠に辿り着くそうです。時坂峠は、浅間尾根道というハイキングルートの峠のようなのです。しかしそこは眺望もなく、冴えないところだとの噂なので、行くのは止めにして、この道の頂部にある峠の茶屋に向かいます。
ゆっくりペダルを回していると、再び眺望が開きます。
標高560m。この上り側の山は伐採されてあまり日が経っていないようで、禿げ山に近く、振り返れば、谷間が遠くまで続き、その先に都心のビルが見えます。やや左手にはスカイツリーが一際高く聳えています。
さて、スカイツリーを眺めたら、いよいよ峠の茶屋です。
道はもうごく穏やかになっており、開けていた空が針葉樹によって覆われるとすぐに、峠の茶屋が現れます。
本来の時坂峠は歩いてしかいけないところにあるので、最近ではこの峠の茶屋のところを時坂峠と呼ぶこともあるようです。払沢の滝入口から標高差300mを上り切りました。この峠道は序盤がきつく、終盤は穏やかなので、『武蔵野水道・時坂の森』の標識まで上れるかどうかがポイントです。
とりあえず峠の茶屋まで辿り着いた~
茶屋の前は展望スペースになっていて、御前山から大岳山がきれいに見えます。
御前山は針葉樹の割合が高く、大岳山はたまたま雲の影になってしまったので、見事な紅葉という具合にはいきませんが、ここからの景色も素晴らしいです。
峠の茶屋から西の道は、林道瀬戸沢線と呼ぶようです。
林道瀬戸沢線の頂部からは南西の山々が、鮮やかな色を纏っているのが見えます。
逆光なので写真映りはパッとしませんが、このグラデーションは素晴らしい。
うっとり山の紅葉を眺めたら、お昼です。ここには先ほどの峠の茶屋と、そば屋があります。茶屋ではうどんが食べられますが、新そばのこの季節はやっぱりそば、ということで、林道瀬戸沢線を少し下り、さらにハイキングルートになっている道を入ったところにある『そば処みちこ』へ。
まだ11時半だというのに、ここにはかなりの客がいてびっくり。火が焚かれている囲炉裏の横の板の間に通されましたが、やっぱりここは奥多摩の山の上、足元からじんじんと冷えてきます。しかし、ここの刺身こんにゃくとそばはおいしいです。
お昼のあとは林道瀬戸沢線で小岩に下ります。しかしこの道、大部分が非舗装でちょっと荒れているので、小径車の私たちはほとんど押し歩き。転倒して骨折なんてことにならないようにね。ここは動画でどうぞ。
さて、その砂利道が終わり、小岩に下ってきました。ここには払沢の滝の下で見た北秋川が流れています。北秋川は山をぐるりと廻っていたのです。その北秋川に沿ってr205水根元宿線も廻ってきています。しかし北秋川の左岸にも道があり、こちらのほうがローカルなので、ここは左岸の道を進みます。この道はかなり快適です。
道脇の川は北秋川からその支流の神戸川に変わりました。神戸川の先には東京都の天然記念物に指定されている神戸岩(かのといわ)があります。
神戸川の読みはわかりませんが、『かのといわ』から推測すれば『かのとがわ』でしょうか。
その神戸川に小さな沢が流れ込む地点に赤い橋が架かります。
この橋から先はちょっとした上りになります。
このあたりは標高350mほどで、峠の茶屋からは200m以上も下っています。
そこからエッチラオッチラとまた標高450mまで上ります。
山の上に紅葉が見え出すと、その先で山が割れ、ごつごつした岩肌が露になります。これが神戸岩です
神戸岩は、高さ100mの岸壁が60mに渡って続く神戸川の峡谷で、ここから見ると、石の扉が開きかけているようでもあります。
この左右の岸壁の間は通り抜けられるようになっています。
まず木の小橋を渡り、アルミ製の梯子で岩の上によじ登ります。
するとこんなところに出ます。
渓谷の底は幅4mほどしかなく、そこに細い渓流が流れ、いくつもの滝を作っています。
迫る岸壁と谷の間は狭いところでは20cmほどしかなく、手すり代わりのチェーンを伝って進んで行きます。ここはスリル満点。
この難所を過ぎると両側の岸壁はなくなり、平場に出て、トンネルを通って戻れるようになっています。
神戸岩はせいぜい15分か20分のショート・トリップですが、ここが東京かと驚かされる神秘的なところで、お薦めです。
ここからは逆光のモミジもきれい。
さて、神戸岩で本日の見どころはほぼ終了です。ここからは北秋川、秋川と下って、秋川街道に入り、八王子を目指します。
車が多い檜原街道は、上りでは対岸を行き使いませんでしたが、下りは通過時間が短いので使ってみました。しかしやはりこの道は、できるなら避けたほうが無難です。
戸倉からはカントリーロードがあるので、これに避難。
ほっと一息付きます。
子生神社の先でいったん檜原街道に出ますが、すぐに秋川に下る細道に入り、そのまま川沿いを行けば、佳月橋 (かげつきょう)に出ます。
西に傾きつつある日の光を受けて、ここの木々は彩り豊か。
佳月橋を渡って小和田の奥に進めば、ここはまたまたちょっとした上り。
山の下に黄色い大木が見えてきます。広徳寺の大イチョウです。
広徳寺はこの大イチョウと山門で有名。
このお寺は1373年(応安6年)創建という古刹で、高さ25mほどになるカヤの木は都の天然記念物だそうです。
大木に見えたここのイチョウはかなり太い二本から成り、それらが一体となってより大きく見えます。
ここの本殿もなかなか立派で、二棟がくっついたような、ちょっと変わった造りをしています。このお寺、なかなかいいです。
広徳寺からはいったん秋川まで下ります。
穏やかな表情の秋川とその岸辺の紅葉がいい感じ。
さて、本日の見どころはこれで終了。秋川街道に出て、新小峰トンネルを目指します。
ここもちょっとだけ上り。
新小峰トンネルのすぐ手前で左折し、旧秋川街道へ。
この道は車とモーターバイクは通れないので、安心して走れます。というわけで、現在はほとんど通行がないため道は少々荒れており、草が生い茂っています。
細いうねうねとした道を上って行くと、小峰峠に辿り着きます。
峠は小峰隧道となっています。この隧道は古くから心霊スポットだったそうですが、ある恐ろしい事件があり、ますますその手の噂が広まったようです。ここでは事件のことには触れませんが、それはここを通る時には手を合わせたくなるようなことでした。
小峰隧道の先も、ちょっとしたうねうね道です。
ここは、夕日を受けた木々がきれい。
武蔵五日市と八王子を結ぶ秋川街道は、狭い割りに交通が多いので、できるだけこれは使わずに、浅川の支流の川口川沿いの細道を行きます。
少々川口川から離れるところもありますが、ほとんど秋川街道を使わずに八王子まで辿り着けます。
周囲は住宅地なので、視覚的にはそれほど面白い道ではありませんが、近所の方が川で遊んでいたり、水を汲みに来ていたりと、生活感があるのがちょっと楽しい。
川口川の横の道は、砂利道やインターロッキングのところもありますが、基本的にはアスファルトの生活道路です。
近所の方がおしゃべりに励み、たまに自転車を漕いでくる方もいます。
順調に進んで、中田遺跡公園に到着。この公園は遺跡公園というくらいで、古墳時代後期の竪穴住居が復元されていますが、これはフェンスで囲まれていて入ることもできず、その上管理がひどくてボロボロでした。わざわざこの竪穴住居を見るために寄る価値はないと思いますが、私たちはここで時間調整のため、しばし休憩です。
17時近く、そろそろ八王子の飲食店も夜の営業を始めるころ、中田遺跡公園を出ます。残照の中、少し川幅が広がった川口川を眺めながら、その土手をのんびり進んで行きます。