新春のアクティヴ・サイクリングは房総。その数ある林道の中から、選りすぐりのものを繋いで走ります。
スタートは都心からアスセスの良い君津駅。
このあたりの東京湾沿いは工業地帯で、モクモクと煙りを吐く工場の煙突が建ち並んでいますが、内陸にはその気配はまったくありません。
君津駅の南口を出て小糸川を渡るとすぐに、どこにでもあるようなカントリーロードになります。
今日の林道の最初はマザー牧場の裏から始まる鹿野山林道です。
先にそのマザー牧場がある山と思えるものが見えてきました。とりあえずあそこまで上らなければなりません。このあたりは平坦ですが、実は今日のコース、このあと平坦な箇所はまったくといっていいほどないのです。
房総の春は早い。この時期の房総は水仙の時期で、道端にもその姿が。
いつの間にか道は穏やかな上りに。
この道を進んで行くと、30分ほどで池が現れます。
これは郡ダムによって造られた湖ですが、規模が小さいので池と呼んだ方がしっくりくるような、そんなものです。
この池の横でいったん小さなピークを迎え、ググッと下ると、そこも特に何ということのない田舎の景色ですが、小さな谷津に沿って道はその奥へ進んで行きます。
谷津が終わると再び上りになり、ちょっとした切り通しを抜けます。
この切り通しの上には小さなブリッジが架かっていますが、これはどうやら両側に開発されたゴルフ場を繋ぐためのもののようです。
切り通しからR127房総なぎさラインに下ると、そこからはまた上りになり、館山自動車道をくぐり、r163に入ります。
上から覗くとr163の横の谷底には気持ちの良さそうな細い道が続いています。これは下の方は舗装路のようでしたが、マザー牧場まで抜けられるのでしょうか。
r163はマザー牧場の前を通るr93まで延びていきますが、少し東に出てしまうので、途中から分岐してオートキャンプ場に出る道に入ります。
この道はまず鬱蒼とした針葉樹の森の中を行きます。このあたりは林道風です。実はこの道、どうやら鹿野山林道の1号線のようなのです。
道が大きくUターンすると森を抜け、明るいところに出ます。このあたりは道幅も広がり、林道だといわれなければそうは思わない、ごく普通の山の中の道といった風情です。
今年の冬はこれまで暖かく、この週末から寒くなるとのことでしたが、蓋を開けてみればこの日も13°Cになるといい、風もなくて日向はポカポカです。
この時期の房総のもう一つの花は菜の花。
背丈はまだ小さいけれど、ここでもすでに黄色い花を付けています。
さて、いい匂いの菜の花を眺めながら上ると、なんとかマザー牧場に到着です。
ここは観光牧場で、牛、羊、アルパカなどがおり、観覧車やゴーカート、バンジージャンプなどのアトラクションもあります。そろそろイチゴ狩りも楽しめるかもしれません。
このマザー牧場の駐車場の奥が鹿野山林道の入口です。
鹿野山林道は6kmの全舗装路。マザー牧場からは森の中を行く下りで、道幅はやや広めながら、すでに林道らしい静寂感があります。
道の勾配が穏やかになると、すぐにトンネルが現れます。
鹿野山林道には二つトンネルがありますが、どちらもコンクリートで固められたもので、房総名物の素掘りトンネルではありません。
このトンネルを抜けると、山並みが現れます。これぞ房総! という景色です。
鹿野山林道の序盤はこんなふうに、所々で木々の合間から山並みが顔を出す、眺めのいいルートです。
この林道は下り基調で、マザー牧場からR465まで200m少々下るのですが、途中、ちょっとした上りも楽しめます。
『暖かくて眺めが良くて、ここは最高ですね〜』 とキルピコンナ。
R465をくぐると鹿野山林道はその旧道にぶつかって終わりますが、現在はこの先の現R465までが林道となっているかもしれません。
私たちはここからR465の旧道を進みます。この入口は少々荒れていて先へ進めないかと思いましたが、20〜30mも行けば、問題なく走れるようになりました。
短い旧道区間を経て現R465に出、その後カントリーロードに入ります。
大原台から北西を見ると、先ほど通ってきた鹿野山林道の名称の元になった、鹿野山らしき山が見えています。
時は11時。昼食には少し早いのですが、このあたりにレストランはほとんどないので、唯一の食堂『清和ゆめの丘牧場』に向かいます。
R465に出るとちょっとした上りとなり、大きくカーブするところに『清和ゆめの丘牧場』はありました。
ここはかつては牧場をしていたのだろうと思いますが、現在は食堂の廻りに山羊やロバ、イノシシといった動物が飼われているだけです。
『こいつ、ワシとおんなじくらいの年かな〜』 とポニーと記念撮影のシロスキー。
午後の部は高宕林道から。
小糸川の西岸の上郷台から、高宕林道に続く道に入ります。この入口には『石射太郎(いしいたろう)→、関東ふれあいの道→』の標識が立ちます。
この道の入口付近は里の雰囲気が良く、奥に行くにつれ鄙びてきて、すでに林道といった感じになります。
道脇に荒々しい岩の断崖が現れると、その先が高宕林道の入口のトンネルです。
このトンネルの横は、高宕山や石射太郎山への登り口で、『関東ふれあいの道』の入口になっています。
ここから始まる高宕林道は5kmほどで、前半の3kmはダート。アップダウンもあり、今日のコース中ではもっとも難易度が高い林道です。ここの標識には『日本ザル生息地』とあるので、もしかするとお猿さんに遭えるかも。
入口のトンネル付近は山から滲み出した水でいつでもぬかるんでいます。そのトンネルをくぐると、砂利道の高宕林道が始まります。
入口のトンネルはコンクリートで覆われていましたが、二番目からは素掘りになります。写真は三番目のトンネルで、これを通り抜けたあたりから、ちょっとした秘境にやってきた感じになります。
『ほう、ここは秘境感たっぷりですな〜』 とエーちゃん。
しばらくは下り基調なので、なんとか乗って進むことができます。
高宕林道は一方は切り立った崖です。
この崖はどうやら柔らかい砂岩でできているようで、こんなふうに崩落しているところが何ヶ所ありました。
そしてその崖の反対側には高宕川が流れています。
おっこちたらたいへん〜、と慎重に進みます。
路面にはあらかた砂利が敷かれていますが、ちょっとガレぎみのところや土質でぬかるんだところもあります。
下りだった道は1kmほど進むと上りに転じます。私たちの場合、このあたりの乗車率はおおよそ60%といったところでしょうか。
ふかふかな落ち葉道の先にまた素掘りのトンネルが現れました。
こうしたトンネルの中は滲み出した水でかなりぬかるんでいますから、慎重に押して進みます。
前回は足痛でへなへなだったサイダーですが、この日は快調に進んでいきます。
高宕林道はこのトンネルを通り抜けて少し行ったところの川の落合で、90°向きを変えます。
するとようやく路面がコンクリート舗装になります。しかしそこからも上りは続きます。
モルタル吹付けのトンネルが現れると、道はようやく下りに。
このトンネルの先で、コルゲートや吹付けなど、いくつもの連続トンネルを通り抜けます。
そして怒田沢で下の道に合流し、ワイルド・ダートな高宕林道は終わります。
怒田沢の田んぼの中を行くと、
小糸川が三島ダムによって塞き止められてできた、三島湖に到着。ここはヘラ鮒釣りの人々で賑わっていますが、一般の観光客はまったくいません。
この湖畔には、かつてあった国民宿舎がなくなり、レストランはおろかトイレさえ見当たりません。橋の袂にある釣舟屋さんでトイレをお借りして、三島湖をあとにします。
三島湖の南の端のトンネルが渕ヶ沢奥米林道の入口です。
この林道は9kmの全舗装路で、道幅は広く車もそれなりに通るので、このあたりは林道という雰囲気はまったくありません。
トンネルは二本連続しており、それらを抜けると数軒の民家が建ち並ぶところに出ます。
この進行左手には小糸川が流れていますが、川までは若干距離があり、川面はまったく見えません。
さらに二本のトンネルを抜けた辺りから、ようやく道幅が狭まり、林道っぽくなってきます。
一ヶ所下りになるところがあるもののこの林道は、三島湖からずっと上りです。
えっこらよっこらと上り詰めていくと、
道が真南を向き出したあたりから、所々で西の眺望が得られるようになります。
どうやら道は尾根付近を通っているようで、西からの日差しも受けて上ります。
そして今度は東の谷も開け、近くの山が見え出します。
こうして左右の景色を眺めながら進んでいくと、
比較的新しく切り開かれたと思われる、切り通しが現れます。
ここはかなり狭い道の両側から、砂岩とおぼしき白い岩肌が迫ってきて、ちょっとワイルドな感じです。
切り通しだからこの先は下り、と思いきや、あにはからんやそうはならず、この先も道は上っていくのでした。そろそろ足にきていて、これにはガックリです。
切り通しのあと、少し行くと今度は急峻な荒々しい崖が待っています。ここもちょっといい感じ。そしてこの崖の先でようやく道は下りに。
しかしその下りはあっという間に終わり、再び上りになるのでした。
『そろそろご勘弁を〜』 といううめき声がどこからともなく。
標高が300mを超えた頃、東に眺望が開きました。やっと渕ヶ沢奥米林道の頂上に辿り着いたようです。
目を凝らして良く見れば、山並みの向こうにうっすらと太平洋が見えています。どうやらあそこは鴨川あたりのようです。
しばし太平洋を眺め、先に進むと、すぐに高山林道の分岐に辿り着きます。
渕ヶ沢奥米林道はこの先も続きますが、ここからは高山林道に入ります。
高山林道は安房高山の裾野を廻る2kmほどの短い下りの線で、入口付近はガレた砂利道です。しばし押し歩きをするも、100mほど進むとなんとか乗って下れるようになります。
そして1kmほど進めば舗装路になり、快調に下って行きます。
高山林道はR410の旧道にぶつかっておしまいになりますが、そのR410の旧道というのが、高山林道の延長ではと思われるくらいの細い道でびっくり。
この旧道が新道に合流する直前に、山に囲まれた加茂川の筋が良く見えるところがあります。ここの眺めはなかなかです。
ぐわ〜んと下って加茂川の筋の田んぼの中に出ました。
ここは今日の行程で数少ない平地です。
その田んぼの中をどんどこ。先には房総を横断する嶺岡中央林道が走る愛宕山が見え、その左には、
これから越えなければならない嶺岡浅間が見えています。
愛宕山から来た嶺岡中央林道はR410でいったん途切れ、再びあの嶺岡浅間の尾根付近を進んで鴨川に至ります。
r34長狭街道を横切り田んぼの縁を進んでいくと、ここにも水仙が咲き、夏みかんが実っています。
房総は柑橘類の産地としても有名でしたね。
目の前に嶺岡浅間から続く山が迫ってきました。うしろにはこれまで越えてきた山並みが見えています。
『あそこ上るの〜』 と、迫る山並みを前にして、足取りが思いジオポタでした。
嶺岡浅間側の嶺岡中央林道へは『酪農のさと』付近から上るのが一般的ですが、そこまではR410を少し余計に走らなければならないので、ちょっとショートカット。
もちろん距離が短くなった分、この道は斜度がきついのです。で、即押しに入る面々。ここは押してもきつい!
よたよた〜っと、なんとか嶺岡中央林道に這い上がりました。 この林道は内房の安房勝山と外房の鴨川を結ぶ房総を代表する林道で、全舗装路です。所々で視界が開け、普段なら気分よく走れるのですが、今回はちょっと読みが甘かった。ここから嶺岡浅間を過ぎるまで、まだ結構なアップダウンがあるのです。
これまででバテバテの私たち、この先でハンガーノック症状のものがあらわれ、ちっとも先に進まないのでした。
そして嶺岡中央林道から下る道に入る頃には真っ暗になり、しかもその道の序盤はダートとあって、ちゃんと宿まで辿り着けるか心もとない状況に。舗装路になってからも、真っ暗闇の激坂下りで時速5kmでのろのろのろ。。。
今宵の宿、高鶴山荘に辿り着いたのは、予定よりほぼ一時間遅れという結末。いや〜、今日はきつかったです。
とにかく一風呂浴びて、ジオポタお気に入りのスペインレストランのパエジェーラに向かいます。かつてより周囲の明かりが多くなったとは言え、それでも真っ暗に近い夜空には、都心ではほとんど見ることのできないいくつもの星座が輝いています。
田んぼの中にあるパエジェーラでは、まずカバ(スパークリング・ワイン)で乾杯し、生ハムやトルテーリャ(スペイン風たまご焼き)といった前菜の盛り合わせに始まり、〆にイカスミのパエリャ。とってもおいしかったのですが、疲労困憊で半分寝ている者あり。ありゃりゃ。今度ここに来る時には、もっと軽いコースにしなくっちゃ。