快晴! お日様燦々です。
房総林道の二日目の朝、高鶴山の麓で目覚めた私たちは、宿のおいしい朝ご飯をたらふく食べて、出発準備を整えました。そこへロードバイクでやって来ていた若者が来て、写真を撮ってくれました。
今年は暖かく、今日もポカポカ。足元の水仙はすでに満開の時期を過ぎているほど。
今日はまず、高鶴山目掛けて上ります。
ここは超激坂なので、みんなで自転車を押し上げます。
するとそこには、水仙畑の向こうに房総の山並みが見えています。
この時期の房総は、この可憐な白い花とどこまでも続く山並みの対比が素晴らしい。
押したり引いたりしてなんとか自転車に乗れるところまでやってきました。
このころには早くも身体が暖まっていて、上着を着ていると暑いほどで、身支度を整え直して走り出します。
足元には水仙が続き、うしろには昨日散々だった、嶺岡中央林道が通る山並みが見えています。
この快適な高鶴山の道は長くは続かず、すぐに下の道に下ります。
布野へ向かうこの道はごく普通の道ですが、道端には水仙が咲き、柑橘類が黄色い実を付けています。田んぼの陽のあたらないところは白く覆われています。前回来た時にはこの道は一部凍結しているところがありましたが、この日はその兆候はまったくありません。
布野まではちょっとしたアップダウンがあり、昨日バテバテだった私たちは、ここで早くも今日の行程に不安を覚える始末。
しかしピークを過ぎたあとの下りは快適で、布野の小向林道の入口を行き過ぎてしまうほどです。
布野からの小向林道は三原川の東岸の高台を行きます。
この林道は朝のこの時間帯には陽当たりがなく、気温は2°Cまで下がっていて寒いのですが、時折三原川西岸が木々の合間から見えて、なかなか雰囲気がいいです。
房総の春は早い。
ここで、すでに咲いている梅を発見。
小向林道が終わり、ちらっとr186を通り、三原川に沿う田んぼの中の道に入ります。
ここはのどかでいい感じ。畜産の臭いがするところや、ちょっと珍しいソテツの畑があります。
田んぼ道がこんもりした小さな山に突き当たると、ちょっとワイルドな道に。
この道をどんどこと行くと、白渚でr297外房黒潮ラインに出、三原川の河口に架かる白い斜張橋が見えてきます。
その斜張橋を渡り、太平洋をバックに一枚。
燦々と輝く太陽の下で、真っ黒なボディースーツに身を包んだ大勢のサーファーが、真っ青な海に浮かんでいました。
ここからは海沿いの和田白浜館山自転車道を行きます。
この自転車道、コンクリートの舗装はかなり荒れており、海岸の自転車道に良くあるように、一部は砂に埋もれています。しかし何といってもここは、素晴らしい海を眺めながら走れるのがいいところ。
和田白浜館山自転車道の距離は短く3kmほどで終わり、海岸を離れるとすぐローズマリー公園に到着。
ここはかつてはシェイクスピアをテーマとした公園で、その名のとおりローズマリーがたくさん植わっていましたが、今はわりと普通の道の駅になったようで、農産物直販所ができていました。園名のローズマリーはいったいどこにいったのかな。まあこれは、テーマパークがうまくいかなかったということなのかもしれませんね。
ローズマリー公園からは海沿いではなく、内陸の道で千倉駅へ向かいます。
このあたりの海沿いにはあまりいい道がないからですが、この内陸路はまずまずです。
千倉駅をかすめ、すぐにカントリーロードに入って、
さらに田んぼの中へ。
そろそろちょっと休憩をと、田んぼの片隅に自転車を止めると、横の畑ではおばあちゃんが農作業をしています。
私たちが休憩しているのを見ると、おばあちゃんが手招きして、これをどうぞとおやつをくれました。どうもありがとう、おばあちゃん。
おばあちゃんから頂いたおやつと、持参した昨夜の残り物で小腹を満たして、ここでしばしまったり。
休憩のあとは千倉林道へ向かいます。
民家の合間を抜け、荒々しい岩肌が露出する山際を行き、小さな田んぼの縁を進んで行くと、
パッと視界が開け、田んぼの向こうに千倉林道があるこんもりした山が見えてきます。
田んぼの中から広い道に出て西へ500mほど行くと、左手に、道に沿って穏やかに上っていく千倉林道の入口が現れます。
千倉林道はここ南房総市千倉町南朝夷から館山市畑まで5kmほど続きます。
その入口付近は明るく、道幅も広めです。
1kmほど穏やかに上り続けるとトンネルが現れますが、これはコンクリートの普通のやつ。
このトンネルからいったん下って小さな橋を渡り、左手に流れているはずの川に沿って再び上り出します。昨日の疲労が残っているのか、この上り、結構きつかった。
最初のトンネルからさらに2kmほどで二番目のトンネルが現れます。こちらは表面はモルタルで覆われていますが、ちょっと房総っぽいゴツゴツ感があります。
トンネルの先は杉林で暗く、いつの間にか道幅も狭くなっており、いかにも林道という雰囲気です。
杉林の先は竹林。この竹は細いので女竹の一種でしょうか。
しなった竹の先が道に覆い被さり、竹のトンネルになっているところもあり、ここはちょっとワイルド。
竹林を抜けると明るいところに出ます。
そこには竹で四角く囲われたものがあります。
これは正月飾りでよく目にする千両の畑です。
千両は強い直射日光を嫌うので、日影を作るために竹で囲われているのです。
今年の冬はかなり暖かく、あちこちで植物が例年にない状態になっているそうですが、これもそんなものの一つでしょうか。
カエデが散らずに、未だに紅葉しています。
千両の畑から先には民家が現れるようになります。
畑の集落に出たようです。
その中に早くも咲いているサクラが。
早咲きの種類なのでしょうが、ちょっと早すぎやしません?
畑の広い道に出ると千倉林道は終わります。
畑からは畑林道へ向かいます。
安房グリーンラインを横切り500mも行けば畑林道の入口がありますが、私たちはその先の道がなくなるところまで行ってみることにしました。
梅の木の下にミツバチの箱が置かれ、道の両側に千両の畑がいくつも並んでいるところに出ると、急勾配の大きな屋根の民家の先で道は終わります。
この一見行き止まりに見える道の終わりは、実は本当の道の終わりではなく、道はその先90°向きを変えて続いています。
その道というのは竹薮の間を行く、道とも道でないとも言えるようなものです。前回この道はほとんど竹薮に飲み込まれそうな状況でしたが、今回来てみると意外と整理されていて、先に進めるようになっていました。
この道が行けると、白浜ダムから野島崎へ、あるいは館山へ抜けられると思われます。企て人サイダーは先に行きたそうですが、そろそろお腹が空いてきた面々の反対に合い、ここはちらっと様子を伺ったところで撤退。
こうして道の終わりの探索は終了、ちょっと戻って畑林道に入ります。
畑林道はここ畑から白浜までの3kmに満たない短い線で、安房グリーンラインができて、かつての秘境感は少し薄れましたが、それでもなお雰囲気のあるいい道です。
長尾川の小さな橋を渡り、川沿いを離れると安房グリーンラインの高架の下をくぐります。
そこから少し上ると、素掘りのトンネルが現れます。このトンネルは形状がきれいで、掘削面も均一できれい。これは素掘りとはいっても現代的な機械で掘削されたものでしょう。
このトンネルを抜けるとすぐ、安房グリーンラインに出ます。
新しい安房グリーンラインは鄙びた畑林道との対比が強すぎて、脳が混乱してしまいます。
安房グリーンラインを数十m下って、反対側に延びる畑林道に再び突入。
すると道は、一気に何十年も前にワープしたような雰囲気に。
この道は谷を通っているようで、序盤の進行右手は道を造るために削り取られたと思われる急な法面に。
周囲は鬱蒼とした森で、その中をゆっくり上っていきます。
ここはほとんど陽の光が届かないのですが、所々できれいな木漏れ日が落ちてきます。
法面が左手にも現れるようになると、いよいよ畑林道の佳境で、ワクワク、ドキドキ。
穏やかなカーブのところで右手の開けていたスペースがぐっと狭まると、両側に法面が現れ、それが徐々に高くなってきます。
その法面の先が畑林道の最大の見どころ、地層が浮き出るトンネル!
『わお、ここは恐竜が出てきそうねぇ〜』 とサリーナ。
アプローチの法面にもはっきり地層が浮かび上がっています。
ここは何かの圧力で地層が隆起したわけですが、これだけはっきりしゅう曲が見られるところは少ないのではないかと思います。
そのトンネルに恐る恐る入っていくキルピコンナでした。
トンネルの出口側から見ると、トンネル内の縞模様はマーブル柄のような感じ。
出口側の景色も魅力的です。ここの両側も急な法面で、その表面は苔やシダ類でびっしり覆われています。
そしてその上には、斜めに生えた木が。道上に張り出すと陽の光をたくさん浴びられるということでしょう。それでここには木のトンネルができています。
この幻想的な道を300mほど進むと突然周囲が明るくなり、白浜の海が現れます。
暗い畑林道と明るく真っ青な海の対比もこの道の魅力の一つ。
さらにぐぐっと下ると白浜の街です。
房総は花の生産も盛んで、この時期はストックやキンセンカなどが栽培されています。
畑林道を下ると、明神神社の前に辿り着きます。
そこから温室や畑で栽培されている花々を眺めながら、カントリーロードで東へ向かい、
塩浦で海に出ました。
ここは入り江になっていて波は穏やか。夏には海水浴客で賑わうことでしょう。
海に出たら海岸沿いを北上するだけです。
塩浦の先の乙浜には漁港があり、漁船を眺めながらその中を進みます。
乙浜漁港を出るとゴツゴツした岩礁地帯になり、その先に小さな白い灯台が建っているのが見えます。
灯台を過ぎると今回の旅の最後の上りです。
小さなピークとなる南房千倉大橋までは、ひと漕ぎ。
南房千倉大橋に差し掛かると、先に終着地の道の駅ちくら潮風王国が見えてきます。
潮風王国はジオポタ黎明期からお世話になっているところで、そのころからある第一千倉丸の前で記念撮影。
潮風王国のレストランで昼食宴会です。予定の時刻に辿り着いたものの、人数の関係でなかなか席が空かず、結局30分待ちに。
刺身盛り合わせに始まり、絶品の金目の煮付けまでは良かったのですが、追加で頼んだ寿司がなかなか出てこず、バスの出発時刻に間に合いそうもないということで、これはテイクアウトに。そしてバスは連休の混雑で東京駅到着が1.5hも遅れてしまうことになったのでした。まあ、寝ていたからこの遅れはあまり気にならなかったけれどね。
このコース、鄙びた千倉林道と畑林道の素晴らしさに、それらと対照的な明るい太平洋の輝きが加わり、魅力倍増です。