2016年の走り納めは下総台地(しもうさだいち)。この日は快晴。風もなく暖かで、絶好のサイクリング日和となりました。
東京から二時間、やってきたのはJR成田線の香取駅。この近くには香取神宮があるので、駅の入口は神社色です。なんでもこの日は、香取神宮と佐原を結ぶコースのマラソン大会があるそうで、かの野口みずきさんも走られるとか。
その香取神宮へは今日の最後にお詣りすることにして、まずは利根川へ向かいます。
駅前を出て利根川に出る曲がり角には香取神宮の末社である沖宮神社が建っています。
沖宮神社の前をかすめ、利根川に向かってどんどこ行くと、正面に見えてくるのが津宮鳥居。
香取神宮には二つの参道があり、第一の鳥居はこことは別のところに建っていますが、この津宮鳥居は利根川から参拝する時に通るもので、かつてはこちらが表参道だったそうです。
津宮鳥居と利根川を眺めたら、利根川の土手上を走る自転車道で河口へ向かいます。
坂東太郎こと利根川は、長さは信濃川に次いで日本で第二位、流域面積は日本第一位の大河。
ここの空はとにかく広い。川岸には水鳥がたくさん。時々トンビがやってきて、水鳥を慌てさせています。
津宮鳥居を出るとすぐ、JR鹿島線の鉄橋をくぐります。
そうそう、香取駅は鹿島線の始発駅でもあります。この鹿島線に揺られて行くと、香取神宮と対になるともいわれる鹿島神宮に行くことができます。
JR鹿島線の次にくぐるのは東関東自動車道。この川向こうは水郷で、あやめで有名な潮来があります。
真っ青な空が気持ちいい。
利根川の南には田んぼが広がり、その向こうに下総台地の低い丘が見えます。
今日の前半は利根川沿いを行き、後半はあの丘の中を行きます。
利根川の縁はいつの間にか芦原になっています。
この茂みのあちこちから鳥のさえずりが聞こえますが、残念ながらどんな鳥がいるのか、わかりません。
下総台地と芦原を眺めながらどんどこ行く、マサキン、マージコ、ヨンチェス。
どんどこどんどこ、どんどこどんどこ行くと、先に連続アーチ橋が見えてきました。
県道44号線に架かる小見川大橋です。
ここまでは川にあまり生活の匂いがありませんでしたが、小さな水門の向こうに軽トラックが停まり、その先に小舟が二隻浮かんでいます。
ここではまだ漁が行われているようです。
川向こうに赤白に塗り分けられた高い煙突が何本も立っています。あそこらが鹿島工業地帯なのでしょう。
煙突からは煙がモクモク。その高度あたりはうっすらと灰色になっています。
利根川の南には黒部川が流れています。
利根川と平行して流れるこの川は、貯水池としての役割を持っており、カヌーなどの水上スポーツが盛んだそうです。
左手に彫刻と石碑が現れました。手前の彫刻は利根川治水百年記念モニュメントで、奥の石碑には『利根川第一期改修 発祥の地』とあります。
利根川の本格的な治水工事は1900年に始まり、この地で起工されたのだそうです。
この石碑の裏手の河川敷は利根川コジュリン公園です。コジュリンはホオジロ科の野鳥で、絶滅危惧II類のかなり珍しいものだといいます。
コジュリンが見られるかもと思って公園に降りてみましたが、ここは公園を作ったはいいけれど、あまり手入れされていないようで、かなり荒れた印象です。その上さらに残念なことに、コジュリンらしき姿は確認できませんでした。
コジュリン公園を過ぎるといよいよ利根大橋です。この橋は利根川河口堰と一体となり、河口から19kmほどのところに架かっています。利根川河口堰には逆流を防止して塩害を防いだり、閘門による水位調整機構を備えており、大型船の通行を可能にする役目があるようです。
このすぐ先で利根川に常陸利根川が合流します。利根大橋は利根川と常陸利根川の間の狭い陸地を挟んで、常陸川大橋へと続きます。
利根川の北で常陸利根川が合流したように、その南では黒部川が合流します。
この黒部川にも閘門があり、写真の水門は上流川の閘門で、このすぐ下流に川全体を塞き止められる水門があります。
ここで利根川とはお別れ。黒部川に架かる橋を渡り、利根川の南の田んぼの中をしばし進みます。
稲刈りが済んでしまった田んぼの中は空っぽ。次の季節のために栄養を蓄えているといったところでしょうか。
成田線の下総橘駅をかすめ進路を西へ取ると、先には丘が。ここから本日第二部。
第二部は下総台地。千葉県は利根川のすぐ南から台地になります。この千葉県北部の台地は、北総台地とか下総台地と呼ばれています。千葉県南部は海岸線を除けば山ばっかりになりますが、北部は山とまではいかず、丘が連なります。その丘と丘の間には谷津田が分け入っている。これがこのあたりの地形です。
道脇に竹を裂いたもので囲われた、妙なものが出てきました。
これはいったい何?
近付いて中を覗いて見ると、そこには赤い実を付けた植物が。
これはお正月飾りに欠かせないセンリョウを栽培している畑なのです。センリョウは日差しを嫌うため、こうした竹籠の中で育てられるということです。センリョウに良く似たマンリョウがあるのをご存知の方は多いと思いますが、一両、十両、それに百両もあるのを知っていますか。
センリョウの畑を眺めたら、次に待っているのは下総台地の丘。
丘だから当然、ここは上り。えっちらおっちらが始まります。
へーこらして上った先にはこんな畑が広がっています。
これから作付けをするのか、耕されたばかりの黒い土のところもあるけれど、こんな青い菜っ葉が育っている畑も。
ん〜〜ん、小松菜??
上ったら下る。針葉樹の間をぐわ〜っと下ると、そこは田んぼ。
谷津だ。谷津は谷戸、谷地などとも呼ばれ、丘陵地が長い間に浸食されてできた谷状の地形で、多くは田んぼとして利用されています。その田んぼは谷津田とも呼ばれます。
ここは狭いけれど、谷津の地形がよく分かりますね。元の丘は木々で覆われ森となって残り、浸食されて低地になった部分は田んぼとして利用されています。
この谷津の縁をどんどこ行く面々。(TOP写真)
田んぼがあれば近くに集落があるもの。
利根川に並行して流れていた黒部川の上流はこのすぐ先の田んぼの中を流れています。この集落はその田んぼの縁にひっそりと佇んでいます。
田んぼの中の黒部川を渡ると、その先はこんもりした丘。
丘といえば当然上り。ちうわけで、ここもえっちらおっちら。民家の庭先には黄色い夏みかんが生り、真っ赤な寒椿が咲いています。
このあたりは府馬というところで、大きなクスノキがあるそうです。
坂の上で、少し眺望が開けたところに出ました。森の向こうにポッコリと頭を出した大きな木が二本見えます。あれがそのクスノキでしょうか。
近付いて見ると、確かにかなり大きい。
神社の横に、同じ位の大きさの木が二本並んでいます。
しかしこの二本は『府馬の大クス』ではなく、その隣に立っている木でした。
大クスはこれらの間にひっそりと立っており、高さはそれほどありません。
国の天然記念物に指定されている『府馬の大クス』はかなり高齢で、あちこちの枝が折れ、高さは若い木に及ばなくなったようです。
しかしこの幹のしわの寄り方は貫禄がありますね。ちなみにこの木はクスとありますが、より正確にはクスノキ科に属するタブノキだそうです。
『府馬の大クス』からパワーをもらったら、丘を下り畑の中をどんどこ。
畑の中の作物は白菜やにんじん、そしてこれは何でしょう。細い葉がもじゃもじゃ〜ってなっている。
そしてまた、本日何度目かの谷津に出ました。
なんにもない田んぼってのも、意外と好きだな。
今日のコースにはほとんど補給ポイントがありません。自動販売機ですらまったく見かけないといって良いほどなのです。そんなコース上で貴重なポイントがここ、r70大栄栗源干潟線にある風土村です。
ここには農産物直販所に加え、レストランやアイス工房があります。この日、アイス工房は機械の故障で臨時休業でしたが、直販所でここのアイスを買っていただきました。けっこうおいしいです。
風土村で一休みのあとは、香取神宮へ向かうだけ。
森を越え、田んぼの中をどんどこ、どん。
このあたりの台地の標高はせいぜい50mほどなので、大したことはなにのですが、とにかく上っては下り、下っては上りだから、結構しんどい。
『腰が痛くなってきました〜』と、病み上がりのマサキン。
上った先の台地の上には、こんな畑が広がっています。
今耕したばかりの土の色がいいですね。
その畑の間を行く道はこんな感じで、かなり気持ちいい。
田舎道の典型的な風景といったところでしょうか。
時は15時半。冬至までもうすぐのこの時期は、すでにこの時刻でぐっと日が傾いて、影がぐ〜んと長くなっています。
屋敷林の中の大きなケヤキの木もすでに葉っぱを落とし、冬らしい姿になっています。
今朝方、津宮鳥居を出て間もなくくぐった東関東自動車道が現れました。横の森にはまだ僅かながら、紅葉が残っています。
このすぐ先は香取佐原インターチェンジで、香取神宮はその少し先に建っています。
東関東自動車道の横を滑り落ちるようにして低地に下ると、ここもまた谷津。
田んぼとその先の山が、夕日で赤くなっています。
ここからも丘を上って下り、谷津に入る間もなくまた上りに。
この坂道が香取神宮へ南東からアプローチする道です。
薄暗い林の向こうに赤い色が見え出すと、それが香取神宮の総門です。
ここで最後のもがき。ゼーゼー。
香取神宮に辿り着きました。総門の前には鳥居が建ち、そのさらに下に神池があります。
一般的な参拝ルートは西の佐原方面からr55佐原山田線で一の鳥居をくぐり、このすぐ南にある赤い二の鳥居をくぐって、神池まで石灯籠のある坂道を上ってきます。ですから私たちのうしろの鳥居は三の鳥居ということになります。
総門をくぐると正面に手水舎があり、右に曲がると楼門です。
1700年の造営で、現在屋根は銅板葺きですが、当時は板葺きで、その中でももっとも厚い板が使われる栩葺(とちぶき)というものだったそうです。
楼門をくぐると、千鳥破風が設けられた檜皮葺の拝殿です。この建物は昭和になってから造営されたものですが、うしろに続く1700年造営の本殿との釣り合いよく纏められています。ここは本殿・幣殿・拝殿が連なった権現造になっています。
拝殿の前はには、『年越の祓』のための茅の輪が。もちろんくぐりましたよ〜
香取神宮にはもう一つ有名なものがあります。それは要石。
正規の表参道ルートでやってくると、二の鳥居の先の参道に『要石道』の案内がありますが、これは表参道と裏参道の間の森の中にあります。
石の手摺で囲まれたの中に小さな石があります。これがその要石。な〜んだ、こんなちっぽけな石なの〜、というのが偽らざる感想。
石の周りに落ちているのが五円や五十円硬貨ですから、その大きさが分かるかと思います。 これは大ナマズを押さえつける地震の守り神とされ、見かけは小さいけれど、徳川光圀が参拝した折り、この石を掘らせたが、結局その下までは届かなかったという言い伝えがあるそうな。隣の鹿島神宮にも同じような石があり、そちらが凹型なのに対し、こちらは凸型をしています。
香取神宮の参拝が済んだら、とっとこと佐原に向かいます。ここまで車の多いところはほとんどありませんでしたが、香取神宮から佐原まではr55佐原山田線を使わなければなりません。これはちょっと車が多いので、注意を。
さて、佐原は小野川沿いに歴史的建造物が建ち並ぶ、風情ある町です。ここは祭りの山車でも有名で、先日ユネスコ無形文化遺産登録へ提案された『山・鉾・屋台行事』には佐原の山車行事も含まれているそうです。
佐原に来たらやっぱり鰻だよね〜、ということで、三年ぶりに山田でじか重を。
備長炭でじっくり焼かれたこの鰻は香ばしく、ふっくら。写真見ているだけで、よだれがでる〜うっっっぅ。
2016年の走り納めは天候に恵まれ、ぽかぽかで風もなく、とてもいい日でした。利根川自転車道は相変わらず快適だったし、下総台地のアップダウンと谷津田もいい感じでした。前回は改修中だった香取神宮にもお参りできたし、〆の鰻も絶品でした。今年も良い年でしたね。