天気予報と開花予報にやきもきしながら早起きして塩山駅に到着すると、青空とぽかぽか陽気が待っていた。「やった〜!」と『甘草屋敷』の前でジャンプするジオポタの面々。
この立派な建物『甘草屋敷』は旧高野家住宅といって、江戸時代に甘草を栽培していた民家で重要文化財に指定されている。
甘草屋敷に入ってみると、豪華な雛飾りとつるし雛がたくさん飾られている。
本場の伊豆のつるし雛は布製だが、こちらは主に和紙でつくっているそうだ。
鮮やかな手まりやいろいろな道具がとても華やか。
甘草屋敷を出て、しばらく北上すると川にぶつかる。橋の向こうには既にピンク色が広がっている。いきなり桃源郷だ!
青空、ぽかぽか陽気の中を、サリーナ先頭に桃の花園めざして走る面々。
橋を渡って少し上ると、道の両側には桃の畑が広がり一面のピンク色。
菜の花畑の黄色との競演もある。
そして、周囲は山に囲まれた甲府盆地。山の連なりを背景に桃色の霞がかかったよう。
近づいて見ると、一つひとつの花はかなり大きめ。桜より随分大きく、そして濃い色だ。
そんな桃畑をどんどん上って、
小学校の満開の桜並木を下り、
たどり着いたのは周林寺。門に覆いかぶさるように、大きなしだれ桜が咲き誇っている。
この桜は『雪洞桜』といって樹齢約120年とのこと。
淡いピンクの洞にまあるく覆われて、歓声をあげるジオポタメンバー。
花びらは少し細長めのすっとした上品なしだれ桜だ。
周林寺をあとに、さらに桃や桜の咲き乱れる道をアップダウンして進むと、
慈雲寺に到着。ここは観光客でかなり賑わっている。
こちらはイトザクラといって、なるほど、ピンクの糸が空から無数に落ちてくる滝のようだ。樹齢330年と言われ、山梨県の天然記念物に指定されている。かなり大きな桜で、なかなか全体像が見えない。
大木から垂れ下がる淡紅色の桜は、お寺の庭をすっぽりと覆っている。
このお寺には樋口一葉の両親が通った寺子屋があったそうで、お寺の中には樋口一葉の文学碑もある。
慈雲寺をあとに、細い道を上っていく。丘はピンクのほかに白い花をつけた木もたくさんある。
振り返ると、白い花の背景には小倉山、扇山と山並みが連なっている。
そしてさらに上ると、満開の桜が咲き誇る場所に出た。
ここは向久保日向薬師如来。石段を上った高台に小さなお堂がある。その桜の間から桃園の絶景が眼下に広がる。
しばらく景色を堪能した後、桃畑の中を下っていく。
「白い桃の花もたくさんあるんですね〜」とキルピコンナ。
「白いのはスモモだよ」とサイダー。
スモモの花は枝に密集して、白い手まりのようにまるくなって咲いていた。
桃畑、すもも畑の間を抜けながら、下りのはずなのになぜかダートの押し上りというイベントもあったりしながら、少し大きめの道まで下りてきた。後ろには塩山駅の北に連なる扇山。ここから見ると山並みの連なりが扇のようだ。
この道をしばらく南下したところの右手に『牛奥みはらしの丘』がある。甲府盆地が一望に見渡せ、そこは薄桃色や濃いピンク、若葉の色がモザイクになって広がっている。
その先には南アルプスの山々が聳えているはずだが、春の霞でその姿は確認できない。
『牛奥みはらしの丘』からは、ワインディングする道をぐわーっと盆地の底まで下っていく。鉄道路線の下をくぐると、周囲にはまだ葉をつけていないぶどう棚が広がっていた。ぶどう、桃、さくらが入れ替わり現れる。
またしても現れたすばらしい桃の花園に、立ち止まるジオポタメンバー。
「きれいだね〜」と写真を撮っていると少しだけ雲が晴れて、桃の花のはるか先、北西の方角に頂に白い雪を残した山が見えた。
桃園と山並みを楽しみながら走っていくと、コースはやや上り基調になってきた。日ざしもうららかなのどかな道を、のんびりゆっくり走る面々。
すると、桃の次に今度は左手の斜面に満開の桜が続いている。上りのわっせわっせを忘れて盛り上がる。
こうして楽しい道をどんどん進んでいくと、ひときわ桜が密集して咲き乱れているエリアに出た。勝沼ぶどう郷駅だ。
駅周辺の線路沿いは甚六桜と呼ばれる約600本の桜並木が壮観。
駅からさらに桜に覆われた道を少し進むと、道はそこで終わり。自転車を置いて遊歩道となっている階段を上る。
するとそこにはトンネルが2つ並んでいる。左手は中央本線の通る現役の新大日影トンネルで、右手は1903年(明治36年)から1997年まで使用されていた大日影トンネルだ。
大日影トンネルは、2005年にJR東日本から旧勝沼町へ無償譲渡され、2007年から使用されていた当時ほぼそのままの姿で1.4kmの遊歩道となっていたが、漏水や劣化のため、残念ながら約1年前の2016年4月25日から閉鎖されている。
大日影トンネルを覗いてみれば、馬蹄形に積まれたレンガのトンネルがまっすぐ延々と続いている。1896年に始まった中央本線八王子駅 - 甲府駅間建設に伴い掘削され、1903年より単線として開通。ぶそうやワインの輸送に大きく貢献したそうだ。
1.4km先で大日影トンネルは終わり、その先のトンネルはワインの貯蔵庫として利用されている。
昼食のあとは甲府盆地の縁を通る県道38号を南下し、シャトー勝沼へ。ワイナリーの見学も楽しそうだが今日は桃園中心ということで通過し、立ち寄ったのはここ『旧田中銀行博物館』。
大正9年につくられた洋風のかわいい建物で、2階は和室となっている。銀行社屋として使われ、戦時中は住宅としても使われたとか。
さらに南に行くと、日川にかかる祝橋に出た。1931年(昭和6年)に開通したこのコンクリートの橋は、ぶどうの駅までの出荷用につくられたそうだ。
盆地の縁の裏道をつなぎながら南へ進むと、中央自動車道にぶつかった。中央自動車道と並行して走る道を釈迦堂パーキングエリアまで西へ向かう。
そこで中央自動車道を横切ると、南側の斜面一体には赤、白、ピンクとさまざまな色の桃園が広がっている。そんな斜面をわっせわっせと上っていく。
ハヒハヒ、と着いた斜面の高台からは、またしても桃の花のピンクにけぶる甲府盆地のパノラマが広がる。これぞ桃源郷!
空の一部には少し暗い雲が広がり、山並みの光と影が幻想的だ。
濃いピンクの桃の花。
ゴキゲンでポーズするのは、左からムカエル、キルピコンナ、サリーナ、マージコ、そしていかにも怪しいヨンチェスと、ビジター参加のトシちゃん。カメラはいつものサイダー。
「桃の花の中でワシの写真を撮ってくれ〜」とサイダーが言うので、赤、濃いピンク、薄めのピンクの桃と黄色い菜の花が咲き乱れる斜面でパチリ。
ここの桃は枝がまっすぐな園芸種ですね。
そしてふっくらと咲く真っ白な八重の桃。
桃源郷の絶景に酔いしれるひととき。
絶景ロケーションはまだあるらしい。盆地の縁に沿って、桃畑の間の細かいアップダウンを進んでいく。
雲が再び切れて、青空が少しずつ広がってきた。ピンクの絨毯はひなたと日影のパッチワークになり、これまた美しい。
そんな桃園をアップダウンしながら、先頭を進むはムカエル、追うトシちゃん。
へろへろ、とちょっと休憩していると、桃園で作業中の方が「自転車で大変ね。どこまで行くの〜」と声をかけてくれた。桃の花を摘花する作業をしているそうだ。
桃の花はちょっともったいないけど、おいしい桃をつくるためには必要な作業なんですね。
その奥のお庭には、見事な真っ赤な桃と、黄色のレンギョウ。ちょっと入って写真を撮らせてもらった。
その桃畑を過ぎると、道はひたすら上り。絶景を求めて黙々と上るムカエル、マージコ、キルピコンナ。
ときどき振り返れば、桃園のパノラマがどんどん広がっていくのがわかる。
さらに上り続ける。「すばらしい景色ですね〜」とブロンプトンで参加のビジター・トシちゃんは軽快な足取りだ。他の面々はどんどん引き離されていく。
ようやく塔のような形の一宮町花見台が見えてきた。へろへろへろと上ってきたメンバー、「あれだ、もうすぐだ」と歓声が上がるが、この花見台に至る直前に傾斜が高まり激坂に。ひ、ひどい〜と打ちのめされてノックダウン。
到着してしばらく息を整えたあと、花見台に上ってみる。
すると、またしても桃源郷の絶景が広がっていた。青空の下、日の光に照らされて、甲府盆地のはるか先の山裾までピンクの絨毯が広がっている。
絶景にうっとりと見惚れる一同。でも、その足はガクガクだ。
本日のコースはまだ桃園の中のアップダウンを繰り返す予定だったが、全員一致で「温泉に寄って帰りましょう」に決定。というわけで、温泉目指してどんどん下る。
『ももの里温泉』は露天風呂から桃源郷のパノラマを望む温泉で、気持ちよく汗を流した。
ただしショートカットするとはいえ、今日のゴールの山梨市駅まではまだ10km以上ある。また汗をかくのかな。。と不安げな面々。
しかし、心配ご無用。ももの里温泉からは緩やかな下りがずっと続いていた。桃の花の中、西日を浴びながらムカエルを先頭にるんるん下っていく。
空には雲がほとんどなくなり、桃園の中を軽快に下る。
「以前来て、桃源郷には自転車でぜひ来たかったんです! 今日はよかった〜」と満足げに走るマージコ。
笛吹川を渡る。笛吹川は甲府盆地の東側を流れ富士川に至る河川で、その名前は『笛吹権三郎』という民話から来ているそうだ。
橋を渡りつつ、ふと後ろを振り返ると、甲府盆地を囲む山の向こうに白い頭を覗かせている富士山が見えた!
道路から笛吹川の川辺に下りて、川沿いの自転車道を進む。この川沿いにもピンクの桃園があった。ゴキゲンで走るサリーナ。
途中、今後は富士山の白い頭を正面に見ながら、再び笛吹川を渡り対岸へ。川を渡ってさらに笛吹川沿いを北上する。
笛吹川を離れ、ムカエル先頭に桃と菜の花の中を走る。山梨市駅はもうすぐだ。
18時過ぎに山梨市駅に到着。今日はお天気にも恵まれ、桃源郷の美しい桃園の絶景、そして満開の桜、菜の花、レンギョウと、色とりどりの春の花を満喫した最高のポタでした。
それにしても、36kmしか走っていないというのに足はガクガク。ヨロヨロしながら夜の部に向かうジオポタだった。