梅雨明け前の連休、都会の暑さから逃れ、裏磐梯の涼しい高原でキャンプを。この企画、なんと7年目にしてようやく実現となりました。なぜって、この時期の天候は不安定で、キャンプ場のキャンセル料金の発生が一週間前とあり、これまでなかなか開催の決断ができなかったのです。
今回は一週間前の天気予報は三日とも晴れ。これは決行だ! と息巻いてみたものの、開催直前になってその天気予報が急転。さてどうなる?
この日の天気予報は曇り。まあ、雨さえ降らなければ良しとしよう。
この企画、合計で八名が参加表明をしたのですが、集合場所の猪苗代駅に降り立ったのはその半分の四名。関西から遥々やってきたジーク、最近孫ができてニコニコのミルミル、そしていつものサリーナとサイダー。なんと企画調整役のレイナは列車の切符購入に手間取り、遅刻という異例の展開で幕を開けました。
レイナとは中津川渓谷で落ち合うことにして、まずは猪苗代湖を一目見ておこうと、磐梯山をうしろに猪苗代湖の畔へ向かいます。
磐越西線の線路を渡り、磐越自動車道の高架をくぐり、緑の田圃の間をどんどこ。R49を過ぎると、なつかしい感じの地道になりました。
この地道の突き当たりが猪苗代湖です。
猪苗代湖は国内で4番目に大きな湖で、面積は約100km2、深さは93.5mだそうです。流れ込む川の水が火山性の酸性水であるため、水中に植物や藻があまり繁茂せず、透明度はかなり高いとか。
猪苗代湖の北湖畔には短いながらも自転車道がありました。
この自転車道を使ってほんの少しだけ湖の周りを東へ行ってみます。
猪苗代湖の北には磐梯山が聳えていますが、その他の周囲はぐるりと低い山が取り囲んでいます。
ここは空気が澄んでいたら、なかなか良い景色だろうと思います。
猪苗代湖を眺めたら、猪苗代町の町中を抜けて、裏磐梯へ向かいます。
しばらくの間、ほぼ正面に磐梯山を見ながら走ります。
こちらは磐梯山の東の山々。
今朝、私たちは列車であの山を越えて猪苗代駅に着いたのです。
猪苗代町の町中の北を通る r7を過ぎると、緩い上りの真っすぐな道になります。
この坂を上り切った先には『見祢の大石』という巨石があるので、そこへ向かいます。
まっすぐな道の先には小さな集落がありました。
ここの地名が見祢(みね)と言うようです。
見祢の大石はこの集落の中にありました。
この石は、長さ9m、幅6m、高さ3mほどで、1888年(明治21年)に磐梯山が水蒸気噴火を起こした際、火山性泥流に乗って火口から運ばれてきたものだそうです。火口からここまでは5km。よくもまあこんな巨石が流れてきたものだと感心します。
ちなみにこの石、自重により沈下して、現在は1/3ほどが地中に埋まっているそうです。
見祢の大石を眺めたら、磐梯山の東にある田圃へ向かいます。
r2を渡ると道は下りになり、ちょっとした橋を渡ります。その橋から川を眺めると、驚いたことにその流れは真っ赤。
これは長瀬川で、このすぐ上流で合流する支流の酸川(すかわ)が、活火山の安達太良山に水源を持つため強酸性水で、川の砂利などが赤茶色となるのだそうです。猪苗代湖の高い透明度は、この川が作り出しているのですね。
長瀬川を渡ると磐梯山の東に出ます。
せっかく磐梯山の横を行くのだから、その威容がよく見えるルートを行こうと考えたのですが、この日は雲が低く、五合目あたりまでしか見えないのが残念。
とにかく、磐梯山を横目に北へどんどこ。正面に見えるのは秋元湖の南に位置する白布山のようです。
なんとここに来て、先には青空が見えているではないか。今日の天気はどうやら持ちそうですね。
気持ちのいい田圃を抜けると、R459に入ります。
ここから裏磐梯まではこの道一本。
そのR459が磐梯山と白布山の間を行くようになると、ちょっとした上りになり、周囲は田圃に変わって森になります。すでに日差しが出てきたので、この森の木陰は涼しくて気持ちいい。
道脇にサクランボと桃の直販所が現れました。福島県はサクランボの生産量は全国第六位、桃は第二位です。この時期、サクランボは最終盤で、桃には少し早そうなので、幟を見ただけで通過します。
なんにもなくなった道脇に建物が現れると、裏磐梯に入ります。
ここでまず向かうは秋元湖。
R459を離れ枝道に入ると、小さな川を渡ります。
これは見祢の先で見た長瀬川の上流なのですが、ここでは赤くないですね。
長瀬川の源流は桧原湖のようですが、その後、小野川湖や秋元湖といった裏磐梯の水を集めて、最後に辿り着くのが猪苗代湖なわけです。
写真は、秋元湖から長瀬川に流れ出す水門。秋元湖の西はこのようにダムになっており、なかなか湖面が見えません。
ダムの端を廻ると、ようやく秋元湖が見え出します。
道はこの先、車も通るけれど自転車道になっています。
木々の合間から秋元湖がその全容を現しました。周囲に連なる小高い山と湖の中に浮かぶたくさんの小島が美しい湖です。
この秋元湖を始め、桧原湖や小野川湖、五色沼といったこのあたりにある湖沼は、
1888年(明治21年)の磐梯山噴火により、長瀬川や小野川などが堰き止められてできた堰止湖です。
小野川発電所の前を通り抜けると、道幅が狭くなり、山道のような感じになってきます。
秋元湖はすぐ横にあるのですが、そちらにも木立があるため、湖面はよく見えなくなります。
眺めはあまりないけれど、気持ちいい緑と涼しい木陰のおかげで快適に進んで行きます。
ところがこの自転車道、意外とアップダウンがあり、ちょっとヘコヘコ。
しかも後半は地道になり、ぬかるんでいるところが出てきて大変です。
『この道、意外と大変でしたね〜』 と言いつつ、自転車道の終点、中津川渓谷の入口に到着。
さて、ここからは自転車を置いて、中津川渓谷探勝路をちょっとだけハイクします。
秋元湖に流れ込む中津川は浅瀬で穏やか。
中津川渓谷探勝路の入口付近は、大きめの砂利がボコボコした森の中の道です。
この道を上って行くとすぐ、中津川の表情が変わり、渓谷になります。
渓谷に付きものの滝がそこら中に現れだします。
この探勝路はどうしたわけかあまり使われていないようで、草がたくさん生えています。
この周囲の木々は広葉樹なので、秋にはすばらしい紅葉が見られると思いますが、夏場は人気がない?
20分ほど歩きましたが、その間道の状態にあまり変化はなく、徐々に川が下の方へ移動し、流れが見えなくなってきます。
あるところでその流れが突然近付いたので、ここで道を降り、渓流に触れることにしました。
川へ下るのに特別それらしい道はなく、2〜3mほどの高さのスリッピーな急な斜面を、足場を確認しつつゆっくり下って行きます。
ちょうどその下は平らな岩場だったので、ここで流れを見ながら弁当休憩です。
弁当のあとは、腹ごなしにザブン。
この日は気温はそれなりですが、湿度が高くて暑い。ぐっしょりかいた汗を渓流で流してもらいました。
こちらでは足をちゃぱちゃぱ。
ちょっとだけでも水に浸かると、気持ちいい。
一浴びして身体を冷やしたら、探勝路の入口に引き返します。ここで無事、レイナとヒデちゃんが合流。本日の走行組はこれで全員集合。
中津川渓谷をあとにし、次の目的地、五色沼へ向かいます。
自転車道をどんどこ戻り、別荘地の中を抜けてR459に出ました。
『五色沼入口』はこの国道のすぐ先にあります。
五色沼は一つの沼ではなく、毘沙門沼、赤沼、みどろ沼、竜沼、弁天沼、瑠璃沼、青沼、柳沼など、大小30余りの湖沼群の名称です。
その周りには沼をつなぐ遊歩道が設けられているので、今度はそれをハイク。
五色沼入口を入った先にあるのは、五色沼で一番大きな毘沙門沼。
この沼の先には磐梯山の北面が聳え、湖面にはボートが優雅に浮かんでいます。そして水辺では錦鯉が泳ぐのを見ることができます。水の色は入口付近から見るとコバルトブルーに近いのですが、この展望台からは、より緑がかって見えます。
毘沙門沼の次に現れるのは小さな赤沼。この沼の水面の色は赤色ではなく、淡い緑色で翡翠色とでも言いましょうか。
どうして緑色の沼を赤沼と呼ぶかと言えば、この周辺の草木が赤褐色になるからだそうです。この現象はたぶん長瀬川の赤と同じでしょう。実際、この沼のPHは3.8という強酸性を示しているそうです。つまり、水中の鉄が水酸化第一鉄になって赤く見えるのですね。
みどろ沼は『深泥沼』と書くようです。この沼の色は三色あると言われています。写真では手前側が黄緑色で、奥に赤と青のゾーンがあります。
五色沼の水源は同じようですが、それがが数十年かけて地中を通って池に流れ出るまでのルートや、他の水の混入度合いによりpHに差が発生し、色の違いが出現するということです。
みどろ沼の付近には小さなせせらぎがあります。幅は狭いけれどかなりの勢いで流れています。
この水はどこからどこへ行くのでしょう。
弁天沼は毘沙門沼に次ぐ大きさの沼で、トルコ石のような青白い色をしています。
見る場所や角度によりこの色は変わり、神秘的な雰囲気です。青沼から流れ込む水以外に、亜硫酸を含む地下水が涌き出ているため、これが珪酸アルミニウムに変化して沈殿し、濃い緑色にもなるそうです。
やはりこの沼も場所や見る角度により、あれっ、と思うほど色が異なります。
この沼の先に見えるのは吾妻の山々でしょう。
弁天沼の次は瑠璃沼です。ここで本日のメンバーが全員集合。
左より、ビジターのヒデちゃん、ジーク、調整役で大遅刻のレイナ、サイダー、ミルミル、カメラはサリーナでした、
瑠璃沼の先に見える磐梯山は1888年の噴火時に吹き飛んだところがまだ赤茶けた岩肌で残っており、噴火の凄まじさを見て取れます。
瑠璃沼のすぐ北側にあるのは、五色沼でもっとも青いと言われる青沼。しかしこの時はそれほど青くは見えず、どちらかと言うと緑がかって見えています。
この沼が鮮やかな青に見えるのは水中にアロフェンという物質が多く含まれているからで、岸辺の樹木が白くなっている部分は、このアロフェンが結晶化したものだそうです。
五色沼の出口が近付いてきました。最後は柳沼です。
この沼は五色沼の中では地味で、水の色も緑や青ではなく、ごく普通の色をしています。
その柳沼の南側には小さな沼があります。
この沼は浅く、湖底の藻が緑色に輝いて見えます。沼に突き出したいい形の木の枝と周囲の木々が、ちょっとした日本庭園を思わせます。
さて、五色沼自然探勝路を抜けると裏磐梯物産館の前に出ます。ここには裏磐梯高原駅というバス停があり、私たちが自転車を停めた毘沙門沼側の五色沼入口までバスがあるのですが、これが一本/hでつい今しがた出たばかりとあって、タクシーを呼びます。
ところが裏磐梯で動いているタクシーはかなり数が少なく、30分待ち。仕方なく物産館で時間を潰していると、バスがやってきて出て行ってしまいました。どうやら臨時便が出たようですが、時すでに遅し。え〜っ!
結局、五色沼入口までタクシーで移動し、自転車を拾って本日の宿泊地、休暇村のキャンプ場へ向かいます。
キャンプ場ではベネデッタとプリンちゃんが首を長くして待っていました。ベネデッタとプリンは本格的にマイ・テントを張ってスタンバイ。
自転車で本格キャンプは厳しいので、私たちは『なんちゃってキャンプ』と呼んでいる、手ぶらで行ってキャンプ気分が味わえる、BBQセット付で常設テント泊のコースです。
椅子やテーブルを運んで準備完了です。
なんとこのコースは本館で温泉にも入れるという優れもの。私たちが温泉で汗を流している間に、ベネデッタとプリンがBBQの火を起こしておいてくれました。
テントの横にはプリンが作ってくれたハンモックが。
どれどれ、と試すサイダーですが、もちろんクルリンと一回転。
さて、準備が整ったらいざBBQに突入です。
慣れた手付きで次々に食材を焼きにかかるプリン。それにクレームを付けるはベネデッタ。他のメンバーはただ食べるだけ。食べるのに忙しくて、なんとBBQ中の写真はなし。
一段落したらキャンプファイヤーです。小さいながらも燃える薪を囲んでワイワイ、ガヤガヤ。こうして、ゆっくり、まったりと時間は過ぎて行くのでした。
空を見上げれば満天の星。天候は快復基調のようで、夜がふけるにつれ、この星の数は増していきます。おこちゃまたちがお休みになったら大人の時間です。クラシック音楽好きのプリン、ジーク、サイダーの三人は、酒を酌み交わしつつ、オペラの話題で盛り上がるのでした。
『ワーグナーの最高傑作はやっぱりパルジファル。クナッパーツブッシュが最高よ。』 と、プリン。
『バイロイトでリングを聞いたけど、四晩ぶっ通しだよ。長くて大変やった〜』 と、ジーク。
『ワシはワーグナーは好かんけど、バイロイトではブーレーズがえがったな〜』 と、サイダー。
こうして延々と続く無駄話に寝付けなかったのは、すぐ隣のテントに寝ていたサリーナでした。いや〜、スマン、スマン。