彼岸といえば曼珠沙華こと彼岸花。ということで、今回は神奈川県伊勢原市日向にある日向薬師(ひなたやくし)周辺の彼岸花を見に行きます。その前に半原越(はんばらごえ)、後に日向林道と仁ヶ久保林道を入れ、ちょっとした峠越えでアクセントを付けます。
都心から一時間、JR横浜線と京王線が乗り入れる橋本駅に降り立ったのは7名。ここ橋本が、想像以上に都会なのにみんなびっくりです。
橋本の市街地を抜け、鳩川を渡ると周囲は畑になります。この畑の中を行く道が広いこと広いこと。
しかもまったくと言っていいほど車の通りがなく、ここは快適この上無し。
正面に丹沢山地が見えてきました。その一番手前に見えるのが仏果連山で、ここからまずは、あのどこかにある半原越を目指します。
半原越というのは清川村と愛川町の間にある峠の名称で、かつて養蚕が盛んだった煤ヶ谷から、糸の町として栄えていた半原へ繭を運んだルートだそうです。
畑道が終わると相模川の左岸の道に出ます。
相模川は木立に覆われ、しばらく川面は見えません。その反対側には畑が続いています。
急坂を下ると相模川の川面が見え出します。そして相模川の土手が現れると、その上には赤い彼岸花が咲いています。
この土手に上ると、そこは自転車道のようで、快適に進んで行きます。
先に高田橋が見えてきました。
その高田橋を渡っていくと、相模川の中に人がいっぱい。
みんな腰まで水に浸かり、長い釣り竿をかざして釣りを楽しんでいます。鮎? 鱒?
高田橋を渡り切ると、愛川町に入ります。
橋は大抵低いところに架かっているので、ここからは上り。このr54相模原愛川線の上りはちょっときつい。
仏果連山がぐっと近付き、三増という地区に入ると、道端に幟がたくさん並ぶようになります。その幟には『三増合戦まつり』と書かれています。
このあたりに、かつて武田信玄と北条氏が戦った三増峠(みませとうげ)があるらしく、幟の先に三増合戦場碑と東屋が建っていました。
三増合戦場碑を眺め、東屋で一服したら先へ進みます。
ここはちょっとの間、畑道を行きます。
元の道に戻ると、このあたりの伝統的な民家らしき建物が現れ、その先に半原越があると思われる山が見えます。
今日の上り第一弾はあの山越えです。
この先で道は下り出し、中津川の馬渡橋を渡ります。
中津川沿いの道を横目に見てすぐ、カーブの途中で左折すると、そこは馬渡大坂と呼ばれる激坂です。
距離500m、平均斜度10.3%!
馬渡大坂をなんとか上り切りR412に出ると、十字路です。半原越に向かうにはこの交差点を直進するのがわかりやすく、一般的だと思いますが、ここでR412に沿って南へ上るコンクリート舗装の激坂が目に入ります。この入口には『←清雲寺』とあります。
ジオポタのルール『二本道があったら細い方を』に従い、ここはこの清雲寺に向かう激坂に挑戦。この上り口は20%を超えていると思われる超激坂で、あえなく押しに。
この超激坂を上り切ったあとは、清雲寺の手前で右折し、半原越のある南山林道(みなみやまりんどう)の入口を目指します。
馬渡大坂の先に延びる先の交差点からの道を二度横切ると、道の勾配がきつくなってきます。もうそろそろ南山林道の入口というところでさらに勾配がきつくなり、シンチェンゾーとヒデちゃんがアタック。
この二人、アタックしたはいいものの、間違った方向へと行ってしまうのでした。まあ、この入口はちょっと分かりにくいのですが。
なんとか二人を連れ戻し、南山林道に入ります。この南山林道は愛川町半原から半原越までの3.9kmで、平均斜度は6.2%。ちょっと進むと、車幅規制のための黄色いポールが現れます。
南山林道に入ってからは周囲は深い森になります。
序盤の勾配はかなり緩く、3〜4%といったところでしょうか。時々下りも混じります。
1.5kmほど行くとカーブのところに炭焼小屋が現れます。
すると、これまでゆるゆるだった道の勾配が、ここでがらりと変わります。
ここで、ギアの足りないシンチェンゾーがまたアタック。
それを追うはヒデちゃん。そしてやっぱりギアが足りないトシちゃんと続きます。
ギアはあるけど足のないジオポタトリオは、マージコが牽き、クッキー、シロスキーと続きます。
進行左手には沢が流れ、サラサラと良い音。沢の音というのはいつでも清涼感がありますが、特に暑い日は心地いいものです。この日は気温こそ25°Cとそう高くはないものの、ちょっと湿度があって暑く感じます。
道がヘアピンを描き出すと、ここで勾配がドカーンと上昇。
12%超えでハヒハヒです。
その後も10%オーバーが続き、ついに押しに入るクッキーとシロスキー。
だいぶ押したけれど、なんとか半原越に到着。
愛川町方面からの半原越までは、序盤がなだらかな分、後半がきつい印象でした。
半原越には地道林道のゲートがあります。その中から車が三台やってきました。みんなオレンジ色のベストと愛川町の狩猟なんとか実施者という腕章を着けています。その中の一人がここに三つ葉が生えているよ、と教えてくれました。
『どれどれ、あ、これね〜、三つ葉発見〜』 と喜ぶクッキーでした。やっぱり野生のものだけあり、味が強いです。
半原越からは清川村側へ下ります。
こちら側の道は法論堂林道(おろんどりんどう)。
愛川町側の南山林道は薄暗く、眺望もないのに対し、この清川村側の法論堂林道は明るく、上の方で二三ヶ所、眺望が得られる所があります。
下りはあっという間。ぐわ〜ん、ぐわ〜んと下って、下側の車幅規制ポールまで下りてきました。
この先、リッチランドというキャンプ場の前でクイックターンすると、道は法論堂川に沿ってさらに下って行きます。
r64伊勢原津久井線まで下ると法論堂川は柿ノ木平川に合流し、小鮎川となります。
伊勢原津久井線を少し下り、その小鮎川沿いの道に入ります。
小鮎川は水源が近いため、その流れはとてもきれいです。
この小鮎川の横にハイビスカスをさらに大きくしたような花が咲いていました。ムクゲでしょうか。アメリカフヨウの可能性もありそうです。
そして彼岸花も。
実はこの彼岸花、だいぶ終わりかけなのですが、遠目にはきれいに見えます。
七沢まで下りました。ここで昼食です。食事処の候補は二つ。一つは蕎麦などを出す玉川館の草庵、もう一つはタイ料理のWAIWAI。
草庵じゃあお腹いっぱいにならないよ、という声があり、ここはタイ料理に決定。グリーンカレーとガイパッキンのハーフ&ハーフ、デザート付756円は、リーズナブルでおいしかったです。
さて、午後の部開始です。午後の部はまず日向薬師です。ここから日向薬師へ行くには、下からと、七沢温泉を抜けて薬師林道で上からアプローチする二通りがあります。
下から行けば日向薬師の正面からアプローチすることになるので、こちらが順当なルートと言えるでしょう。日向薬師に至るまでにその周辺の彼岸花も見られます。しかし今回は鄙びた薬師林道コースを選択。
写真は北に見える山で薬師林道はこの先を左に折れて進みますが、このあたりの山はだいたいこんな感じと思っていいでしょう。
七沢温泉の玉川館草庵を横目に進めば、薬師林道に入ります。薬師林道のピークは日向薬師の少し前にあり、そこまでは2km、平均斜度7%ほどです。
序盤の道脇には広葉樹が繁ります。
この広葉樹が針葉樹にとって変わられるようになると、ほどなく左手に展望台が見えてきます。
この展望台からは東の厚木方面の眺望がありますが、この日は曇り空であまりパッとせず。
『え〜、薬師様の前に上りがあるなんて聞いていなかったよ〜』 と不満顔はクッキー。
そのクッキーをフォローするように後尾を固めるシロスキーとマージコ。
斜度が10%を越すようになると、例のジオポタトリオはまたしても押しに。ここで一句。
激坂や、みんなで押せば、怖くないっ!
そうこうしているうちに、道は穏やかに下り出します。
どうやらピークを越えたようです。
下り出すとすぐに日向薬師に到着します。駐車場に駐輪し、その端にある裏門から本堂に向かいます。
土産物屋の前をすり抜けて進めば、宝物館の先に立派な茅葺きの屋根が見え出します。
その茅葺き屋根の建物こそ、日向薬師の本堂です。横にはかわいらしいお地蔵様。
この薬師堂は350年ぶりにして三回目の大修理を2016年秋に終えたばかりで、屋根の茅は真新しく、柱と壁は黒に、桁や垂木は朱に塗られています。
ここは行基による716年開山と伝えられており、日本三大薬師に数えられることもあるといいます。かつては日向山霊山寺(ひなたさんりょうぜんじ)と称し、12坊もある大寺院だったそうですが、明治時代初期の廃仏毀釈により、現在は本堂の他には仁王門や鐘堂などを残すだけになっています。
本堂は『宝城坊本堂』の名称で国の重要文化財に指定されています。この寺は、廃仏毀釈後は霊山寺ではなく、その別当坊(山内の最高位の僧が住む坊)だった宝城坊と呼ばれるようになったのです。
薬師様にお参りしたら、山を下って彼岸花を見に行きます。
ぐわ〜んと下ると、
日向川の流れにぶつかります。
この日向川の南岸には日陰道という2kmほどの散策路があるので、これを行ってみます。
小さな橋を渡ると、まずは日向川と杉林の間の地道を行きます。この先日陰道は田圃の畦道のようになり、自転車で進むのはちょっと困難なようなので引き返します。
一般道を東へ下って行くと、周囲に田圃が現れます。その土手に真っ赤な彼岸花が咲いています。こうした田畑の周囲ではよく彼岸花を見掛けることがありますが、それにはちょっとした理由があります。
彼岸花には毒があり、ネズミやモグラなどが球根の毒を嫌って避けるように、人為的に植えられたようです。
この土手はかなりの群落です。
ここは道端にびっしり。
続いています。
車道から田圃へ続く道に入れば、なかなかいい感じです。
今年の花はもうほとんど終わりで、だいぶ萎れたものも多いのですが、ぎりぎりセーフといったところです。
クローズアップで撮れるような花を探すのはちょっと大変でしたが、これならまあまあか。
充分に彼岸花を楽しんだら、午後の部のアクセント、峠越えに入ります。
日向川に沿ってその上流へ向かえば、すぐに浄発願寺の三重塔が目に入ります。
浄発願寺を過ぎると、空間が次第に閉じてきて、周囲は杉林に。
『いよいよ最後の上りに入りましたね〜』 と、トリオの先頭のマージコ。
左手を流れる日向川は日向渓谷という雰囲気になってきています。
川辺で楽しそうにBBQしている人々を眺めながら進んで行き、道が川を渡ると、その先に16%の標識が。
『お〜〜〜〜』とか『う〜〜〜〜〜〜』とか呻きつつ、この坂を上り出します。この16%の区間はそう長くないので、押しでも問題無し。
浄発願寺から1kmほど行くと、その奥の院(浄発願寺が元あったところ)の入口になる一の沢橋が出てきます。この一の沢橋の前で呼吸を整えて、再出発。
日向ふれあい学習センターを過ぎると勾配が上がったようで、ここからはきついきつい。
一の沢橋からさらに500mほど進むと、小さな駐車スペースと『林道日向線起点』、『熊出没注意』の標識が現れます。
日向林道は、ここから仁ヶ久保林道のゲートまで、距離1.8km、平均斜度6.7%。もっとも日向地区からここまで、すでに4kmで220m上っていますから、これを加えるとこの上りもちょっとしたものになります。
この先で道がヘアピンを描きカーブすると、すぐにゲートが現れます。
このゲートの先は激坂でハヒハヒ。
直線の道がカーブし出すとほどなく、勾配は落ち着きます。ゲートが閉まっているだけあって、あまり交通はないらしく、路面には落ち葉が溜まっている所が出てきます。
左手に若干視界が開く所もありますがほぼ眺望はなく、薄暗いところが多くて、本当に熊が出てきそうな道です。すでにここまでだいぶ上っているので、疲れが出てきています。カメラにVサインは出すものの、顔は引きつったままのクッキーでした。
左手が明るくなると、頂上まではあと僅かです。歯を食いしばって上るクッキー。その後ろは守役のマージコ。
なんとか日向林道の頂上、仁ヶ久保林道の入口となるゲートに辿り着きました。ところがここに、先行していたはずのシンチェンゾーとヒデちゃん、そしてトシちゃんの姿はありません。あれれ、また別の方へ行っちゃたかな、と三人を探しに行くサイダー。
ところがこのすぐ先で猿の群れに遭遇。運の悪いことに犬を連れた人がいたので、猿が犬に吠える吠える。ここはかなり恐ろしく感じました。野生の動物ってのは、本当に怖いのです。
猿軍団の先でトシちゃんに追いつくものの、シンチェンゾーとヒデちゃんはさらに先まで行ってしまったようです。この先、道は大山の谷に向かって穏やかに下って行き、ちっちゃなちっちゃな雷神社付近で行き止まりになります。電話連絡すると二人は行き止まり点まで行ってようやく間違いに気付いた所でした。
シンチェンゾーとヒデちゃんが復帰したところで、仁ヶ久保林道に入ります。
ここからは大山の参道までずっと下り。
びゅーんと下って行くと、左手の視界が開き、横浜方面が見えます。視線を右に移すと、相模湾、そしてその中に浮かぶ江ノ島、その先に三浦半島、さらにその奥にうっすらと房総半島が見えます。
この日は曇りであまり冴えないのですが、ここは晴れた日はかなりいい眺望ポイントになるでしょう。
さらにぐわんと下って仁ヶ久保林道の下のゲートに到着です。
ここでシンチェンゾーがパンク。リムを触ると、アッチッチ〜とやけどするくらいに熱い。ブレーキをリムに長時間当てっぱなしにして、リムが高温になり、パンクを招いたようです。
このパンク修理に手間取って時間を費やしてしまったので、周囲は薄暗くなってきてしまいました。このあとは三之宮比々多神社に寄って社殿裏にある下谷戸縄文遺跡(ストーンサークルと住居)と三宮郷土博物館を覗いてみようと思っていたのですが、これはまたの機会に。
r611の大山道まで下り、そのまま伊勢原駅へ向かうことにしました。
日没の5分前に伊勢原駅に到着。近くの居酒屋に飛び込んで、ビールをグビッ! 一日の疲れを癒したのでした。
最後の縄文遺跡を見られなかったのは残念でしたが、いくつもの林道のアップダウンは楽しめたし、日向薬師にもお参りできたし、その周りの彼岸花もまずまずだったので、まあ良しとしましょう。
あっ、ブレーキはシュッ、シュッ、シュ〜と掛けて離す、シュッ、シュッ、シュ〜と掛けて離す、ってやりましょうね。あと、道が分からない時は先に行かないように!