今年の花の開花はみんな遅く、都心部の梅はようやく満開になったところだというので、緊急企画発動です。
下町の梅の名所を巡りながらポタポタです。
文京区小石川の播磨坂に集まったのは四人。緊急企画としてはまあまあでしょうか。
播磨坂はソメイヨシノの並木で、もう一月のたてば花見客がわんさか訪れるところですが、さすがにこの時期、それはまだ。それでも一本だけある早咲きの桜がいい感じで花を咲かせています。
小石川から白山の裏道を通り、本郷で言問通りに出、東京大学の横をかすめ、
不忍池の畔に出ます。
お天気でポカポカ陽気のこの日は、池の廻りを散策する人も大勢いました。
不忍池から上野公園にかけてはこちらも桜の名所です。
池の畔に何本か早咲き桜が咲いています。その先、池の向こう側に浮かぶのは弁天堂です。
不忍池からは上野公園に上ります。忍坂の途中にあるのは五條天神社で、この時期ここには梅が咲いているはずなので立ち寄ってみました。
社の前の大きな木はこれも早咲き桜。
拝殿横のちいさなお堂の前にはしだれ梅が咲いています。
上品でいい感じ。
その前には白梅が。
こちらはちょっと緑色をしています。
その足元、これはアヤメかな。
もう咲いている!
五條天神社で本日初梅のあとは、上野公園をぶらり。
東照宮といえば日光が有名ですが、ここにもあります。上野東照宮は、徳川家康、吉宗、慶喜を祀っているそうです。なんとこの東照宮では早くも、ぼたん祭が開催されていました。
旧寛永寺の五重塔を眺め、大噴水の前に出ます。大噴水周辺ではよくイベントが開催されていますが、この日もなにかやっているようでした。
上野公園を出たら浅草へ向かいます。
上野駅のすぐ横でJRの線路を渡り、北上野をどんどこ。このあたりからはほぼ正面に東京スカイツリーが見えるようになります。
国際通りを渡ると浅草です。浅草は東京の下町感がたっぷり味わえるところ。
高層ビルがあるかと思えば、その横に二階建の鄙びた商店があったりします。今では観光客目当ての店が多くなってしまいましたが、それでもなおこのあたりには、下町情緒が残っているところが少しあります。
そんな中にこつ然と姿を現すのが『花やしき』。なんとここは遊園地なのです。規模は移動式遊園地くらいしかありませんが、その密度たるや凄まじい。観覧車に乗っているとその隣を行く乗り物にぶつかりそう。
御年60歳を越える、現存する中では日本最古となるコースターもありますぞ。
そんな花やしきの先にあるのは、浅草といえばの浅草寺。
外国人観光客がいっぱいいます。日本人もね。このあたりではよく着物姿の方を見掛けるのですが、その着物がちょっとへん。なんだか浴衣みたいなそうでないような。これは観光客向けの貸衣装なのですが、それでもあんまりへんてこなものはどんなもんでしょうね。
浅草寺の東の門は二天門。
ここには必ず人力車がいて、観光客を乗せています。
二天門の先には隅田川が流れます。この両側は隅田公園になっています。
咲き出した早咲き桜の向こう側には、金色のボディーの上に銀色の泡を乗せたアサヒビールのビルが見えます。
隅田公園には桜や紫陽花のほか、梅の木もあります。
野球場の近くには『梅めぐり遊歩道』があり、その周辺に梅の木が固まって植えられています。
ここの梅の木は半球形に整形されたものが多く、ちょっと、あれっ、という感じですが、いい匂いです。
この木には花がびっしり。満開ですね。
隅田公園からはX字形の桜橋で隅田川の対岸に渡ります。
目の前にはあのスカイツリーがバーンと聳えています。
隅田川を渡った向島には『長命寺桜もち』があります。
桜餅に季節があるのかどうかは知りませんが、やっぱりこの菓子は春が似合います。ポカポカ陽気のこの日は桜餅を食べたい気分でいっぱいです。ということで山本やののれんをくぐろうとすると、小さな貼り紙が。
『本日は予約注文のみ販売させていただきます。』 あ〜れ、まあ。残念!
ところでみなさんは桜餅というとどんなものをイメージしますか。関西圏出身のレイナは『道明寺』。これはおはぎの逆で、餡を餅米を原料とする道明寺粉で包んだもの。
一方、関東出身のマージコは、餡を桜色したクレープ状の小麦粉で包んだものだそうな。この関東風桜餅を作り始めたのが先の『長命寺桜もち』山本やで、道明寺に対してこちらは『長命寺』と呼ばれることもあるそうです。レイナは東京に出てきたばかりの頃、桜餅をもらったら道明寺とはまったく別の食べ物だったので、それ以来、関東風桜餅を偽物の桜餅と呼んでいます。(笑)
まあ桜餅の東西対決はともかく、気持ちは桜餅でいっぱいだったので、生唾ゴックン飲み込んで、しかたないさと諦め、次の目的地に向かいます。
やってきたのは向島百花園。
ここはさして大きな園ではありませんが、季節ごとに様々な花が見られるのがいいところ。
ビジターのモトちゃんはこの入口の外に団子売りがいるのを目ざとく見つけ、桜餅の代わりにとみんなに買ってくれました。
ここで合流したユッキー、花より団子とばかりに、さっそくこれを頬張ります。小粒なこの団子、きな粉とほんのり甘い砂糖がいいバランスです。そういえばこの団子、『きびだんご』といって売られていましたが、本当に黍(きび)が使われているのでしょうか。
さて、団子を頬張ったら園内を巡ります。もちろんこの季節は梅です。
真っ白〜
ピンク〜
少女のようなピンク。
この園には何種類もの梅が植えられていて、それぞれ札に名前が書かれています。しかしなかなか名前は覚えられません。その時は覚えても一時間後には忘れています。(笑) 実は梅の種類は500種以上もあるというので、まったく覚えられる気がせず、とっくの昔に覚える気をなくしてしまったのです。
せり なずな おぎょう はこべら ほとけのざ すずな すずしろ これぞな七草
春の七草、なんとかこっちは覚えていました。だってたった七つだからね。
でも中身は怪しい。芹はいいとして、なずなはペンペングサで、おぎょうは母子草のこと。植物学者の牧野富太郎先生は、『オギョウは御行と書くがこれをゴギョウと言うのはよくない』(植物記)と仰せですが、ここの札には『ごぎょう』って書いてありますな。
はこべらはハコベのことと教わったけれど、どんなもんだか未だ知らず。すずなとすずしろは蕪と大根だけれど、どっちがどっちだっけかな。。
侘助は椿の仲間で、椿より少し小さな一重の花を咲かせます。
その花はいつも半開きで、ちょっと寂しげだから侘助?
ひっそりと福寿草も。満開です。
マンサクはちょっと珍しいかも。
この花を最初に見た時はこれは一体何なのかと思いました。針をふにゃっとさせたような黄色いものが花ですよ。
向島百花園で春の花を満喫したら昼飯処へ向かいます。
美しい花で心は満たされましたが、お腹はペコペコです。
下町といえば何となく洋食。それもオムライスです。
近くを通っている東武鉄道には小村井駅(おむらいえき)があります。その駅から程近い小さな商店街にある洋食店に入りました。ここで注文したのはもちろん小村井飯(オムライス)です。今時のフワトロ系で、デミグラスソースがたっぷり。おいしゅうございました。
小村井飯のすぐ近くには香取神社があります。
その入口付近は香梅園で、梅の花がびっしり。
ここは江戸時代にあった梅の名所『小村井梅屋敷梅園』を再現したものだそうです。最高高密度の梅園です。
紅白入り乱れ。
しだれもモコモコも。
清純系。
ここはほとんどが八重咲きです。
頭上から降り注ぐピンクの塊。
はんなり系。
紅一点レイナ、黄色服のビジター・モトちゃん、青ヤッケのユッキー、白帽子のマージコ。
うわ〜、きれいな梅の花を汚してるぅ〜
香取神社の香梅園で八重梅の乱舞に酔いしれたら、次は亀戸天神へ向かいます。
亀戸天神は天神さまですから菅原道真を祀っています。
お正月などの受験シーズンには受験生やその家族で相当な賑わいを見せますが、この日はそこまでの混雑はありません。しかし想像していた以上の人出でした。
亀戸天神には通称亀池と呼ばれる池があります。
もちろんそれは、この池に亀がいるからです。
亀と梅の花ってあんまり似合わないのか、特に錦絵にはなっていませんね。(笑)
錦絵で思い出しましたが、ゴッホが模写した事で有名な広重の『名所江戸百景 亀戸梅屋舗』は、ここから北東300mほどのところにあった梅屋舗と呼ばれる梅の名園を描いたものだそうです。
亀戸天神はこの梅屋舗の梅の流れを汲んでいるのでしょうか。
拝殿の左右には紅白の梅。
たくさんの絵馬がぶら下がっています。
並んでいるみなさんはお礼参りでしょうか。
亀戸天神のすぐ近くには1805年創業で、元祖くず餅を謳っている船橋屋があります。その船橋屋が鳥居のすぐ外に臨時店を開いていました。梅や藤などの季節にだけここに出店するそうです。
本店まで行くつもりでしたが、ここでくず餅を購入しました。
亀戸天神を出て近くの錦糸公園へ移動です。広場に陣取りくず餅を広げます。
ここでまた東西対決がありました。船橋屋のくず餅は関東版のくず餅で、『久寿餅』と書かれています。これは小麦粉から作られる発酵食品だそうです。ところが関西のくず餅は『葛餅』と書き、葛(くず)から作られるのです。どっちが本物かな、くず餅は。
まあそれはともかく、久寿餅はきな粉たっぷりに黒蜜をたっぷりかけていただきます。甘さが深い、いい味をしています。
錦糸公園にも早咲きの桜が。
くず餅のあとは本日最後の見どころ、湯島天神へ。
錦糸公園を出て北へ向かうと、正面に巨大なスカイツリーが。
厩橋で隅田川を渡り、大通りを避けてどんどこ行きます。ところが仲御徒町駅付近で、後続三名が行方不明に。ちょとした隙に逸れてしまったのです。
仕方がないので湯島天神で落ち合うことにし、サイダーとレイナは上野広小路の『うさぎや』でどら焼きをGET。
どら焼きを抱えて湯島天神に到着したサイダーとレイナは、すでに梅を眺めているという三人を探しつつ、境内に入ります。
この参道には出店がたくさん。イカ焼きだのなんだの匂いがきついものばかりが並ぶここは、梅の香りを完全に消してしまっていて、げんなり。ちょっと花見の気分ではなくなりました。
まあそれでも一応境内を一廻りしようと歩き出します。
すると本殿の後ろに、なかなかいいしだれ梅が咲いていました。
本殿の横の梅は豊後系で、社の姿と妙にマッチしているように思えます。
三分咲きほどのこの木は、花を見るのにちょうどいいです。
拝殿の前まで戻ってくると、ようやく三人と出会えました。
ここはちょっとした梅園になっていて、今まさに見頃です。
梅園の南の端の塀際には真っ赤な紅梅と真っ白なしだれ梅が咲いています。
外の建物が少し目障りですが、それに目を瞑れば、これはなかなか見応えがあります。
さて、これで本日のイベントはすべて終了です。あとは宴会に突入するだけなのですが、その前にうさぎやのどら焼きをいただきましょう。出発地の播磨坂に戻り、どら焼きを頬張る面々でした。ふかふかのドラ皮と、ほんのり甘いドラ餡が絶妙です。
このあと宴会の前にサイダー推奨の和菓子屋に立ち寄りました。ここには桜餅の『道明寺』と『長命寺』の両方があるのです。しかし道明寺は売り切れで残念がるレイナ。まあこれはまた今度ね。
緊急企画のこの観梅ポタリングは、陽気がたいへん良かったので素晴らしい一日になりました。ゆっくりまったり、こうしたポタリングも楽しいです。