2018年のGW後半は瀬戸内海に浮かぶ小豆島と豊島です。
クッキーは東京から新幹線で、ジークは関西から在来線で姫路駅にやってきました。一方、GW前半企画で姫路に前泊したサイダーは、姫路城を見学して、前半組に別れを告げています。
そのサイダーにジークから電話があり、無事クッキーと落ち合って、いっしょに姫路港へ向かっているとのこと。そして、ゴニョゴニョとなにか言っているのですが、雑音が入って良く聞き取れません。サイダーは時間ギリギリになりそうなので、フェリーの切符を買っておいてと頼んで、姫路港へ急ぐのでした。
とにかくこれでなんとか港に全員集合できそうです。ところがいざサイダーが走り出すと、風が強くて漕いでも漕いでも前に進みません。まさかフェリー、この風で欠航なんてことないだろうな。ちょっと不安になり焦るサイダーでしたが、ガリガリ漕いでなんとか予定時刻に港に到着しました。
チケット売り場でジークとクッキーを発見し近寄ると、ジークが、
『切符は往復なら割引があるって言うからそれを買っといたよ。で、今クッキーに話したところなんだけれど、ボクはこの旅、ここまでにすることにした!』
『えっ、、、、ど、どいうこと?』
なんでもジークは冬のスキーで某所を骨折していたのだけれど、4月中にはコルセットが外れるので問題ないと踏んでいたらしいのです。ところが直前の検査で、まだ骨のくっつきが悪いので、しばらくコルセットを付けていろと言われたらしい。しかしそこで諦めるジークではありません。まあ、ちょっとはしんどいだろうけど、なんとかなるやろ! とここまでやってきたというわけ。
ところが、走るとやっぱり苦しい。これはアカン、となったようなのです。苦しいのが、風が強かったからか、コルセットで締め付けられているかは聞きそびれてしまいましたが。。
フェリーは欠航にはなっていないようです。ゆっくりジークから事情を聞いている時間もなく、慌ただしくオリーブラインに乗り込むクッキーとサイダー。
『ジークさん、姫路駅から港へ向かっている間もなにか苦しそうでした。風が本当に強くて押さなければいけないところもあったので、風のせいかと思ったのですが、、、 びっくりですねぇ〜』 とクッキー。
『ジークが電話で、苦しくてどうとかこうとかって言っていたようなんだけど、このことだったのかなぁ。まあ、少し早く事情が分かったからって、どうしようもないけどね。』 とサイダー。
乗船したクッキーとサイダーはこんなことを呟きあいながら、埠頭で手を振るジークに別れを告げるのでした。
とにかくこうなったら、ジークの分まで楽しんでくるよ〜
乗り物の中で一番旅情を誘うのは船だと思います。船に乗ると、渡しのような小型のものでも大型客船でも、いつでもわくわくします。
定刻に姫路港を出航したフェリーはどんどんそのスピードを増し、瀬戸内海をまっしぐらに小豆島に向かっています。
ほどなく男鹿島、家島、西島といった家島諸島の島々が見えてきます。ここ瀬戸内海には小島が多く、景色も最高です。
西島を過ぎると、今度は小さな島々がたくさん。
午前中は雲に覆われていた空も次第に青くなってきて、海の色は深いコバルトブルー。
今日は最高のお天気です。風がなければね。
瀬戸内海は周囲を陸地に囲まれているので、風は外洋に比べ穏やかです。しかしこの日は、船のフロントガラスにジャブ〜ンと波しぶきが掛かってきます。
この船の前方にはデッキがありません。手摺が付いた通路のようなところはあるのですが、一般人は立ち入りできません。こんな日にそこに立っていたら、ずぶ濡れになるのは確実で、へたをすると海の中に引きずり込まれてしまうかもしれません。
波に濡れたフロントガラスの先に大きな島影が近付いてきます。あれが小豆島でしょう。
客室からデッキに上ると、その小豆島がはっきり現れました。
こうして見ると、小豆島は山ばかりです。
『きゃ〜、あれが小豆島ですね〜。でも、アップダウンきっつそぉ〜』 と、早くものけぞるクッキーでした。
私たちの乗ったフェリーは小豆島の北東に位置した福田港に入港しました。
今日はここから小豆島の東海岸を南下し、大角鼻を廻って坂手湾から内海湾に入り、醤油醸造所がたくさんある馬木まで行きます。
出発準備を整えている間に、私たちを乗せて来たオリーブラインはあっという間に踵を返し、姫路へ向かって行きました。
ところで、どうです、この海の色。遥々小豆島までやってきた甲斐があるというものです。
さて、なんとか自転車の準備を整えたクッキーですが、宿泊企画はしばらくぶりで、しかも今回は三泊とあって少々荷物が多いようです。ちょっとよろよろしながら走り出すと、道はすぐに上りに。
『え〜、いきなり上りですかぁ〜。 まだ心の準備ができていませんよ。』 と少々心もとない。
とにかく道は上りなのです。上るしかないのです。えっさ、こらさ、とゆっくりペダルを回して進めば、ほどなく『さぬき百景 福田海岸』に出ます。さぬきはあの讃岐うどんの讃岐です。小豆島は香川県なのです。
『え〜っ、小豆島って香川県なんですかぁ〜、知らなかった〜』 とクッキー。まあ、岡山県からのアクセスも良いので岡山県と思っている方も多いと聞きますから、これはしょうがないかも。
福田海岸からはちょっとだけ下りになり、すぐにまた上ります。
『え〜、下りと思ったらすぐにまた上りですかぁ〜』 と、あっけない下りに不満そうなクッキー。
今日のコースには激坂はないのですが、こんなふうにこの先も細かなアップダウンが続いて行きます。
この上りはヘアピンカーブの先でピークを迎え、すぐに終わります。
そして当浜の集落まで下るとすぐに上り返しが待っています。
小豆島の東海岸の道R436はほぼ海岸線に沿って通っていますが、海側の樹木の密度が高いため、あまり海は見えません。
当浜の南で国道の旧道と思われる道が僅かな区間ですがあったので入ってみました。
この古い道は海岸ぎりぎりを通っていて、樹間から海が見えます。ここはエメラルドグリーン!
この旧道が終わった少し先、福田港から5kmほどの地点で道は標高70mの小さなピークに達します。道の海側にはちょっとした展望台が設えられているので小休止です。
案内板によるとここからは、左から明石市、明石海峡大橋、淡路島、大鳴門橋、徳島県と見えるようですが、この日は淡路島らしきものの影がボーっと霞んで見えるだけでした。
展望台のすぐ先のカーブの下に、大きな石『八人石』があります。
江戸時代の小豆島では、大阪城を修築するため石がたくさん切り出されました。このあたりの岩谷(いわがたに)というところもそうした石丁場の一つでした。ここには、石を切り出す仕事をしていた八人の石工が、大岩が崩れて生き埋めになったという逸話が残されているそうです。
左手の視界が開くと、南風台の先に浮かぶ城ヶ島と、その遥か先の四国本土がうっすらと見えます。
八人石の先にはもう一つの石切丁場跡、天狗岩丁場があります。ここにはあちこちに大きな種岩が残り、それらを繋ぐ散策路が整備されているのですが、一巡りすると小一時間掛かりそうなので躊躇していると、ちょうど散策路から下りて来た方がいたので様子を聞いてみました。
すると、ここの中でももっとも大きな大天狗岩は見応えがあるから、そこだけでも是非行きなさいとおっしゃいます。この大天狗岩までは歩いて数分だというので行ってみることにしました。
竹林の中の階段を登って行くと、まずちょっとした大きさの種石が見えます。石を割る時にできる矢穴の跡も確認できます。そして竹林が終わって森に入り、ふと目を上げると、そこには巨大な岩が今にも転げ落ちそうにして座っています。この岩には本当に恐ろしいほどの迫力があります。推定重量1,700トン、高さ約17m、幅約8m、奥行き約12m。
大天狗岩の足元には、田畑を害獣から守るために築かれた猪鹿垣(ししがき)と石垣用の石を切り出した跡の『そげ石』があります。
猪鹿垣は一般的には竹や木で造られますが、ここは残石の上に石が積まれています。
天狗岩丁場の下の海岸には磯丁場があったようで、石を運搬する船を繋留するための『かもめ岩』という、コンクリートの原理で根本を固められた岩が海中から突き出ています。
岩谷の集落まで下ったらまたまた上り。
『海の色がきれいですね〜。あ、あの島、なんですかぁ〜』 とクッキー。
『ああ、あれは城ヶ島。引き潮の時にはエンジェルロードのような道ができて、島に渡れるらしいよ。』 とサイダー。
南国のようなフェニックスが生える南風台に到着。ここは青い空と青い海が印象的な場所で、遠方には大鳴門橋も見えるらしいのですが、この時それは残念。
下に城ヶ島が見えています。やってくる時にちらっと見えましたが、この時はちょうど島へ渡る『希望の道』が現れ出したところのようなので、下りてみました。
『希望の道』はトンボロ現象と呼ばれるもので、これは干潮時に海だったところに道ができて、島と陸地が繋がるものです。日本でこの現象が起こる場所は十数ヶ所だそうですが、その中の二つがここ小豆島にあるのです。
明日行く予定のエンジェルロードは道が現れていない時刻なので、ここを渡ってみます。
エンジェルロードはここより規模が大きいからかかなり有名ですが、この『希望の道』はあまり知られていないようで、私たち以外には人はおらずひっそりとしています。聞こえるのは静かに波が押し寄せる音とそよぐ風の音だけ。ん〜〜ん、ロマンチック!(笑)
『希望の道』を楽しんだら橘の集落に下ります。
橘からは城ヶ島の姿とそこに延びる『希望の道』が良く見えます。
しかし、下ったら上る!
時は17時を少し回ったところ。実は橘からは本日の終着地である馬木近くの安田に抜ける橘トンネルがあるのですが、今時は日が長い。やはりできるなら大角ノ鼻を廻りたいと、このトンネルの誘惑を断ち切ってr248に入ります。
r248を行くと城ヶ島はどんどん下になり、どんどん遠ざかって行きます。
さて、ここからの上りはちょっと手強いです。これまでのピークは数十mでしたが、橘からは一気に160mまで上らなければなりません。午前中だったらだいぶ印象が違ったかもしれませんが、陽の光が届かないこの時刻、このあたりの景色は地味で、最初は笑顔だったクッキーも、このあとは苦虫を潰したようなしかめ面になり・・・
で、その写真はお見せできないので、標高160mのピークを越えたところから。(笑)
海はこれまでの深いコバルトブルーから渋い藍色に変わっています。
ここまでのクッキーの感想。『これまでのアップダウン、結構きつかったです。ジークさん、来てもきっと走れなかったですよね。小豆島に来られなかったのは残念だけれど、姫路で帰られたのは逆に良かったのかも・・・』
陽が傾き、日影となった道はかなり冷えてきていて、ウィンドブレーカーを着込んで下り出します。
しかし豪快な下りはあっという間で、北谷からはまたアップダウンが始まります。
道は相変わらず地味ですが、そこら中で鶯がさえずり、時折、ツツジや藤の花が目を楽しませてくれます。
先に小島が見えてきました。あれは風ノ子島でしょう。
その右に見えるのが小豆島東岸の最南端に飛び出した大角鼻です。
風ノ子島を横目に、パラパラと民家が建つ大泊を抜けていくと、道は上りに。
そして大角鼻の付け根の分岐までやってきました。
ここからは大角鼻の先端にある大角ノ鼻灯台を廻る予定ですが、天狗岩丁場や城ヶ島で時間を使ってしまったので、予定より20分遅れです。大角鼻は大した距離ではないのですが、宿にはすでに迷惑を掛けているので、これ以上迷惑を掛けるわけにはいきません。
ここで大角鼻を廻るのは断念し、ショートカットすることに決めました。
この分岐点からは坂手まで一気に下ります。
ここでなぜかトンビの襲撃を受けました。(笑) 営巣地にでも近付いたのかな?
森の中の細道を下って行くと、ぱっと明るいところに出、眼下に坂手港が見え出します。
小豆島には大きな港が六つありますが、坂手港は神戸との航路を持つ港です。
坂手の集落が見え出しました。
ぐわ〜んと下って坂手湾です。島の東岸にはまったく陽の光が届いていませんでしたが、ここはまだ太陽が眩しいくらいです。
中央に見える小さな島は福部島でしょうか。その右に見える半島は塩谷鼻あたり。
神戸行きのフェリーを眺め、坂手の街中を進んで行きます。
うしろには先ほどまでその周りを廻っていた碁石山が見えます。
神戸行きのフェリーはかなり大きいですね。
坂手湾に浮かぶのは小島という名の島で、その先に見えるうっすらっとした四国は香川県本土。
坂手から小さな丘を越えると苗羽に入ります。
このあたりは『醤の郷(ひしおのさと)』と呼ばれるところで、醤油の醸造所や佃煮屋が並んでいます。この醤油関係の見学は明日にして、先を急ぎます。
関西圏の醤油メーカーとしてはポピュラーなマルキン醤油の醸造蔵を横目に進み、馬木地区に入りました。
なんとか予定時刻に宿に到着です。
今日の小豆島はたった三時間の走行に過ぎませんでしたが、どこもかしこもアップダウンだらけで、なかなかに疲れました〜
それはともかく、ちょっとひと息付いたらザブ〜ンと風呂に浸かり、夕餉の席に向かいます。この夕餉のボリュームが凄いこと。巨大テーブルには器がひしめき合っていて、クッキーとサイダーとの距離は2m以上も離れています。顔が見えない。(笑)
まあとにかく、無事に小豆島の初日を終えて、『カンパイ〜』 ジーク、今回は残念だったけれど、またいつか、いっしょに来ようね。
さて、明日は『醤の郷』を見学して、島の南側を巡り、土庄までです。今日は東海岸だったからあまり風の影響は受けませんでしたが、明日は西風ビュービューだそうです。どうなる・・・