小豆島・豊島の旅も最終日。豊島の朝は薄曇りですが、空気が澄んでいて清々しい。今日は朝一番のフェリーで小豆島へ向かい、寒霞渓に上って東京に帰らなければなりません。宿のおかあさんに無理をお願いして早起きしてもらい、朝食を作っていただきました。
魚は脂がのったものを調味料に漬け込んで保存しておいたものだそうで、ぎりぎりこの時期までしか頂けないものだそう。卵は庭で飼っている鶏が生んだもので、これが絶品でした。もう一つもらいたくなったほどです。そして苺はこのあたりで穫れたものだそうですが、これもおししい。豪華ではないかもしれませんが、贅沢な朝食です。
『この苺、売っていたら買って帰りたい〜』 と、朝から食い気いっぱいのクッキーでした。
おいしい朝食を頂いたら、おかあさんに別れの挨拶をして宿を後にします。
家浦は小さな集落なので、港まではすぐです。
西側に小さな船の溜まりがあり、東に行くほど大きな船が停まっているようです
私たちが乗船する小豆島行きのフェリーは、この一番奥にやってきました。
瞬く間に乗客の下船と乗船が終わり、あっという間にフェリーは家浦港を出航しました。
今朝早起きを余儀なくされたクッキーは、フェリーに乗り込むなり雑魚寝スペースに横になり、即オヤスミモードに。
家浦港を出たフェリーの後ろに見えるのは、井島と本州は岡山県の玉野市あたり。
しばらく経つと、棚田が見えてきます。このあと船室に戻ったサイダーはうとうとし始め、『○○港に到着』という船内放送に慌てて飛び起きました。
『クッキー! 港に着いたみたいだ。急げ!』 とクッキーを起こします。クッキーが寝ぼけ眼で階段を下りて来た時は、フェリーのハッチがパタンと閉まったところでした。
『えっ、あれっ、あれ〜、船、出ちゃったよ〜〜』 と、慌てるサイダー。
『え、どこで降りるの? 土庄? 土庄だったら次だよ。』 と、そこにいた船員さん。
『やだ、サイダーさん! 私、おかしいと思いましたよ〜 こんなに早く着くはずないもん。』 と、クッキー。このあとサイダーがクッキーにさんざん詰られることになったのは言うまでもありません。
先ほど着いたのは小豆島の土庄港ではなく、豊島の唐櫃港でした。
事件のあとクッキーは再び、雑魚寝スペースでぐっすりオヤスミになられたのでした。いや〜クッキー、意外と肝っ玉が大きい!
一方、小心者サイダーはこのあとはうとうともできず、お目目ぱっちりのまま小豆島入港を待つのでした。
小豆島の土庄が近付いてきました。
昨日の朝ここを発ったばかりなのに、なぜかなつかしい感じがします。
私たちの船が進路を変え土庄港に入港を始めると、その横をフェリーが通って行きます。
一隻は岡山行きのようですが、もう一隻は高松行きでしょうか。
『小豆島に帰ってきましたね〜』 と、土庄港に降り立ったクッキーは、やっとお目目ぱっちりに。
さて、ここからの予定は、風光明媚なことで知られる寒霞渓に上り、福田港まで下ってフェリーに乗り、姫路から帰宅です。姫路からの新幹線の時間があるので、福田港は13:15発のフェリーに乗らなければなりません。あまりのんびりはしていられません。
寒霞渓までは17kmで、最高標高地点はその少し手前の美しの原高原・四方指展望台の 770m。
土庄の表通りはごくありふれた街並ですが、本町一帯は迷路のまちだそうで、裏通りには面白そうなところがありそうです。しかし残念ながら今日はそこを巡っている時間はありません。
それでもちょっと横道に入ると、古めの伝統的な木造の建物がいくつか残っているのが見られました。
世界一狭い海峡だという土渕海峡を渡り、
伝法川沿いに出ると、先にこれから上らなければならない山が見えてきます。
寒霞渓はあの山のずっと右の方にあります。
伝法川に沿っては快適な道が続くのですが、この道は一昨日通ったし、今日はあまり時間がないので県道へ向かいます。
上庄で r26に入ります。
この県道の景色は特に面白くありませんが、車は少なく、問題なく進んで行きます。
ほどなく r252が分岐します。上には直進『寒霞渓』の大きな標識。
この先、道は上っているように見えます。
分岐点を過ぎると、それが合図のようにして上りが始まりました。この分岐点から美しの原高原まではちょうど10km、標高差760mなので平均勾配は7.6%です。
先には一部がぽこんと飛び出した山が見えます。寒霞渓はあの山のずっと向こう側です。
ぽこん山の横を過ぎるとその先は谷で、さらに奥に山並みが続いています。
小豆島は海のイメージが強いかと思いますが、実は山だらけの島でもあります。
上り出しの勾配は8%ほどで、その後少し落ち着き 6〜7%といったところになります。
『いよいよ上りですね〜。私、上り切れるかしら〜』 と、ちょっと不安げなクッキーですが、ここではまだ笑顔〜
寒霞渓までは基本的に県道の一本道です。この道に特に不満があるわけではないのですが、細道大好きのサイダーはそれにほぼ並行している小径を見逃しません。
すかさずこのちょっと怪しげな小径に入ります。
このあたりにはみかん園になっているようで、道端にもみかんの花が咲いています。
『これ、知っています。みかんの花ですよね。済州島でも見ましたよね。』 と、数年前の済州島を思い出したクッキー。
この小径はほどなく r26から分岐した r27に合流します。
そこから南を見ると、下に先ほどまでいた土庄のまちが見えます。
合流した r27はこんな。
伝法川の谷が狭まり、勾配は8〜9%からヘアピンカーブを廻って6〜7%に。
ヘアピンカーブの先は直線基調になり、左手の視界が開けてきます。
道路標識が先にもヘアピンカーブがあることを知らせています。
その標識まで上って行くと、
『わ〜、いい眺め! 向こうに瀬戸内海も見えますね〜』 と、これいいことに、ここで小休止。
ひとしきり土庄から瀬戸内海までを眺めたら、先にあるヘアピンカーブを廻ります。
この二番目のカーブ以降は4〜5%で、こんな勾配が続いてくれたらうれしいな、と思っていました。
ところがこの期待は、次に現れた標識で木っ端みじん。
でかでかとした標識にはなんと、『18%』の文字が! しかも、これより3.5km、上り急勾配、走行注意、とまで。
『きゃぁー! 私、もう、もうダメですぅ〜』 と、標識を見ただけですでに戦闘意欲ゼロになったクッキー。
ちょうどこの標識のすぐ先に銚子茶屋があったので、ここでひと息ついて態勢を立て直すことにします。
銚子茶屋のすぐ横には伝法川の上流が流れており、銚子滝が落ちています。
銚子滝そのものは木々に隠れていてあまり良く見えませんが、ここは紅葉の時季はさぞ素晴らしいだろうと思わせるところでした。
上を見ると、山肌が露になったすぐ下に白いガードレールが見えます。
ここからいよいよ本格的な上りが始まります。
銚子茶屋を出ると、さすがに勾配がきつくなります。
まあ、標識の18%はオーバーだと思いますが、それでも14〜15%くらいはあろうかというところも出てきます。
ワッセワッセ、というより、ヨロヨロ、ヨタヨタッ〜となんとか上って行きます。
『降りよっかな〜、でもここじゃあ転んじゃう〜』
クッキーは降りるタイミングを見計らっているのですが、勾配がきつすぎてうまく降りられなさそう。しかし時速は4kmを下回り、3kmほどに。押した方が速いかな。。
一瞬5%ほどになったところでなんとか降車。あ〜コケなくて良かった〜
このあとは押したり引いたりして、なんとか激坂を上っていくのでした。しかしここから後、全部押しでは時間的に厳しい。なんとか乗れそうな勾配になったところで自転車に跨がります。ところが、なんとそこから発進できない!(笑)
まあ、そんなこんなですが、徐々に高度を上げていきます。
山の下の方の木々はすでに力強い深い緑になっていましたが、このあたりはまだ新緑といっても良い若々しい緑です。
『ここの緑、まだ新緑ですね〜 きれい〜』 と言いつつ、こっそり自転車を降りるクッキー。
これまで周囲には何もなかったのですが、ここに来て少し様子が変わりました。森の中に延びる細道がいくつか現れるようになったのです。ここまで来れば、本日の最高標高地点の四方指展望台まではあとひと息です。よくがんばりました。もう押してもいいよ〜
先に、左・寒霞渓、右・四方指の標識が現れました。
この標識を右に折れると、道は一車線になり、
ほどなく、美しの原高原の四方指展望台に到着です。
この周辺は公園として整備されていますが、人気はほとんどありません。寒霞渓は小豆島でも指折りの観光地ですが、そこから程近いにも関わらず、ここは無名のようです。
この展望台は道路から僅かに上がった高台にありますが、その姿はこんなで、ちょっとねえ〜 という趣。
まあそれはともかく、ここまで来たのですから上ります。
今日の天気は下り坂で、午後には雨だそうです。そんなわけで、残念ながらだいぶ雲が掛かってきており、視界が良くありません。
写真は展望台から南西を見たところ。ここは四方指の名が付いてはいますが、良く見えるのは南方向の180°程度です。
四方指展望台を出ると、そのすぐ先に平場の展望所がありました。こちらは崖のすぐ上にあるため、下にも視界が開けているようで、立体的な眺望が楽しめそうです。さらには何段も階段を上らなくて済みます。
ここを知っていたらわざわざ四方指展望台には上らなかったでしょう。
美しの原高原を出て寒霞渓に向かいます。
再び r27に入るとこの道は200m近く豪快に下って、大部港への道を分け、そこからちょっと上って寒霞渓へのアプローチロードに入ります。
寒霞渓到着時刻は、ばっちり予定の通り。クッキー、よくがんばりました。
寒霞渓は小豆島でも最大の見どころの一つとあって、その入口には大型バスも止まっています。そのバスを横目に進み、売店やレストランのゾーンを通り抜けると、
その先に、ここが寒霞渓、という眺望が開きます。下には草壁港周辺の街が広がり、内海湾、そしてその先に瀬戸内海が広がっています。国の名勝というのも頷ける景色です。
寒霞渓に到着するや否や、ソフトクリームを買いに走ったクッキー。ハンガーノック寸前? そして慌ててがぶりでゲホゲホ? いえ、いえ、そうではなくて、箸が転げても可笑しい年頃なのです。よね、クッキー。
ちょっと場所を変えると、『かわら投げ』なるものが。かわらは屋根に載せるあの瓦ではなく、素焼きの小皿のようなもので、それを投げて的を通ると祈願が叶うそうな。
その的は単なる鉄の輪っかで味気ないようにも思えるのですが、それはそれとして、この下は渓谷の断崖絶壁。特に紅葉の時季は絶景だというのも頷ける景色です。
天気はちょっと残念でしたが、それでもなかなかの眺めと思わせる寒霞渓を楽しみ、いざ、福田港へ下ります。
『どっちから上ってきたの? 土庄〜 そりゃあ大変だったね。でも福田まではあとずっと下りだからね。』 駐車場の係員はそうおっしゃいました。
ところが・・・ 寒霞渓を出ると、いきなり上り! あれ〜、話が違うじゃないか〜
これがまた結構な上りでしてね。。えっこらよっこらすること2km。しかしここは楓の爽やかな緑が楽しめます。
とにもかくにもどうやらピークに達したようで、勾配が穏やかになり、徐々に下り始めます。
この鞍部はごく僅かで、その後は一気に急勾配に。どどーんと落っこちるようにして下って行くと、ほどなく左に分岐する道が現れます。下って行く側にはこの分岐先を示す標識がないのですが、ここが福田への分岐点で、間違えると大変なことになります。
分岐を入ると道は一車線になりますが、車はほとんど通りません。豪快に下り続けます。
緩いカーブ、ヘアピンカーブ。ビューン、ビューン。
小径の合流、それなりの道の合流とあり、かなり下ってきました。この下り、総距離で10kmとちょっとした距離です。
ようやく下に福田の街が見えてきました。いつの間にか道は立派なものになっています。ところがこの先はヘアピンカーブの連続になり、最後まで気が抜けないのでした。
福田の街に下ってからが長いこと長いこと。もっともこれはフェリーの時間を気にしていたからで、決して距離が長いわけではないのでした。
予定時刻に福田港に到着です。ホッ!
フェリーの切符は往復で買ってあったので、サイダーは昼食として船内で食べるべく、このあたりの名産だというあなごの弁当を買いに、クッキーはお土産を買いに走るのでした。
あなご弁当は残り僅かでしたがぎりぎりでゲット。クッキーもなんとかお土産が買えたようで、無事姫路行きのフェリーに乗船。ここまでなんとか天気も持ちこたえてくれて、ラッキーです。
小豆島の福田港から姫路港までは、1時間40分の短い船旅です。遅めの昼食にあなご弁当を頬張って、雑魚寝スペースで横になると、あとはぐっすり。
ハッと目覚めたのは、船内放送で姫路港入港を伝えるアナウンスがあった時でした。(笑)
『ジークさん、無事姫路港に戻ってきましたよ〜 小豆島も豊島も楽しかったです。今度は是非いっしょに行きましょうね〜』 と、姫路港に降り立ったクッキー。
雲に覆われた姫路港はちょっと薄暗く、今にも雨が降り出しそうです。
『さあ、雨が降り出す前に姫路駅へ急ごう。』 というサイダーのかけ声とともに、姫路港を後にします。
順調に進んで姫路駅前に到着。なんとここで空からポツポツと冷たいものが。お〜、この旅は本当にラッキーでした。
せっかくだからと姫路城が見えるところまで移動して、最後の記念撮影。
『この旅、本当に○でしたね〜』 と、いい顔のクッキー。