今日は今回のイベントのメインであるスッカン沢をハイクします。しかし天気予報が変わり、晴れだったのが曇りに。夕方には雨マークも。ありゃりゃ。
昼食が遅くなりそうなので軽食の弁当を用意することにしました。あり合わせの材料ということで、コロッケと玉子のサンドイッチを。ところがパンがうまく切れず、穴が空いたり、ちぎれてしまったり。こらシュンシュン、ちゃんと切らんかい!
ともかくなんとか弁当の用意ができ、出発です。ところが何とここでベネデッタが車から自転車を下ろすではありませんか。ベネデッタはサイクリングは昨日で充分、今日はハイキングだけにすると言います。ということでシュンシュンとサイダーの自転車だけ載せて、いざ高原山の中腹にある八方湖へ。
高原山に入り、山道となって赤滝鉱泉の入口を過ぎると、そこからはかなりの勾配の坂道になります。企画当初はこの近くの小滝鉱泉に宿泊するつもりだったのですが、走っていたらかなりつらいことになっていたでしょう。しかし山全体は黄色からオレンジ色の紅葉に包まれていて、スッカン沢に期待が高まります。
宇都宮の郊外から車に一時間ほど揺られると、このあたりのハイキングの拠点になっている『山の駅たかはら』に到着します。そこからは車がすれ違えないくらいの道になり、ガタボコ道の先の八方湖に到着。
八方湖は湖というよりは池と言った方が良さそうな大きさで、周囲には何もなく、かなり殺風景なところです。とある情報によるとここは紅葉が良いとのことだったのですが、この時それはすでに終わっていました。ここの標高は1,000mで日光のいろは坂の下の方と同じくらいですから、まあ終わっていてもおかしくはないですね。
湖畔に一本だけ紅葉している木が残っていました。
これはほぼ盛期です。
紅葉はおしまいですが、一枚くらい記念写真を撮っておこうということで、左から、サイダー、シュンシュン、ベネデッタです。
さて、本来はここから自転車の予定なのですが、ベネデッタが車移動になったので、シュンシュンとサイダーも自転車は諦めて車にすることに。
八方湖の西、数百mのところには展望台があります。この展望台は木造で、老朽化のためか入れないようになっていましたが、まあここは展望台に上っても上らなくても大差なさそうです。遠くには八溝山系の山々がうっすらと見えていますが、この日は曇りであまりぱっとしません。
八方湖は写真の道の少し先です。
展望台の横にはなかなかいい形のもみの木が立っています。
この根っこは幹の下の方から四方八方に広がっていて、大きな円錐形になっています。そろそろクリスマスが近いですが、イルミネーションでもしたら人気が出るかもしれませんね。
展望台を後にし、『山の駅たかはら』の横をかすめてr56を下ります。スッカン沢の少し手前に、最近話題だという『おしらじの滝』があるので、ついでに寄ってみることにしました。
この入口の道横には10台ほどの駐車スペースがあるのですが、すでに8割方が埋まっていました。
おしらじの滝の入口には手書きの小さな標識があるだけだと聞いていましたが、その後整備されたようで、今はちゃんとした標識が掲げられていました。
ここは入口付近から紅葉はなかなかのものです。
おしらじの滝は道路から歩いて10分ほどのところにあるようです。
入口を入ると道は下っています。
足元には緑色のクマザサが生え、上には黄緑色からオレンジ色までの紅葉が。
最初はきつい下りでしたが、程なくそれはなだらかになり、
しばらく行くと、樹間に白っぽいものが見え出します。あれがおしらじの滝でしょうか。
滝らしきものが見え出したあたりからまた勾配がきつくなり、足元には木の根っこが飛び出していてちょっと歩きにくいです。
上から見えた滝らしきものが近づいてきますが、それは木々に隠れてあまり良く見えません。
流れにかなり近づいたところで、そっち方面に向かおうとした時、右手をふと見ると、なんとそこにいきなり『おしらじの滝』が現れました。上から見えた白っぽいものは、この横を流れている沢なのでした。
『わ〜、この滝壺、凄い色ねぇ〜。まさにエメラルド・ブルーね!』 とベネデッタが呻く。
滝の流れは細く、落差も小さいですが、それからすると滝壺は意外と深いです。この滝はかつてはもっと大きな流れだったのかもしれません。ちなみに栃木県観光物産協会のWEBによると『しらじ』とは『壺』のことだそうですが、『白地』には、白いままのもの、処女、という意味があるので、もしかするとこの滝にはそんな意味も込められているのかもしれません。
ここはだだ、ため息が出るのみ。
しばしエメラルド・ブルーの滝壺を眺め、充分にため息をついたらやってきた道を引き返し、本日のメイン会場のスッカン沢に向かいます。
おしらじの滝からスッカン沢まではすぐなのですが、ヘアピンカーブが続く下り坂で、自転車だったら帰りが大変そうです。
スッカン沢の入り口は雄飛橋の袂で、その反対側の袂に15台ほどの駐車場があります。私たちが到着したときはすでにこの駐車場は満杯で、路上駐車している車が何台かありました。
橋の上からスッカン沢を覗くとこんなふうです。ここは思ったより広い流れですが、かなり浅く、ゴロゴロ石の合間を縫って川は流れています。
このスッカン沢には『雄飛の滝線歩道』という名のハイキングルートがあり、このルート上に三つの滝があります。私たちはここから雄飛の滝線歩道に入ります。
まずは橋の横の階段を下り、スッカン沢の左岸に出ます。
その後もちょっと下って沢の畔を行くと、
あたりはオレンジ色の紅葉で、その中を少し白っぽく濁ったような沢が流れています。
針葉樹は少なく、山全体が紅葉しています。
道が少し上ったのか、あるいは沢が下ったのか、いつのまにか川の流れは下の方に見えるようになっています。
周囲の木々は緑色から鮮やかなオレンジ色まで。
25分ほど歩くと対岸に滝が見えてきました。これが雄飛の滝線歩道で最初に現れる『素簾の滝(それんのたき)』です。
写真ではなかなかその全貌を現すのはむずかしいのですが、切り立った岩壁からいくつも細い流れが落ちています。その幅は、主要なところで30〜40mといったところでしょうか。これがずっとずっと、そう、おそらく100mか1,000mか続くのです。
この滝はまたの名を『のれん滝』とも言うそうです。流れが白い糸のように見え、まるで暖簾のよう、ということでしょう。
ここまで来ると沢の色はブルーグレーが強くなっています。ちょっと独特の色あいで、どこかでスッカン・ブルーという表記を見かけましたが、まあそう呼んでよい色です。このような色に見えるのは、スッカン沢の水源が高原山のカルデラ跡で、鉱物や炭酸などの火山成分が多く含まれるからだそうです。
ここはオレンジ色の紅葉と沢の対比が見事です。
素簾の滝でしたたり落ちる水は徐々に集まり、小さな流れとなってスッカン沢に流れ込みます。
そのスッカン沢は、少し深いところはよりスッカン・ブルーが強くなっています。
『こんにちわ〜』 という挨拶に振り向くと、そこには見知った顔が。なんと声の主はタキスキーではないですか。
『あれ、どうしたの。どうしてここにいるの?』 とタキスキーに聞けば、ここまで自転車で来るのはむずかしそうなので、企画への参加は断念し車で来て、山の駅から逆回りで歩いてきたんだそうです。ともかく会えて良かった。
タキスキーと出会ったのはこの『仁三郎の滝』の横でした。
解説によると、この滝は『舞姫滝』とも呼ばれるようです。これは舞踏場のような滝つぼの上に流れ落ちる滝が、白いスカートをまとった乙女のように見えることから付いた名だとか。ちなみに仁三郎はこの滝を最初に見つけた人の名だそうです。
この写真に人が写っているのがわかるでしょうか。これで滝の大きさがだいたいわかると思います。
ここは滝壺から下の流れも美しい姿をしています。
仁三郎の滝の上部。
仁三郎の滝の先の岩壁からも、素簾の滝のような細い流れがあちこちから落ちています。
こうした状態はかなりずっと先まで続いています。
スッカン沢の大きな滝は三つですが、流れが急なので、あちこちに小さな滝ができています。
この沢はずっと滝が連続しているような印象を与えます。
仁三郎の滝の少し先にはスッカン橋が架かっています。あれれ、おかしいな、ここまで三つ滝があるはずなのに二つしかなかったな、と思って地図を見ると、最後の『雄飛の滝』を見落としたようです。いや正確に言えば、遊歩道からはこの雄飛の滝は見えないのです。
そういえばさっきタキスキーが、雄飛の滝へは橋の袂を折り返すようにして沢沿いを戻るようなことを言っていたのを思い出しました。
このスッカン橋から折り返す道は岩場でちょっと険しいのですが、なんとか沢まで下ってきました。するとそこには豪快な音をたてて流れ落ちる、雄飛の滝がありました。
『お、この滝はなかなかですね。それにこのスッカン沢もいいところですね。わたしゃあ高原山には20回くらい上っているんですがね、上に行くばっかりで、下の方にこんないいところがあるのは知りませんでしたよ。』 と、ほぼ地元のプリンちゃん。
水しぶきがここまで飛んできます。雄飛の滝、名前にぴったりです。
しばらくここでこの滝を眺めていたい気分ですが、足場は悪く、どこかに座るにもそのあたり一面びしょ濡れなのでそうもいかずです。
雄飛の滝の横にはそれとは対比的な流れもあります。
真っ黒な岩肌にうっすらとしたベールのような滝が落ちています。その上の紅葉と三つのハーモニーが素敵です。
雄飛の滝から戻ってスッカン橋を渡ります。
この橋は遠目には木造に見えたのですが、実は鉄骨造で手摺だけが木で造られています。
橋には鹿股川の表示がされていますが、鹿股川はスッカン沢とおしらじの滝が落ちる桜沢が合わさった流れを指すのが一般的なので、ここはまだスッカン沢です。
スッカン橋を渡って右岸に出るとそこには、一般的に千本桂と称される類いの姿をしている、こんな桂の巨木が立っています。
下から見上げると株立ちの幹に細い枝が覆いかぶさるようにして巻き付いており、ちょっと恐ろしげです。
『あれあれ、この岩ってこの前のゴールデンウィークに見たやつだっけ?』とベネデッタ。
これは桂の木のうしろにある柱状節理の薙刀岩(なぎなたいわ)です。柱状節理はマグマが冷却され固まる時に収縮して生じる岩石柱で、六角形のことが多く、日本では私たちがGWに訪れた兵庫県の玄武洞が有名です。
薙刀岩の名称はその姿がなぎなたの形に似ているからだそうですが、これはどうかなぁ。
雄飛の滝線歩道はこのスッカン橋の少し先で、山の駅方面からやってくる八方ヶ原線歩道に合流しておしまいになります。スッカン橋からは引き返す予定でしたがなんとなく中途半端な感じなので、もう一つ先にある咆哮霹靂の滝(ほうこうへきれきのたき)まで行ってみることにしました。ところがこの先は木製の階段を上って、さらに木々の間を上って行くことになります。
ちょっとへろへろしたころ、八方ヶ原線歩道に合流です。咆哮霹靂の滝は八方ヶ原線歩道を下ったところにあるようなのですが、この下りがちょっときつそうだったので躊躇していると、ちょうどそこに滝側から上ってきた方がいたので様子を聞いてみました。滝まではさほど距離はなく、なかなか良い姿だとのことなので、GO !
案の定、この下りはかなりこう配がきつく、帰りが大変そうだと思わずにいられませんでしたが、教えてくれた方の言うように、すぐに辿り着くことができました。
下に流れが見え、岩場を廻り込むようにして右手を見ると、そこに咆哮霹靂の滝はありました。幅も高さもそれなりにありほぼ正面から見ることができるこの滝は、これまで見てきた三つの滝と比べ、より一般的にイメージする滝と言えるかもしれません。
この沢を見た瞬間に気づいたのですが、この流れはスッカン沢ではありません。流れが今までと逆ですし、何より水の色がスッカン・ブルーではなく透明です。咆哮霹靂の滝は桜沢に落ちているのです。
咆哮霹靂の滝のすぐ下には吊橋があります。
現在は渡橋禁止になっているこの吊橋が架かるのは桜沢ではなくスッカン沢です。つまりここでスッカン沢と桜沢は合流し、鹿股川となるのです。ちなみに八方ヶ原線歩道はこの先塩原まで続くのですが、この時ここから先は通行止めになっていました。
時はちょうど12時。咆哮霹靂の滝を眺めながらここで弁当タイムに。自然の中でいただく食事はそれ自体は質素でも、とても贅沢に感じます。
しばし滝の落ちる音に耳を傾け、弁当を食べ終えたらここからは引き返します。
そうそう、ここまでの紅葉の具合はと言えば写真の通りなのですが、全体としてはややピークを過ぎていおり、一週間くらい前が盛期だったろうと感じます。しかしこの時も充分に見ごたえがありました。
『だいぶ来ちゃったんで帰りどうなるか心配でしたが、道がわかっているからか帰りは早いですね。』 と、咆哮霹靂の滝まで行くのを躊躇していたシュンシュン。
行きは見どころで写真を撮ったり、先の様子がわからないので時間が掛かりますが、帰りはあっという間です。
この帰り道、飲料水がなくなったベネデッタはスッカン沢に流れ込む小さな沢の水を汲んでちょっと飲んでみました。すると、
『なんだか酸っぱいような、しょっぱいような、苦いような味がするよ〜』とのこと。
実はこの沢の水は辛くて飲めないことから『酢辛い沢』と呼ばれ、これがなまってスッカン沢になったと言われています。山男のプリンちゃんによると、これは鉱物などがとけ込んでいるからで、昔から緑青色の水は飲んではいけないと言われているそうな。用心に越したことはないと、ベネデッタは汲んだばかりの水筒の水を捨てることになったのでした。
スッカン沢の入口まで戻るころには空は灰色になっており、急激に寒くなってきました。低気圧がやってきているらしいです。ハイクを終えたら山の駅たかはらまで移動して一服します。途中すれ違ったタキスキーもここにいて、これから塩原の温泉に行くといいます。ここから自転車の予定のシュンシュン、サイダーはこの天気の中、下り一本はきついとこの日のサイクリングは断念。みんなで温泉に向かうことにしました。
こんどはスッカン沢方面にどんどこ下って行きますが、これが勾配がきつい上にヘアピンカーブだらけで、ちょっと大変な道でした。着いたのは奥塩原の渓雲閣。硫黄泉の濁り湯ですが、酸性度は低めでピリピリせず、その代わりに硫黄濃度はかなり高いようです。ここで汗を流し、しばしまったりと湯に浸かるのでした。
この日は結局自転車に乗らずじまいでしたが、幻想的なおしらじの滝も良かったし、どこまでも滝が続くスッカン沢は最高でした。そして山全体の紅葉が素晴らしい。ここは人に知られてあまり有名になってほしくないところです。