2019年のGWは祝日続きで世の中は10連休。私たちも自転車でゆっくり楽しもうと、9日間の青森の旅を企画しました。青森県西側の津軽半島には以前行ったので、今度は東側を巡ります。
ところがその初日、新幹線で到着した八戸駅から走るつもりが、冷たい雨が降っています。まあ雨は小雨なんだけど、気温は何と摂氏4度! 真冬並みです。とてもじゃないけど走れないよ〜ということで、八戸線に乗り換えて最初の立ち寄り先の陸奥湊駅まで電車でやってきました。
「さ、さぶい〜」と駅前に降り立ったのは3人、シロスキーとサリーナ、そしてカメラのサイダーです。
この陸奥湊駅前には戦後から八戸の台所として親しまれている陸奥湊駅前朝市があり、通りには魚介などの市場や卸売・小売店が並んでいます。
そんな市場で活躍しているのが『イサバのカッチャ』、魚売りのお母さんたちです。駅前ではカッチャの像が出迎えてくれます。
時刻は10時過ぎ。朝4時半に家を出てきたシロスキーが「腹減った〜」と叫んでいます。それではと、通り沿いにあり評判の高い『みなと食堂』に行ってみました。
ここは朝6時開店の小さなお店ですが、人気店でお昼時などはずらりと人が並んでいるそうな。この時は『1時間待ち』と貼り紙があったので、名前と携帯電話番号を記入して、しばらく市場などをぶらぶらすることにしました。
まずは、駅のすぐ前にある八戸市営魚菜小売市場に入ります。ここの開店は何と早朝3時! 漁師さんたちが朝ごはんを食べる時間なんですね。
市場の奥に『朝めし処魚菜』があり、新鮮なお刺身などを買い求め、そこでご飯と味噌汁を組み合わせて朝ごはんを食べることができます。ただし、朝10時頃までに入るべし、とのこと。
入ってみると、通路に面した台の上に刺身や焼き魚、海藻などのお惣菜がずらり。
各ブースではカッチャがお刺身をパックにするなどの作業をしつつ、お店を仕切っています。
朝ごはん用に小分けされたパックになって、甘エビ、シメサバ、つぶ貝などお刺身が並ぶ。
美味しそう〜、食べたい〜、100円だ!お得〜、などと叫びつつ夢中で見て回るジオポタの3人。
お刺身だけでなく、わかめやとろろ昆布、そして缶詰など水産加工品も販売しています。
「うわ〜、『ねぶた漬け』って何だろう(数の子の入った松前漬けのようなものらしいです)、買って帰りたい」とサリーナ。
もちろん、活きのいいお魚も売っています。
このアンコウ丸ごと1,300円!
観光客の方でしょうか、お刺身を買い求めて奥で食事のようです。
時刻は10時半、朝ごはんのピークはとっくに過ぎたようであまり売り物が残っていないブースもありました。鮮魚・刺身店は昼前には閉店してしまうそうです。
市場の奥の食事処にはテーブルとイスが並び、ごはんや味噌汁を売っています。買ったお刺身でオリジナル朝食のできあがり。
焼き魚などのメニューもあります。
お刺身パックを見ては「美味しそうだな〜」「食べたい〜」を連呼するシロスキーとサイダーですが、みなと食堂の食事が待っています。
ぐっとこらえて市場の外に出ます。
すると、市場の横に階段があり、『2階 珍味』と書いてあります。
ではさっそく行ってみましょう。
2階のフロアもそれぞれの個人商店に分かれており、各台の上には袋入りの『珍味』が所狭しと積まれています。
今晩のつまみを物色し、買いに走るサリーナとシロスキー。(TOP写真も)
丸くて大きく黄色いものを発見。『干菊』で、食用菊は青森の名産なのだそうです。
いろいろなものがありますが、お勧めされて購入した『味付けイワシのみりん干し』の袋には、お店のカッチャのお名前が入っています。わあ手作りだ、と盛り上がる。
魚菜小売市場を出て通りを西へ向かいます。市場以外にも魚の卸売・小売店が並び、歩いていて楽しい。
こちらのお店には、店先に大きなカレイが干してあります。
そして、カニもあればホヤもある。
相変わらず小雨が降り続く中、魚介類を眺めつつ通りを歩いていきます。
市場通りを北へ折れ、次に向かったのは『八戸酒造』。赤レンガの蔵と白い漆喰の蔵に挟まれて、木造の主屋が重厚な雰囲気を醸し出しています。
これらを含め、大正年間に建設された八戸酒造の6つの建造物は文化庁の登録有形文化財に指定されています。
八戸酒造では予約すれば蔵見学も可能だそうですが、残念ながらこの日はお休み。
建物の周りをぐるりと回って外観のみ眺めることにしました。
八戸酒造の裏手に回ってみると、そこは新井田川に面していました。河口に近く、漁船も停泊しています。冷たい雨は降り続いていますが、向こう岸までもう少し足を伸ばしてみようか…。
そんな相談をしていたところで携帯電話が鳴りました。「もうすぐ席が空きますので、お越しください」とみなと食堂からの連絡です。まだ30分くらいしか経っていません。意外に早かった。
そそくさと戻り、お店に入るとカウンターに席を用意してくれました。外は寒かったので、とりあえずほっと一息。
この時間帯になると、お店の外には少し行列ができていました。「でも、今日は少ない方ですねえ」とお店の方。
カウンターの上にはメニューが貼ってあります。その日入った魚に合わせて手書きで書かれているのです。
どれも美味しそう。目移りして迷いますね。すでに『完売』の文字も。
そして頼んだのは『平目漬丼とせんべい汁のセット』。ただし、今日は平目が不足しているので鮪の漬けと半々になっています。
平目と鮪がキラキラと輝き、その真ん中に卵黄がポトリ。そしてせんべい汁は豆腐やキノコ、人参などが入って盛りがよく、長芋の小鉢も付いています。
平目と鮪を数切れ食べてから、卵黄を溶いてみた。ああ〜これぞ口福! お腹をすかせた甲斐があったというものです。
『漬け』はほんのり味が付いた程度の上品な味わいで、ごはんの下にタレが隠れています。
お腹は満たされ大満足でみなと食堂を後にして、再び八戸酒造を望む橋の上にやってきました。
シロスキーの調査によれば、橋を渡ったあたりに大正時代に建てられた洋風建築の『旧八戸商業銀行』があるそうです。
新井田川を渡り、しばらくうろうろしたけれど見つからず、ちょうど通りかかったおじさんに聞いてみると「もう壊されてなくなったよ」とのこと。
この建物は貴重な木造洋風金融建築の遺構として国の登録有形文化財に指定されていたそうですが、残念なことに東日本大震災の被害を受けて解体されたのだそうです。
とにかく寒い。気温は全く上がらない。そして雨はなかなか止みません。
今日は自転車で走るのはやめにして、電車で移動し早々に宿に入ることにしました。陸奥湊駅を昼過ぎに出る「リゾートうみねこ号」に乗り込みます。
リゾート列車だけあって、車内は窓が大きく何となくゆったりしています。
景色を愛でながらゆっくりしたいところですが、2駅でホテル最寄りの鮫駅に到着。
鮫駅では、ホテルのお迎えの車に来てもらいました。要するに、全く走る気なし。とにかく寒いのです。
車の後ろに自転車を積んで、いざ出発。「こんなに寒いことは滅多にないですよ」と話す運転手さんは気を利かせてくれ、ウミネコ繁殖地の蕪島に立ち寄ってくれました。
こんもりした緑の蕪島に、すごい数の白いウミネコが見えます。頂上の蕪島神社は2015年に火災で全焼し再建中で、外観はできあがっていました。
ミャーミャーと鳴き叫ぶウミネコは駐車場にもたくさんいるので、注意しながら入らなければいけません。
ウミネコは4月に産卵を始めるとのことなので、多くのウミネコが今卵を抱えているのでしょう。
蕪島はウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されています。
近づいても全く逃げません。地域の人たちにとても大事にされていることがわかりますね。
丘を上って到着したホテルの部屋の窓からは、海辺がよく見えます。
空はどんよりしていますが、周囲の木々には桜の花が見え、新芽の息吹も感じられます。
しばらく部屋でウダウダしていた3人ですが、雨もほぼ止んできた午後3時、ちょっと周辺を散策することにしました。
さてこのホテル、宿泊棟の横に体育館があり、この日は高校生のボクシング大会があると看板が出ていたのでちょっと覗いてみると、若者たちがバシバシと迫力の音をさせながら練習していました。
外は相変わらず寒い。テクテクと向かったのは、すぐ近くにある鮫角灯台です。
鮫角灯台は1938年(昭和13年)に建てられたもので、土日や祝日、夏休み期間中は開放され、上の見晴台まで上ることができます。
さっそく入ってみましょう。
建物に入ってすぐのところに展示スペースがありました。中央にあるのは、以前実際に使っていた灯台のライトです。
案内の係の方にスイッチを入れていただくと、ライトは眩しい光を放ちながら回転していきます。反射板で増幅された灯火は38kmも遠方まで届くとのこと。また「この灯台には10数年前までは灯台守がいたんですよ」との説明にもびっくり。
ぐるぐると階段を上って、灯台の見晴台までやってきました。
周囲の丘や海の眺めは広がっていますが、この先に見えるはずの八甲田山は雲の中です。「ダウンジャケットを持ってきてよかった〜」と寒そうなサイダー。
南東の方向を見ると、岬のように突き出ているところは葦毛崎でしょう。
予定ではこの海岸沿いの「うみねこライン」をずっと自転車で走るはずだったのです。う〜ん、残念。
鮫角灯台の南側にはタイヘイ牧場という競争馬を育てる牧場があります。競走馬の最終仕上げの調教牧場なので、騒音は厳禁。
灯台からは、広い緑の芝生と馬場が見えます。
よく見ると、遠くに4頭の馬の姿が見えました。デビューはいつでしょうね。
灯台から下りてしばらく海を眺めていると、カンカンと遮断機の音が聞こえてきました。八戸線の電車がやってきたようです。
ほどなく2両の列車が通り過ぎていきました。黒い岩肌の海辺のすぐ近くを通る列車は、何だかジオラマに置かれた鉄道模型を見ているようです。
鮫角灯台からホテルに戻ると、ホテル前の丘を指して『物見岩』という看板が出ていました。じゃあ上ってみましょうか。
階段を上ってたどり着いた物見岩はこんなところです。
滑りそうになりながら上ると特に絶景が広がっているという訳ではなく、正面のホテルの建物はよく見えます。
物見岩までの階段の両側にはハマナスが植えられており、花はこれからでしょうか。
まわりにはピンクや白の桜が咲いています。
白い桜はちょうど満開でした。
ホテルに戻り、ゆっくりお風呂に入ったら晩ごはん。もちろん海の幸がたくさん出てきます。
地元のお酒を片手にご満悦はシロスキー、そして炊き込みご飯に嬉しそうなサイダーです。今日は冬に逆戻りしたような気温と雨で、自転車では全く走れずでした。明日は晴れるでしょうか。