2002年元旦、いよいよ今日から台湾自転車旅行開始!
年末に台北から台南を経て台東までやってきた私たちは、大晦日に天后宮などを見学し、いよいよ元旦の本日、長浜へ向けて出発。
その前に補給食を、と果物屋を覗けば、あるある、見知らぬ南国のフルーツがたくさん。
これは釈迦頭(チリモーヤともいう)。ん〜ん、お釈迦様の頭に似ている?
さていざ出発とホテルを出れば、街角にはお寺がいっぱい。みんな天后宮みたいに立派。
台湾の東部にある大きな二つの町、花蓮と台東とを繋ぐ道は花東公路と呼ばれ、そこにはとてもきれいな風景があるという。
総距離170kmほどのこの道を、私たちは2日間かけて走る。
運良く元旦のこの日は晴れ。青い空と青い海を眺めながら花東公路を北へ向かう。
ちなみに花東公路には海沿いを行く海線と山の中を行く山線があるが、私たちが行くのは海線だ。
台東付近にはアップダウンはほとんどなく、エメラルドグリーンの海と椰子の林の間を快調に飛ばす。
先に見えている半島のような出っ張りは都蘭鼻だろうか。う〜ん、すばらしい新年の始まりだ!
でも、朝御飯はまだ。おなかすいたね、とロードサイドで見つけた麺の店。
小姐がつくってくれたおいし〜いスープ麺を食べながら、近所のおじちゃんたちとおしゃべり。
『まあ、飲みねえ飲みねえ!』と甘い薬草酒をごちそうになった。
朝食後はエネルギーが補充できたのでさらに快調。ヤシの木が植えられた道を行くと、正面に山が見えてきた。
あの高い山のすぐ右手は海なのだから驚いてしまう。台湾の東側は海沿いのごく僅かな部分に平坦なところがあるだけで、そこからすぐにあんなふうな山が立ち上がっているのだ。
そのすぐ西には3000m級の山が連なっているのだが、それは残念ながらこの道からは見えない。今見えているのは3000m級の山々とは川によって隔てられたその手前にある山だ。
右手には三日月形の湾が延びている。台湾の東海岸は大きなスケールの地図で見るとなだらかに見えるが、実はこうした小さな湾がいくつも連なっている。
写真でははっきりしないが、海は海岸に近いところはエメラルド色、遠いところは深い藍色で、本当に美しい。
このあたりの道路は車が少ない上に、オートバイ優先レーンが設けられているので、自転車も安心して走れる。
一軒フラットに見える海岸線も走ってみれば少しはアップダウンがある。でもこのあたりのそれはとても緩やかなので問題なしと快調に飛ばすサリーナ。
しかし、人生そんなに甘くはない!
これはあとでわかる・・・
『水往上流』ってなんだろう? 観光名所の標識に導かれて行ってみると、こんな小さな用水路があった。どうやら農業用に作られたもののようだ。
ム〜、なるほどなるほど、錯角で上流に水が流れているように確かに見える! サリーナがいる方が下流でそちらに水は流れるのだが、どう見てもそちらが上流に見えてしまう。
ここは北回帰線よりも南!
夏なら太陽が真上から照りつけるところだ。そんなところにはどこでもこれがある。
おきまりの椰子の実ジュース。ほんのり甘くて結構おいしい。
ここは観光地だから30元(110円)と少々高いが、咽を潤すには最適な飲み物。
ちょっと不思議な『水往上流』を見たあとも海岸線を行く。
相変わらず素晴らしい海の色。
台湾には川が多い。台湾東部は海から急に山が立ち上がるので、このあたりの川の多くは渓谷だ。
そのためか、台湾の川の名には『渓』と付くものがとても多い。この流れは馬武渓で、数百m上流に行けば岩がごろごろした泰源幽谷と呼ばれるところになる。ここからそのあたりまで遊覧するのだろうか。下にそれらしい竹筏が見えている。
この写真は上のそれと同じ視点から山側を眺めたもの。遠方に見える白い塊が岩で、あのあたりが泰源幽谷だ。
その上にはあくまで険しく聳え立つ山々。橋が見えるのでここから山へ向かうルートがあるのだろう。そこには渓谷のすばらしい景観が広がっていそうだが、クライマーではない私たちは、黙々と海線を走るのだった。
お昼過ぎ、そろそろお腹がすいてきた。でも、なかなか開いているお店がない。う〜、ハンガーノックになりそう!
やっと着いた成功で小さな食堂を発見。小菜、麺、あんかけ御飯の豪華なお昼を堪能。おいしい〜 さすが台湾だ!
満腹状態で後半戦スタート。 ん? 何だかちょっと雲が出てきているね。
椰子の林の合間に段々になった水田が作られている。水をたたえた田んぼの中で田植えしている人を見掛けたが、その脇にススキがあるのに驚いた。ここは南国だから、日本とはだいぶ気候が違うというのは頭ではわかっているが、ススキと田植えはまるで反対の季節だと思ってしまう。
田んぼの向こうの海を見れば、どうやら波が高まってきているようだ…
3時過ぎ、観光名所の『三仙台』に到着。
ここは道教の仙人のなかでも代表的な存在である八仙が海を渡った時、その内の三人が留まったという伝説の場所。八仙は中華社会にとてもよく浸透している存在で、日本で言えば七福神のようなものだ。それにたとえて言うと、恵比寿、大黒、毘沙門があそこにやってきたと言うようなものだ。
あれれ、いつの間にか空は雲に覆われてしまっている。
沖にある三つの奇岩が並ぶ島まで太鼓橋で渡れるのだが、橋を一つ渡ったところでこれは諦めた。何せ、すごい風!
空も海もすっかり青を失い、沈んだ灰色になってしまった。これではここにいても仕方ないだろう。早々に三仙台を出発する。
日暮れが近づき薄暗くなってきているのに、向い風でなかなか前へ進まない。次の見どころの『石雨傘』では、観光というより疲れて休憩。
『何で元旦からこんなにつらいことをしているの…』とつぶやくサリーナ。
ちなみに石雨傘は長さ1kmほどの岬で、上部が堅固な珊瑚礁岩なのに対し下部が脆弱な礫岩であるため、下部が侵蝕され、上部の大きな岩を下部の細い柱が支えるという形状が出現している。
石雨傘からは、少し走っては休憩、また少し走っては休憩の繰り返し。平地なのに逆風に押されてヒルクライムしているみたい。小さな廟から出てきたおばあさんに行き先を聞かれ『長浜』というと、『ええ? 長浜まではこ〜んなに遠くてこ〜んな坂があるんだよ』とあきれられた。このジェスチャーは、言葉が通じなくても一目瞭然。
そして、最後に本当に“こ〜んな坂”が現れた。へろへろ・・・
時速5キロ、何度止まろうと思ったことか、くたくたになったところで待ちに待った『長浜』という看板が見えた。
いや疲れたのなんの!
とにかく最初に見つけた『旅社』に宿をとり、少し休んで近所でやきそばと海老炒めの夕食(これがまたおいしいの!)。
旅社に戻って1日遅れの『紅白歌合戦』を見ながら就寝。
窓の外では風が無気味な音をたて続けていた。