2003年元旦、4人で陶磁器の村へ!
一昨日にハイフォンからハノイ(Hà Nội)に戻った私たちはその晩、日本からやってきたナオボーとチューボーとに合流。そして昨日一日をハノイ観光に当てました。
今日は元旦ですが、ベトナムは旧正月を祝うのでまったく正月っぽくありません。夜には列車でフエへ向かうので、昼間はハノイ郊外をポタリングしようと決めて、4人で初のベトナムサイクリングです。
めざすは陶磁器の村バチャン(Bát Tràng)。
宿の一階にある食堂でフォー・ガーとコーヒーの朝食を済ませ、出発準備をしますが、生憎外は小雨が降っています。少し時間が経てば上がりそうなので様子を見ていると、だいぶ明るくなってきました。
なんとか走れそうなので出発です。宿の近くの路上には大きな駕篭にバナナなどを詰めた物売りが出ており、その横では麺屋が賑わっています。宿じゃなくてここで食べた方が良かったかな。
さて、向かうバチャン村はホン川(Sông Hồng)の対岸にあるのでまずは橋を渡らなければなりません。私たちの宿からホン川の畔までは1.5kmほどしかないのですが、ハノイ市内はモーターバイクと自転車で溢れていて、走るのに一苦労。交差点では『止まっちゃいけない!』というのがルール?です。
なんとかホン川の畔に出たら、もっとも近い橋であるチュオンズオン橋へ。ところがこのチュオンズオン橋はモーターバイクと車で大渋滞。歩道をモーターバイク軍団が暴走するというとんでもないものでした。
とてもじゃないけど走れない! そこでその隣のロンビエン橋へ向かうことにしました。
ロンビエン橋はパリのエッフェル塔を設計したエッフェルが設計に関与したとの噂があり、独特のフォルムをしています。鉄道線路を挟んで両側に歩行者と自転車くらいしか通らない道路があり、これなら安心して渡れます。
ロンビエン橋を渡りホン川の東岸に出ました。
ホン川は紅河とも言われ、全長1200kmに及ぶ長大な流れです。日本一長い信濃川の長さが400kmに満たないことを考えると、さすがに大陸を流れる川は違うなと思ってしまいます。
ここからはホン川の土手を走ります。
車はあまり多くなく、土手の脇では牛が草をはんでいたりのんびりムード。
道は、端の方は土手の泥が流れてきてはいますが、一応舗装されています。時々大きな水たまりがあったりしますが!
モーターバイクもこのくらいの交通量ならまあいいかって感じですよね。でも時々、スピード狂の車が警笛をならしまくって通り過ぎますから要注意です。
カメラに向かって愛想をふりまくサイダーとモーターバイクのお兄さん。
出発したときは霧雨でしたが、意外に雨が強くなってきました。
『ちゃんとした雨具を持ってこなかった!』と焦るチューボーの目の前に、何ともいいタイミングでレインコートを売るお店が出現。日頃の行いがいいから? さっそくオレンジのコートを購入。
しばらく行くと、バチャン村に到着!
ここまで道は雨で泥だらけでした。泥よけ付きのサイダーは涼しい顔。リアキャリアのあるチューボーとサリーナも何とかOK。泥よけもキャリアもないナオボーの黄色いコートの背中には、縦に真直ぐな泥ハネ道ができていた!
バチャン村の入口には早くも大きな焼き物が積まれており、その横に竹駕篭がたくさん並んでいます。この竹籠は何に使うのかなと思ったら中には陶磁器がいっぱい。陶磁器のストックや移動運搬用として使われるものでした。
バチャン村の人口は2千人ほどですが、そのうち9割が陶磁器づくりをしているそうです。小さな町のメインストリートはすべてそれ関係のお店。藁を敷いた籠に陶磁器を重ねて運ぶ人たちが行き交っています。
この村を見て廻るには徒歩が便利。村の入口付近で自転車を預かってくれるところを見つけました。
この店がそうしたことを商売にしているのかどうかははっきりしませんが、ともかく交渉成立で自転車を預けることができました。
さて、ここからは歩いてバチャン村の見学と買い物へ。
こぢんまりした村は、ゆっくり買い物したり散策したりするのにピッタリです。さっそくナオボーは陶磁器でできた町並みのレリーフをゲット!
通りに沿って似たような看板がいくつも並びます。この看板の数だけ陶磁器製造工房があると思ってほぼ間違いありません。
もの凄い数です。
この村では陶磁器を作って販売もしているのですが、きれいなショウウィンドウを持つ店がある一方で、こんなふうに窯出しした商品を駕篭に詰めて、並べておくだけのところもあります。
ここは卸しを専門にしているのでしょう。
そんなところの一つで、自転車に陶磁器をたくさん積み込んでいるところに出くわしました。しかしまあ、よくこんなに積めたもんですね。私なら、こんなに積んだらすぐにひっくり返ってしまいそうです。
まあそれはともかく、おそらく彼らはこれから卸し先に配達に行くのか、あるいは行商に向かうのでしょう。
ショウウィンドウを覗いたり、工場の中をちら見しながら歩いていると、かなり大きな陶磁器店が出てきました。
こうしたところでは工場見学ができるようです。
ゆっくりどこかの工場を見学したいね、と話していると、ある店先で『どうぞどうぞ入って見学して行ってください。』と招き入れてくれる方がいました。その方がとても親切そうなので、ここに入ることにしました。
お店の横には工房があり、
カップに絵を描いている女の子たち。私たちと目が合うと、くすくす笑っています。ハシが転がってもおかしい年頃なのね〜。
彼女たちは中高生くらいに見えるけれど、実際は20歳くらいだって。この部屋の奥に窯があるようです。
ここではお皿に絵付けをしています。
今時はプリントも多いと思いますが、ここではみんな手作業です。工場ではなく工房と呼ぶ方がふさわしいですね。
これは何かの型のようです。たぶん二つの形の中に土を入れてパックンってやるのだろうと。
どうやらその型の組み合わせを見ているようです。
ここでは丸い皿に模様を入れています。
案内してくださったここのオーナーのルオンさんによると、この作業は熟練した人でないと任せられないそうです。
ふと立ち止まったところに陶磁器の土を作る工場が。粘土や石英など、5種類の土をまぜて作っています。
この建物は煉瓦造ですが、元々このバチャン村では煉瓦を焼いていたそうです。
この方がオーナーのルオンさん。いろいろなところを親切に説明してくれて、絵付けも見学させてくれました。
『これは私が描いたんです』と豪華な龍の絵皿を見せてくれました。
一通り見学が終わったところで、ナオボーが作りかけの作品でまだ焼く前のものを気に入ったようで、これをゲット。『そ〜っと運んでください。そうしないと壊れちゃうからね。』とルオンさん。
工場見学を終えたらお昼です。メインストリートを曲がったところに小さな食堂が。
ホカホカと湯気が立つ大鍋に誘われて、ここでお昼に決定。厚揚げ炒め、春巻き、瓜炒め、じゃがいものスープなど、どれもおいしくて満腹!
お昼も済ませたし、ぼちぼち帰ろうと自転車を取りに戻ってみると一大事!
チューボーの自転車の錠が開かなくなっちゃった! 泥が入ったのか、いくら鍵を入れてひねってみても、水で洗ってもガソリンかけてもダメ。 『壊すしかない…』とあきらめたチューボー。 お店のお兄さんにそう伝えると、『ワイヤカッターを貸して』と言うより早く、彼が手でガチガチやってあっさり切れちゃった。う〜ん、錠って単なる気休め?
ようやくこれで走って帰れると喜びの面々。
そこにお店の少女がでできて、よかったですね〜、とにっこり。
少女に見送られバチャン村を出発。帰りは完全に雨が上がり、快適に走れました。
土手の道の両側には田んぼや畑が広がっていて、時々煉瓦でできた家が並ぶ村の脇を通ります。
行きに見た運河までやってきました。ここまで来ればもう宿まではすぐです。
近くにあったキオスクのような店で一休み。このかわいらしい少女が飲み物を売ってくれました。
いい気分の帰り道、ハノイ市内の混雑を何とかクリアし、4時過ぎに無事宿に到着。
でも休む暇はないのです。今夜は夜行列車に乗るので、それまでに自転車の泥を落としておかなくちゃ! 宿の前へバケツで水を運んで、必死で自転車を洗う4人なのでした。
感想 ゆったりベトナム --by チューボー
ベトナムの時間はゆったりと流れていました。街は活気に溢れていましたが喧騒さはなく、人々はおだやかでした。
シクロ牽きのおっちゃんが自分のシクロで昼寝をしていたり、小学生や中学生の子供が観光客にみやげ物を売り歩いているが、しつこくまとわりつくこともなく、見ている方があれでは商売になっていないのではないかと心配するぐらいのんびりしていました。
びっくりしたのは何と言ってもバイクの洪水。ハノイに着いた翌日、旧市街地まで歩いたのは、そのような状況で自転車に乗るのは危険だからという判断でした。しかし、それはどうも違っていたようです。
バイクは大きな道路から小さな道路まで道幅一杯になって走っていて、果ては市場の中の人と物があふれている道路にまで侵入してきます。それはまるで河の流れのように途切れることなく流れていました。でも警笛を鳴らしたり、無理やり追い抜いたりなどすることなく真に河の流れのように、とうとうと流れていて見ていて飽きない光景でした。信号や交通規則はあってなきがごとくでしたが、事故や小競り合いはなく、みんながうまく気を配りながらバイクを走らせていました。
歩行者もこの流れに堂々と入ってきます。大きな通りの横断も平気です。決して立ち止まることなくゆうゆうと歩きます。バイクはそれをうまくよけてすいすいと流れて行きます。
さて僕たちのBD-1もこの流れにおっかなびっくり入っていきました。「こつ」は決して止まらないこと、堂々と走ること、曲がる時はそちらの方向に進路をずらして行くと周りがうまくそれに合わせて流れに乗せてくれます。最初は勇気がいりますが、流れに身をまかせることに慣れれば安全に走れます。というようなことでうまく市街地でも乗りこなせるようになり、ダナンの市街地から空港までの10キロは、バイクの洪水にのって走りきりました。
そして、何と飛行機に乗る時、梱包もせずに裸のままで自転車を託送荷物にしてくれました。これはホーチから日本へのフライトでも同じでした。ベトナム万歳です。
ベトナムはゆったりして、おおらかな国です。今ドイモイ政策で経済発展を遂げてきているそうですが、このおおらかさをいつまでもなくさないでいて欲しいものです。