暗いうちに発て!
暑い! とにかくここは真夏! 暑いのはあたりまえだ。 しかし日中はちょっと自転車向きじゃあないらしい。 そんな訳で早朝まだ涼しいうちに距離を稼いでおくことにした私たち。
でも、ちょっと朝寝坊。 暗いうちとはいかなかったけれど、日の角度はまだまだ浅い。 ヤシの木もまだ涼し気である。
『朝日を浴びて、キラキラ輝く海を長めながら走るのはキモチイイ~!』 と豪快に飛ばすサリーナ。
今日の道のりは80km。 普通ならなんでもない距離です。 しかし、ワオォ! 暑いんだよ、これが!! 日も頭の上になってきました。 そんな時はやっぱりビーチに。 1時間走ったらビーチ、ビーチ、ビーチ!
とにかくそんな気分になるのです。 暑く火照った体を素晴らしく透明な海水に浸すと、すっきり爽やか。 また走るぞ! という気が湧いてきます。
しかし、このあとサリーナに悲劇が…
俺たちだって暑いんだぜ!
珍しく現地の人が群れて泳いでいるところに出会いました。 真っ黒な肌が太陽に反射してうごめく姿は、なにか野生のものを感じさせる、ちょっと表現できない美しさがありました。
実はあまり現地の人が泳いでいるところを見かけません。 御当地の方は暑さに慣れていてあまり泳がないのかもしれませんが、この時ばかりは 『俺たちだって暑いんだぜ。 やっぱり海に浸かれば気分は爽快さ!』 と語っているようでした。 そして私たちに気付くと 『お~い、がんばれよ~!』 と手を振ってくれるのでした。
カルメン2世、ニューカレドニアに死す!?
『まってぇ~、なんかハンドルがグラグラする~!』 とサリーナ。
『あれ~、さっき締め直したばかりじゃないの~?』 と怪訝な表情のサイダー。 実は少し前にもハンドルの固定度が悪いということで、ネジを増し締めしたばかりだったのです。
『それじゃあ、こっちのボルトがゆるんだのかなぁ~』 と別のボルトを締めにかかるサイダー。
『ギャァー!!』 『これ… なに…』
サリーナの指差す先にあったものは…
フロントフォークの付け根のリングにひびが… よく見ると単なるヒビではない。 完全にリングが切れてしまっている。 『もう走れない?』 『ちょっと無理かも…』 このリングは前輪とハンドルを繋ぐ重要なもの。 ここの固定度がないとハンドルを操作しても前輪がそのとおりに動かないことになる。
『どおしよ~おぉ』 泣き顔のサリーナである。 『とにかく、なんとかしてヤンゲンまでいかなくちゃあ』 とサイダー。 しかしヒッチハイクするにも車が通らない。 『そお~っつと走れば大丈夫かも…』 というわけで、恐る恐る走り出すサリーナ。 どおやら無理をしなければなんとかなりそうである。 カルメン2世は死んでしまったようだが、その魂はまだ現世にいるらしい!
東海岸の風物詩
このあたりはブーゲンビリア、ハイビスカス、フランボワイヤンなどが見事に咲き競い、すばらしく美しい。 そんな道端で、
『あっ、なんかへんなものがある。 ちょっと覗いてみよう!』 サイダーが立ち止まった先にはなにやら小さな小屋?が…
近づいてみると、産地直販の売店でした。 バナナ、パイナップル、マンゴー、パパイヤ、ランプータンなどが置いてある。 なかには貝殻なんかを置いてあるところも。 もちろん、値札がちゃんと付いています。
補給食になんか買おうかな、と物色していると我々がめずらしいのか、子供達がやってきた。 どれがいいかな~、やっぱり食べやすいバナナかな。 ということでバナナをゲット。 お代はテーブルにある空き缶に入れるんだよ~。
『ありゃりゃ、お札しかないや、両替えしてちょうだ~い』 とサイダーがボディーランゲージで伝えると、ちゃんと伝わったらしい。 近くにいたお姉さんを呼んできてくれました。
『写真、とっていい~?』 と聞けば、最初はかくれていた男の子を引き連れて、『おにいちゃんも、こっちこっち!』 と女の子が駆け出します。 でもちょっぴり恥ずかしそう。
道端には時折、南国特有のきれいな花が咲いている。 赤いのはフランボワイヤンで、日本語では火炎樹というらしい。
激坂の連続!
さて、実は道は登りである。 アップダウンの連続! しかも、ニューカレドニアの坂は10%以上でなければならないという法律でもあるかのように、きつい。 登って、登って、下ってビーチ! 登って登って、ちょっと楽になったかと思う勾配は7~8%!
こりゃ~、ビーチがなくちゃあ、やってられないよ~
ヤンゲンまであと少し。 御当地名物の奇岩も見えてきた。 『へえ、へえ、やっとこさ登ったよ~』 と息も絶え絶えのサイダーです。
ヤンゲンにようやく到着。 しかし、宿はヤンゲンのはずれというか別の村らしく、もっと先らしい。 写真の先の、先の、先! ここからがすごかった。 10%、12%、15% いったいどこまで上がるの~!!
もお、だめ~…
宿まではあとわずかのはずなのだけれど、あまりの猛暑と激坂に、目の前に現れたビーチに飛び込むサイダーとサリーナです。
しかし、ようやくその先に小さな看板が見えた。
着いた! 道の下に、茅葺きならぬヤシ葺きの小さな建物がありました。 わずか4室しかないGite。 ジットって、まあ小さなホテルっていうか、民宿とホテルの間のようなやつのことです。 (仏語の本来の意味はちょっとちがうようですが)
まわりにはマンゴーが植えられていて、その実がゴロゴロと落ちています。 自然の恵みがたくさんあって、少し先はビーチ。 すばらしいロケーションです。
『やった~、ビール、ビール!』 とにかく冷たいもので喉を潤おしましょうと、到着早々にレストランに駆け込みます。 『え~と、食事は7時からよ~』とおかみ。 『食事はいいから、とにかくビール出して!!』
我らの剣幕に怖じけをなしたのか、まあまあ、しょうがないわね、という感じで、バーの担当の娘を連れてきてくれた。
とりあえずここまで、カルメン2世も無事だったよう。 完走を祝して 『グビグビグビ、グビグビグビ!』
『あ~、しあわせ~っ!』
一息ついて、冷たいシャワーで汗を流すと気分は爽快です。 目の前のビーチを散歩して、夜空を見上げれば、これがまたすごい! 星が目に痛いほど突き刺さる、そんな感じなのです。
夕食は肉---何の肉だ?---と御当地名物のタロイモ。 これは従来、このあたりでは主食として食べられていたもので、ほんのり甘くてサツマイモとジャガイモの間の子みたいな味でした。
そしていつの間にか、外には村の人々が集まってきた。 折悪く雨が降り出したからなのかどうかはわからないけれど、私たちの食事が済むとそれを待つかのようにして、みんな食堂にやってきました。 いったいなにが始まるのだろう? と思ってみていると、なんとビンゴが始まったのです。
ならべるのは、よくネックレスに使われる小さな美しい貝。 この貝、ネックレスに使われるだけあり、なかなか見つからない。 見つかってもここで使っているようなきれいな形のはあまりないんです。 一列並ぶごとに真っ白な歯を見せてほほえむ少年が印象的でした。