早朝、窓の外からゴーゴーと怪しい音がする。ああ、今日も風が強い、しかも昨日より…
今日はここプラヤ・グアナボからマタンサス州の州都であるマタンサスまでの80kmの予定。昨日は僅かに50kmでへろへろだったことを考えると、この風ではどうなることやら。
昨夜サリーナの自転車の修理に24時までかかってしまったので、今朝は少し寝坊して8時半に起床。おいしいフレッシュ・オレンジジュースとプレーンオムレツの朝食をいただいて、10時にプラヤ・グアナボの民宿を出発します。玄関先まで見送ってくれたのはフアーニとサルサ・ダンサーのその長男。
まずはプラヤ・グアナボのメインストリートを東へ向かいます。
ここはハバナから25kmほどしか離れていませんが、建物はほとんどが低層建築で、高いものでもうしろに見えるものくらいです。そして公園がたくさんあり、馬車が現役で活躍しています。
川を渡り隣村でビーチ沿いの道に入りますが、この道は長くは続かず幹線道路のビア・ブランカ(Via Blanca)に出てしまいました。ここからはこのビア・ブランカの一本道です。
コースはずっと海岸沿い。真正面から風を受けながら、ドドーン! と波が砕ける海岸をヨロヨロ進みます。すでにギアは最軽に近い! 山岳じゃないんだけどね〜
キューバは車が少ないので幹線道路とは言ってもご覧の通りで、走るのに問題はまったくありません。問題は風だ〜
ロードサイドにドライブインが出てきました。風が強いのでちょっと休みたい気持ちもあるのですが、まだ走り出して1時間も経っていないので、ここで休憩するわけにはいきません。
海沿いに何やら見慣れぬものが並んでいます。あれは石油を掘っているのです。
1961年以降アメリカからの輸入が途絶えたキューバはエネルギー分野でも苦しい状況ですが、運良く油層がこのあたりを通っていたため1992年に国営の石油会社を設立し、あちこちで採掘を行っています。写真は油井に設置されたポンプジャックと呼ばれる採掘装置です。
走り出して1時間半。風が強く一向に進みません。もう限界とロードサイドにあったカフェに思わず飛び込みました。
あ〜、しんどい〜〜
一服したら気を取り直して出発です。
ボカ・デ・ハルコ(Boca de Jaruco)をかすめて進むと橋があり、ハルコ川(Río Jaruco)を渡ります。その内陸側は小さな船溜まりになっていて、漁船がたくさん舫っていました。
上り坂の道路の反対側をさっそうと駈けるサイクリスト1人。
『やあ! どこから来たの? ボクはカナダから2週間の休暇。今日はハバナまで行くつもりだよ。』
彼は私たちとは逆コースで追い風。平均時速30km以上で走っているようですが、こっちは時速10km未満(笑)。それにしても強風で荒れる海、とても浜辺で遊ぶ雰囲気ではありません。彼のリアキャリアにはシュノーケルとフィン、私たちもシュノーケルを抱えての旅なのですが、これは一体いつ使えるのでしょう…
彼が上ってきた坂の先には巨大な煙突が聳え立ち、荒涼とした風景が広がっています。あそこはサンタ・クルス・デル・ノルテ(Santa Cruz del Norte)という町の入口です。
とにかくお昼を食べなきゃ! と町に入ってカフェでサンドイッチを食べました。時はすでに午後2時。街が見えるところでカナダの青年に出会ったのは12時40分ごろだったのに、僅か数キロメートル進むのに1時間以上掛かったことになります。そして今日の終着地のマタンサスまでは何とまだ50km近くもある。こりゃあ大変だ!
食事をしたら少し元気が出てきました。しかし風は一向に止む気配がありません。
道は相変わらず海沿いで風を遮るものは一切なし。ザザザザー、バッシャ〜ン! という波の音を聞きながら必死でペダルを回します。15分走っては休み、また15分走っては休み・・・
しばらく行くと道は海辺から少しだけ内陸を行くようになり、周囲が木々で覆われます。
助かった〜、ここは風が弱い! しかしまたすぐに海辺に戻るのでした。ガックシ…
風はますます強くなる一方。道端ではのどかに牛さんが草を食んでいるのに、それをゆっくり眺める余裕がありません。サンタ・クルス・デル・ノルテを出てすでに2時間が経っているのに、そこから走った距離はたったの10km。
『もお無理だわあ〜』と、プラヤ・ヒバコア(Playa Jibacoa)で自転車に乗るのを諦め、ホテルに飛び込んでタクシーを呼んでもらい、マタンサスへ向かいました。
へろへろ、よれよれでマタンサスに着いた私たちを笑顔で迎えてくれたのは、ステキなコロニアルの建物で民宿をやっているマリアネラさんと息子のルイス。
『夕食は何がいい? お魚のスープ、サラダ、フライドポテト、白身魚のソテーと白いご飯でどうかしら?』
ああ、しあわせ〜! 天井の高いダイニングルームですばらしい夕食を堪能です。マリアネラさんは料理がとっても好きで上手なのでした。こういう民宿に当たるとハッピー、ラッキーですね。
このおうち、もともとは1860年代の建物で、この当時マタンサスはハバナに次ぐ大都市だったそうです。
入口を入るとまず広いホワイエがあります。
そして私たちが泊まった部屋はご覧の通り、高い天井にファンが回り、籐の椅子でくつろげるコロニアルスタイルのほんとにステキなところでした。鏡台の左にドアがあり、気持ちのいい中庭に出られるようになっています。
ここ、1泊ではもったいないなあ〜