キラウェアのエスケープ・ロード
杉の大木や巨大なシダが生えるボルケーノ・ビレッジからキラウェア・カルデラまで、エスケープ・ロードという名の道を進むことにしました。 名前から想像するに、火山が噴火した時などの緊急時に使われる道なのでしょう。 入口にはゲートがあり、車は入れないようになっています。
鮮やかな緑の鬱蒼としたジャングルの中を進んで行くと、
巨大シダの群れ
10分ほどでキラウェア・カルデラの東の端にあるサーストン・ラバ・チューブの入口に到着しました。
チューブの入口付近は小さな谷になっており、下を覗くと巨大シダの群れが。 なんとこのシダ、高さは二階建ての家ほどもあります。
サーストン・ラバ・チューブの解説
サーストン・ラバ・チューブの解説がありました。 ラバは溶岩のことなのでサーストン溶岩洞ですね。 まず窪んだ谷状のところに熱い溶岩が流れ、谷を埋めます。 その溶岩は外側から徐々に冷えて固まって行きますが、真ん中付近は温度が高く熱いので、その部分の液状の溶岩は低い方へ流れて行きます。 谷の真ん中の溶岩が完全に流れ去るとそこは空洞となります。
サーストン・ラバ・チューブの入口
ということで、サーストン・ラバ・チューブの入口は地下にあります。 巨大シダの下を潜るようにして、その入口へと向かいます。
サーストン・ラバ・チューブ
これがそのサーストン・ラバ・チューブの内部。 500年ほど前のものとされ、直径は2.5mほどでしょうか。 なんとも不気味なトンネルが奥へと続いています。 主要な10分ほどで歩けるところには照明がありますが、その奥には真っ暗なチューブが続いています。
キラウェア・イキ・トレイルを行く
朝早くだったのでサーストン・ラバ・チューブには誰もいませんでした。 ここは人気スポットで渋滞になることもあるというので、ラッキー。 サーストン・ラバ・チューブを出たところから、キラウェア・イキ・トレイルの入口はすぐです。
ここキラウェア火山の一帯には様々なトレイルがあります。 この時はここから東に15kmのプウオウ火口付近の火山活動が活発で、その風下に当たるこの周辺のいくつかのトレイルは閉鎖されているのですが、キラウェア・イキ・トレイルは大丈夫とのことなので行ってみることにしました。 ちなみに『イキ」はハワイ語で『小さい』という意味だそうです。 お隣のハレマウマウ・クレーターより小さいからでしょうか。
ジャングルの中から見えるクレーターの底
まずは鬱蒼とした巨大シダや見知らぬ樹木が生えるジャングルの中の細い道を下り出します。 キラウェア・イキ・トレイルはキラウェア・イキ・クレーターの底を通るコースなのです。
かなりきつい勾配の小径をてこてこと下ります。 木々の合間からチラッ、チラッと見え隠れするように、クレーターの底が現れ出します。
キラウェア・イキ・クレーター
標高差150mほどを下り、視界が開けたと思うと、そこは
『あっ、、』
『えっ、、、』
という世界でした。 周囲には高さ150mの崖が廻り、その底は灰色の不毛地帯。 大きさは、、、 写真の中央部に人が写っているのがわかりますか? おおよその直径は1kmほどでしょうか。
木々に覆われた周囲の崖
鋭い岩のような真っ黒な溶岩?の斜面を慎重に下ると、クレーターの中央部を突っ切る白っぽい道が見えます。 先人が残した道しるべです。
振り返れば、鬱蒼とした樹木に覆われた崖がぐるっと周囲を取り囲んでいます。
火星の木
『ここは火星、それとも月?』 取りまく崖の緑が見えなければ、きっとそう思ったでしょう。 ここにはただただ灰色の世界が広がります。
斜面を下り切ると、ごつごつした岩はなくなり、古びたアスファルトのような地面に変わります。 ほとんど真っ平ら。 ところどころ、不良工事だったのかそのアスファルトに亀裂が入り、一方がめくれ上がった大きな段差が見られます。
月の木の花
こんな火星だか月だか判らないようなところにも、植物は生存しています。 アスファルトの地面を突き破り、真っ赤な花まで付けて。
巨大モグラの通過あと
このクレーターは1959年に噴火しています。 その時の映像は物心が付いた後に見たことがありますが、壮絶なものでした。 真っ赤な炎が飛び散り、だくだくと流れる溶岩。
今その火口にいるかと思うと、ちょっと背中がぞくぞくします。 一見静まり返って見えるここも良く観察すれば、あちこちから水蒸気が吹き出ています。 こちらは地中を巨大なモグラが這いずり回ったかのような、地割れ。 下にあった溶岩か水蒸気が流れ出し、陥没したのでしょう。
赤い地肌の斜面
このクレーターはほぼ全周が閉じたきれいな形ですが、北の一部だけが崩壊しています。 その崩壊するすぐ手前の西側には、こんな赤い色をした斜面があります。 他は真っ黒なのに、ここだけ赤い。 赤いのは鉄を含んでいるのでしょうか。
北側からクレーターを見る
ただただ唖然としながらクレターを横切って北の端までやってきました。 ここはエッジが崩壊している部分です。 ここは真っ平らなクレーターの底とは対照的に、がしゃがしゃした、流れ出そうとした溶岩の塊のようです。 しかしこの先はキラウェア・カルデラのエッジが聳えているので、この溶岩は行き場を失ってここに留まったのでしょう。
ジャングルの上り
行きはよいよい帰りはこわい~ ってのは本当です。 クレーターの底からは上まで上らねばなりません。 標高差150mをえっこらえっこらします。 周囲は火星からジャングルへと一変。 脳がこの変化に付いてこられない!
キラウェア・イキ・クレーターのエッジからハレマウマウ・クレーターを望む
高度が増し、ジャングルの木々の合間からお隣のハレマウマウ・クレーターが見えました。 相変わらず白い噴煙を吐き出しています。 右手に穏やかに上る稜線はマウナ・ロアのそれです。
キラウェア・イキ・クレーターをエッジから見下ろす
下を見れば、さっきまで歩いていたキラウェア・イキ・クレーターです。
ボルケーノ・ビレッジを出る
キラウェア火山を堪能した私たちはボルケーノ・ビレッジで昼食を摂り、B&Bに預けた荷物をピックアップしてヒロへと向かいました。 なんとB&Bのおじさんはセグウェーに乗って見送ってくれました。
ハワイ・ベルト・ロードを下る
ここまでのハワイ島はアップダウンの連続でした。 昨日の延々と続くボルケーノまでの上りはちょっと大変でした。 でも今日はここからヒロまで、ず~っと、ず~っと下りなのです。
先に海が見えた!
ハワイ・ベルト・ロードの路肩は広く、安心して走れます。 でも下りが続きすぎてちょっと飽きちゃった。 だって50kmも下りなんだも~ん。
行く手に太平洋の青が見え、その海へどんどん落ちて行くと、今度は左手にハワイの最高峰マウナ・ケアの稜線が見え出します。
ヒロからの上り
ペダルをほとんど回すことなく、途中の休憩も必要とせずに今回の旅の出発地ヒロの街に到着です。
時間が早かったので、街の東に流れるワイルク川の上流にある滝に行ってみることにしました。 内陸へ向かう道はみんなきつい!
高台の住宅地
ヒロは数度の津波の経験から、居住地を高台に移してきた経緯を持つ都市です。 ダウンタウンは湾に面した小さな一角ですが、高度が増すにつれ、廻りは住宅地になります。
巨大マンゴーの木
ヤシの木にブーゲンビリアといった南国の風景の中に、時折刈り込まれたツツジが植えられた、日本庭園を持つ住宅があったりします。
午後の強い日差しと結構な斜度の上りにあへあへ。 も~ダメ~、と思う頃、レインボー滝の標識が現れ、マンゴーの巨木が見えてきます。 木の下にはマンゴーの実がボタボタとたくさん落ちています。
マンゴーは南国のフルーツとして有名ですが、ハワイではあまり売られていません。 無数の実を付けたこんな木がそこら中にあるからです。
レインボー滝
このマンゴーの木の奥にはさらに巨大なバニヤン・ツリーが聳え、その奥にレインボー滝はひっそりとありました。 24mのこの滝にはハワイ語で『水の中に見える虹』という意味の別名があるそうです。 ここには良く虹が架かるのだそうです。
滝の上の水の流れ
一日に一度は必ず雨が降ると言われるここヒロでも、6月は一番降雨量が少ない月です。 通常二本の筋が見える滝の流れは、今は一本しかありません。 滝壺の奥はポッカリと口を開けた洞窟です。 これはもしかして、ラバ・チューブ? ここにはマウイの母、ヒナが住んでいたという言い伝えがあるそうです。
高級住宅地?
レインボー滝のさらに上流にもう一つ滝があるというので行ってみました。 表通りを進んでいると、庭の手入れをしていたおじさんが、『こっちの道を行きなさい、車が少なくて安全だから。』 と裏道を教えてくれました。 ハワイの人はみんな気取りがなく、親切で、心優しい。 ハマっちゃいそうです。
ペエペエ滝
高級住宅地とおぼしき一帯を通り抜けると、ボイリング・ポットの標識。 ボイリング・ポットって、温泉かな~、と思い入ってみると、鬱蒼とした木々の間から落ちる小さな滝がありました。 どうやらこれが二つ目の滝、ペエペエ滝のようです。
ボイリング・ポットは残念ながら温泉ではありません。 この滝が下へ流れるにつれ、その流れは激しく渦巻き、ぽこぽこと泡を立てています。 その状態からこの名で呼ばれるようになったようです。
ヒロで小さいながらも美しい二つの滝を眺め、今日も充分楽しみました。 これで観光終了、ホテルへは今まで通っていない道で行こうと、コモハナ・ストリートを使ってみることにしました。 この道、結構なアップダウンであひあひ! 最後までアップダウンのハワイ島でした。