バンフ周辺の山々
お天気だ! バンフのB&Bの窓から見える空は青い。
カナディアンロッキーで過ごすのも残り二日となり、天気だったらハイキングしようと思っていました。 それが初日にやってきたのです。 こうなれば一刻も早く出発です。 ベッドから転げ落ちるようにして起き上がり、いつもより一時間早い朝七時に宿を出発。
外の空気はとてもひんやりとしています。 しかし周囲の山々はもうお目覚めのよう。
今日向かうはバンフから20kmほどのところにある、サンシャインメドウズ。
ボウ川沿いの砂利道を行く
街の南に流れるボウ川の橋を渡り、ケイブアベニューのすぐ脇を走るダートのトレイルに入ります。 このトレイルはアベニューに沿って薄い林の中を進んで行きます。
少し行くとケイブ&ベイスン国定史跡の手前で北に折れ、ボウ川の畔に出ます。 ここは広めの砂利道で、すこしモソモソします。
ボウ川に映るカスケード山
朝のボウ川は驚くほど静かで、鏡のような川面にバンフのシンボルともいうべきカスケード山を映しています。
ダートのトレイルがケイブ&ベイスン国定史跡から始まるサンダンス・トレイルに出ると、路面はアスファルトの舗装になります。
サンダンス・トレイル
道の真ん中に大きな標識が建っていて、なにやら注意書きがあります。 どうやらこのあたりに熊が出没したようで、要注意エリアが示されています。 これから進むトレイルはそのエリアのちょうどエッジ部分になっています。
注意書きは進入禁止を意味するものではなく、あくまで人々に状況を知らせるものです。 トレイルの先は明るく見通しもいいので、ここからは注意して進むことにします。
このあたりは明るくて快適なのですが、、
ヒーリー・クリーク・トレイル
道はいつしか川を離れ、森の中へと入って行きました。 ありゃ、これはちょっと方向が違うな、と気付いた時にはサンダンス渓谷方面に向かっていました。 この渓谷にはショートハイクコースがあり当初は寄る予定でしたが、そこは熊エリアの真ん中。 さすがにこれはちょっとまずかろうと、引き返します。
この道からは少し手前で、ダートのヒーリー・クリーク・トレイルが分かれていたのです。 このトレイルに入ればガレ場あり、ウェットなところありと少々手強い。 でもここは国立公園のガイドではEasyとありますな。
ヒーリー・クリーク
えっこらよっこらとペダルを踏み続け、水たまりにはまらないように気をつけながら、のろのろと進みます。
周囲は森が深くて寂しい。 ここで熊が出てきたらどうしよう、と本気で考えるようなところです。 ヒーリー・クリークの流れはまったくといっていいほど見えません。
『舗装路はまだ~』 とダートに激弱のサリーナが何度もつぶやく。
せせらぎの音が聞こえてきて空が明るくなると、ついにヒーリー・クリークに出ました。 静かな流れの先には朝靄なのか霧なのか、ぼーっとした霞がかかり、その上にゴーリー山あたりが頭を出しています。
サンシャイン・ビレッジ・ロード
長かったダートのヒーリー・クリーク・トレイルはついに終わりました。 サンシャイン・ビレッジ・ロードへの出口の橋の袂でため息をつき、そして深呼吸をしてサンシャイン・ビレッジに向かいます。
そして次の苦難はすぐにやってきた。
ビレッジに向かうこの道は、上り、上り、またまた上って・・・
サンシャインメドウ行きのバス
しかし激坂はないので、ゆっくり進めば問題はありませんでした。 とにかく、なんとかサンシャインメドウ行きのバスが出るゴンドラ乗場に到着です。 この先は一般の車は進入できませんが、徒歩や自転車はOK。 しかし私たちはここからバスです。
バスは一時間に一本。 次便は満席とのことで、その次の11時の便で出発です。 そのバスはウィンウィンうなりをあげながらダートの道を上って行きます。 ここはとても私たちに上れるような坂ではありません。 バスにしてよかった。
上のネイチャーセンターを出発
15分ほどでバスは上のネイチャーセンターに到着します。 ここからいよいよサンシャインメドウズのハイキング開始です。
ネイチャーセンター付近はわりと殺風景で、この先に評判の高いサンシャインメドウズが広がるというのが、あまりピンと来ません。 周囲には針葉樹が生えているので、ここはまだ森林限界には達していないようです。
ところで、朝は青かった空はいつの間にか真っ白に。 ありゃりゃ。
まずは穏やかな登り
トレイルはスキー場のリフトの横を抜けて、穏やかに上へと向かいます。
先にふたコブの山が見え出すころになると、足元には髭ジイ草(ウェスタンアネモネ・シードヘッド)がモジャモジャしだし、高山植物が咲き出します。 そして地リスがあちこちに。
ようやくメドウらしくなってきました。
南の山々
上りだったトレイルが下り出すと、今度はずっと遠くの南の山並み。
真ん中の針のように鋭く尖っているのはスパーピーク、左端にセルキルク山(2,938m)。
ロックアイル湖
その山々を眺めつつ進むと、下に湖が見えてきます。
小さな島がいくつか浮かんだロックアイル湖です。
ガーデンパストレイル
ロックアイル湖からは湖の西を廻るようにしてガーデンパストレイルに入ります。
ここまで広かったトレイルは狭まり、いい感じになってきました。
髭ジイ草の中の鹿さん
そこに現れたのはシカさん。 耳が大きいからミュールかな。
南の山々を背後に
ここはバンフ国立公園のすぐ隣の、マウント・アシニボイン州立公園です。
どれがアシニボイン山かな、と見回しますが、それらしき山はまだ見当たりません。
小川
トレイルが二手に分れ、一方はラリックス湖、もう一方はグリズリー湖に向かう分岐に到達。
そこにはこんなきれいな小川と、
花畑
こんな花畑が。
インディアン・ペイントブラシ、トール・パープル・フリーベン、アーニカといったところが花を咲かせています。
地リスと髭ジイ草
その花畑の周りに遊ぶのはこの方々。
人なつこくいたずら好きで、水筒の紐をくわえて持って行こうとしたりします。 そこいらじゅうにたくさんいます。
グリズリー湖
地リスと遊びつつ歩を進めるとグリズリー湖の畔にやってきました。
この湖はサンシャインメドウズにある三つの湖のうち最も小さく、最も低いところにあって周囲の視界があまりないので、ちょっと寂しい感じです。
シンプソン展望所から南の山々を臨む
グリズリー湖を過ぎると再び花畑が現れます。 花畑を過ぎるとその先にあるのはシンプソン展望所。
木々の間に作られたこの小さな展望所からは、南の山々がとても良く見えます。 下にノースシンプソン川が流れ、正面にはシンプソンリッジ、その向こうにもいくつもの頂が並んでいます。
ラリックス湖
眺めの良いこのシンプソン展望所でゆっくりお昼にしたいところですが、そこはすでに先客でいっぱいだったので、少し進んでラリックス湖の畔でお弁当を広げました。
畔を行くトレイル上には何人かのハイカーの姿を捉えることができます。 しかしその数はうんざりするほど多くはありません。 むしろ、ここの人気を考えるなら少なすぎると言っていいほどです。
マイカー乗り入れ禁止、20人ほどのバスは一時間に一本のみ。 こうしたことで、この人気の場所もハイカーの数が制限され、自然の生体をはじめとする環境が保全されるのでしょう。
スタンディッシュ展望所から
ラリックス湖をぐるりと廻り、ロックアイル湖まで戻ってツイン・ケルン・メドウ・パーク・トレイルに入ると、右手の高台に木造の展望台が見え出します。
メイントレイルを離れてこの展望台に向かえば、道はジグザクになり急な登りになります。 えっこらえっこら登ってやっとこスタンディッシュ展望所に辿り着きました。 ここはアルバータ州とブリティッシュ・コロンビア州の境界でとても眺めがいいところです。
下にはさきほどお弁当を食べたラリックス湖が左手に、右手には小さくグリズリー湖が見え、その上にはどこまでも続く山並み。
真ん中にアシニボイン山
その視線を左に移せば、真ん中に島が浮かぶロックアイル湖、その丁度真上のふたコブ山の間に、ついにアシニボイン山(3,618m)が現れます。
アシニボイン山はこの展望台と同様にアルバータ州とブリティッシュ・コロンビア州の丁度境界にあり、大陸大分水嶺を成す山で、このあたりの最高峰です。
ここの眺めはとってもとっても、とっても素晴らしい!
山、サイダー、クミちゃん
遮るもののないスタンディッシュ展望所は、さすがに風がびゅーびゅー。 ゆっくりお茶でもしてのんびりしたいところですが、とても寒いので景色を瞼の裏に焼き付けて、そそくさと下ります。
ここまでいっしょに歩いてくださったのは一年間カナダで学校の先生をしておられるクミちゃん。 彼女はここからネイチャーセンターに戻るとのことで、ここでお別れ。
ツイン・ケルン・メドウ・パーク・トレイル
私たちはクミちゃんと別れたあとも、ツイン・ケルン・メドウ・パーク・トレイルを北に進みます。
先からは大きなザックを担いだ本格的なハイカーたちがやってきます。 ここには私たちが歩いたトレイル以外にもたくさんトレイルがあり、アシニボイン山にも行けるそうです。
ツイン・ケルン・メドウ・パーク・トレイルを行くサリーナ
穏やかに上るツイン・ケルン・メドウ・パーク・トレイルはいつの間にか森林限界を超えたらしく、辺りから木々が消え、足元には小さな花々が咲くようになります。
ツイン・ケルン・メドウ・パーク・トレイルの花々
黄色いのはアルパイン・バター・カップでしょうか。 珍しい水色の花も時折見かけます。
シンプソン・パス・トレイルからのアシニボイン山展望
ツイン・ケルン・メドウ・パーク・トレイルがシンプソン・パス・トレイルにぶつかると、そこからはあのアシニボイン山が大きく見えます。
ここからトレイルは下りとなり、大きく進行方向を変えるとそのアシニボイン山は正面に。 木々が生え出した斜面を駆け下りるように下ると、出発点のネイチャーセンターに到着。
サンシャインビレッジのゴンドラ乗場
ネイチャーセンターで一休みしつつ、帰りのバスを待ちます。 このバスも定員制で、ネイチャーセンターに到着した順番になります。 丁度一息付いた頃に私たちの番にがやってきました。 このバスは来る時より小さい10人乗りほどのバンでした。
下のゴンドラ乗場から自転車を漕ぎ出すと、ここからは下りなのであっという間にサンシャイン・ビレッジ・ロードを下り切り、トランス・カナダ・ハイウェイに入ります。
トランス・カナダ・ハイウェイ
トランス・カナダ・ハイウェイは、交通量はもの凄いのですが路肩が広くて助かります。 しかし、好んで走りたい道とは言えません。 どおしてもこの道を走らなければならないのは2kmほどと、僅かなのが救いです。
バーミリオン湖
トランス・カナダ・ハイウェイにボウ・バレー・パークウェイが合流するところから、バーミリオン湖の畔へと続く自転車道に入ります。
この自転車道もそれから続くバーミリオン湖の畔の道も、とても快適です。 湖の向こうにバンフの南に聳えるランドル山が見えてきます。
カナディアン・パシフィック鉄道
バーミリオン湖の畔の道を出るとバンフの街の入口の踏切りにやってきました。 丁度そこにカナディアン・パシフィック鉄道の貨物列車が通り掛りました。
ガッタン、ゴットンと音を立ててゆっくり通り過ぎるこのディーゼル機関車は、後ろに79両もの貨車を従えていました。 時にはその数は100を越えることもあるとか。
40マイルクリーク
踏切りを渡ると、道は車道を離れ40マイルクリーク沿いを進みます。
この小川でカヌーを操る人々を横目に進めば、道はボウ川へと続きます。
バンフ中心部
エメラルド色のボウ川を眺めつつ、バンフの街中に到着です。
あれ、ここは晴れている、、、
サンシャインメドウズは曇りでしたがそれでもそこは充分に美しく、普段歩き慣れていない私たちに丁度良いコースで、とても楽しめました。
さて、明日はカナディアンロッキーの最終日です。 どおしようかなぁ~