ミクロフ
南モラヴィア地方はオーストリアとの国境近くにあるミクロフをベースに、その東にあるヴァルチツェとレドニツェの間に広がる森を散策します。 この一帯は豊かな自然の中に歴史的な建造物がちりばめられており、ユネスコの世界遺産に指定されています。
爽やかな朝、小高い丘の麓にあるミクロフを出発。
聖セバスチャン教会が建つ小高い丘を後に
ミクロフからヴァルチツェへは一般道を行けばすぐなのですが、ワインで有名なこの地、せっかくだから街の東に広がるぶどう畑の中を行ってみることにします。
聖セバスチャン教会が建つ丘をぐるりと廻るとぶどう畑が広がるようになります。
ぶどう畑の中の地道を行く
快調な出だしに思えたのですがどこかで曲がり角を間違えたらしく、道はぶどう畑の中のあやしい地道と化します。
地道を戻る
今日は時間はたっぷりあるので、慌てることはありません。 この道を行けるところまで行ってみることにします。 しかしぶどう畑の中を上り詰めた道は、ヘアピンを描いてやってきた方向へ戻ってしまいます。
結局、一旦舗装路まで戻ってやり直しです。
ムシュロヴスキー・ドルニー池
今度は慎重に曲がり角を確認して舗装路からぶどう畑の中に入りますが、なんとこの道もダート。 先ほどの道とあまり変わらない怪しげな道なのでした。
あとでこの道をCykloserverで確認すると、自転車のサブルートにはなっているのですが、しっかり破線(ダート)で描かれていました。
とにかくなんとかナ・ムシュロヴィエ近くのムシュロヴスキー・ドルニー池に辿り着きました。
ナ・ムシュロヴィエからセドレツへ
ここからは安全を取り、普通の舗装路でナ・ムシュロヴィエへ向かいます。 しかしそのナ・ムシュロヴィエを抜けるとすぐに道はまた畑の中を行く地道に。 このあたりは大きな道以外はダート率が高いようです。
ここの地道は比較的良く締まっているのであまり問題なく走れますし、周辺は開放的でいい眺めです。
セドレツ
この地道を数百m楽しむとセドレツに到着。
ここからは大きな池沿いに快適な自転車ルートがあることがわかっているので、安心して進めます。
池を眺めながら自転車ルートを行く
セドレツからの自転車ルートはまず気持ちのよい木立の脇を行き、次に麦畑の中を行くようになります。
最初の方は、池は木立の合間からちらちらと見えるくらいですが、麦畑になるとその先に大きな水面を現すようになります。
川状の池の脇を行く
大きな池が終わるとその先には、川のような細長い池が現れます。 ここは片側は木立、片側は水面で涼しくて気持ちいい。
このあたりから、サイクリストと良くすれ違うようになりました。 自然豊かなこの地方を巡るサイクリストは多いようです。
ひまわり畑
長い池の先には大きな池がもう一つあるのですが、その岸辺は地道なのでこれは回避、ちょっと迂回してレドニツェに向かいます。
池を離れるとひまわり畑です。 ここも三分咲き程度で、チェコでは目の覚めるような輝かしい満開のひまわり畑にはまだ出合っていません。
レドニツェ城正面
こうしたひまわり畑やぶどう畑、とうもろこし畑などを見ながら進み、幹線道に出るとそこがレドニツェです。
このあたり一帯は13世紀にボヘミア王からリヒテンシュタイン家に与えられ、その後約700年に渡り同家の領地でした。 レドニツェでまず向かうのはそのリヒテンシュタイン家がおもに夏の離宮として使ったというレドニツェ城です。
大通りの交差点にある標識に従って進むと駐車場があり、その奥にレドニツェ城の正面が見えます。
庭園から見るレドニツェ城
16世紀にルネッサンス様式で建てられたこのお城は、最終的には19世紀中頃に現在見られるようなチューダー風のネオゴシック様式に改修されたそうです。
最近補修されたのか、その外壁は汚れ一つなくきれいそのものです。 写真右に見えるのはガラス張りの温室で、その前には幾何学模様のフランス式庭園が広がっています。
イギリス式庭園を巡る
お城内部の見学は11時発の部が出発したばかりで、次は13時とのこと。 そこでその間にお城の後ろに広がるイギリス式庭園を散策。
こちらの庭園は先のフランス式庭園のように幾何学形態のかしこまったものではなく、自然の森といった感じで、中には小川が流れ、
池からミナレットを臨む
池があり、その向こうには18世紀の終わりから19世紀の初頭に造られたミナレットが建っています。
ミナレット
なぜここにアラブ風のミナレットが建っているかは? なのですが、
ミナレットの上のサイダー
とにかくその塔に上ってみます。
森の中に池があり、コウノトリの巣も見えます。
ミナレットの上からお城を臨む
池の先には先ほどまでいたレドニツェ城も見えます。
この庭園の外側にも森は広がり、あたり一帯が森の中にあるようにも見えます。 しかしこの森は連続したものではなく、畑と交互に現れ、ちょっとしたパッチワークのように見えます。 こうした森や畑の自然環境の中に歴史的な文化遺産があることが、ユネスコ世界遺産に登録された理由なのです。
森の中のダートを行く
ミナレットから池の畔を廻り、一旦お城に戻ってその内部を一時間ほど見学したあとは、周辺の森の中を探索。
自然豊かなここにはサイクリストがたくさん。 しかし森の中の道にはダートもあり、マイナールートにはかなり荒れたところもあり、これはちょっと大変です。
ハンティングのための城
この森の中にはたくさん歴史的な建造物がちらばっています。 その一つがこちらのハンティングのときに使われたお城。
レドニツェ城が瀟酒なシャトーであるのに対し、こちらはキャッスルでその姿もちょっと厳めしく、おそらく本来は要塞として造られたものなのでしょう。
森の中の舗装路
森の中のマイナールートは大変なことになると悟った私たちはメインルートを行くことにしました。
こちらは快適な舗装路で、まっすぐ行けば南のブジェツラフに至りますが、そこまで行ってしまうとリヒテンシュタイン家のもう一つのお城のあるヴァルチツェまでは幹線道を辿ることになりそうなので、途中でムリーンスキー池方面に進路を変えます。
ムリーンスキー池
一旦一般道に出たあと林の中に入ると、下にムリーンスキー池が現れます。 この池はレドニツェの南にある三つの池のうち一番東にあるもので、その畔にはこれまたちょっと想像できないような建造物が建っていました。
アポロ神殿
それは19世紀の初頭に建てられたアポロ神殿です。
これは湖面からは少し高いところに建っているので、湖や対岸から見れば少し目立つ建物と言えるかもしれません。 しかし、いったいなぜここに、という疑問が残りますね。
なおも森の中のダート
三つの池の南側にも森が広がっています。
その中を行く道はまたしてもダート。
三女神の神殿
この森にはまだまだ不思議なものがたくさん建っています。
こちらはアテナ、アフロディテ、アルテミスの三女神に捧げられた神殿。
砂地獄を行く
その神殿の後ろを行く道はなぜかしら砂地獄できつい。
ぬかるんだ道のメンテナンスに砂を入れたのでしょうが、こりゃあちょっと多過ぎですよ。
ネオゴシックのチャペル
砂地獄の先にはこんな小さなチャペルがあり、
ディアナ神殿
凱旋門のような神殿もあります。
レドニツェからヴァルチツェの間の森には、これら以外にもオベリスクや小さなお城などの建造物がたくさん残されています。
しかし主だったものは見たし、ダートはそろそろ脱出したいと、ここからはヴァルチツェへ向かう幹線道に向かいました。
ヴァルチツェ中心部へ
その幹線道が穏やかに下ると道の両側に民家が並ぶようになり、その先にヴァルチツェのお城が見えてきました。
ヴァルチツェの広場
教会の高い塔を目掛けて幹線道を折れると、そこがヴァルチツェの広場です。
左手には聖マリア教会の高い塔が二本聳え、真ん中にはお決まりの記念柱が建ち、19世紀の終わり頃建てられた村役場も右手に現れます。
ヴァルチツェ城
その村役場の反対側のアーチを潜り抜けると、そこがヴァルチツェ城の正面です。
このお城はリヒテンシュタイン家の居城だったそうで、同家は14世紀の終わりから20世紀の中頃までここを所有していたようです。 ここのお城の歴史はたいへん古く11世紀にはその存在を知られており、16世紀にルネッサンス様式で建て替えられたあと、17世紀末からバロック様式の装飾が加えられていったようです。
今見れば、やはりお城というよりは宮殿といったほうがふさわしいように思えます。
お城のワインセラー
このお城での最大の楽しみはこちら。 ここにはお城のワインセラーがあり、テイスティングができるのです。
スパイシーで豊かな香りの白、力強い赤、爽やかであっさりしたロゼと、ここは楽しめます。
お城のぶどう畑?
ワインテイスティングのあとヴァルチツェを後にし、ミクロフへと戻ります。
ヴァルチツェからはすぐに上りとなり、道の両側はぶどう畑。 これがお城のぶどうかな?
ワイン樽
その畑の脇には別のワイナリーのサインが、大きなワイン樽に描かれていました。 この畑はお城のではなくて、こっちのワイナリーのものなのですね。
南側のぶどう畑の奥にはまたまた文化的な遺産、巨大なコロネードが姿を現しますが、これはもういいや、ということにして帰路を急ぎます。
ウーヴァリ
ヴァルチツェからミクロフへの帰り道は、あのプラハとウィーンを結ぶグリーンウェイです。
プラハからのグリーンウェイはヴァルチツェのすぐ西で南へ向かい、チェコとオーストリアの国境を超えてウィーンへと向かうのですが、私たちはこの逆を辿ります。
麦畑を行く
ウーヴァリの先で道はいつしか下りとなり、麦畑の中を行くようになります。 これまで麦畑は青いのが多かったのですが、このあたりは青から黄金色に変わるところのようです。
麦
この麦はビール麦、それともパン用かパスタ用か?
そうそう、チェコにはイタリアからやってきた人々も多いようで、ハイレベルなイタリア料理店がたくさんあります。
シルエットのミクロフ
麦畑の彼方にミクロフのシルエットが現れました。
今夜はまずビールで喉を潤して、きりっとした白ワインでパスタでも食べようか、などと考えながら一際目立つミクロフのお城を目指します。