ビラ・レアル近くの景色
今日はポルトからバスで、トラス・オス・モンテス地方のシャベスに移動です。Trás-os-Montesはその名の通り、山の後ろの地で、周りは山ばかり。
私たちの使ったバス会社のターミナルはポルトのど真ん中で、本当にこんなところにバスが入ってこられるのか、というような路地の奥にあってびっくり。私たちは前々日にここの窓口でチケットを買ったのですが英語が通じず、『あさっての切符』を説明するのに四苦八苦。しかし無事購入することができてホッ。
乗り込んだバスはE82を西にどんどこ進み、まずアマランテに、次にビラ・レアルに停車しました。このビラ・レアルで乗り換えだったのですが、それを知らずにちょっとわさわさ。
見知らぬ村
ビラ・レアルからは進路を北に取り、遠くの山並みを眺めながら進みます。起伏は大きくはありませんが、平坦なところはほとんどなく、岩っぽいところが多いようです。風が強いようで、あちこちに風力発電の風車が建っているのが見えます。
高速道路のような道を下りると、時々こんな村をかすめて進んで行きます。周囲はぐるりと山です。
シャベス
ポルトから二時間半でシャベスに到着。
手前に流れているのはタメガ川で、高い塔は中世のお城です。
お城近くのロータリー
バスは街の西の端の路上に停車。ここで自転車を組み立てて街中の宿に向かいます。
ちょっと走るとお城の近くのロータリーに出ました。正面右から延びている道はディレイタ通りで、この道に沿って古い建物が建っているようです。
サント・アントーニオ通り
しかし現在この街で一番賑やかなのは、こちらのサント・アントーニオ通りです。
サント・アントーニオ通りを行く
花で飾られたこの道を進んで行くと、先のディレイタ通りと合流し、
タメガ川に架かる古代ローマの橋を渡る
その先に、タメガ川が流れます。
タメガ川とサリーナ
このタメガ川に架かるのは、なんと驚くことに古代ローマ時代の橋なのです。
我らが宿
橋の見学はあとにして、とりあえず宿にチェックイン。ここは橋の近くで便利なところです。
お昼ごはん
荷解きを終えたら昼食タイムです。私たちの宿はレストランを兼ねているのでここでランチ。
野菜スープとメインは太刀魚にしました。ポルトガルのスープではカルド・ヴェルデが有名ですが、これは元はポルトガル北部の料理だそうです。しかしそれにはこれまでお目にかかれなかったので、ここにあるかなと思ったのですが、出てきたのはこれまで同様、野菜スープでした。これはじゃがいものポタージュをベースに、幾種類かの野菜を煮込んだもので、あっさりしています。いつも塩コショウがほしくなるのですが、ポルトガルではそれらをテーブルに出してはいけないという決まりでもあるように、たいてい置いてありません。
メインはこれで一人前。たっぷりの野菜と茹でポテトが添えられ、太刀魚の切り身は四つ。とても一人では食べきれないので、私たちはいつもメインは一人前しか頼まず、それをシェアします。
ワインはこの近くでよく飲まれるヴィーニョ・ヴェルデ。緑のワインという意味ですが、これは若いぶどうで作られ、色もほんのり緑色で微発砲。軽くて爽やかなので、暑い時に飲むのにぴったりです。ハウスワインはどこでも安く、リスボンやポルトでも10€以下で飲めますが、ここは1リットルでたったの3€と激安。
古い城壁
さて、ランチのあとは街の探索です。まずはやっぱりローマ橋から。
宿を出るとすぐ、高い壁が現れます。これは街を取り囲んでいた城壁の一部で、今では一部しか残っていませんが、なかなか立派です。ここで城壁は左の白い建物で途切れているように見えますが、実はここで左に折れ、建物の後ろに残っているのです。私たちの宿の後ろにもこれは続いていて、小さな中庭の向こうに見えていました。
タメガ川とローマ橋
この城壁のすぐ先にタメガ川が流れています。
タメガ川はこの近くのスペインに源を発し、ここからアラマンテを通り、ドウロ川に流れ込んでいます。
ローマ橋とサリーナ
そこに架かるローマ橋は石造の連続アーチ橋です。
これは下流側からの眺めで、
ローマ橋を上流側から見る
こちらが上流側。
上流側のアーチの根元には橋を守るための石積みのガードがあります。
ローマ橋上部
橋の上は近年整備され直したのか、舗装はきれいで、手すりは鉄ですがこれもそれなりに新しいように見えます。
この橋は現在車は通れないようになっていて、散策するには打ってつけです。
サイダーとマイルストーン
140mほどある橋の中央から少し街よりに、円柱が二本建っています。これはマイルストーンだそうです。
マイルストーンに刻まれた文字
この橋の完成はなんと西暦104年だそうで、ブラガとスペインのアストルガを結ぶ重要な道だったようです。
橋の袂の庭園
橋を渡って街の反対側に出ると、そこにはちょっとした庭園があり、
東側下流からローマ橋を見る
その前からもローマ橋が見渡せます。
橋の袂の教会
この庭園の反対側にはバロックの教会がありますが、これは閉まっていて中には入れず。
シャベスの街は川を渡ったこちら側にもありますが、それはこの教会周辺の僅かなエリアのみです。
橋の袂の石造の建物
ローマ橋の見学はおしまいにして、橋から続くサント・アントーニオ通りを歩いてみます。
街側の橋の袂には石造の立派な建物が建っています。一階はレストランになっていて賑やか。こんな小さな街にどこから人がやってくるのだろうと思うくらい、このあたりのレストランは盛況です。
サント・アントーニオ通りとディレイタ通りの交差点付近
サント・アントーニオ通りとディレイタ通りの交差点付近にも立派な建物が。
日陰でくつろぐ人々
街角の日陰ではおじさんたちがくつろいでいます。
肉屋さん
この街はプレズントという生ハムで有名だそうです。肉屋さんを覗いてみると、そのプレズントがびっしり。
このほかショウウィンドウには、豚の鼻や耳、蹄といったものも並んでいます。ポルトでは臓物煮込みを食べますが、ここではこうしたものも食べるようです。
バカリャウ公園
サント・アントーニオ通りが折れるところにはバカリャウ公園があります。
この一角にある観光案内所に寄ってから、サン・フランシスコ要塞に向かいます。
サン・フランシスコ要塞の門
17世紀のサン・フランシスコ要塞は高台にありますが、かつてはここが街の中心だったようです。
サン・フランシスコ要塞の中の教会
この要塞の平面形はちょっと変わっています。航空写真で見てもらうとわかりますが、長方形のそれぞれの角に剣先のような形状の出っ張りがあり、全体には星形とでもいうべき形をしています。
教会内部
この中には教会もあります。
かつては要塞の中に一つの都市があったのでしょうか。
要塞の擁壁
ここはメインの長方形のところで、先に剣先の出っ張り部分が見えます。
その手前の塔は下の写真の南側の出入り口の上部にある見張り塔です。
サン・フランシスコ要塞の南門
現在の街の中心から上ってくると辿り着くのはこちらの南側にある門で、その前には大きな木が植えられ、きれいな草花でデザインされています。
サン・フランシスコ要塞からお城に向かう
サン・フランシスコ要塞を出ると家々の赤い屋根の上にお城の塔が飛び出して見えます。
次はあそこに向かいます。
マトリズ教会
着いたところはルイス・カモンイス広場で、この周りをこの街の主要な施設が取り囲んでいます。
こちらはロマネスクのマトリズ教会。16世紀にかなりの程度改築されたようですが、入口部分と鐘楼はオリジナルのようです。
ミセルコルディア教会外観
マトリズ教会に直行して建つのは17世紀バロックのミセルコルディア教会で、ファサードにはグリグリねじりんぼうの柱が建ち、
ミセルコルディア教会内部
内部に入ってみれば屋根はシンプルな木造。そして正面にはキリストの生涯が描かれたアズレージョ。
市庁舎
ミセルコルディア教会の隣、マトリズ教会に相対して建つのは今でも市庁舎として使われている建物です。
ミセルコルディア教会の正面に建つ家々
ルイス・カモンイス広場のもう一つの辺、ミセルコルディア教会の正面にはカラフルな家々が建ち並んでいます。他の三辺が大きな建物なのに、どうしてここだけが一般の建物なのかはわかりませんが、これによりこの広場はぐっと身近な雰囲気になっています。
14世紀のお城の塔
ミセルコルディア教会の裏手に建つのは14世紀のお城の塔です。この中は現在軍事博物館になっており、中世から現代までの武器などが展示されています。
この前はちょっとした庭になっていて、きれいな花が植えられており、
大砲
その先にはいつの時代のものなのか、大砲が置かれています。
ここからは街を取り巻く山々が良く見えます。
お城の塔からルイス・カモンイス広場と街を見下ろす
そして塔に上れば、カモンイス広場とその下に広がる街も一望に。
お城からタメガ川を見る
こちらは南西のタメガ川方面で、街外れにあるポンテ・ノヴァ(新しい橋)が見えます。
右端の大きな建物はホテルで、この街の温泉施設はその一角にあるようです。
飲泉所のシェルター
お城のあとはこの川辺にある温泉に行ってみることにします。
この街はとても小さく、観光資源と呼べるものはこれまで紹介してきた程度で、とても観光で食べていけるほどではないと思うのですが、この温泉目当てにあちこちから人々がやってくるようです。
ヨーロッパの温泉施設は日本と違い、医療のための施設といっていいでしょう。ここもその例外ではなく、基本的には医療のためのプログラムが組まれ、それに沿って入浴します。ここにはこうしたプログラムに沿わない一般の人も利用できる飲用施設もあるので、そこに行ってみました。
タメガ川の畔の広場風のところにある、オープンエアの円形の屋根を持った建物がそれです。
飲泉所内部
長いカウンターの奥に係りの人がいて、そこに行くとグラスに入った温泉水をくれます。周囲には椅子が並べられていて、先客が何人か飲泉していました。この椅子のところに足湯でも引いてくれたら快適だと思うのですが、そうした発想はヨーロッパにはないのですね。
最近話題になった『テルマエ・ロマエ』を見るまでもなく、古代ローマには温泉があり公衆浴場もたくさんありました。人々はそこで入浴を楽しみ、おしゃべりを楽しみ、リラックスすることができました。それがキリスト教の、公衆の面前で裸体をさらすとは何事か、という考えによって、公衆浴場はキリスト教が支配する世の中から消えてしまい、今では医療用の施設としてだけ残っているのです。これは大変残念なことに思えます。
タメガ川に架かる新しい歩道橋
温泉に浸かることはできませんでしたが、ちょっと飲泉してその雰囲気だけ味わったあと、タメガ川沿いを散策します。
これは古いローマ橋のすぐ隣にあるモダンな新しい歩道橋。
コケコッコーのお土産
近くにあるカフェで休憩をし、ちょっとウィンドウショッピングしてみると、ここになんとバルセロス土産の雄鶏の置物があります。
この街には大した土産物がないということですが、こうしたものを買うくらい、ここには観光客が来るということでしょうか。
夕暮れの街
夕食時にここで有名なプレズントを試してみました。
これはスペインの生ハムとほとんど同じですが、塩は少しきついような気がします。かなりしっかりしていて、噛めば噛むほど味わいがあります。一皿6€とこちらの物価からするとちょっと値が張りますが、日本では滅多に食べられない味です。
夕焼け空のお城の塔
夕食を終えると21時で、ちょうど日没の時刻です。真っ赤な夕焼け空にお城の塔が浮かび上がっていました。
さて、明日からいよいよ本格的な自転車の旅が始まります。ここから湖を廻って、同じトラス・オス・モンテス地方の14世紀の要塞跡のお城があるモンタレグレまで走ります。