済州島一周サイクリングの二日目は、西海岸の翰林から南海岸の中文まで。
昨日、予定より一時間近く遅れてしまったのと、今日のお天気はやや雨っぽいのとで、予定より30分早く宿を出発。
『なんとかお天気が持ってくれるといいけどね〜』
翰林の海岸には14番のオルレが通っているので、まずそこへ向かいます。翰林公園の前の道を入ると、先に飛揚島が見えてきました。
ここのすぐ北西にある挟才海岸は、昨日、素晴らしい青のグラデーションを見せてくれましたが、陽の光のない今日、この海にはその幻想的な輝きはありません。しかし、しっとりとした、また別の雰囲気があります。
砂浜の端っこから始まる石で舗装された快適なオルレ道を見つけることができ、ここはそれを使って進んで行きます。
この道は数百mで白い砂浜の金陵海水浴場(금능해수욕장 クムヌンヘスヨッチャン)に出、そのあとは一般道を行くようになります。
金陵海水浴場の近くには、昨日もいくつか見かけた海女の像とトルハルバン(石爺さん)が立っています。
今日の海はエメラルドではなく、翡翠色とでもいうのでしょうか。
出発してから4kmほどすると、小さな漁港に出ます。その先で14番のオルレは木道になりました。
この木道の両側には自生のサボテンがびっしり。その葉っぱの先には、初日の東門在来市場で見た赤い実がなっています。
その実をひとついただくと、けっこう甘くていけます。でもこの実には細かいトゲが生えていて、手に刺さってしまいました。
この木道が終わったところに、オルレのスタンプが入っているカンセがいました。ここは月令浦というところのようです。
昨日に引き続き、二つ目のスタンプをゲットしたキルピコンナ。
この先でR1132に出ると、早くもパラパラと雨。ちょっと様子を見ようと、ヘゴルムマウル公園にある建物の軒下に避難。しかし雨は止む様子を見せず、逆に強くなってきたので、やむなくカッパを着込んで出発します。
このあたりはR1132を少し使わねばなりませんが、それは僅かな距離で、すぐに海沿いの道に入ります。10kmほどのところにある新昌港(신창항 シンチャンハン)に到着。
新昌港のすぐ先で、飛行機の音かなと思うようなグォーという音が。しかしここはすでに、空港からはずいぶん離れています。
この音の正体は、風力発電の巨大なプロペラでした。ということで、このあたりは風が強い。こういう時は、決まって向かい風ですね。しかし、雨が止んでくれたのは幸いでした。
このプロペラを通り過ぎると、先に遮帰島(차귀도 チャギド)が見えてきます。
龍水浦口(용수포구 ヨンスポグ)を過ぎると、道に水色の側線が現れます。12番のオルレに入ったようです。
このオルレはしばらく海沿いを行きますが、堂山峰(당산봉 タンサンボン)では山道になります。ここまでの雨で、この山道を行くのはちょっと無理そうなので、この山は迂回。
すると、こんな畑の先に水月峰(수월봉 スウォルボン)が見えてきました。
水月峰は海岸にある小高い山で、海側は絶壁、そして遮帰島への眺望が素晴らしいところだといいます。
水月峰の頂上は標高70mほどのところにあり、その直前600mは激坂です。最後は自転車を押し上げて、ようやく頂上に到着。いや〜、ここはきつかった。
『雨と向かい風、それにここの坂でもうへろへろ。おなかすいた〜』 と、おやつを食べ始めるジオポタ三人娘。
海側の手すりに近づくと、なるほどその下は噂のとおり絶壁で、北には遮帰島、その右にワ島(와도 ワド)が見えています。
今日は残念なお天気ですが、晴れていたら、きっと素晴らしい海の色が楽しめたでしょう。
内陸を見れば、どこのオムル(側火山)だか、一つだけぽっこりと山が見えています。
晴れだったらここに韓国の最高峰、漢拏山(한라산 ハルラサン 標高1,950m)が見えるはずなのですが。
さて、上ったら楽しい下りが待っているはず。しかし水月峰への道は、その頂上にある気象台で行き止まりです。その入口まで行ってみると、オルレはそこから草原と小さな森を抜けて下っています。
上ってきた車道を下るか、このオルレを下るか、ちょっと迷います。雨だったので、オルレ道はぬかるんでいそうだからです。オルレ道を少し下りて様子を見てみると、そうでもなかったので、これを下ることに決定。
この下りの途中、ポッコリとした韓国式のお墓をいくつか見ることができました。
下の車道に出ると、きれいな麦畑が続くようになります。
海岸に出ると、石積みの塔のようなものがいくつも建っています。
石がたくさんあるところではなにがしか、こうした造形物が造られるもので、これと同じものは済州島のあちこちで見ることができます。写真の中央にある丸味を帯びたものは、特別な意味でもあるのでしょうか。
先に摹瑟峰(모슬봉 モスルボン)が見えるようになると、再び雨が降ってきました。 しかも向かい風で、きつい。
今日のお昼は大静(대정 デジョン)の摹瑟浦港(모슬포항 モスルポハン)の予定です。大静はこのあたりではもっとも大きな街で、摹瑟浦港からは韓国最南の馬羅島などへのフェリーもあります。
雨の中、とにかくその大静を目指し、急げ急げ!
海沿いの道に入る曲がり角がわからずうろうろしたり、後続が前を見失ったりと、ちょっとあたふたしつつも、なんとかその大静の摹瑟浦港に到着。
この港の漁船はこの日も漁に出ているのか、まったくといっていいほど見当たりません。
港を廻って、海沿いのメインストリートに辿り着くと、そこには鮮魚店がびっしり並んでいます。
お昼はこれらの店をちょっと覗いて決めようと思っていたのですが、とてもそんな余裕はありません。向かい風と雨とで身体は疲労困憊、靴の中と心はぐっしょり濡れています。
港の端のあたりで、自転車が軒下に置けそうな食堂に飛び込みました。到着するなり、まずはカッパの雨を払い、靴下を絞って、トイレで身支度を整えます。
ここは事前に当たりを付けておいた鯖の専門店です。済州島では鯖も人気のメニューですが、刺身を出す食堂は多くありません。そこでここはその刺身を。
簀の子に盛られた鯖はとてもきれい。お母さんがやってきて、『こうやって食べるのよ』 と見本を見せてくれました。海苔にごはんを少量のせ、刺身とお好みのおかずを巻いて食べます。鯖の刺身は初めてでしたが、これはとてもおいしい。
このほか、小さい鮑の生と豚を焼いたものも。鮑はスプーンでエイッとやってはがし、そのまま食します。小さいからかあまり固くなく、これもいけます。
昼食中に雨脚が強まったようです。今日はここで撤退しようと、お母さんにタクシーで中文まで行けるかどうか聞いてもらいました。私たちの自転車は折り畳みだよと説明したのですが、やはり自転車がいっしょだとタクシーでは行けないと断られたそうです。泥だらけの自転車では無理もありません。輪行袋でもあればまた話は違ったかもしれませんが。
仕方なく自転車で出発しようとしていると、息子さんと思われる方がやってきて、ケータイの天気予報の画面を見せながら、『もう少しすると曇りになるから、ちょっと待ってみたら。』と説明してくれました。こんなふうに、済州島の人々はみんな親切です。
彼の言うとおり、少しするとだいぶ小降りになってきたので、頃合いを見計らって出発。
摹瑟浦港からは内陸を行きます。大静の街を出る頃には雨もやんでくれたようです。
周辺に畑が広がる快適な田舎道を進んで行くと、蒼々とした麦畑の先に妙なものが見えてきました。
これらは、かつて日本軍が造ったアルトゥル飛行場(알뜨르비행장 アルトゥルビハエンジャン)の格納庫です。このすぐ近くには当時の滑走路も残されています。
格納庫群の先には、頂部を隠した山房山(산방산 サンバンサン)が霞んで見えています。
アルトゥル飛行場からは松岳山(송악산 ソンアクサン)へ向かいます。その松岳山が正面に見えてきました。
しかしこの先の道には、溺れそうなくらいの水溜まりが。ありゃ。
道が真っすぐになるとその突き当たりに、日本軍による殺戮の碑が建ち、さらにそのすぐ奥にソサルオルム(섯알오름)があります。ここには展望台があり、海とアルトゥル飛行場格納庫の裏側が見えます。
オルムとは寄生火山とか側火山と呼ばれるもので、漢拏山の火山活動によりできた小高い丘のようなものです。ここでは小さいながらも口を開けた噴火口と思えるものが二つ見られます。済州島にはこうしたオルムが360ほどあるそうです。
ここには10番のオルレが通っており、これを行くと奥にあるドンアルオルム(동알오름)を経由して松岳山の麓に出ることができるのですが、雨の今日は、自転車では無理。
来た道をちょっと戻って、一般道で海岸に出れば、そこはちょうど松岳山を西から眺められるポイントです。
この海岸で、ちょうど海から帰る海女さんを見かけました。
済州島には減ってきてはいるものの、まだかなりの数の海女がいるそうです。しかしこんな荒れた日も海に潜っていたとは、ちょっと驚きです。
松岳山の北側を廻るようにして進めば、松岳山への一般的な入口に辿り着きます。ここは、韓国最南端の馬羅島と加波島、そして兄弟島への眺望に加え、美しい草原と日本軍が残した洞窟があることで知られています。
この入口にはちょっとした食堂などが建ち並び、東屋がいくつか建っています。駐車場には大型バスも停まっており、そこから大勢の観光客が歩いて来ます。ここは想像した以上の観光地でした。
私たちもこの入口に自転車を置いて、徒歩で散策を開始。
入口から続く道は穏やかな上り。
この道を上って行くと、海の向こうに山房山が、そして海の中に一つの島が分れたような兄弟島が見えます。その前を遊覧船がゆっくりと過ぎて行きました。
ここで山房山をうしろに記念の一枚を。
さらに上って行くと、右手には草原から立ち上がる小高い山が、左手には断崖絶壁が現れます。
この草原の中に白い馬が。小柄なこの馬はきっと、済州馬(チョランマル)でしょう。
左手の断崖絶壁の海面近くには、かつて日本軍が軍事物資を隠すために作ったという陣地洞窟(진지동굴 チンジドングル)があります。ここは有名なテレビドラマ「大長今(チャングムの誓い)」の最終話で、チャングムが帝王切開手術をする場面に使われたところだとか。
こうした洞窟は地上にもあり、そこは現地の方が、『日本軍がヘリコプターを隠したところ』 と言っていましたが、とてもヘリコプターは入りそうにない小さなものでした。これはちょっと思い違いかもしれません。
さらに進んで行くと、断崖絶壁の向こう、海の中に平べったい島が見えています。あの島が韓国の最南端となる馬羅島です。
道はこの先も続くのですが、もう先にはこれといった見どころがないようなので、ここで引き返します。
松岳山からは龍頭海岸(용머리해안 ヨンモリヘアン)に向かいます。龍頭海岸は先に見える山房山の麓の海岸に突き出した崖で、美しい海を眺めながらその周りを廻れるといいます。
ここは風が強くて、ハヒハヒ。
ここが龍頭海岸で、その入口には帆船を模した大きなオブジェがあります。
ここには観光客がほとんどいませんでした。人気が今ひとつなのかな、と思いましたが、実はこの日は荒天で、海岸への侵入が禁止されていたのです。今は雨こそ止んでいますが、風がビュービュー。風に飛ばされて海に落っこちたら大変ですから、これは当然でしょう。
海岸の散策は諦めて、そのへんをぶらついてみます。すると山房山への眺めがいいところに出ました。
今日は頭を雲の中に隠した山房山ですが、この山はこのあたりのどこからでも見え、丸っこい頭が特徴です。
龍頭海岸からその山房山に向かえば、これがちょっとした上りで勾配が意外ときつく、最後は階段という結末。ここもあへあへ。自転車を担いで階段を登っていたら、なんとお坊さんが手伝ってくれました。
山房山(395m)は鐘状火山帯で、この丸っこい姿は溶岩ドームのようです。登り口の左には山房寺(산방사 サンバンサ)があり、右側には金色の大仏さまが座する普門寺があります。
しかし山房山でもっとも有名なのは、標高150mほどのところにある山房窟寺(산방굴사 サンバングルサ)で、そこからの眺めは絶景だそうです。
というわけで、その山房窟寺までテコテコと階段を登って行きます。するとその途中、龍頭海岸方面への眺望が開けました。沖には兄弟島も見えています。
さらに登って行けば、大きなかたつむりを発見。いや〜、こんなでっかいかたつむりを見るのは何十年ぶりでしょうか。
ここに居合わせた日本に住んでいるという韓国人が、かたつむりの韓国語の発音を教えてくださったのですが、これは覚える前に忘れてしまいました。
かなり登って、ようやく山房窟寺に到着。線香の匂いが漂うこのお寺は、「窟」の字が示すように、奥行き10m、幅と高さがそれぞれ5mほどの洞窟内にあります。洞窟の天井は今にも崩れてきそうで、ちょっと怖い。
先の韓国人が、『中に入ってお参りできますよ。』と教えてくれたので、少額の寄進をして奥に進んでみると、聖水らしき水が左手にあり、突き当たりに仏様が。この水をいただき、仏様に手を合わせます。
これは山房窟寺の前からの眺めで、なるほど、晴れていれば絶景でしょう。しかしこの日はちょっと残念。
写真の下に写っている黒いものは、上から崩落してきた石を除けるためのネットです。
山房窟寺から下り、金色の大仏さまが座するあたりから普門寺の大雄宝殿を見れば、こんなふう。
さて、今日はこの山房山で観光はおしまい。中文へと向かいます。ここまでお天気もなんとか持ってくれたようです。
山房山から中文へはR1132に出るのが手っ取り早いのですが、この道はあまり使いたくないので、カントリーロードを行きます。これが意外とアップダウンの連続で、ヨロヨロ。
道は途中からこうした安徳渓流沿いを行くようになります。しかしこのあたりはもうヘトヘトで、景色を楽しむ余裕はなし。
一度R1132に出たあと、再びカントリーロードに入る予定でしたが、これは諦め、止むなく最短で行けるR1132を使うことにしました。
中文の街中に入ると空から冷たいものが落ちてきたので、ちょっと急ぎます。宿まであと1km少々というところで、この雨がスコールのようなものに。前がほとんど見えません。途中にあったバス停に避難しようかとも考えましたが、避難したとしてもこの雨がいつ上がるか見当が付かなかったので、そのまま宿まで強行突破。
ずぶ濡れで辿り着いた宿のお母さんは、私たちの濡れ鼠姿を見て少々驚いたようでしたが、とても暖かく迎えてくださいました。感謝。ジャッとシャワーを浴びたら、夕飯です。
我らがジオポタ三人娘は、昼食が少し足りなかったようで、ガッツリいきたいというので、ここは黒豚を試すことにしました。宿の息子さんが推薦してくれた、近くの店に向かいます。
ここのメニューはいたってシンプル。黒豚と普通の豚がそれぞれ1kgいくら、500gいくら、という調子です。ここはまったく考えずに黒豚1kgを注文。すると出てきたのはこんな塊。
この食堂では、一テーブルに一人、係の人が付いて、肉を切って焼いてくれます。私たちはただ食べるだけ。
肉には五枚肉や首の肉なんかがあるようですが、まあそんなもんはどうでもよろしい。
肉を口に放り込めば、ジュワ〜ッと肉汁が口一杯に広がります。
『豚肉ってこんなにおいしいんだ〜』 とがっつく、クッキーとキルピコンナでした。
さて、おいしい黒豚で少々元気は快復しましたが、今日は最後の大雨がたたり、かなりぐったりです。明日は漢拏山に登る予定ですが、今のところどうも天気はよろしくない。どうしましょう。
◆ひとこと by クッキー
去年の秋から 《Geo Pottering 》に参加させて頂き、毎回素敵な企画とグループ輪行にすっかりはまっているところに済州島企画のお話!
「韓国っていうことは飛行機輪行、でも前輪しか外したことないし梱包もどうするのかな… でもサイダーさん・サリーナさん達と一緒なら、絶対楽しい旅行になる!」と思い、迷わずチケットを予約しました。ただ行くと決めたものの、クロスバイクの上にパーツの名前もよく知らない自分にとって、かなりハードル高かったです... でも結果的に壊れず、愛車で海外サイクリングできたのもサイダーさん達のお陰だと、感謝してます^^
済州島三日目は、予報通り朝から雨で、後にも先にもこんな大雨の中走ることは一生ないだろう-というくらい修行の旅でした。この日は島の西側を60km走りましたが、雨の記憶と美味しいご飯の記憶しかないような...(笑)。お昼は鯖のお刺身、夜は済州では珍しい焼肉屋さんに行きました。黒豚の塊には驚きましたが、お店のおじさんがちゃんと焼いて切ってくれ、雨の疲れを癒してくれました。