今日は、宿から5kmほどの隣町ビジャルカヨを午後発のバスで、旅の出発地ビルバオに戻ります。その前に、このあたりの村をいくつか巡ろうという計画です。
歴史ある邸宅ホテルでゆっくり朝食をとり、宿のセニョーラと猫のミッチーに見送られて9時過ぎに出発。
今日は朝からすばらしい快晴です。まずは幹線道路のCL-628を西へまっしぐら。
道路は平坦で、周辺はいかにも『乾いた大地』という感じ。改めて、内陸のカスティーリャ・イ・レオン州にいることを実感します。
そんな道沿いにひまわり畑が広がっていました。
このひまわりはちょうど満開のようです。西に向かって走っているので、東を向いているひまわりの花をたっぷり堪能できました。
西の前方には青空の下、なだらかな丘陵地広がっています。ここから丘を越えてまっすぐ20kmほど行けば、エブロ川の起点、エブロ貯水池に到達します。
エブロ貯水池からずっとエブロ川に沿ってかなり下ってきたはずですが、ずいぶん蛇行を繰り返しているわけですね。
ビジャルカヨの町が見えてきました。人口4千人弱で、この地域の中心都市です。
午後にビルバオへ向かうバスターミナルを確認しておこうと思ったら、なかなか見つからない。通りでおじさんに聞いてみると、地図に載っていた場所とは全く反対側で、2kmほど北上したところにやっと見つかりました。
というわけで、改めてビジャルカヨから村巡りに出発です。ビジャルカヨとその周辺は、昨日通った小さな村の教会なども含めて近年、スペインの歴史遺産群に指定されたそうです。
幹線に並行する住宅街の裏道を通っていたら、ちっちゃいワンコがついてきました。かわいいけどキャンキャンうるさい〜
再び幹線に戻ってシグエンサまで進みます。シグエンサにも見所の教会があるようですが、「帰りにも通るから、いいか」とスルーします。
シグエンサの町を過ぎたところで右折し、ネラ川を越えて北に向かいます。
ネラ川は今日の旅の同伴者。あとでまた出会うはずです。そしてこのネラ川は、もっと下流に行けばエブロ川と合流しています。
ネラ川を渡ると、こちらの道はかなりローカル。車はほとんど通らず、道はちょっとボコボコしたりしていますがのんびりムードです。
そして周囲にはひまわり畑が。私たちは北上しているわけですから、ひまわりはどれも横顔を見せていますね。
そんな道をのんびり走っていると、青空には気球がふわり。
今日は快晴で、遠くまで景色がよく見えるでしょうね。
いい景色で気持ちいいねえ〜 とサリーナがひまわりの横を満足げに走る。
そして、ここはサイクリストにも人気のコースらしい。まあ、人気といっても2〜3組に会っただけですが。
そんな道を走っていると、石づくりの建物が並ぶ村に出ました。サラサールです。ここは、ビジャルカヨとその周辺の歴史遺産群の中でも見所のひとつ。
小さな村ですが、まず2つの塔を持つ立派な邸宅が出迎えてくれます。村に入っていくと、石壁の邸宅や石を積んだ塀に囲まれた家が建ち並んでいます。
村の入口には、15世紀に建てられたゴシック様式のサン・エステバン教会があります。残念ながら扉は締まっていて入れませんでした。
サラサールからは、さらに枝道に入ります。舗装路ではあるものの道路はさらに荒れ、アップダウンの繰り返し。路面には細かい砂利がまかれ、ジャリジャリと音を立てながら上っていきます。
とりあえず最初の上りは、勾配はきついものの標高差60mほどで終わり。頂上にあったのはエルミータでしょうか。
ここで前を行くサイクリスト2人と遭遇し、ここからはしばらく追いつ追われつ、というかお互いに休みつつ同じ方面へ進んでいきました。
頂上のエルミータからはサーっと爽快に下り。。といきたいところですが、路面はやっぱり小砂利がまいてあり、滑りそうなので慎重に下っていきます。
正面の丘の上は風が強いのか、風車が並んでいました。
このあたりで道は再びネラ川に近づきます。川は大きく蛇行していますが、平坦区間なので道はまっすぐ突っ切っていきます。
両側に広がるのは、刈り取りの終わった麦畑でしょうか。丘に囲まれたそんな景色の中を走っていくと、
ネラの村に着きました。ネラ川はこの村の名前ですね。
この村の中の一本道の坂のきついこと! 軽く15%は超えていそうな激坂を、「やめて〜」と叫びつつのろのろと上っていきます。
ヘロヘロと上っていると、後ろからマウンテンバイカーが1人やってきました。さっき出会ったサイクリストです。
「キツいね〜」と挨拶しつつ、あっさり抜かれていきます。もう1人いたはずだから、相棒は我ら同様苦戦しているようですね。
100mほど上って平坦な道になり、ほっと一息。
周囲には、エブロ川沿いでおなじみになった削られた石灰岩の台地が見えます。
台地の先にソブレペニャが見えてきました。小さな村ですが、高い塔を持つ教会がありました。
教会の塔の脇でちょっと一休み。この教会は家々に面した小さな敷地に建てられ、いわゆる教会前の広場がありません。結婚式などイベントの時にはどうするんだろう?
ここからぐわーっと下ると、先ほどより少し大きめの村、キンタニージャ・バルデボドレスに着きました。
赤い屋根の石造りに白壁の家が並び、その間に小さな小川が流れているかわいらしい村です。
その村もあっという間に過ぎると、道の両側が崖地となり、石灰岩を川が削ったダイナミックな地形が姿を見せ始めます。
こちらの崖の表面は地層が模様になって、分厚いカーテンのひだのような形をしています。
この雄大な景色を眺めつつ走っていくと、道はネラ川と合流し、ほどなくプエンテデイが見えてきました。
小さなトンネルをくぐった先の橋のあたりには、車で来た観光客がちらほら見えます。
この“人工”の橋から西を眺めたところにプエンテデイの見所、自然の岩の橋があります。
ネラ川にかかる岩の橋の上には住宅も建ち並び、とても不思議な風景。
そして村の北側を見れば、通ってきた道から左へと石灰岩の断崖が数キロにわたって連なっています。
では、この天然岩の橋の下にもぐってみましょう。
ごつごつとした巨大な岩が太いアーチをつくっています。
ネラ川の流れは、子どもたちが水遊びできるほどとても穏やかです。天井の高さは10mくらいでしょうか。橋の下はひんやりと肌寒いくらいです。
岩のトンネルの向こう側から見上げると、岩のすぐ端に石造りの家が並んでいるのがわかります。この岩の上が道路にも町にもなっているのです。
むむ、景色はよさそうだけど、住むのはちょっと怖くないかな。。
こうしたトンネルや崖の台地などさまざまな地形は、ネラ川が石灰岩を浸食して造り出しているのですね。
ちょうど橋のたもとにはバルがあり、ゆっくり飲み物休憩をとりました。
このあたりの他の見所をバルのご主人に聞いてみると、『あるある。洞窟の教会があるよ』とオホ・グアレーニャというところを教えてくれました。
これも石灰岩の台地が生み出した見所のようですが、12kmほど離れているとのこと。バスの時間もあるので、残念ながらパスしてビジャルカヨへ戻ることにしました。
プエンテデイからは幹線道路のBU-561に入ります。
道はほぼ平坦で周囲はある程度開けているものの、両側には崖の台地が連なっています。
プエンテデイからしばらく走ると、ブリスエラの教会が見えてきました。この村には、16世紀のカスティリヤ地方の典型的な家が建っているそうです。
道は、遠景に崖地がいくつも並ぶ景色の中、林や草地の間を少しずつうねりながら伸びています。雲一つない青空の下、快適な道をどんどん飛ばします。
舌状台地にダイブするがごとく走るサイダー。
両側の崖が次第に道に迫り、ネラ川が道のすぐ脇を通るようになります。
エスカンドゥソで小さな教会の脇を通り抜けました。
このロマネスクのサン・アンドレス教会は、ほんの10年ほど前までは廃墟だったそうですが、近隣の数名の方たちがボランティア作業で見事に再建したといいます。
そしてネラ川の造りあげた谷間の道を走っていくと、
シグエンサにたどり着きました。行きはここから北上したので、これでぐるっと一周したことになります。
このあたりで台地と谷の地形は終わり、ここからは周囲に平地が広がります。畑では、すでに刈り取りが終わってロール状のわらが積まれています。
今日はずっと雲一つない快晴が続き、時は午後1時近く。気温が上がり、じりじりと焼けこげそうです。
そしてお腹もすいてきた。ビジャルカヨはまだかしら〜 と走るサリーナ。
行きのルートより南側の細い道を通ってビジャルカヨに向かっていると、ひまわり畑が広がっていました。
暑いけど、もうすぐビジャルカヨだ! と気合いを入れるサリーナです。
そのうち、周辺に新しい住宅がポツポツと見えてきて、ついに交通量のある大きな通りにぶつかりました。ここはビジャルカヨの町の南端、道の向こうに見える塔は隣町のオルナの教会です。
そしてここに、今日の昼食レストラン「エル・シド」があります。まだ午後1時過ぎなのでお客さんは誰もいませんが、「食事、もう準備できるところだから大丈夫ですよ」とフレンドリーなスタッフが笑顔で迎えてくれました。
準備ができるまで、テラス席でオリーブをつまみながら待つことに。そうしたら、オリーブと一緒にヘレス(シェリー酒)を持ってきてくれて、「これをかけるとおいしいよ!」。むむ、これはクセになりそう。
テーブルに案内され、ワインは「ここで試すならぜひ」と勧められたリベラ・デル・ドゥエロ。
そして食事。まずはアサリと豆の煮込み。これ、アサリ??というほど大きくプリプリしたアサリです。それを、ときどきピリ辛の長い青唐辛子酢漬けをかじりながらいただく。たまりません。
それから、チョリソ、豚肉などを炊き込んで真っ赤なパプリカを乗せたボリュームたっぷりな炊き込みごはん。いかにもカスティーリャ・イ・レオン地方の食事、という感じです。
ゆっくりおいしい昼食を楽しんで満腹になったあとは、2kmほど北上してバスターミナルへ。公園の脇にあるターミナルは、ガラスのモダンな建物です。
15時25分発のバスは、ビジャルカヨのあるカスティーリャ・イ・レオン州からバスク自治州へと入り、一路ビルバオへ。ビルバオへ進むに連れて景色が緑濃くなり、『緑のスペイン』に戻ってきたことを実感します。
バスは2時間弱でビルバオに到着。久しぶりの大都会です。
これで私たちの自転車旅は無事終了。今回の旅はスペイン北部のごく限られたエリアだけでしたが、美しい海辺と険しい山並み、そして渓谷の絶景など、実にさまざまな景観と独特の伝統文化に出会えました。広くて奥が深いスペイン、地域ごとにじっくり滞在する旅がお勧めです。