1614-3

アラン島

スコットランド 3

開催日 2016年08月07日(日)晴れのち曇りのち雨
参加者 サリーナ/サイダー
総合評価 ★★☆
難易度
走行距離 41km

アラン島東海岸を行く
アラン島東海岸を行く

コース紹介

『スコットランドのすべてがある』と言われる、クライド湾に浮かぶアラン島を巡る。グレートブリテン島東海岸のアードロッサンからフェリーでアラン島のブロディックへ渡り、海岸道路を時計廻りに北海岸のロッホランザへ。しかし雨の洗礼が。

動画(05'52" 音声:BGMのみ)

Googleマップでルートを表示ルートデータ(gpxファイル)
総合データ(GARMIN Connect:ルート、高度、速度など)

発着地 累積距離 発着時刻  ルート 備考
Glasgow
宿
(0km) 発07:50 一般道
泊:Premier Inn
Glasgow
中央駅
(2km) 着08:00
発08:40
列車 列車:Brodickまでフェリー込 £11
Ardrossan - 着09:28
発09:45
フェリー フェリー:55’ (£3.75)
Brodick
20m
START 着10:40
発11:00
A841 Arran島、Arran Brewery、Brodick Castel、Coop
バスStagecoach:Lochranza行,10:55,13:40、40'
展望所
120m
3km 着11:20
発11:25
A841 フェリー乗場からいきなり上りで一丘越える
Lamlash
5m
5km 着11:35
発11:40
A841 ラムラッシュ湾、ホーリー島
Coopでワイン購入

85m
9km 着11:55
発11:55
A841 川から再び上り
Whiting Bay
5m 昼食
13km 着12:10
発13:25
A841 昼食COAST
内陸にGlenashdale Falls、イルカ
peak
150m
24km 着14:20
発14:30
A841 南部はアップダウン、上って下って上る
島の真南あたりにピーク
Lagg
50m
26km 着14:40
発14:45
地道 チーズ:Torrylin Creamery
Torrylin Cairn 27km 着14:50
発15:00
A841 新石器時代の室内墓
Blackwaterfoot
5m
40km 着16:00
発17:55
バス 岬は断崖、それより北の海岸線は穏やか
ホテル、カフェ、アザラシ
Machrie ↓    ↓  ↓ Machrie Moor Standing Stone:往復4km、1.5h
巨大石柱群、自転車で行けるようなら行く
Pirnmill ↓    ↓  ↓ かわいらしい建物、レストラン
Catacol ↓    ↓  ↓ Twelve Apostles
Lochranza
Stags Pavilion前
40km 着18:25
発18:30
地道 城、アラン島蒸留所、食品店なし
鹿、野ウサギ、ゴールデンイーグル
Lochranza
宿
41km 着18:40

夕食Stags Pavilion 20:00 ワイン持参
泊:Butt Lodge £85(朝付)
日の出05:20ごろ、日の入21:15ごろ /為替レート:1£=140円/

グラスゴー市庁舎グラスゴー市庁舎

今日はグラスゴーを離れ、グレートブリテン島の東、クライド湾に浮かぶアラン島(Isle of Arran)を走る。

ところが天気予報によれば低気圧がやってきているという。この低気圧、隣のアイルランドにはすでにかなりの雨を降らせているらしい。アラン島あたりは午後三時ごろから降り始めそうだ。ここは出たとこ勝負で、雨になるまで走ることにする。

グラスゴー中央駅グラスゴー中央駅

グラスゴーからは、グレートブリテン島の東海岸にあるアードロッサン(Ardrossan)まで列車だ。そしてそこからアラン島のブロディック(Brodick)へフェリーで渡る。この列車とフェリーの切符は駅で通しで購入出来る。私たちはこの便が確実にあることを確認する意味もあり、すでに昨日入手済みだ。

そうは言ってもプラットフォームはどこなのか、自転車をちゃんと載せられるかなど、少し心配があるので早めに駅に到着した。ところが電光掲示板にはなかなかプラットフォームの案内が出ない。出発20分前になってようやく表示されたので、そのプラットフォームへ向かうが、今度はそのプラットフォームの手前にある改札口が開かない。

自転車車両自転車車両

改札口は出発10分前になってようやく開いた。アードロッサン行きのプラットフォームはこの改札口から一番遠いところだった。

ようやくプラットフォームに辿り着いたが、この列車は途中で切り離される車両があり、アードロッサンまで行くのは前の方だという。

並列平置きの自転車置場並列平置きの自転車置場

自転車を置ける車両には自転車マークが付いているのだが、どうやら見落としたらしく、先頭車両まで行ってしまった。前回エディンバラからグラスゴーへ移動した時は、自転車マークは扉の上にあったのでそこばかり注視していたのだが、この列車のマークは扉の中程にあったのだ。

うろうろしていると隣の車両の乗客が手招きして、『自転車はここだよ〜』と教えてくれた。その車両の自転車置場は、転倒防止用のベルトが備えられているが、自転車をホイッと置くだけの極めて簡単なものだった。座席のすぐ横が自転車置場なので、盗難などに注意を払う必要もなく、これは快適だ。

ロッホロッホ

高地のハイランドと低地のローランドに分けられることが多いスコットランドだが、グラスゴー周辺はローランドだ。

アードロッサンまでの車窓からは、牧草地がパラパラと見え、ほぼ真っ平らな景色が続く。時折低い丘が彼方に見えるだけだ。スコットランドにはロッホ(Loch)なるものがある。これは狭く入り込んだ湾や湖を指すようだ。スコットランドの湖は大抵細長いので、入り込んだ狭い湾と見分けが付かないので、同じ単語が使われているのだろう。

スコットランドの湖は黒いので、この車窓のものは湖かもしれない。冷涼な気候で堆積した植物の分解が進まないため泥炭層ができ、そこから流れ出した有機物が湖を黒く見せるようだ。

ブロディック行きのフェリーブロディック行きのフェリー

列車は50分ほどでアードロッサンに到着する。ここの列車とフェリーの乗り換え時間はたったの17分しかないので、少々気掛かりだったが、フェリー乗り場は駅の目の前だった。列車を降りると想像より大型の立派なフェリーが目に入る。これがブロディック行きのフェリーだ。

風は強いが空は青空だ。しかし彼方には黒い雲も見えている。この青空がいつまでも続いてくれればいいのだが。

自転車乗り込み口自転車乗り込み口

歩行者が乗り込む後を付いて行くと係員が、自転車はあっちだよ〜、と教えてくれた。

日本でも自転車をそのままフェリーに載せる場合は車と同じルートを辿るが、ここもそれは同じだった。フェリーの船首が大きく口を開け、次々に車を飲み込んで行く。車の乗り入れが一段落すると、自転車の番だ。

先にアラン島先にアラン島

自転車を車と同じゾーンの壁際に置き、上の船室に上がる。フェリー内部の構造は日本のそれとほとんど変わらず、いくつかのゾーンごとにベンチやソファーがある。

出航は極めて静かで、汽笛もなければアナウンスもなし。エンジン音もまったく聞こえず、窓から外を見ていなければ動いたのがわからないほどだ。

しはらくしてからデッキに出てみた。風がもの凄く強く、壁伝いに移動しないと吹き飛ばされそうだ。なんとか舳先に廻ると、徐々に前方のアラン島が大きくなってくる。

キルト姿の観光客キルト姿の観光客

このデッキには、スカートのような民族衣装キルトを身に付けた観光客らしき人々の姿があった。

上着はキルトにはふさわしくない格好だが、革靴にキルトホースを履き、リボン付きのピン、フラッシーズも着けている。

ゴート・フェル山ゴート・フェル山

アラン島には『スコットランドのすべてがある』と言われている。この島はスコットランドの地形的、地質学的特徴をすべて備えているのだという。それ故、島の半分はハイランドに、もう半分はローランドに属すというから驚く。

アラン島で最も標高が高い山、ゴート・フェル山 (Goat Fell、874m) が正面に見える。

ブロディックのフェリー乗り場付近ブロディックのフェリー乗り場付近

一時間でブロディックに到着する。ブロディックは古代北欧語で「広い湾」を意味するという。スコットランドの多くの地域は遠い昔、ノルウェー王の支配下に置かれた時代があり、現在のアラン島に残る地名はバイキングに由来するものが多いそうだ。

アードロッサンに比べこちらのフェリー乗り場はかなり簡単な設えで拍子抜けするほどだったが、とにもかくにも無事アラン島に上陸できた。観光案内所に立ち寄ったあと身支度を整えて、いざアラン島周遊に出発だ。

海岸道路に出る海岸道路に出る

アラン島には島を一周できる海岸道路がある。今回はこれを時計回りに進む。フェリー乗り場からは南へ向かうのだが、ここは海岸に道がなく少し内陸を進むことになる。

この道、初っ端から結構な上りときた。いきなりアヘアヘが始まる。

いきなりの上りにあへあへいきなりの上りにあへあへ

うしろに見えていたフェリー乗り場付近の海はすぐに見えなくなり、民家の横を黙々と上って行く。

数百mも行けばその民家も途絶え、道の周りを木々が覆うようになる。この右手の木立が退くと、ちょっとした木々が生えるだけの丘が広がるようになる。えっこらよっこらと上り続けていると、その丘の彼方後方に、あのゴート・フェル山が見え出した。

展望台よりゴート・フェル山を望む展望台よりゴート・フェル山を望む

この上りの頂上は標高120mだ。もう少しでその頂上というところまでやってくると、道脇に展望台があった。

ここからはゴート・フェル山以外にもたくさんの山が見える。この島の北部は山岳地帯なのだ。

ホリー島ホリー島

展望台を過ぎるとほどなく、ラムラッシュ(Lamlash)までの下りとなる。この下りの後半には、先のラムラッシュ湾に浮かぶホリー島(Holy Isle)が見えてくる。

この島はさほど大きくはないが、いい距離にあり、下り坂の先に見え出すので存在感がある。

ラムラッシュラムラッシュ

海岸まで下るとそこがラムラッシュだ。この村は、周囲に新しい住宅地も開発されているようで、メインストリートには500mほどに渡り建物が並んでいる。

先に見える塔はラムラッシュ教区教会(Lamlash Parish Church)だ。

長〜い家長〜い家

その教会の手前にはこんな長〜い家がある。どうしてこんなに長いのかは分からないが、とにかくかなり長い。Hamilton Terrace とあるのでおそらく長屋住宅だろう。

この村にはコープ(Co-operative)があるので、今宵のワインを仕入れる。夕食はレストランを予約してあるが、そこからのメールに、酒を出すライセンスがないから飲みたければ持ってこい、とあったのだ。日本では考えられないが、スコットランドではこうした酒類を出せないレストランが結構ある。そして宿がある村にはスーパーもないことがわかったのだ。

咲き乱れる花々とホリー島咲き乱れる花々とホリー島

ワインを手に入れたところで、そろそろ昼食にいい時刻になってきた。この村にもレストランがあるようだが、もう少し距離を稼いでおきたい。ということで、次の村へ向かう。

ラムラッシュを出るとまた上りが始まる。アラン島の南部はアップダウンが多いのだ。しかし今回は85mと先ほどの上りより軽い。道脇には赤やピンクの花が咲き競っている。北海道では7月に春と夏の花が一気に開花するが、ここはそれに似た雰囲気がある。

ホワイティング湾ホワイティング湾

ホリー島を横目に上って下るとホワイティング・ベイ(Whiting Bay)だ。

ホワイティング・ベイはこの緩やかなカーブを描く湾の名であり、また村の名でもあるようだ。

ホワイティング・ベイの村ホワイティング・ベイの村

ここの Whiting が何を意味するかは不明だが、タラの仲間の魚にそう呼ばれるものがあるらしいので、もしかしたらそれかもしれない。

ホワイティング・ベイは、先のラムラッシュより少し小さめの村のようだが、それでもここには数軒のレストランがある。

ホワイティング・ベイのレストランホワイティング・ベイのレストラン

その中の、湾に面した小さなレストランに入った。この外観は掘建て小屋に近い感じだが、サンルーム状に張り出された海側の部屋は明るく、気持ちいい。

さて、ここでの食事だが、前菜にホタテ、メインに鱈の仲間のハドック(haddock)を試してみた。スコットランドでは鱈の仲間が数種類あるが、実はその違いは良くわからない。ハドックはコッド(cod)より繊細な味だというのでそれにしてみた。

フィッシュ&チップスフィッシュ&チップス

この調理方法は何となくソテーのつもりでいたが、出てきたのはフライ。いわゆるフィッシュ&チップスだ。まあ英国に来たのだから一度はこれは試すつもりでいたが、それはもう少しファースト・フード的なレストランで、と考えていた。

で、味は、これはフィッシュ&チップスの標準がわからないので何ともいえないが、まあまあイケる。前菜のホタテは文句なくうまい。周りは海なのだからね。

ホワイティング・ベイを出るホワイティング・ベイを出る

昼食を終え外に出ると、空はどんよりとし、空気は冷たくなっている。先ほどまでの気候とは大分印象が違う。そろそろ雨が降ってきそうだ。

カッパを着込んでホワイティング・ベイを出る。

ヘザーヘザー

道脇にはあちこちに、相変わらすきれいな花々が咲いている。

野っパラの中に地を這うような赤っぽい小さな花を付けた植物が見られるようになってきた。

ヘザーその2ヘザーその2

これが噂に聞くヘザー(heather)だろう。ヘザーはツツジ科の常緑低木で、一属一種だそうだ。

これと取り違えられるものに、同じツツジ科のヒース(heath)がある。何といってもこの二つは綴りが同じだ。ヒースは元々はアイルランドやスコットランドの荒地を意味する言葉だったようだが、そこに良く生えている植物がヒースだったことから、これらの植物もヒースと呼ぶようになったのだろう。植物としてのヒースにはたくさんの種類があるが、ヘザーはただ一種類のみということだ。

キルドナン付近キルドナン付近

ホワイティング・ベイからもしばらく上りだ。

まず一気に100m上る。東海岸から南海岸に移るあたりでいったんこの勾配は緩むが、南海岸に入ると再び上り出す。

プラダ島とアルサクレイグ島プラダ島とアルサクレイグ島

キルドナンの沖には近くにプラダ島(Pladda)、遠くに三角のアルサクレイグ島(Ailsa Craig)が浮かんでいる。

アルサクレイグ島はカーリングのストーンの材料となる花崗岩の産地として有名なところだ。

海辺の放牧地海辺の放牧地

先に島南部の小さな出っ張りが半島のように見えるところまでやって来た。

スコットランドでは畑はほとんど見かけない。農業は牧畜が中心で、放牧地があちこちにある。ここは海に落っこちる斜面まで、その放牧地だ。

裁判所パッチワーク

いったん下ってまた上りが始まる。なだらかな丘陵地帯では、そこに作られるのが畑であれ牧草地であれ、そうしたものが繋がってパッチワークのように見える。

こうしたパッチワークが見えるところは、当然、自転車ではアップアップしている。

アップアップのサリーナアップアップのサリーナ

『こらっ、サイダー、初日からちょっときついぞ〜』と、すでにアップアップぎみのサリーナ。

放牧地の羊たち放牧地の羊たち

きついときは牧草地の羊でも眺めましょう。

こんなのどかな景色を見ていると、少なくとも心が癒される。

ようやく下りにようやく下りに

標高150mまで上るとようやく下りになる。

直線基調の長い下りだ。

Torrylin CreameryTorrylin Creamery

ラッグ(Lagg)まで下ると、アラン島では有名なチーズ屋 Torrylin Creamery がある。

ここのチーズはたいへん美味だというので、今宵のために買おうと思ったが、あいにく休みだった。

トーリリン・ケルンへ向かうトーリリン・ケルンへ向かう

チーズ屋の近くにはトーリリン・ケルン(Torrylin Cairn)がある。ケルンは通常、記念碑やランドマークとして造られたラフな石の構造物を指すが、ここのはどんなものだろう。

そこへは海岸道路から海側へ続く細い地道を行く。

Torrylin Cairn入口Torrylin Cairn入口

この細道から海が見えるようになると、道脇に石の塀が現れる。

この石塀に沿って進むと、塀の一部に簡素な木の門扉が設えられている。トーリリン・ケルンはどうやらこの中にあるようだ。

Torrylin Cairnの解説Torrylin Cairnの解説

一見何の変哲もないような草原に、いくつかの石片が立っており、その前に小さな解説板が設けられている。

この解説によると、トーリリン・ケルンは新石器時代の室内墓だという。この墓は盗掘に遭っており元の形状や大きさは不確実だそうだが、巾は1.2m、長さは6.7mあり、1.4mの長さの区画に分れていたらしい。

Torrylin CairnTorrylin Cairn

その前には細長い石を竪に並べた三日月形の前庭があったと推測されている。

一番奥の部屋は幸いにも無傷だったそうで、解説板にある陶器などの埋葬品とともに、大人6人と子供と幼児それぞれ一人ずつの遺骨が発見されたそうだ。

Torrylin Cairn 前の海Torrylin Cairn 前の海

この墓があるのは、こんな海のすぐ傍だ。

草を食む牛草を食む牛

その海のすぐ近くまで牧草地は伸びており、その中で牛がのどかに草を食んでいる。

スリデリー付近スリデリー付近

トーリリン・ケルンからは海岸道路に戻る。するとまたアップダウンだ。

このあたりには小さな川が多数流れていて、川が現れるたびに下り、そしてまた上るということを繰り返す。

丘で草を食む羊の群れ丘で草を食む羊の群れ

相変わらずのんびりした風景が続くが、

コリエクラビ付近コリエクラビ付近

景色ののどかさとは違って、走るのは案外きつい。

航空写真を見るとよく分かるが、牧草地が作られているゾーンは意外と狭く、それ以外の場所は岩がちな山だ。

先にうっすらとキンタイア半島先にうっすらとキンタイア半島

ようやく上りが終わり下りになると、南海岸から西海岸へ入る。

先にキンタイア半島(Kintyre Peninsula)がうっすらと見え出した。あそこはグレートブリテン島本島で、このアラン島はあの半島と南部高地(Southern Uplands)に囲まれたクライド湾に浮いていることがわかる。

下るサイダー下るサイダー

『おお〜、ようやく下りになった〜。これからは平らだよね〜』と、ちょっと元気が出てきたサイダー。

しかしこれは甘かった。そう大変ではなかったが、もう一つ小さな上りが待っていた。

先にブラックウォーターフット先にブラックウォーターフット

ようやくその上りが終わると、先にちょっとした半島が現れ、その付け根に街が見える。あれが西海岸最大の街ブラックウォーターフット(Blackwaterfoot)だ。

雲行きがかなり怪しくなってきた。ここはちょっと急ごう。

ブラックウォーターフットの荒れる海ブラックウォーターフットの荒れる海

この先、ブラックウォーターフットまでの下りを飛ばしてその中心部に辿り着き、ブラックウォーター川(Black Water)を渡ったところで、それはついにやってきた。

雨が降り出したのだ。この街にはバス停があるので念のため少し戻って、バスの時間をチェックすることにした。時は16時、次のバスは一時間半後だ。

ブラックウォーターフットのホテルブラックウォーターフットのホテル

そうこうしているうちに雨が強くなり出した。海を見れば海面では波がバシャバシャ音を立てており、先ほどまで見えていた対岸のキンタイア半島はすでに見えなくなっている。

これはもうここであがるのが賢明というものだ。

バス停の前にはかなり立派なホテルがある。ここのバーでバスが来るまでの時間を潰すことにする。

エール・ビールエール・ビール

スコットランドのバーはどこでもみな同じようなものだ。木の茶色い内装で、カウンターの上にはビールサーバーが並ぶ。ビールは日本でよく飲まれるラガーよりエールが多い。これは大抵その色合いに応じて、ペール、ゴールデン、レッド、ブラウンなどの名が付いているが、この色はアルコール度数とは必ずしも一致せず、味の指向が少し異なると思った方が良い。

サーバーから注がれるビールはパイント(pint)単位で売られる。1パイントは約570mlで、これは日本の中ジョッキより少し多いくらいだが、この半分の半パイントもある。少なくともスコットランドのエールは、ほぼグラスいっぱいに注がれ、泡は少ししかたてない。

ロッホランザ行きのバスロッホランザ行きのバス

このバー、入った時は静かだったが、そのうち子供たちが大勢集まりだした。そしてビンゴゲームが始まった。バーは大人から子供まで、誰でも出入りできるコミュニティー・スペースなのだ。

さて、バスが来る時刻になったのでバス停に移動して待つ。バス停には現地の女性二人がいたが、一人はかなり寒そうでコートを頭から被っている。気温はおそらく10°Cほどだろう。

この寒い中バスを待つが、雨で遅れているのかなかなかやって来ない。

バス輪行バス輪行

20分以上遅れてやってきたバスは意外にも低床の新しげなもので、ちょっとびっくり。

折り畳んであった自転車を運転手に見せると、車内に入れろという。スコットランドのバスで自転車を運べることは事前に確認してあったが、車内に持ち込むとは知らなかった。車いす用のスペースに二台の自転車を置くとすぐ、バスはもの凄い勢いで走り出した。

遅れた時間を取り戻そうとしているのか、それともこれが普通なのかはわからないが、とにかくこのバス、飛ばす飛ばす。エンジンはグワーッと唸り声を上げ、どこかに掴まっていないと降り飛ばされそうなくらいだ。

カタコルのTwelve ApostlesカタコルのTwelve Apostles

西海岸にも小さな村がいくつかある。スタンディング・ストーンがあるマックリー(Machrie)から、ずぶ濡れのハイカーが乗り込んできた。数軒の民家があるだけのピンミル(Pirnmill)を過ぎ、カタコル(Catacol)に入ると、ラムラッシュで見たような長い建物が建っている。

これは12使徒(Twelve Apostles)と呼ばれているので、12戸からなる長屋なのだろう。この上の窓はみな形状が異なるようで、海に出た漁師の男たちの帰りを待つ妻が、それぞれの家の窓にろうそくを灯して、男たちに家の場所を知らせたという。

ロッホランザの宿付近ロッホランザの宿付近

カタコルを過ぎると、すぐにキンタイア半島に渡るフェリー乗り場があるロッホランザに入る。

ロッホランザのバス停はそのフェリー乗り場のあたりのようだが、そこから今宵の宿までは少し離れているので、運転手に宿の近くのレストランの名を言うと、その前まで乗せて行ってくれた。田舎のバスはこういうところがいい。

野生の鹿野生の鹿

私たちの宿は海岸道路からちょっと奥に入ったところなので、自転車を組み立てて走ることにする。

海岸道路から小径に入るとすぐ、一頭の鹿が現れた。鹿は日本でもあちこちにいるのでそう珍しくもないが、このスコットランドで出会うとは思っていなかった。野うさぎもピョンピョン飛び回っている。

宿に続く地道宿に続く地道

この先で道は地道になった。雨降りなのでぬかるんだところがあちこちにある。こんな先に本当に宿があるのか、と思うような道だ。

ここまで来てひっくり返って泥んこにはなりたくないので、危ういところは押して慎重に進む。

ロッホランザの宿ロッホランザの宿

そして、なんとか宿に辿り着いた。玄関のベルを鳴らすなり出てきた宿の主人は、いきなり

『や〜君たち、良く来られたね、一体どこから来たんだい。フェリーは欠航だっていうから、来られないんじゃあないかと心配していたんだ。』 と言う。私たちが乗ったフェリーの後の便からは、海が荒れてすべて欠航になったらしいのだ。間一髪、セーフだったというわけだ。

一軒レストラン一軒レストラン

続く宿の主人の言葉。

『ところで君たち、晩ご飯の準備はしてあるかい。この村にはレストランがほとんどないんだ。』

ロッホランザはフェリーの発着所があるところなので、はじめはスーパーやレストランに困るようなことはないと思っていたのだが、いざ具体的にこれらを探してみると、まったく見当たらなかった。ホテルやB&Bで食事ができるところがあるかもしれないが、WEBでレストランと名乗っているところはたった一軒しかない。そこはかなり小さなレストランなので、念のため予約しておいたのだが、実はこの予約を入れておかなかったら、今宵は食いっぱぐれということになっていた。

宿の主人にこのことを伝えると、『それは大正解だよ。あそこはおいしいし。』とのこと。時間にそのレストランへ行くと、入口に『今宵は満席』の張り紙が。

さて、スコットランド自転車の旅初日のアラン島は、予定の半分ほどしか走れなかったが、それでも充分満足できるものだった。景色は変化に富んでいてきれいだし、羊や牛がのんびり草を食んでいるのもいい。アップダウンはべらぼうにきついところがなく、いいアクセントで、これまた楽しい。

明日はフェリーでキンタイア半島に渡り、ウェスト・ハイランドを北上する。天気はどうなる?

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