今朝は曇り空。このところの状況では、雨が降っていないだけでも「ヨシ!」。
今日は海岸沿いを北上してマレーグまで40km少々と距離は短いので、ゆっくりめの朝食をとり9時過ぎに出発。
幹線のA830を西へ進むと、すぐに左手にエイラー湖(Loch Ailort)が見えてきた。湖といっても、細長く海につながっている。そういえば、昨晩泊まったホテルの名前はLochailort。この湖名そのままだった。
エイラー湖が見えたあたりから小さな上りが始まる。幹線道路なので、それほど勾配はきつくない。
上り終えて下っていくと、道路前方をアーチ橋が横切っているのが見えた。鉄道橋だ。
これは、フォートウイリアムとマレーグをつなぐ鉄道が通る橋だ。この路線は1日2往復で蒸気機関車「ジャコバイト」が走る。この蒸気機関車、映画ハリーポッターに使われたとかで大人気。私たちも後日乗る予定だ。
前方に広がるのはナン・ウアム湖(Loch Nan Uamh)。湖と言っているが湾状の海である。
ナン・ウアム湖に沿ってしばらく走ると、小さな島がいくつか見えてきた。
ここに、歴史的なスポットがある。1746年、プリンス・チャールズ・エドワード・スチュワート(ボニー・プリンス・チャーリー)がカロディンの戦いで敗れ、フランスに向けて乗船したところだという。『ジャコバイトの反乱』の終わりである。そんな歴史の説明を眺めるサイダー。
そして、その先を海に向かって10mほど歩くと、ボニー・プリンス・チャーリーの乗船の地を示すケルンがある。
回りには、いつもの薄紫のヘザーのほかに黄色い花が彩りを添えていた。
ケルンを過ぎてしばらくすると、A830は海辺に別れを告げてしばらく北上する。車道脇に自転車道が設けられていて走りやすい。まあ、車はそれほど通らないのだが。
そして、この内陸側では鉄道路線と並走することになる。蒸気機関車は1日2往復なので、そう簡単には出会えない。
アリセグに到着した。ここは、カフェやレストラン、B&Bがある小さな観光拠点になっている。
目の前の海にはヨットが浮かび、近くのエッグ島やラム島へのクルーズ船も出ているようだ。
私たちはアリセグの町からちょっと寄り道。町の南西にあるルー半島のハイキングへと向かう。
まずは自転車で半島の北側を海沿いに西へ進む。
海沿いは概ね平坦だが、入江になっているところもあり入り組んだ海岸線を走る。
入江の海水が来ていないところでは、羊の群れが下りて草を食んでいる。
次の入江には、カヌーで遊ぶ人たちがいた。車でカヌーを運んできて、ここがカヌーの出発点らしい。真っ赤なカヌーはどこに向かっているのだろう。
海岸の道は車も通らず快適。ときどき羊に出会うのみ。
そしてナン・セオール湖(Loch nan Ceall)が海に近づくと、岩礁越しにエッグ島が見えた。
エッグ島を眺めつつ爽快に走るサイダー
さらに海辺に近づき、るんるん走るサリーナ。
海辺に出たところで舗装路はおしまいとなる。砂利道ダートなので、ここからは徒歩で散策することにした。轍があるので車も通るのだろうが、海風に吹かれながらのハイキングも気持ち良さそうだ。
行く手にはゲートがあり、牧場になっているらしい。
ゲートを越えると、さっそく大きな黒牛くんに遭遇。かなり近い、というか、すぐ横をすれ違う。緊張するわ〜
海を眺めつつ歩く、気持ちのいいハイキングルートだ。道沿いには薄紫のヘザーも咲いている。牛だけでなく馬もいて、広いエリアを自由に歩き回っている。
牧場エリアをしばらく歩くと、次のゲートに到達した。ここまでは轍の跡もあり、牧場主のものらしき住まいもある。
しかしここからは、道なき道を行く。いや、何とかハイキング道らしきところはあるが、草が生え、泥の水たまりもできている。「うっひゃあ〜」と足をとられるサイダー。
道らしきところもあれば、どこを歩いていいかわからないところもある。このところの雨で水浸しになっていたりして、歩けるところを探しながら進む。GPSが頼りだ。
そしてついに、目の前が開けて海が見渡せるところに出てきた。「ついた〜」と嬉しげなサリーナ。
岩場の上は草原で、ところどころにヘザーが咲く。その先には小さなビーチが2カ所見える。
まずは左の広い方のビーチへ。こちらは浜辺に海藻が打ち上げられ、その間に白い貝殻がたくさんころがっている。
写真は拾って並べたものだが、笠貝、二枚貝、巻貝などいろいろあり、大きさも3cmくらいと結構大きい。食べたらおいしそうだなあと思うが、レストランで見たことはない。
今度は右側の小さなビーチに行ってみる。左のビーチで休んでいる間に先客が来ていた。自転車で見かけたカヌーの人たちだ。陸路の私たちはほぼ直線コース、彼らは岬をぐるっと回るコース。カヌーは結構速いんだなあ。
こちらは白砂が広がり、絵のような風景だ。青空なら南太平洋のビーチと見間違えるだろう。羊を除けば、だが。(TOP写真)
もちろん気温は17度くらいと低いので、泳いだり裸足で走り回ったり、という気にはならない。真っ赤なカヌーを背景に満足げなサイダー。
北西側を眺めてみれば、小高い草原では羊が遊び、その向こうに岩礁、そして遠くにエッグ島が見える。羊たちは草を食みのんきそうに見えるが、1頭は常にこちらを見て一応警戒していた。
草原に羊、岩礁、エッグ島。これぞスコットランド西の島嶼地域を代表する風景だ。
ビーチの眺めをゆっくり楽しんだ後、来た道を戻る。カヌーイストの他には帰り道に2組の観光客に会っただけで、とても静かなところだ。
雲が少し高くなってきて、台地のようなエッグ島の向こうには、山の連なるラム島の姿が望めるようになってきた。
さて、自転車まで戻り、いざ走ろうというところで「あちゃ〜!」とサイダー。タイヤがぺちゃんこ、パンクだ。時刻は1時半を過ぎている。スコットランドのレストランでは、昼食は午後2時で終わるところが多い。アリセグの町のレストランで食べられないと、この先昼食を食べるところはなさそうだ。
「サリーナ、先に行ってレストランをキープしといて〜」というわけで、レストランまでの6km、必死で自転車を漕ぐサリーナ。
午後2時1分前にレストランOld Libraryに到着。よくやった、私!(サリーナ)。このレストラン、お客さんがいる間は2時半くらいまでも受け入れて営業してくれるようでした。
ともかくサイダーも到着し、落ち着くシックなインテリアの中、まずはお魚のスモーク盛り合わせ。サーモン2種とサバで、とてもいい味だ。添えられているのは、サラダとオートケイク(オーツ麦と油で作られるビスケット状の硬いパン)。
お次はカレン・スキンク。スモークしたハドック(コダラ)、ジャガイモ、タマネギの入ったクリームスープだ。こちらも美味。スコットランドはスモーク大国なのだった。
とても満足の昼食を終え、後半の走りに入る。
町を出ると、すぐに丘上りが始まる。ナン・セオール湖を眼下に、黙々と上る。遠くには、エッグ島の特徴的な頂が見える。
後半ルートは幹線を離れ、B8008という海側の脇道を行く。脇道といっても、ちゃんと2車線ある立派な道路だ。短い上りのあと、丘の上に到達した。
そこから再び海に向かって下る。このあたりには、この道路から脇道を抜けて入る小さなビーチがいくつもある。人里離れてゆったり過ごすには最適だろう。
海岸まで下りてきた。岩礁の海の向こうに広い島が見える。この旅の大きな目的地の一つ、スカイ島だ。
B8008の道路はここらでシングルトラックになる。右手はゴルフコース、左手は浜辺という道をどんどん進む。
そして、グレナンクロス(Glenancross)に着いてちょっと寄り道。脇道に入ると、すぐに駐車場がある。駐車場に自転車を置いて、薮の生い茂るワイルドな小道の冒険に出発だ。まずは小さな川を渡る。
岸辺を草に覆われた小さな川の水は澄んでいるが茶色っぽい。この川と並行する細いハイキング道は、砂地に草の根が張り出して足をとられそうになる。そんな道を200mほど進む。
そして砂の土手をよじのぼると、そこには白砂のカマスダラ・ビーチ(Camusdarach Beach)が広がっていた。長さ500mくらいはあろうか、長く広々としたビーチだ。白い砂はとてもきめが細かい。
エッグ島とラム島を背景にごきげんのサリーナ。でもやはり気温は低いので、海は眺めを楽しむだけにする。
その浜辺に誰が築いたのか、こんな大作が残されていた。城壁に囲まれ、四隅に円形の見晴し台が設けられた立派な砂の砦だ。周囲には堀もめぐらされている。
人の少ない浜辺をのんびり歩いていると、黒い犬が猛スピードで海に向かって走り、飼い主家族の男性陣も勇敢にも海に入っていく。こちらは見ているだけで鳥肌状態だ。さぶ〜
ここからは、スカイ島が本当に目の前に見える。
浜辺から土手を上り、キャンプサイトを横切って自転車の場所まで戻ろうと歩く。途中の草むらで道がなくなったりしたが、何とかぐるっと回って元の駐車場までたどり着いた。砂浜を楽しむ40分ほどのプチ・ハイクだった。
再び自転車で走り始める。岬をひとつ突っ切ると、モラー川(River Morar)が見えてきた。
モラー湖から発する短いモラー川は、海に至るまで大きく蛇行し、広いビーチを形づくっている。「シルバーサンドのモラー」として有名な川岸では、親子がボール遊びを楽しんでいた。
モラーのビーチを過ぎると、B8008は幹線のA830にぶつかる。幹線を越えてB8008をさらに進めば、次は鉄道と交差する。道は鉄道橋の足下をくぐって進んでいく。
この道はモラーの町と鉄道駅を通り、町が終わったところでA830に合流した。しばらくは幹線道路のA830を黙々と走る。車交通もこれまでよりは多いが、路側帯があるので怖い感じはしない。でもまっすぐの道路はやや味気ない。
今日の終点マレーグはもう近い。そして目の前の海の向こうには、スカイ島とその山並みが大きく見えてきた
マレーグの中心部まであと1km少々のところで、町の中を通る道の入口があった。私たちの今宵の宿もこの道路沿いにある。
というわけで幹線道路を離れて一般道に入ったが、とたんに激坂が待っていた。高低差50m弱の上りだが、勾配がハンパない。「きついぜ〜!」と叫ぶサイダー。
急勾配の上りを終えると、マレーグの中心部が見えてきた。そこまで一気に下る。おっと、その途中にB&Bがあって、行き過ぎるところだった。
マレーグは 'Road to the Isles' の終点だ。人口800人ほどの港町だが、スカイ島、そして他の島々へ渡る拠点となっており、この時期は観光客で賑わっている。
B&Bでしばらく休憩した後、夕食に出かけた。拠点の町なのでレストランはいくつかあり、賑わっている。もちろん、どのお店もシーフードが充実している。
港のすぐ前の2階にあるレストランに入り、白ワインを片手にムール貝、ハドック(タラの一種)のオーブン焼アーティチョーク添え。たまりませんなあ〜
今日は走行距離もさほどなく、ハイキングとビーチの散策などを織り込んだ楽しい行程だった。曇り空が残念だったが、明日はいよいよ晴れ予報。エッグ島に遠足に出かける。