ついに来たっ! 今朝は雲一つない快晴だ。B&Bの朝食は、イングランドからハイキングに来たというおじさんと一緒に盛り上がる。彼は、今日はエッグ島に行くという。いいところでしたよ〜。 私たちはフェリーに乗ってスカイ島の南、スレイト半島に渡る。
今日の行程のスカイ島南部は、ローカル道を通るので周辺に昼食をとれるレストランは見当たらない。というわけで、マレーグのスーパーでサンドイッチを購入してフェリーに乗り込む。
マレーグからスカイ島のアーマデール港までは、フェリーで40分だ。短い行程でフェリーも結構小型。フェリーの運航会社は、もう何度も乗ってお馴染みのカルマック。
これぞ快晴! フェリーはスレイト海峡を滑るように進む。今日は誰もが甲板席に陣取って青空の下の景色を楽しんでいる。
そうしたら、こちらも久しぶりの快晴を楽しんでいるのか、イルカが現れた! 甲板に歓声が上がる。あわてて写真を撮っていた私たちに、甲板のみなさん「ちゃんと撮れた〜?」と、笑顔で遠くからやって来た東洋人に気遣ってくれる。ハイ、何とか写っていました。
アーマデールの港が見えてきた。フェリーで通る人はそれなりにいるはずだが、ヨット乗り場とおみやげ屋さん1軒程度で特に何もない。
ともかく快晴である。盛り上がる。10時過ぎに港に着いて、早速自転車スタート。サイダーは既に半袖Tシャツ姿だ。
港から1kmほどのところにアーマデール城があるので、ちょっと寄り道。フェリーからも灰色のお城の建物が見えていた。
ここは、マクドナルド家の別邸として1790年頃に建てられた邸宅で、1900年代になると放置され今は廃墟となっているが、庭園は美しく維持され、ミュージアムもある。
廃墟となった邸宅の前には緑の芝生が広がり、海峡を隔ててイギリス本土の丘陵地の重なりが見える。
アーマデール城の背後には、歴史のある美しい庭園が広がっていて、さまざまな花の咲く中を散策できる。まるで世界各地の珍しい植物を集めたような雰囲気だ。
いろいろな色の花が咲き乱れ、
そして蓮池を彩る。
庭園の中にある島のミュージアム(Museum of Isles)は2002年に開設したもので、島とドナルド一族の歴史に触れることができる。
庭園とミュージアムを楽しんだあとは、青空の下の自転車行だ。
スカイ島南部のこの地域はスレイト(Sleat)と呼ばれ、北東から南西へ伸びる半島を構成している。まずは、対岸本土の山並みを眺めながら海辺のA851を北上する。
お城の出口から2kmほど北のキルベッグ(Kilbeg)からは幹線を離れ、西へ折れて田舎道に入る。半島を横切るこのルートは、丘陵地のシングルトラックだ。
そして、しばらく上りが続く。上るにつれて、左後方には海と本土の丘の連なりの景色が広がってくる。こんな景色なら上りもかなり楽しいね〜、とサリーナ。まあとにかく、快晴なのである。
約200mの丘をゆっくりと上っていく。あたりは草原で、ときどき羊がいるだけだ。
荒野の一本道の背後には、スレイト海峡を隔ててイギリス本土の丘陵地が連なり、その足下には細い海峡となってロッホが伸びている。遠くに見える高い山はノイダート半島のLadhar Bheinnだろうか。
ゆ〜っくり走らないともったいない景色を、ゆ〜っくり走る我々だった。
ようやく上りが終わりに近づくと、今度は道の前方に山並みが見えてきた。
ピークに到着。ここはスレイト半島の真ん真ん中だ。目の前にはスカイ島らしくごつごつと荒々しいが、豪華な景色が広がっている。(TOP写真)
すぐ手前にはドゥハイル湖(Loch Dhughail)、その先の海はエイショート湖(Loch Eishort)、そして奥にはクィリン丘陵(Cuillin Hills)の山々が連なる。
ダーッと丘を下って半島の反対側の西海岸に着くと、そこはアックナクロイック(Achnacloich)。低地の周囲には牧草地が広がり、真っ白い壁の人家もポツポツと見える。
海辺には小さな湾があり、ビーチがあった。日差しを浴びて、海はエメラルド色に輝いている。前方の湾を望む小さな集落はタースカバイグ(Tarskavaig)、そのはるか奥にはゴツゴツのクィリン丘陵。
豪華な景色を楽しみながら、海岸沿いを軽快に走るサイダー。
そして立ち止まっては記念撮影。真っ青な空とエメラルドの海、そして荒々しい山々。盛り上がるサリーナ。
タースカバイグの集落を横目に、ここから道は少し内陸側に入る。
丘の中腹を削った道の両側にはヘザーが咲き、薄紫の絨毯をまとったようだ。
集落を過ぎてしばらくすると、ガブスガブハイ湖(Loch Ghabhsgabhaig)に着いた。海と丘と湖が交互に現れる。
こうした難しい地名はゲール語なのだろう。スカイ島ではゲール語がかなり話されているが、その割合は次第に減少しており、2001年にはゲール語を話す人は島全体で31%だという。
再び海に近づいてきた。その先の山々も少し大きく見えてきた。ここはトカバイグ(Tokavaig)。ここにも小さな湾がある。
こちらは岩の多い磯浜だ。湾の北端にはDunscaith Castleという城跡がある。もともとスレイトのマクドナルド家の城で、その後何度か所有者が入れ替わった後に17世紀に放置され、今は廃墟となっている。
さて、もう昼の1時に近いが、お弁当を広げるいいポイントがなかなか見当たらない。城跡は湾を隔てて眺めるだけにして、さらに先へと進む。
再び道は少し内陸へ。当然ながら上りである。田舎道のこと、時には超絶的な激坂もある。20%を超えようかという激坂に、背後の景色を楽しむ余裕もなくヨロヨロと進むのだった。
そして下りに入るとすぐにまた海が見えてきた。オード(Ord)に到着したようだ。
ここオードにはいくつかの宿泊施設があり、2〜3組の家族連れも見かけた。正面の海の向こうに山並みが聳えるゴージャスな景色の穏やかな浜、ここでお昼に決定!
エイショート湖を隔てて正面にはクィリンの山並みが続く。そんな景色の中に漕ぎだすカヌーが一艘。
エイショート湖に右手から張り出しているのはスイスニッシュ(Suisnish)の岬。その先に広がるのはStrathairdの半島だ。そして、奥に大きな屏風のように立ちはだかる山は Bla Bheinn。古いスカンジナビア語とゲール語で「青い山」という意味だそうだ。
雄大な景色の中を一人気ままに散歩するのはサリーナ。
岩場の中、透明な水底の白い砂地は海藻がゆらゆら揺れる影を映し、とんでもなく美しい。
ともかく豪華な景色を堪能しつつ、お昼のサンドイッチをパクつく。
正面奥に見えるクィリン丘陵の山々の標高は、最も高い Sgurr Alasdair でも992mなのだが、アルプスにも例えられる険しい頂が連なる。奥のゴツゴツとした頂の並ぶ山々をBlack Cuillinと呼び、その北東の比較的穏やかなRed Cuillinとは区別されている。
景色を堪能しながらゆっくりお昼を楽しんだあと、ここオードからは内陸の東へ方向を変え、再び東海岸を目指す。またしばらく海とはお別れだ。
緑の木々に囲まれたオード川に沿って道は丘を上る。緑や木陰があるこのあたりでは、牛さんに出会った。
道路の脇の木陰で悠然と休んでいる牛さんたち。その横をサイダーが通る。
またしてもスレイト半島を横切るわけだが、先ほどよりは勾配は緩い。草原になると、今度は羊の群れが草を食んでいる。
緩やかな上りの丘を、るんるんと走るサリーナ。
しかし、やっぱりそう簡単には済まないジオポタ。海辺から3kmほど内陸に入ったところから勾配が急にきつくなった。標高が上がると、先ほどの海とクィリン丘陵も背後に姿を現してきた。ピークは標高120mほど、もう少しだ。
丘を越えて、ここからは下り。しばらく進むとメウッドール湖(Loch Meodal)に着く。小さな湖には葦のような植物が生えている。
湖のはるか向こうには、かすかにクィリン丘陵と Bla Bheinnの頂が見える。
そして今度は前方に山並みが見えてきた。海を隔てた本土側の丘陵地だ。東海岸はもうすぐだ。
道はA851にぶつかり、ここからはA851を北上していく。ついに東の海が見えた。
ここでちょっと休憩を、と右手の脇道に入る。
脇道の終点には、入江を望む白い壁のホテルがあった。ここはアイルウセイ(Isleornsay)だ。
静かな入江を囲む島の向こうには、本土の丘が連なっている。海辺には、この景色を眺めながらピクニックできるテーブルとベンチが置いてある。
では飲み物を、とホテルのパブへ。「スカイ」という地元のエイルはレッド、ゴールド、ブラック、ブレーベンと4種類あり、レッドとゴールドにしてみた。
子連れのカップルが入ってきて「どれがいいかな?」と迷っているので、「このスカイのレッド、おいしいよ」と言うと、「あら、自転車で走っていた人たちでしょう!さっき車で見かけたんだけど、すごいわねえ〜。私たちは軟弱な旅よねえ。。」 お子さんがもう少し大きくなったらぜひ自転車旅してくださいね。
エイルを片手に外のテーブルでまったり過ごす。いい午後だ。
海辺に下りてみれば、石の間に小さな魚やカニがいる。写真の下の方にいるの、わかる?
1時間ほどゆっくり休憩して、再び自転車スタート。
A851に戻る道は小さな川を越える。奥に見えるのはスカイ島東部の山、Sgurr na Coinnich。
幹線のA851に戻った。右手後ろを振り返れば、先ほど休憩した入江や海の向こうの丘陵地が見える。スカイ島南部のスレイト半島を北上してきた私たち、ついにその付け根までたどり着いた。
ここからは、しばらく内陸を北上して今度は北側の海を目指す。道はしばらくは平坦だ。
途中、50mほどの小さな上りがあるが、勾配はきつくない。広い道路をもくもくと走ると、北の海が見えてきた。
海辺に近づきスカラマス(Skulamus)でA87に合流すると、一気に車の交通量が増えた。このA87はスカイ島の大動脈、北部からこの海辺を通ってイギリス本土と橋でつながっている。
車も多く観光客の姿もたくさん現れ、道が海辺に至るとすぐに本日の宿、ヘブリディーン・ホテルに到着した。このすぐ先のブロードフォードとその近郊は、スカイ島南部の観光拠点になっており、ホテルやB&Bも多い。
ホテルで一休みしたあと、夕食は海辺を600mほど西に歩いた道路沿いにあるレストラン、クレイモアへ。
今日は豪華な景色ですばらしい日だったね〜と、つい食事も豪華にいってみた。トマトスープ、レンズ豆のスープのあとは、どど〜んとロブスター! 白ワインとともに、たまりません。
ロブスターを堪能してレストランを出ると時刻は夜9時半、ちょうど日沈間もない時間帯だ。
海の上にはかすかな夕焼けが残り、薄い雲が模様を描いている。
今日は一日すばらしい快晴で、スカイ島ならではの荒々しくも豪華な景色の連続を楽しむことができた。明日はさらに島を北上し、スカイ島最大の町ポートリーを目指す。