1614-16

グレンコー・ロッカンとリーブン湖

スコットランド 16

開催日 2016年08月20日(土)晴れのち曇り一時雨
参加者 サリーナ/サイダー
総合評価 ★★
難易度
走行距離 77km

リーブン湖とサリーナ
リーブン湖とサリーナ

コース紹介

ハイランド第二の都市フォート・ウィリアムからアイル湖沿いを南下し、グレンコー村を通って美しい森と湖のグレンコー・ロッカンを散策。リーブン湖を廻って、とんがり帽子のパップ・オブ・グレンコーとコー渓谷入口の山々を眺める。

動画(05'52" 音声:一部にあり)

Googleマップでルートを表示ルートデータ(gpxファイル)
総合データ(GARMIN Connect:ルート、高度、速度など)

発着地 累積距離 発着時刻  ルート 備考
Fort William
 宿
START 発09:15 A82 泊:Ardlinnhe £85(朝付)、
Fort William
 観光案内所
1km 着09:20
発09:40
一般道 地図を入手 £8.99
Fort William
 駅
2km 着09:45
発10:50
A82 バスStagecoach44 09:47,本/h,35'
バスCitylink918:Fort William11:00(09:00)→11:32(09:32)Glencoe
North Ballachulish 23km 着12:05
発12:10
A82 Loch Leven 入口
Glencoe Village 29km
30km
着12:40
発14:45
B863 Glencoe Folk Museum £3
昼食:Glencoe Gathering/トマトモッツァレラサラダ、トマトスープ、ムール貝
Glencoe Lochan 31km
33km
着14:55
発15:15
遊歩道 Glencoe Lochan trails 2.5km
Kinlochleven 44km 着16:10
発16:55
B863 リーブン湖周回
休憩:Highland Getaway
North Ballachulish 59km 着17:50
発17:50
A82 ハイク
バス915:Glencoe17:44(19:36)→18:15(20:06)Fort William
Fort William
 宿
77km 着19:00 夕食:Spice Tandoori/サラダ、カレー二種(チキン、ベジタブル)
泊:Ardlinnhe £85(朝付)
日の出05:20ごろ、日の入21:15ごろ /為替レート:1£=140円/ハイクLost Valley 4km,3h、The Pap of Glencoe 7km,5h

眺めのいいB&Bの食堂"眺めのいいB&Bの食堂

ハイランド第二の都市フォート・ウィリアム(Fort William)の朝は晴れだ。今日はウェスト・ハイランド最大の見どころとも言われるグレンコーを散策しに行く。

一般的にグレンコーと言った場合、それはフォート・ウィリアムの南にあるコー渓谷(Glen Coe)を指すが、その西端にある村もまたグレンコー(Glencoe)と言うから、ちょっと紛らわしい。グレンコー村の方は Glencoe village と紹介されることもあるから、ここでは後者はグレンコー・ヴィレッジまたは単にヴィレッジと呼ぶことにする。

私たちが行くのは、スコットランドでも有数の見どころの一つとされるコー渓谷の方で、その真ん中までバスで行き、自転車で Lost Valley あたりに入って戻ってくる計画だ。

ポリッジポリッジ

出発の前にまず朝ご飯を。スコットランドの朝食のスタンダードは、ポリッジ(porridge)というオートミールとフル・スコティシュ・ブレックファストだ。

ポリッジはカラスムギのお粥で、牛乳や砂糖、あるいは塩を加えて食べられる。ここではメイプルシロップを試してみた。これは感覚としては、ジャムや蜂蜜を塗ったパンと同じようなものかもしれない。

フル・スコティシュ・ブレックファストフル・スコティシュ・ブレックファスト

もう一つのフル・スコティシュ・ブレックファストは複数の品からなる。

写真はブラック・プディング、ソーセージ、焼きトマト、卵、マッシュルーム、豆だ。このほかに、ベーコン、ハギス、ポテト・スコーンが加わるが、全部食べ切ることは不可能なので、この日は写真のものだけをお願いした。ジュース、ヨーグルト、フルーツはたいていサービステーブルに置かれており、好きなだけどうぞだ。もちろん、コーヒーか紅茶、そしてトーストが付く。

フォート・ウィリアム中心部へ向かうサリーナフォート・ウィリアム中心部へ向かうサリーナ

たっぷり朝食をとったら、フォート・ウィリアム中心部にある観光案内所に向かう。

フォート・ウィリアムはアイル湖(Loch Eil)が直角に折れ曲がる所に作られた街で、宿からはアイル湖沿いのA82を進む。

フォート・ウィリアム中心部フォート・ウィリアム中心部

1kmほど走るとフォート・ウィリアムの中心部だ。そこにはA82に並行した歩行者専用道のような道の両側に、商店やレストランが並んでいる。

この中にある観光案内所で、フォート・ウィリアムからグレンコー周辺にかけての詳細な地図を入手した。

ジャコバイト号ジャコバイト号

グレンコーまでは駅前からのバスに乗る予定だ。その出発時刻まではまだだいぶ時間があるので、駅で明日の列車のチケットを購入した。

プラットフォームには昨日私たちが乗ってきた蒸気機関車ジャコバイト号が入っていたので、ついでにもう一度覗いてみることにした。

クラシカルな出で立ちのカップルクラシカルな出で立ちのカップル

大勢の観光客の中に、ちょっとクラシカルな出で立ちのカップルがいた。

おそらくこの人たちは観光用のモデルだと思う。日本なら羽織袴や着物で登場といったところだろうか。

ジャコバイト号運転室ジャコバイト号運転室

昨日、ジャコバイト号に乗車したときは雨だったので運転席は見なかったが、この日は大勢の観光客に混じってそれを覗かせてもらった。

複雑な配管や計器が並び、その下で火室の中が真っ赤になっているのが見える。走っている間中、ここに石炭をくべ続けなければならないのですね。

アイル湖に浮かぶヨットアイル湖に浮かぶヨット

バスの発車時刻が近付いてきたので、バス乗場へ移動する。さすがにフォート・ウィリアムだけあり、バス停がたくさん並んでいる。

ちょっとうろうろしたが目当てのバス停が見つかり、自転車を折り畳んでスタンバイ。グレン・コーへはステージコーチ(Stagecoach)とシティリンク(Citylink)のバスがあるが、私たちは後者を使う。ステージコーチはヴィレッジより奥へは行かないからだ。

A82を戻るサリーナA82を戻るサリーナ

バスがやってきた。大勢のハイカーが巨大なリュックを荷物室に放り込む。私たちが自転車を入れようとすると、係員がバッグに入れなければダメだという。これまでスコットランドで数回自転車をバスに載せたが、いずれも裸でOKだったので、すっかり輪行袋のことを失念していた。事前に問い合わせたところ、確かに、『バッグに入れてね』とあったのを思い出した。

宿に輪行袋を取りに戻る時間はない。困った。仕方がないので計画変更だ。

高い山が見えてくる高い山が見えてくる

大変残念だがコー渓谷へ行くのは止めて、その手前にあるリーブン湖(Loch Leven)を廻ることにする。

そのリープン湖までだが、走っても次のバスを待ってもあまり変わらないので、ここは走ることに決定。やってきたA82を戻る。

アイル湖対岸の山アイル湖対岸の山

私たちが宿泊したB&Bを通り過ぎ、どんどことA82を南へ向かう。

このあたりのアイル湖には白い帆を広げたヨットがたくさん浮かんでいてきれいだ。その先には対岸の山がずっと連なっている。

山が近付く山が近付く

A82はグラスゴーとフォート・ウィリアムを繋ぐ幹線道路で、交通量がかなり多く大型バスも結構通るので、自転車向きの道ではない。コー渓谷まで行くことを諦めた理由の一つがこれだ。

先ほどから見えていた山がぐっと近付いてきた。そろそろリーブン湖の入口だろう。

リニ湾リニ湾

ノース・バラチュリッシュまでやってきた。

ここの直前でアイル湖はキュッとくびれ、リニ湾(Loch Linnhe)へ注ぐ。

リーブン湖の入口リーブン湖の入口

ノース・バラチュリッシュではまた、リーブン湖の水も、リニ湾へ注いでいる。

写真はリーブン湖がくびれ、リニ湾に注ぐ口だ。

リーブン湖南岸を行くリーブン湖南岸を行く

リーブン湖の周囲にはぐるりと道があり、一周できるようになっている。

ノース・バラチュリッシュからはその南岸を辿り、グレンコー・ヴィレッジへ向かう。

リーブン湖とパップ・オブ・グレンコーリーブン湖とパップ・オブ・グレンコー

リーブン湖の先に頭が尖った特徴ある山が見えてきた。あれはパップ・オブ・グレンコー(Pap of Glencoe742m) という名の山で、ハイカーに人気だそうだ。往復で7kmのトレッキングコースがあり、五時間ほどで登れるらしい。

グレンコー・ヴィレッジはあの山の麓にある。

小さな教会と墓地小さな教会と墓地

右手の山側には小さな教会と、それに付属した墓地が見える。

その地面は、まるできれいに管理された芝生のような緑。

グレンコー・ヴィレッジ入口付近グレンコー・ヴィレッジ入口付近

グレンコー・ヴィレッジが近付いてきた。

正面にはずっと、あのパップがデーンと座っている。

クラフト・ショップクラフト・ショップ

A82に並行する道に入ると、ちょっと洒落たクラフト・ショップやB&Bが数軒建ち並んでいる。

これらを横目に進むと、道はすぐにまたA82に合流する。

グレンコー・ヴィレッジグレンコー・ヴィレッジ

私たちが最初行こうとしていたコー渓谷は、ここから先のA82沿いに16kmほどの長さに渡り展開する。ちょっと覗いてみたいが、ここはぐっと我慢。A82を横切り、グレンコー・ヴィレッジに入る。

ヴィレッジの中にはグレンコー民俗博物館(Glencoe Folk Museum)があるので覗いてみた。

グレンコー民俗博物館グレンコー民俗博物館

それは切り妻屋根の細長い建物で、軒がすごく低い。中に入るのに、入口で屈まないと入れない。

壁は石造らしく、白い石灰らしきものが塗られている。

木の葉っぱの屋根木の葉っぱの屋根

その屋根は一風変わっている。世の中には植物を材料にした屋根葺き材はいろいろあるが、それらは、木の皮、木の薄板、藁や茅、またはバナナなどの植物の葉を使ったものだ。

ここの屋根は針葉樹の葉付き小枝で葺かれていて、これは初めて見るものだ。

グレンコー民俗博物館内部グレンコー民俗博物館内部

内に入ると小屋は構造材が表しになっており、外観同様質素な造りだ。

ここの展示は、1692年のグレンコー虐殺やジャコバイト蜂起を始めとし、このあたりの主要な産業であったバラクラシのスレート採石場などが中心となっている。

グレンコー・ロッカンへ向かうグレンコー・ロッカンへ向かう

この小さな博物館を眺めたら、村の入口にあったレストランで昼食にし、そのあとグレンコー・ロッカン(Glencoe Lochan)へ向かう。

グレンコー・ロッカンは、 パップの下にある小高い丘の中の小さな湖の周辺だ。

グレンコー・ロッカングレンコー・ロッカン

その湖の周りは気持ちのいい散策コースになっていて、自転車でも廻れる。

湖の周りの森は人工的に作られたもので、その話がなかなか素敵だ。あるカナダ人がこちらにやってきたのだけれど、その妻は生活に馴染めずふさぎ込んでしまったので、彼女を慰めるためにここに故郷に似た景色を作ろうと、カナダから樹木を移植し森を作ったのだそうだ。

結婚式の出で立ち結婚式の出で立ち

その湖畔に洒落た格好をした人々が集まっている。男性は民族衣装のキルトを纏っている。

どうやらこれからここで結婚式があるようで、すぐ近くではアイリッシュ・ハープをつま弾いている人もいる。

パップとグレンコー・ロッカンパップとグレンコー・ロッカン

ハイランドの川は黒い。そしてまた、湖も黒いのだ。

気温の低いこの土地では、植物が枯死しても分解されずに泥炭となる。その微粒子が沈殿しないで水中を浮遊しているので、川や湖は黒いのだ。

湖の南西を見る湖の南西を見る

ここは静かでとてもいい。

結婚式の人々結婚式の人々

この湖の周囲は2.5kmほどで、ゆっくり歩いても一時間も掛からない。自転車だとせいぜい20分だ。

一周すると、先ほど出会った結婚式のグループが、デッキでまだおしゃべりしているのが見える。

B863B863

グレンコー・ロッカンの静寂を楽しんだあとは、ヴィレッジへ戻り、リーブン湖一周の再開だ。

ヴィレッジから先の道はA82ではなく、B863となる。この道はA82に比べ圧倒的に車が少ない。

リーブン湖リーブン湖

コー川(River Coe)を渡りリーブン湖の奥へ向かうと、湖の幅はヴィレッジ付近の半分程度に狭まる。

ちょっと見には少し広めの川だ。

真っ黒な雲真っ黒な雲

ここに来て空には雲が多くなった。天候はやや下り坂のようだ。先にはかなり厚い、真っ黒な雲もある。

ハイランドでは五分ごとに、晴れ、曇り、雨と変わることがよくある。

ヘザーヘザー

先ほどから道端に見えている赤紫の花はヘザーだ。

丘を覆うこのヘザーは、夏のハイランドの景色を作る重要な要素になっている。

山の斜面を覆うヘザー山の斜面を覆うヘザー

それはこんなふうに、大概山の下から中腹あたりまでを覆う。山の上の方には生えない。

これははじめは森林限界のようなものがあるのかと考えたのだが、おそらく、岩でできた山の上部は勾配が急で土がないためだと思う。

リーブン湖の奥へ向かうサリーナリーブン湖の奥へ向かうサリーナ

今日のこのコースはほとんどフラットなのだが、ヴィレッジからグレンコー・ロッカンまでと、このリーブン湖南岸に二ヶ所、ちょっとした上りがある。

上るサイダー上るサイダー

それらの坂は標高差50mほどで斜度もきつくないので、一気に上る。

潮目潮目

リーブン湖が下に見えるようになってきた。これは川だろうか、湖だろうか、それとも海だろうか。Loch Leven の Loch は通常は川は含まず、湖か細長い海を指すことが多いので、湖か海なのだろう。

水面に一筋の線が見える。これは海なら潮目と呼ぶのだろうが、湖では何と呼べばいいのだろう。

Beinn na CaillichBeinn na Caillich

先ほどから対岸に見えている山は Beinn na Caillich(762m)。

特に名高い山ではないが、鋭い刃物でカットされたような湖側のシャープな斜面が印象的だ。

キンロックリーバンキンロックリーバン

二つ目の大きな坂を上って60mの高度差を一気に下ると、リーブン湖の東端にあるキンロックリーバン(Kinlochleven)に到着。

この村はかつてはアルミの精錬所があったことで知られたが、現在は観光が主要産業だ。グラスゴーのミルガイとフォート・ウィリアムを結ぶ150kmに及ぶウェスト・ハイランド・ウェイ(West Highland Way)を始めとし、多くのトレッキングコースがここを通っている。

キンロックリーバンを出るキンロックリーバンを出る

その名もハイランド・ゲートウェイ(Highland Getaway)という名のバーで一休みしたら、リーブン川を渡ってリーブン湖の北岸へ入る。

休憩している間に、厚かった黒雲はすっかりどこかへ行ってしまったようだ。

リーブン川リーブン川

先ほどまで見ていたリーブン湖に比べると、リーブン川はより浅く狭く、川という感じがする。

これを見ると、リーブン湖を川と呼ばないのも頷ける。

パップと小島パップと小島

再びリーブン湖に出た。湖面に小島が浮かび、その先にあのパップが目印のように立っているのが見える。

コー渓谷は今見えている山々の向こう側で、ここはその一筋北側ということになる。

サイダーサイダー

この周囲の山々は標高600mから800mといったところで、スペースからいってちょうどいい高さだ。

山が巨大だとその足元では周囲はほとんど見えなくなるが、ここはいろいろな山が見える。そうした山々の、ボコボコした山肌を眺めるのも楽しい。

Sgorr na CicheSgorr na Ciche

パップの真横にやってきた。ここから見るとあのバランスの取れた尖った山頂はまったく違ったものに見える。

この山はまたの名を Sgorr na Ciche という。パップは英語で、こちらはスコットランド・ゲール語なのだろう。このあたりの山の名はほとんどがスコットランド・ゲール語によるものらしく、まったく読めない。

リーブン湖を通してコー渓谷入口の山々を見るパップとグレンコー・ロッカン

パップの尖った山頂が再び見えるところまでやってきた。

パップの手前の木に覆われた丘が、きれいな湖があったグレンコー・ロッカンだ。

草原草原

この辺りはリーブン湖の岸まで山が迫っているので、あまり平場がない。

ごく僅かに開けた穏やかな斜面は牧草地として使われているようで、ほとんど緑の芝生のように輝いている。

コー渓谷入口の山々コー渓谷入口の山々

グレンコー・ロッカンのうしろにコー渓谷の南側の山々が見え出した。

あそこから、スコットランドでもっとも壮観で美しい場所の一つと言われる、16kmに及ぶコー渓谷が始まる。ここから見るだけでも凄そうな渓谷だ。

コー渓谷からリニ湾へ続く山コー渓谷からリニ湾へ続く山

リーブン湖が広くなった。

ここから見えているのは、コー渓谷の最西端の山とそれからリニ湾へと続く山だ。

リーブン湖出口付近リーブン湖出口付近

リーブン湖周遊もそろそろ終わりだ。

北岸にはないかなと思ってた上りがここで登場、ちょと上って下るときれいな樹林帯を抜けていく。

再びリニ湾再びリニ湾

ノース・バラチュリッシュに戻ってきた。午前中ここにはきれいな青空が広がっていたが、今は空の大部分を雲が占めている。その雲の穴から、陽の光がパーッと差し込む。これもスコットランドらしい景色の一つだ。

このあとはフォート・ウィリアムの宿まで一走り。途中で雨に合い、10分ほどの雨宿り。やっぱりこの日もスコットランドの天気だった。

うっかりミスで予定変更となったこのコースだが、グレンコー・ロッカンには心を癒される静寂があったし、リーブン湖周回ルートもダイナミックな景色で良かった。コー渓谷の入口の山々も見られた。これを見て、もしもう一度チャンスがあればやはり、是非、コー渓谷へ行きたいと思うのだった。

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