今日はまずアウルラン(Aurland)からナーロイフィヨルド(Nærøyfjord)の先端のグドヴァンゲン(Gudvangen)まで、フェリーで渡ります。
朝8時過ぎに到着したアウルランのフェリー乗り場には誰もいません。フェリーは8:25発のはずだけど大丈夫かな?
イタリア人カップルがやってきました。「グドヴァンゲン行きはここですよね?」と、あちらもちょっと不安そう。
フロム(Flåm)からのフェリーは5分遅れで到着しました。よかった〜
アウルラン港を出発。ちょうど山から朝日が上ってきました。
そして少し進めば、後方には昨日訪れたフロムの町が小さく見えました。
フェリーの乗客は全部で10数名程度。ゆったり景色を眺めています。
アウルランフィヨルド(Aurlandsfjord)を北上すると、見えてきたのはウンドレダール(Undredal)の村。水際にかわいらしい家々が並んでいます。
このウンドレダール村は、最も小さいスターヴ教会があることで有名です。
港から少し上ったところに白い壁と茶色い屋根のかわいい教会が見えました。1147年の建築だそうです。
このアウルランフィヨルドとナーロイフィヨルドは、世界最大級のフィヨルドであるソグネフィヨルド(Sognefjorden)の支流にあたり、観光船のクルーズも人気です。
私たちのフェリーとすれ違ったのは、最新型フェリー。船のまわりがスロープになっていて、いろんなところで景色を楽しめるようになっています。いいアイデアですね。
フェリーは進行方向を南西に変えて、ナーロイフィヨルドに入っていきます。
ナーロイフィヨルドは、ガイランゲルフィヨルドとともに「西ノルウェイフィヨルド群」として2005年に世界遺産に登録されました。どちらも周囲の山から海まで急激に落ち込む狭いフィヨルドが美しく表情豊かで、人工建造物も少なく景観が保持されていることが理由とのこと。
景色はすばらしいけれど外はかなり寒いので、いったんフェリーの室内へ。しばらくガラス越しの景色を楽しみます。
ときどき観光案内の放送が流れますが、英語に続き日本語があってびっくり。日本人の観光客は多いんですね。
ここはディーダル(Dyrdal)というところのようです。
氷河に削られた谷がフィヨルドに至るところにありますが、交通手段はボートしかないのでは?
ナーロイフィヨルドの最も狭いところは、幅250m。ナーロイは「狭い」(英語のnarrow)の意味だそうです。
険しい山に囲まれた静かな海を、ボートが波紋を描きながら進んでいます。
山の頂には雪。両側には高さ1,400〜1,600mくらいの山が連なっています。
そんな山から最も短いところでは、直線距離1km程度でフィヨルドに至ります。つまり、角度は平均50度くらいか。
両側にそびえ立つ山並みは氷河に削られた荒々しい景色ですが、その間の海は波一つなく鏡のように静かに山々の姿を映し出しています。
それにしても、フィヨルド沿いにときどき見かける家に住む人たちはどうやって暮らしているのでしょうか。
ここはバッカ(Bakka)というところで、フィヨルド沿いにグドヴァンゲンから道が通じていて教会もあり、オートキャンプ場もあるようですが、年間通して暮らしているのは2軒の農家のみらしい。
狭いフィヨルドをフェリーが行き交います。壮大にして繊細な風景に満足そうなサイダー。
周りはゴツゴツした山並み。
寒いのでフードを被っているサリーナですが、この景色はやっぱり外で間近に見たい。
アウルランを出発して2時間弱が経過した頃、フィヨルドの先に集落が見えてきました。
そろそろナーロイフィヨルド先端のグドヴァンゲンに到着です。
美しいナーロイフィヨルドの景観を堪能して、フェリーを降りました。
さあ、ここから自転車だ、と気合いを入れるサリーナ。
その前に、ここグドヴァンゲンにはニャールダルハイメル(Njardarheimr)というヴァイキングの村があって、村のツアーやマーケットがあるとのことで見に行ってみましたが、建物は建設中のように見えて入口もよくわからなかったので、先へ進むことにしました。
港の横ではカヌーがたくさん置いてあり、これからカヌーのツアーに出かけようという人たちがいました。
グドヴァンゲンの人口は120人ほど。港から小さな集落の白い家並みを抜けて、幹線のE16に入ります。
このあたりの道路から左手を見ると、崖の上から3本の滝が流れています。
これはシェル滝(Kjelfossen)。山の上の湖から流れ出て滝の下で1つの川となり、E16と並行して走るナーロイダル川(Nærøydalselvi)に注ぎ込んでいます。
そんな滝の眺めやフィヨルドから続くナーロイ谷の両側の山並みを楽しみつつ、E16を走っていきます。
とはいえこのルートは幹線。深い谷のこと、他に並行する道路もないので交通量は結構あります。大型観光バスも頻繁に行き交うので要注意。
1,000〜1,200mの岩山を両側に見ながら走っていくサイダー。
ナーロイダル川の流れをお供に走っていくサリーナ。
グドヴァンゲンから10kmほど走ったところで、E16は1km以上続くトンネルに入ります。その手前に左に入る脇道がありました。
これはスタルハイムスクレイヴァ(Stahlheimskleiva)という旧道で、1.5km続く13連続カーブの道です。1車線の狭い道なので、車は下りのみの一方通行。
当然、激坂。全長1.5kmで標高差220m。勾配20%前後の坂が続きます。
走り出して20mもいかないうちにノックダウン。あとは押し!
というわけで、ゆっくり押して進みます。
押すのも結構大変な坂ですが、上るにつれて走ってきたV字谷の雄大な景色が広がっていきます。
ゆっくり休み休み上る利点は、道端の花をじっくり眺めたり野いちごをつまんだりできること。
誰も通らない激坂の道を2人占めで上っていきます。
と思ったら、こんなに狭い曲がりくねった道を、何と大型観光バスが下りてくるではありませんか。それも連続で何台も! ぎりぎりの道幅なので、私たちは脇に避難します。
ちょうどカーブのところに滝があり、バスは乗客の写真撮影のためしばらく停車します。私たちも「自転車ですごいね!」と拍手されながら被写体に。ずっと押しているんですが。。
押し上るのは大変ですが、カーブを曲がるごとにナーロイ谷の見晴らしがどんどん良くなっていきます。
カーブを曲がるたびに写真を撮りながら小休止。この滝は、道路の西側にあるシヴレ滝(Sivlefossen)。
そして東側のカーブに行けば、上に見える赤い建物はこの激坂の頂上にあるスタルハイムホテル。
そして、流れ落ちるのはスタルハイム滝(Stahlheimsfossen)。
ようやく13カーブを上り終え、道が緩やかな直線になったところで自転車にまたがります。
そそり立つV字のナーロイ谷を背景に走るサイダー。
丘の上に建つスタルハイムホテルがオープンしたのは1885年。それ以前の1750年から旅人に部屋を提供しているそうで、200年以上の歴史があります。
この道は17世紀にベルゲンとオスロを結ぶ郵便ルートとして開発され、道沿いの農家がベッドと食事を提供するようになって、その後独立したホテルを営むようになったとか。
ホテルのロビーから奥に入っていくと、レストランと落ち着いた雰囲気のカフェスペースが設けられています。
そして、大きな窓の外にはテラスになった中庭があります。
中庭に出てみれば、テラスからは雄大なナーロイ谷の絶景が広がっていました。
テラスの足元から流れるナーロイダル川、そしてE16は、折り重なる山の麓のナーロイ谷のはるか先まで続いています。
そしてテラスから左手、北側を見ると、丘の上に牧草地があり農家の建物が見えます。
絶景だね〜、と思わず自撮りを。
実は風が強く結構寒いのですが、景色を満喫。上ってよかった〜
ところで、スタルハイムホテルには屋外ミュージアムもあり、中世から戦前までの建物を展示しているそうです。
私設のミュージアムとしてはノルウェイでも最大級とのことですが、曇り空の天気が心配なので私たちは先に進むことにしました。
ホテルを出て1kmほどで、再び幹線のE16に合流します。
E16は2車線で大型車には注意が必要ですが、ときどき自転車歩行者道があります。自転車道がずっと続くようになるといいのだけど。
オップハイム湖(Oppheimsvatnet)の東端に到着しました。湖畔にちょうどピクニックテーブルがあったので、ここで持ってきたサンドイッチの昼食です。
幹線のE16はオップハイム湖の北側を通っていますが、私たちは湖の南側のヴァストロン道路(Vasstrondvegen)というローカル道を行くことにしました。
1車線の道は車もほとんどなく快適です。
農家をつなぐローカル道のこと、地形に沿って細かいアップダウンはありますが、湖の脇を走ったりちょっと高いところを通ったりしていい感じ。
緑の牧草地の中を駆け抜けるサイダー。
オップハイム湖の対岸前方にはオップハイム(Oppheim)の村が小さく見えます。
オップハイムにはスキー場があります。丘の上までつながっているのはリフト、その右手に小さなジャンプ台も見えます。
オップハイム湖の西端に近づいてきました。湖の西端で再びE16に入ります。
ここでついに、薄暗くなった空から雨がポツポツと降ってきました。
E16に入ってすぐに、道は下りとなります。
ビューンと飛ばしたいところですが、E16は車が多く、雨も降ってきたので慎重に。
ヴィンニャ(Vinje)という村を通ります。白い教会がありました。
ここからE16は左にカーブし、南下していきます。
ストランダ川(Strandaelvi)に沿って南へと進む。その先には雪を頂く山並みが見えます。
雨が次第に本格的に降ってきました。そして大型車両の通行も多く、緊張の連続。
谷間を川に沿って進みます。途中のバス停で雨具のズボンをはき、小休止。
雨と大型車に追い越される緊張感とで疲労感の漂うサリーナ。
オップハイム湖から13kmほど走ったところにキャンプ場があり、その奥にツヴィンデ滝(Tvindefossen)がありました。
その先からE16を離れ、レッパ道路(Reppavegen)という一般道に入ります。車交通はほとんどなく、ほっと一息。
しかし、やはり谷間を行く一般道。基本的に平坦な幹線道とは異なり、地形に沿ってアップダウンや迂回を繰り返しながら進んでいきます。
右手下にはヴェトラ湖(Vetlavatnet)が見えますが、薄暗い靄のかかる雨の中、あまり景色を楽しむ余裕はありません。
静かな森の中。いい雰囲気の道のはずですが、雨とアップダウンでつらい。ヘロヘロで遅れ気味のサリーナ。
ロナ湖(Lønavatnet)が見えてきました。
湖沿いの道は、途中でレッパ道路からFv309に入ります。対岸には1,200mを超える雪山がうっすらと見えます。晴れていれば、多分すばらしい景色。。
アップダウンを繰り返し、ヨロヨロと進む。
ロナ湖を過ぎて川を渡り、ヴォス(Voss)郊外のブーストロンニ(Borstrondi)でE16を渡って、E16の山側を並行して走る一般道リンゲハイム道路(Ringheimsvegen)に入りました。
これも山側の一般道。また坂を上ってE16を左下に見ながら走る。雨の中のアップダウンを朦朧としながら進みます。
何とかヴォスの町に到着。一般道に入ってから16kmほどの道のりですが、1時間半もかかってしまいました。
スーパーで買い出しの後、本日の宿に向かいます。
ヴォスの町は列車やバスの交通の便がよく、フィヨルド観光の中継地として賑わっています。
町の中心からヴァングス湖(Vangsvatnet)沿いに1kmほど走ったところに今日の宿があります。
やっとのことで到着。雨でグチョグチョ、ヨレヨレで放心状態のサリーナ。
ここはユースホステルで、私たちの部屋は2段ベッド2組にシャワー・トイレ付きです。とりあえずシャワーを浴びてゆっくり休憩。
夕方8時頃、やっと夕食の気分に。ここには小さな共用キッチンとダイニングがあったので、またまた自炊のディナーです。
今日は、フィヨルドやナーロイ谷の絶景を楽しんだまではよかったのですが、後半は雨のため、かなりつらい一日になりました。お天気が良ければすばらしいルートだったろうと思います。
スタルハイムの激坂を除けばそれほど大変な行程ではないはずですが、雨に加えて旅も終盤にさしかかり、疲労が溜まってきたようです。
ところでこの夜、サリーナにはさらに衝撃が! GPSでの現在地表示に使っていたスマホが壊れたのか、充電ができなくなってしまいました。明日はどうなる?