ブレッドは今朝も青空です。部屋でゆっくり朝食後、遅めの9時前に自転車で出発。
ブレッド湖を離れ、自転車で近郊の見所を巡ります。
ブレッド湖沿いからムリノ(Mlino)の集落を南に入ります。
狭いローカルな道に古い家並みが張り出していて、ちょっと楽しい。
そして広い牧草地に出ました。このあたりは集落と牧草地が交互に現れます。
朝日を浴びて、スイスイと気持ちよく進みます。
途中で、大きな木造の納屋を見つけました。
トウモロコシが束になってぶら下がり、窓辺には溢れるほど花が飾られてオシャレです。
そして再び広い牧草地の中へ。
前方の丘の麓にはサヴァ川が流れています。
ここには観光客はほとんどおらず、車もほとんど通らず、静かな田舎道です。
「のんびりしたいいコースね〜」と上機嫌のサリーナ。
そして、サヴァ川にぶつかりました。ここからしばらくサヴァ川沿いのダートを走ります。
ところで、2日前にグランスカ・ゴーラからサヴァ川と一緒に南下してきましたが、サヴァ川の始まりは2箇所あり、こちらのサヴァ川はSava Bohinjkaといってトリグラウの谷、ボーヒニ湖(Bohinjsko jezero)から流れてきたものです。
しばらく進むと、サヴァ川との間に牧場がありました。
牧場のおかあさんが桶を持って名前を呼ぶと、「ンモ〜〜」と牛が返事をしていました。これ、ホント。
そんな風景を眺めながら、森の中のダートを進みます。
そして、再びサヴァ川にかかる橋に出ました。川の流れはとても静かです。
この橋を南から北へ渡り、Bodeščeという村のはずれにある教会を目指します。
その教会は、St. Lenart教会で、15世紀半ばのゴシック様式です。
川沿いの高台にあり、つい近道を選んだらダートの激坂で距離にして300mほど押し。
この教会はほぼ建てられた当初の姿をとどめているそうで、北の壁には鮮やかな色で絵が描かれています。
こちらは西の入口の上に描かれた絵。お城や馬に乗った人などが描かれていますが、伝説の英雄でしょうか。
ところで、この入口の梁の部分に黄色い貝殻が貼付けてありました。ひょっとして、スペインのサンティアゴ巡礼の道に関係があるのかな?
教会は鍵がかかっていましたが、窓から中をちょっと覗いてみると奥に八角形の祭壇が見えました。
朝日の中、小さな教会は15世紀の姿から変わらず静かに佇んでいます。
さて、教会をあとにラドヴリツェに向かうことにしますが、サヴァ川までの来た道を帰らずにサイダーが畑の中のダートを進む。
「こっちから行くと近道のはずだよ〜」
だんだん道が薄れてきました。もう、道じゃないでしょうに「あっちの林を抜ければ行けそう」とサイダーが進む。サリーナは動かず。
やっぱり通れず帰ってきたサイダーでした。つきあわなくてよかった〜
通ってきた道を戻ってサヴァ川に出て、そこから川に沿って林の中のダートを東へと進みます。
途中から舗装路になり、家並みを通り抜けると少し大きめの道に出てきました。正面の丘の上には小さく塔が見えて、あそこがラドヴリツァです。左折して川を渡ります。
丘の上に見えたわけですから、当然上り。
わっせわっせと上れば、右手側には次第に森や牧草地の景色が広がっていきます。
そして、鉄道の線路の上を越えて進みます。
ラドヴリツァの駅はこの下にあり、私たちは町の中心までもう少し上ります。
町の広場に入る前に見晴し台があったので、小休止。晴れて気持ちのよい景色が広がり、その下をちょうど真っ赤な列車が通っていきました。
正面にはユリアン・アルプス、そしてスロヴェニアで最も高いトリグラウ山も見えるはずですが、そのあたりだけ白い雲に覆われています。残念〜
見晴し台から細い路地を30mほど入ると、突然ラドヴリツァの広場に出てきます。
そこは、レリーフや絵で飾られた白や黄色の壁のかわいい建物が並ぶリンハルトフ広場です。
長方形の広場には、カフェのパラソルが並んでいます。そんなわけで、まずは黄色いパラソルのカフェでレモネードをいただきました。本物のレモネードは酸っぱくてシャキっとする〜
レモネードを飲み終わったら、まず広場の斜め横にある聖ペトラ教会に行ってみました。下から見えていた塔はこの教会ですね。
そして、その右手は教会に付属する門のような建物で、展示などに使われているようです。この時は何やらレースや花の輪っかなど華やかなものがたくさん置かれていした。
教会のファサードにある3つの入口は、どれも華やかなゴシック様式です。では中に入ってみましょう。
内部もとても華やかです。彫刻は1713年のものだとか。
中央の通路のまわりはレースで飾られています。先ほどの教会横の建物にもありましたが、どうやらこのあと結婚式があるようですね。
さて、教会を出て広場に戻ると、レモネードのカフェの向かいに大きな建物がありました。そこは音楽学校のようで、カフェの横のテーブルでは音楽の先生たちが集っていましたが、その同じ建物の中に博物館があります。
それは、養蜂博物館。あなどるなかれ、かなり面白いです。スロヴェニアにはかなり古くからの養蜂の歴史があるそうですが、養蜂箱の面白いこと、例えばこの写真は等身大の人物ですが、これ、養蜂箱ですよ。背中のあたりに蜂のおうちが入ります。
そしてこれは2つの塔を持つ教会ですね。これも蜂のおうちです。
これら以外にもマンション型とか、ライオン型とか。また、引き出し型の養蜂箱の前面にもいろいろな絵を描いていたようで、宗教関係、村の生活から歴史まで、日露戦争なんていう絵もありました。
博物館を出て、ぶらぶら散歩です。
ラドヴリツァはスラブ民族が移住してきた当初からの歴史を持ち、14世紀にはすでに交易都市として栄えていたそうです。広場に連なる建物は16世紀頃のもの。
歴史を感じるかわいい建物が並んでいます。
壁には美しい絵が描かれています。そして2階がちょっと張り出して存在をアピールしているところも面白い。
こちらは角が円筒になっている建物。縞模様がオシャレです。1階はカフェ。
リンハルトフ広場の西から東を見たところ。右手には泉があります。
カラフルで楽しい広場は、2012年に訪れたチェコの村々のバロックの街並みによく似ています。
広場から路地を西に進む道沿いに、白い壁にレリーフが並んでいる建物がありました。
そのレリーフの一つ。楽器を楽しむ人々ですよね。
他には彫刻を彫る人たちだの、何かの荷物だののレリーフがあります。お店の商品なのか、職業を示すものなのか?
さらに西に行くと、小さな広場に出ました。中央にあるのは何でしょう。巨大なチョコレート菓子のように見えますね。
ラドヴリツァは、4月に開催されるチョコレート祭でも有名なんだそうです。
さて、お昼の時間になりました。リンハルトフ広場の端にあるアウグスティンというレストランに入ってみました。
お店の前には広場に面したテラス席もあります。
でもこのレストランには、お店の奥にすばらしい景色のテラス席があるのです。
ここはいい眺めだね〜、とサイダー。
まずは牛肉のカルパッチョ。ルッコラの上にたっぷりと牛肉が乗ってます。
続いてニョッキ。緑の野菜を練り込んだニョッキに魚のクリームソースがかかっています。
濃厚な味でとてもおいしい。
おいしい料理に舌鼓を打っていると、ユリアン・アルプス方面の雲が少し途切れてきました。
そしてついに我らの前に姿を現したのは、スロヴェニア最高峰トリグラウ山。やっぱり存在感がありますね。このあとすぐに雲に隠れてしまったので、貴重な遭遇となりました。
ゆっくりお昼を楽しんだら、空には雲が広がっていました。
とてもかわいらしく見所の多いラドヴリツァのリンハルトフ広場をあとにします。
広場を出て北に向かうと、町の官公庁や学校、映画館などが並ぶ中心街に出てきました。
といっても、とても静かで落ち着いた感じ。
そんなところを走っていると、やってきました大粒の雨! 「まずい、まずい〜」と、とりあえず避難したのはLesce-Bledという鉄道駅の横です。
ざざーっと降る雨に、駅の横のカフェでまったりしようかと思っていたら、すぐに小降りになりました。じゃあ行っちゃえ!と出発。
小降りの雨の中、予定を変更してブレッドへの最短ルートのR209を通って宿に戻ることにしました。結構車が多いのですが、道路の脇に自転車路を見つけてホッと一息。
ブレッドに向かって走っていると、自転車の家族に出会いました。後ろから「何だか不思議な自転車」と思っていたら、前がリカンベントのタンデムでした。
いったんブレッドの宿に帰り、休憩している間に青空が戻ってきました。
16時半過ぎに、今度は北に向かって出発。ブレッドから4kmほど北にあるヴィントガル渓谷を目指します。
「また晴れてよかった〜」とサリーナ。気持ちのいい牧草地を行きます。
ヴィントガル渓谷はブレッド近郊で人気の観光地。宿のおじさんに「午前から昼はすごく混むから、夕方行くのがいいよ」と言われ、ルートも教わりました。
Zasipという丘の麓の村に着きました。
雰囲気のいい家並みですが、ここから上りが始まります。
家の間の狭い急坂を上ります。「結構きつい〜」とサイダー。
右手に景色が広がってきました。赤い屋根の聖ヤネス教会が見えます。
家並みが途切れ急坂は激坂となり、もう自転車に乗っていられません。「押し」の開始です。
道の横の斜面ではヤギさんがビックリ顔でこちらを見ていました。
上ってくるサイダーの後ろの丘の上に赤い屋根のブレッド城が見えています。
宿のおじさんは「結構きつい坂だけど、君たちはヴルシッチ峠を越えてきたんだから余裕だろ」と言ってましたが、いえいえ、もの凄い激坂にノックアウトです。
村はずれから400mくらいの距離を上ったところで、ようやく聖カタリーナ教会に着きました。上りはここまで。
ここで自転車を置き、これからハイクです。
ヴィントガル渓谷はラドヴナ川(Radovna River)の流れる深い谷で、約1.6kmの遊歩道を歩くコースとなっています。
その入口は遊歩道の両側2カ所にあり、私たちは小さい方の入口に向かいます。
静かな林の中の道を進みます。
夕方だからか、小さい方の入口に向かっているからか、ほとんど誰もいません。
そして、道は次第に下り坂になっていきます。
「あとでこれを上るんだよねえ」とつぶやきつつ、下るサリーナ。
歩くこと1kmほどで、ヴィントガル渓谷の東端の入口に着きました。ここで入場料を払います。ベンチやキヨスクもありました。
観光客も結構いますね。ほとんどの人たちは、反対側のメインの入口から入り、ここで引き返していくようです。
遊歩道を200mほど進むと、谷の上にアーチ橋がかかっていました。
これは鉄道が通る橋で、トンネルをくぐって南へ進むとブレッド湖の西にあるBled Jezero駅に至ります。
遊歩道は、木造の通路が上ったり下りたりしながら続きます。
ヴィントガル渓谷の遊歩道は1893年につくられたそうですから、125年も前になりますね。その後補修を重ねながら使われ続けているのだそうです。
渓谷を流れるラドヴナ川は、深い緑色ですがとても澄んでいます。
ゆったりとした静かな流れから、時には泡立つ急な流れになったりしています。
少し広めの谷になりました。
川岸に下りてちょっと休憩する人たちもいます。
そして、遊歩道を半分くらい進んだところからがいよいよヴィントガル渓谷のハイライト。
切り立った谷の水面の上を、木造の遊歩道がずっと続いているのです。
崖にへばりついたような木の遊歩道を行くサリーナ。
川幅は狭いけれど深く、透明な水の中には魚もくっきり見えました。
木の遊歩道はこの渓流を4回渡り、深い谷の両側を交互に進みます。
その下を流れる川も、さまざまな表情を見せます。
このあたりは段差があって、いくつもの小さな滝が重なっているように見えます。
そろそろ渓谷の西端です。こちらがメインの出入口ですが、私たちは自転車を置いてあるので来た道を戻ります。
美しい流れと木の遊歩道が楽しいヴィントガル渓谷でした。
東の出入口に戻ってきました。ここのすぐ前にはŠum滝があります。全貌を眺めるにはかなり下まで下りなければなりませんが、もうお疲れ気味だったので上の橋から眺めて終了。アイスを食べたら自転車まで戻ります。
渓谷入口から自転車までは予想通り上り道で、ちょっとぜいぜいしましたが、19時半頃聖カタリーナ教会に到着。
ちょうど日没が近づいています。押し上った道を、今度は爽快に下ります。
夕焼けの空の下、草を食む牛たちの向こうにブレッド城が大きく見えてきました。
さて、ゆっくり楽しんだブレッドともそろそろお別れ。明日はブレッドを出発し、この旅の始まりの場所、首都のリュブリャナまで走る予定です。