今日は快適に3泊過ごしたブレッドの部屋をあとに、リュブリャナまでの道のりです。
上りはあまりなさそうですが、距離はあるので早めに出ようとしたらフロントは8時出社。なので、コーヒーを飲んでくつろいでから8時過ぎにスタート。
今朝もすばらしい快晴です。
朝日を浴び、東に連なる山並みを見ながら走っていきます。
ブレッドの町を出ると、今日も最初は住宅地と牧草地が交互に現れます。
生け垣の横を通って住宅地を進みます。
今度は牧草地。サリーナの後ろに見えるのは、刈り取った草を干す柵のようになった台ですね。
そして途中から昨日も通った道に入り、サヴァ川の横に出てきました。
穏やかな流れを眺めながら、勝手知ったる道を走っていきます。
まず目指すのは、昨日も訪れたかわいらしい広場のあるラドヴリツァです。
鉄道線路の横の坂道を上っていくサイダー。
そして、鉄道の線路を渡って教会の塔のある町の広場へ向かいます。朝日が眩しい。
町に入る前に、見晴し台に立ち寄りました。
こんなに快晴ですが、ユリアン・アルプスのところだけは雲に覆われています。「う〜ん、残念」とサリーナ。
でもトリグラフ山は雲の中ですが、よく見ると右の方に少しだけ白い頂が見えます。
ピラミッドのような三角の頂は、Kukova špica(2427m)。ヴルシッチ峠からクランスカ・ゴーラまでの道の東側に連なる山の一つで、ユリアン・アルプスで最も美しい山の一つと言われている山でした。ラッキー。
ラドヴリツァのリンハルトフ広場にやってきました。まだ朝9時と時間も早いので、広場はとても静かです。
広場をぐるっと回ったらその横の路地を抜け、ラドヴリツァの町をあとに東へ向かいます。後ろには教会の塔。
ここからしばらくは、牧草地や畑、森の中の田舎道が続きます。
とうもろこし畑を抜けるサリーナ。
畑の間の道には人も車もありません。
「快適だね〜」とサイダーがのんびり走る。
グロボコ(Globoko)というところでサヴァ川に架かる小さな橋を渡ります。木の手すりが素朴でかわいいですね。
周囲にはキャンプサイトが広がっています。
道は、キャンプ場横の高台の林を通っていきます。
木漏れ日の中を走るサイダー。ちょっとだけ上りです。
上りのあとは下り。そして集落を抜け、牧草地を通りながらやってきたのはOtočeというところです。
小さな村ですが、立派な塔のある聖アントン教会があります。
ここには、リュブリャナとイエセニツェ(Jesenice)を結ぶ鉄道が通っています。
しばらく線路に沿って走ります。
線路沿いといっても、線路に近づいたり離れたりを繰り返します。
そんな道は林の中を通ったり、牧草地や集落を抜けたりしながらどんどん進みます。
そして、ほどなくPodnartという町に着きました。ここには鉄道駅があり、その前にレストランがありました。
ちょうど10時、ここでちょっと休憩しましょう。いつものラドラーで喉を潤します。テラスには近所のおじさんたちや子連れのお父さんが来ていて、のどかな日曜日です。
休憩を終えて出発。線路を渡り、続いてサヴァ川を渡ります。
正面の森を抜け、その先の谷間を走っていきます。
ここからは、幹線を避けつつナクロ(Naklo)という町の脇を通って進みます。
ナクロには工場が多く立地しており、大きな工場や倉庫などの横を通り抜けた後、牧草地の広がるエリアに入りました。
そしてさらに進むと、建物の建ち並ぶ街が見えてきました。
どうやらクラーニ(Kranj)に到着したようです。
クラーニの旧市街はサヴァ川沿いの高台にあり、旧市街の街並みと山々を望む景色が楽しめるところです。
そして、ここはスロヴェニアの文化の中心と言われている街なのです。
3階建ての街並みの中を走っていくと、その先に教会の塔が見えます。
白壁の窓辺は美しい花で飾られていて、いい感じ。
クラーニの街は中世に始まったと言われ、北西から流れるサヴァ川と、北東からのコクラ川の合流する交通の要衝として栄えたそうです。現在は、エレクトロニクス産業が盛んでスロヴェニアで4番目の人口規模を持つ都市です。
着いたのは旧市街の中心のグラヴニ広場(Glavni trg)。南を眺めると、教会の塔などがいくつもとんがり帽子を見せていますね。
そしてグラヴニ広場の南から北を眺めると、背景にはオーストリアとの国境となるスロヴェニアン・アルプスが見えるはずですが、今日は雲の中のようです。
街のランドマークは、ゴシック様式の聖カンティアヌス教会(Župnijska cerkev sv. Kancijana in tovarišev)。
14世紀に建てられたものだそうで、高い塔が存在感を示しています。
教会の横の広場に入ると、劇場の前に詩人のフランツェ・プレシェーレンの像が立っていました。
1849年にクラーニで亡くなったプレシェーレンは、スロヴェニアの国民的詩人です。スロヴェニア語で情熱的な詩を書き、ヨーロッパでも認められてスロヴェニア語の地位確立にも貢献したのだそうです。
プレシェーレンの像を回り教会の横を抜けて、もう少し街の南へ行ってみることにしました。
聖カンティアヌス教会から、両側にお店が並ぶ通りをさらにまっすぐ南へ進みます。(TOP写真)
すると、新しい教会に出て高台の街は終わり、その先は川の合流地点を望む崖地になっていました。
次に進むには、高台から下りなければいけません。狭い路地を下りていこうとしたら、『自転車は降りて押してね』というサインを発見。そう、かなりの激坂で小さな段差がつくられているので、押して下りないと危険だったのです。
自転車を押して下りたらサヴァ川にぶつかりました。上流に比べるとずいぶん幅広い流れになっていますね。
橋を渡って南西に進もうとしたらこちらも崖地になっていて、車の多い道か、ダートの細い急な坂道かという選択になり、止むなくダートを押し上ります。
これが、かなりの獣道でした。薮をかき分けるように上ったら、高台のクラーニの旧市街がちょうど横に見えました。
ダートを終えて、ここから住宅地の舗装路に入ります。
クラーニの次は、シュコフィア・ロカを目指します。
その道のり、R210というまっすぐな車道が通っているのですが、その50mくらい西に並行してローカルで味わい深い道が通っていました。ちょうど裏庭をつないだような雰囲気で曲がりくねっていて、作業場や子どもの遊び場になっているのが楽しい。
住宅地を抜けてR210に戻ると、今度はとうもろこし畑の横を走ります。
そして、その向こうには小さな教会の塔も見えました。
R210に戻って進むとまた教会に出会います。スロヴェニアでは、小さな集落ごとに教会の塔が迎えてくれます。
私たちはこの教会の手前でR210を離れ、シュコフィア・ロカ方面への脇道に入ります。
こちらは林やとうもろこし畑を抜ける静かな道。車もほとんど通りません。
後ろには雲の間からスロヴェニアン・アルプスの山並みが見えています。
そしてほどなく、歴史を感じさせる建物が見えてきました。その前には川と橋。
どうやらシュコフィア・ロカに到着したようです。
シュコフィア・ロカは、神聖ローマ帝国皇帝オットー2世の命により、973年にフライジングの司教監督団がこの地に領地を設立、その後830年間経営し続けた町だといいます。
集落は、ソーラ川の二本の支流の合流点を見下ろす所に段になって発達しています。町の名前は“司教の牧草地”という意味だそうです。
ソーラ川支流のセルシュカ・ソーラ川を渡る石橋は「カプーチン橋」(Capuchin Bridge)で、14世紀に建造されたものだそうです。
旧市街への入口、そしてロカ城への入口として美しい姿を見せています。このような石橋としては、中央ヨーロッパでは最も古いものの一つだと言われています。
橋の中央にあるのは、St. Janez Nepomukの像です。
このボヘミアの聖人は、プラハのカレル橋からモルダウ川に投げ落とされた殉教者だそうで、カレル橋にもその像があります。
橋を渡って旧市街へ。旧市街は1987年より歴史的地区として保存対象となっています。
カプーチン橋から細い路地を抜けるとカンカリエフ広場(Cankarjev trg)に出てきました。レストランのテラス席が並んでいい雰囲気です。
そして、正面には聖ヤコブ教会。13世紀からの歴史を持つ教会だそうです。鐘楼は1532年に建てられたものです。
この広場の横にはセルシュカ・ソーラ川に架かる歩道橋があり、ここからは先ほど通ったカプーチン橋の美しい眺めが楽しめます。
というわけで、サリーナも入って記念撮影。
今日は順調に走ってきて、ちょうど12時半とお昼時です。
広場横の歩道橋の袂にあるピザ屋さんに入ってピザを注文してみれば、う〜ん、でかい。。おいしかったです。
食事を終えて次に向かったのは、丘の上にあるシュコフィア・ロカ城。
旧市街の路地を抜け、教会の塔をバックに自転車を押しつつ坂を上ります。結構な勾配で、「き、きつい〜」とサイダー。
草地に囲まれた並木道を上るにつれて、シュコフィア・ロカの街が下に広がってきました。
坂を上って自転車を置き、ロカ城の敷地に入ります。
残念ながら、お城が改修中で外壁は足場に覆われていました。足場のかかっていない西の塔を写真に納めて、建物の中に入ります。
高台のロカ城からは、赤い屋根のシュコフィア・ロカの街並みがよく見渡せます。
この城は13世紀に建てられ、1511年の地震後に大幅に改築されたのだそうです。
ロカ城は、現在はロカ博物館として地域の歴史や文化、そして自然や動物など、さまざまな展示が行われています。
もともと司教の館だったわけですから、この塔の部分は聖堂だったようです。内部も改修中で祭壇などは見られませんでしたが、ドーム天井にはキリストなどの宗教画が描かれています。
見学を終えてロカ城を出ると、ここからは一路リュブリャナを目指してひた走ります。
しばらくはソーラ川に沿ってローカル道を進む。牧草地や畑の中、空がとても広く感じられます。
左手を見ると、広がる畑の上には、スロヴェニア北部に聳えるカムニーク・サヴィーニャ・アルプス(Kamnik–Savinja Alps (Kamniško-Savinjske Alpe) )の山々が姿を現します。豪華な眺めですね〜
丘の麓の道は、とうもろこし畑を通ったり集落を通ったりしながらさらに進みます。
ときどき、かわいらしい教会の塔の横も通過。
牛たちを発見。牧草地はたくさんありますが、牛さんたちはあまり見かけませんね。
そして立派な家は牧場主の邸宅かしら?
カムニーク・サヴィーニャ・アルプスを背景に、丘の道を進みます。
そんな道のりの中で、白い小さな花が一面に咲いている畑に遭遇しました。
「あれ、どう見てもそば畑だよね」とサリーナ。スロヴェニアの人もおそばを食べるのでしょうか。
止まって近くで見てみると、やっぱりそばの花です。ちょっとピンクがかっていますね。
実は、スロヴェニアでは「そばがき」のようなものをシチューに入れたりしてよく食べるそうで、「そばの実入りチョコレート」なんていうおみやげもありました。
そして道ばたをふと見ると、道しるべが。下の貝のサインはサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼の道ですよね。
スロヴェニアを通るルートもあったんですね。
さらに道ばたで発見。これはラドヴリツァの養蜂博物館でも見ましたが、養蜂箱です。立派な現役ですよ。
箱の前面に思い思いの絵が描かれていて楽しい。花やチョウチョ、くまさん、大きな木などなど。
そんないろいろな発見がありましたが、次第にリュブリャナの郊外に入り、交通量も多くなってきました。
なるべくローカル道を走ろうと住宅地を抜け、そしてティボリ公園では林の中の地道を行きます。「もう首都のリュブリャナに着いたはずだよね。。」と、ちょっとへろへろしているサリーナ。
公園を抜ければ、もうリュブリャナの中心部です。運河に出ると、すぐに懐かしの宿ガレリア・リバーに到着。「あれ、君たち会ったことあるよね〜」とフロントのお兄さん。はい、3週間ほど前に泊まりましたよ。というわけで、無事にリュブリャナに帰り着きました。
しばらく休憩したら、夕食に出かけます。せっかくの首都だから中華料理を食べたいと、宿のお兄さんに教えてもらったレストランは残念ながら日曜休み。うろうろしたあと、宿のすぐそばのインド料理店でカレーを食べることにしました。久しぶりでおいしい〜
今日の行程はこの旅でも最長の70kmでしたが、あまり上りもなく楽しく走りきることができました。さて明日は、途中で眺めたカムニーク・サヴィーニャ・アルプスを間近で眺められるというカムニークからヴェリカ・プラニーナへ上ってハイキングの予定です。晴れるといいな。