今日はリュブリャナから日帰りハイキング。鉄道を使いますが、駅から目的地までのバス便があまりないので自転車を持って行って少し走ります。
8時半に宿を出発。天気は快晴、いい眺めが期待できそうです。
宿からリュブリャナ駅までは、リュブリャナ観光の中心部を通ります。
運河沿いに走って、ここは三本橋。まだ早いので観光客はあまりいません。
リュブリャナ駅までは2kmほど。
目指すカムニーク・グラーベン駅(Kamnik Graben)は北方面の路線の終着駅で、乗車時間は44分、運賃は2.58€/人。自転車や折り畳んで袋に入れれば無料です。
というわけで自転車を折り畳み、やってきた列車に乗りました。乗客はあまりいません。
お客さんが少なかったので、座席のところに自転車を持ち込んでゆったり座ります。
列車は定時に出発。
しばらくは市街地の中を走っていましたが、ほどなく建物は途切れ、周囲は畑や牧草地となります。
そして、進行方向には白い頂の山並みが現れます。カムニーク・サヴィーニャ・アルプス(Kamnik–Savinja Alps (Kamniško-Savinjske Alpe) )です。
周囲の畑の中には小さな白いお花畑のような一角がありました。
昨日も見つけた「そば」の花畑です。
降り立ったのは、終点のカムニーク・グラーベン駅。砂利敷のホームでかなりローカルな駅です。
カムニークという名前のつく駅は3つあり、この駅は最も北の住宅地にあります。
ホームで自転車を組み立てたら、そのまま走り出します。
自転車の目的地のケーブルカー乗り場までは10kmほど。
カムニーク・ビストリツァ川(Kamnik Bistrica)沿いのR225をまっすぐ北へ行くのが最短ルートですが、いつものように住宅地内の脇道に入っていきます。
住宅地を抜けていくと、次第に空が広がり、前方に白い山が見えてきます。
緑の丘の間に見えるのは、カムニーク・サヴィーニャ・アルプスの主要な山の一つ、Planjava(2,394m)の頂です。
その左にちょっとだけ頭を覗かせているのはBrana(2,253m)。
Planjavaを正面に見ながら、とうもろこし畑や草地の広がる田園の中の一本道を走ります。
自転車ルートにもなっているこの道には、「こりゃあ、いい道だねえ」とサイダーもご満悦。
Godičという集落を通り過ぎるとカムニークの中心からの道と合流し、その後1kmほどでR923に入ります。
ここからケーブルカー乗り場まではまっすぐ。最初のあたりはいくつか家も並んでいて、山肌が削られているところを通ります。
次第に左右の山が迫ってきて、谷の間を進むようになります。気持ちのいい道で、ときどき自転車にも出会います。
ふと横を見ると、草地にロバさんがいました。
ずっと正面にPlanjavaを見ながら走っていきます。多少上りですが、勾配は緩いので特に問題なくどんどん進みます。
そして、駐車場に出てきました。どうやらケーブルカー乗り場に着いたようです。
この乗り場は標高560mで、このケーブルカー(日本語では『ロープウェイ』ですが、英語表記では cable car なので『ケーブルカー』とします)で800m以上の標高差を上り、標高1,419mまで到達します。
おお、下から見てもちょっと怖い〜
1台に乗れるのは20〜30人程度でしょうか。乗り場には観光客が列になって並んでいました。
30分ほど待って、いよいよ私たちも乗り込みます。
いよいよ発車。すーっと上り、ケーブルカー乗り場がみるみる小さくなっていきます。
「結構スピード速いね〜」とサイダー。周囲の山がどんどん大きな姿を現します。
カムニーク・サヴィーニャ・アルプスの連なりが見えてきました。先ほど通ってきたR923とは違った角度からの雄大な眺めです。
三角ピラミッドの山は、カムニーク・サヴィーニャ・アルプスの最高峰、Grintovec(2,558m)でしょう。
5分ほどでケーブルカーは上の駅に到着しました。
乗り場横の見晴し台からは、通ってきたR923とカムニークの町が見えます。今日はちょっと霞んでいますが、ここからリュブリャナまでも見渡せるそうです。
さて、ここからヴェリカ・プラニーナの最高地点(標高1,666m)までは、2人乗りリフトが通っています。
ケーブルカーのチケットでリフトにも乗れるのですが、「ここは、ハイキングでしょ」とサリーナが引く。
ハイキングコースはリフトの横を上っていきます。
まだ最初、元気に上っていくサイダーです。後ろにカムニーク・サヴィーニャ・アルプスが見えています。
そんな道ばたには、いろいろな花が咲いています。青く鮮やかなこれは、りんどうですね。
しかし、だんだん斜度は険しくなってきました。
正面には小高い草原の丘が広がっています。「あそこまでだね」とどんどん先を行くサリーナ。
「わ、わしはもうダメじゃ〜」「リフトにすればよかった〜」
へろへろつぶやくサイダーですが、その後ろにはカムニーク・サヴィーニャ・アルプスの絶景が広がっています。
そして、えっさえっさと上った丘の上にはカフェがありました。
「よかった〜」と赤いパラソルを目指すサリーナ。
この宿泊もできるカフェ Zeleni rob では、テラスでスロヴェニア料理が楽しめます。
ちょうどお昼どき、早速テラス席につきます。
頼んだのは、2種類のシチューです。右の jota は豆とザワークラウトのシチューにソーセージ入り。左の ričet は大麦と野菜のシチューにソーセージ入り。どちらも6.5€です。
これにパンと無濾過ビールでいただきます。
ザワークラウトの酸味とソーセージ、「うん、いけるね〜」とサイダー。
大麦と野菜のシチューはやさしい味です。爽やかな高原での昼食を楽しみました。
昼食を終え、ハイキング再開です。牛飼いの集落を目指して東に進んでいくと、後ろには素晴らしいカムニーク・サヴィーニャ・アルプスの絶景。
左の三角は Grintovec(2,558m)。その横は Skuta(2,532m)、そして手前にちょっとこんもりした山は Planjava(2,394m)でしょう。Skutaの山頂には、アルプスで最も東にある氷河が存在するのだそうです。
そして前を見ると、高原の草地の中にいくつもの屋根が見えてきました。
あれが牛飼いの集落です。
ヴェリカ・プラニーナの集落は6〜9月の夏の間に牛を放牧するための住まいが集まったところで、ここには60軒ほどの家があります。(TOP写真も)
この家は、大きく地面近くまでかかった屋根が特徴です。四角い屋根も楕円形の屋根もありますね。
「どんなつくりの家なのかな」と興味津々のサリーナ。
集落に入ってみると、それぞれの家は木の柵に囲まれ、石垣をつくっているところもあります。
意外に外壁の木が白っぽくて、新しそうな家もあります。
これは四角い大きな家です。入口の前のテーブルとイスが快適そう。
ソーラーパネルもついていますね。
こちらは楕円の家。両端が丸い屋根になっています。
柵の中には夜、牛を入れておくのでしょうね。
ちょっと変わった建物を発見。半分に切ったような建物の前に柵に囲まれた空間があり、建物は何だかステージのようです。
集会施設でもなさそうだし、やっぱりコンサート用?
ここまで牛の姿を見ませんでしたが、カラコロというカウベルの音のする方へ行ってみると、小高い丘の上に教会があり、その回りでたくさんの牛たちがのんびり草を食んでいました。
では、教会に行ってみましょう。
この教会は、Marije snežne 教会(雪のマリア教会)といいます。外壁を黒く塗られた小さな教会は、集落の家と同じように板葺きの屋根です。
教会の中を覗いてみると、こぢんまりしたかわいい室内に小さな祭壇がありました。
屋根には窓があり、内部は明るい空間となっています。
教会の周りには牛さんたちがゴロゴロしています。
サイダーの赤い帽子に目をつけたのか、大きな牛さんがのそりと近づいてきてビビるサイダー。
こちらは子牛と戯れるサリーナ。「何か持ってないかな?」とサリーナのポケットあたりを探る子牛ちゃんです。
いくつもの家がちらばっている集落ですが、実は集落の家は1つを除きそれほど古いものではありません。もともとあった19〜20世紀初め頃の住宅は、第二次大戦でほとんどが焼けてしまったのだそうです。
そんな中で唯一残っているこの19世紀の楕円形の建物は、現在博物館(Presukar's Hut Museum)になっています。
小さな入口をくぐると、中に建物の解説パネルがありました。
真ん中に四角い建物をつくり、そこから外周の地面近くまで大きな屋根をかけていきます。
こちらはケーブルカーの下の駅にあったパネルですが、この四角い建物の外側の屋根のかかった部分に牛さんたちを入れておくのだそうです。
ここが、牛たちを入れるスペースですね。
屋根の下の部分からは少し光も入ってきます。
真ん中の壁で仕切られた四角い部分は人のスペースで、床板が張られています。
干し草の敷かれた2段ベッドがありました。
そして、部屋の一角にはかまどがつくられていました。
壁際には棚があり、食器や桶などいろいろな道具がしまわれています。それから、梁にかけられた竿も物を吊るす場所になります。
狭い小屋の中を有効に使おうと、いろいろ工夫されていますね。
さて集落を一回りしたので、そろそろ帰路のつきましょう。
帰りはリフトに乗ろうということで、集落から丘の上のリフト乗り場まで上ります。進行方向には、荒々しいカムニーク・サヴィーニャ・アルプスが見えます。
また上りでちょっとへろへろしますが、そんな行程の中、可憐な高山の花々が安らぎを与えてくれます。
紫の花。あとで調べたら、これはリンドウの仲間でゲンチアナ・カンペストゥリスというようです。
こちらは白い花。
名前はわかりませんが、花弁の根元がちょっと黄色くてかわいい。
足元の花を眺めながら歩いていると、随分上ってきました。
牛飼いの集落をバックにポーズするサイダー。
リフト乗り場まであと一息。
階段のような道を上るとようやくリフト乗り場前のはらっぱに到着。ここからは、カムニーク方面の景色もよく見えます。
そして、2人乗りリフトで丘を下っていきます。
下りですが、正面にアルプスの白い山並みを見ながらということで、なかなかゴージャス。お勧めですよ。
その途中、建設中の家を見つけました。伝統的な建て方でつくられています。
屋根の板を1枚1枚葺いていますね。
リフトは15分ほどでケーブルカー乗り場に到着。快適な旅でした。
そしてケーブルカーに乗り込むと、着ぐるみの牛がやってきました。ヴェリカ・プラニーナのゆるキャラですかね? サイダーはじめ、子どもたちに大人気です。
雄大な景色とかわいい集落のヴェリカ・プラニーナは、とても楽しいハイキングでした。
さて、ここからは置いてあった自転車で一路カムニークへ。基本は下りなのですいすい走ります。R923のあとは、カムニークまでメインルートで車が結構多いのですが、歴史ありそうな建物が並んでいます。
中央の広場から路地を入ると、正面にフランシスコ修道院の教会があります。
その横の丘に上っていくと、ヨゼファ教会がありました。
丘の上に古い教会があるとガイドに載っていたのですが、この教会はそれほど古い様子ではなくよくわかりませんでした。
ともあれ、丘からカムニークの町の屋根の連なりを眺めます。
帰りはリュブリャナまで自転車で自走する案もあったのですが、ハイキングで満足したのでゆっくり列車で帰ることにしました。
駅前のカフェでしばらく休憩したあと、自転車を折り畳んでカムニーク駅から出発です。行きに到着したカムニーク・グラーベン駅とは違い、コンクリート舗装されたホームでした。
こうしてリュブリャナ駅まで戻り、宿まで走って少し休憩したあと食事に出発。今宵は昨日食べそこねた中華料理です。久しぶりに点心、イカと野菜の炒め物、そして炒飯がおいしい〜
さて、明日はいよいよこの旅の最終日。のんびりとリュブリャナ郊外の見所を回ろうと思います。