初心者のための自転車の基礎3 クランクの長さ

~ GEO POTTERING 事務局 ~

ちょっと高度な話題ですが…

  クランクの長さ

歩幅は脚が長い人は大きく、短い人は小さい。

脚が長い人が短いクランクを回す、またはその逆を想像してみましょう。 ちょっと変ですね。 脚の長さに応じた適切なクランクの長さがあるはずです。 あなたの自転車のクランクの長さ(クランク中心軸芯からペダル軸芯までの距離)はいくつでしょうか。 おそらく170mmでしょう。 なぜか最初に付いているクランクはこの長さなのです。 これはあなたの脚の長さから見てどうなのでしょうか?

脚は回転運動しかしません。 大腿(脚の付け根から膝まで)は脚の付け根を中心とし、下腿は膝を中心とし、足はくるぶしを中心とした回転運動です。 脚が長い人と短い人との脚の各関節間寸法が比例関係にあるとすれば、脚の長さに比例した長さのクランクを使うと、両者の脚の各部の回転角は同じになります。 もっとも効率的である脚の回転角度が分かれば、脚の長さに対する最適なクランクの長さの比率が出ます。

初心者にとってもっともわかりやすいものに、最適なクランクの長さは身長の1/10だという説があります。 身長に脚の長さは比例し、脚の各関節間寸法も比例すると考えたのでしょう。

※ 身長が大きい人ほど脚の長さの比率が大きくなる傾向があるし個人差もあるから、身長を基準にするのは合理的とは言えないものの、脚の長さというのはあまり計られないからでしょうか。

身長   クランク長
180cm  180mm
170cm  170mm
160cm  160mm
150cm  150mm

この説が正しいとすれば、別項で決定したサドルとペダルの位置関係からは下図のようになります。

身長180cmの人と150cmの人の足の回転の比較
左:身長180cmの人が180mmのクランクを回した場合 右:身長150cmの人が150mmのクランクを回した場合

左図と右図とはほぼ相似に見えます。 クランクの長さは身長の1/Xというのは、なるほどと思わせるものがあります。 逆に言えば、『平均的』には身長に対し、脚の長さ、脚の各関節間寸法はほぼ比例関係にあると見ても大きな問題はないのではないかいうことです。

私たちの経験値からは、クランクの長さが身長の1/10というのは最大長さと考えられ、初心者の場合はそれから2.5~5mmほど短いもののほうが、一般的にはくるくると回転させやすくて快適だと思います。

そこで特に、身長が165cm以下もしくは180cm以上の方は、クランクの長さについて検討されるのも無意味ではないと思います。 

クランクの長さを変えるにはクランクそのものを取り替えるしかありません。 クランクは高価なものですし交換には特殊な工具が必要です。 さらに他のパーツとの関係があるので自転車屋さんに相談されるのが賢明です。 ただし適切なクランクの長さをアドバイスできる自転車屋さんは少ないのが現実ですが。 下に参考までにクランクのメーカーの極一部を掲載します。

SHIMANO  日本の大メーカーだが165mm~180mmと選択肢は少ない。

SPECIALITES TA  仏のメーカーで入手がやや困難だが、やや特殊なものを含めると150mm~185mmのものが用意されている。 現在もっとも多くの選択肢があるメーカー。


クランクの長さは脚の長さと関係があることは直感的にわかると思いますが、さて『脚の長さ』とはどこのことでしょうか? 決定要因としては、大腿骨上端までの寸法、股下寸法、 大腿骨長さなどが上げられているようで、それぞれに論理があるのだろうとは思いますが、詳しく言及した資料はインターネットレベルでは見つかりませんでした。 以下に参考になりそうなWEBペイジを紹介しておきます。 興味があるかたはどうぞ。

股下寸法を決定要因としたもの http://www.myra-simon.com/bike/cranks.html
大腿骨上端までの寸法を決定要因としたもの http://www.geocities.jp/jitensha_tanken/crank.html
大腿骨長さを決定要因としたもの http://www.kijafa.com/mailnews/163801/


ちょっと待った! テコの原理で長いクランクの方が小さい脚の力で済むんじゃあないか?
そのとおりです。 力学的には力のモーメントと言いますが、クランクが一割長ければ一割少ない力で同じ回転力が得られます。 でも長いクランクは短いものに比べスムースにくるくる軽快に脚を回すことがしにくいという側面もあります。 これらの関係はつぎの項から推測してみてください。

  少し違った視点からのクランクの長さ

ピッチ走法 or パワー走法 ?

マラソンの高橋尚子さんと野口みずきさん、

高橋さんは、歩幅は小さく、素早い脚の運びで回転数が多い、ピッチ走法です。
野口さんは、力強い蹴りで歩幅が大きく、脚の回転数が少ない、ストライド(パワー)走法です。

彼女達が自転車に乗ったらどうなるでしょう?

同じ自転車で同じ速度で走っています。
高橋さんがピッチ走法に切り替えました。 ギアを軽くし、どんどん脚の回転数を上げて野口さんを引き離します。
一方の野口さんもパワー走法に。 ギアを重くして力強くペダルを回し、高橋さんを追い抜きます。

高橋さん、まだ本調子ではないようです。 得意のピッチ走法にしては腿が上がり過ぎでペダルの回転半径(歩幅)もやや大きすぎるようです。 そこで急遽クランクを短いものに取り替えました。 腿は下がりペダルの回転半径が小さくなり快調、野口さんを抜き返します。
一方の野口さんもここで引き離されるわけには行かないとフォームを見直します。 いつものパワー走法より腿が上がらずペダルの回転半径(歩幅)もやや小さいような。 こちらもクランクを取り替えました。 高橋さんとは逆に長いものにしました。 腿の上がりはバッチリでペダルの回転半径も大きくなり、高橋さんをぴったりマーク。

高橋さん、さきほど野口さんに抜かれた時少し焦ったのでリズムが狂いました。 クランクを短くしたから、少し余分に脚に力を加えなければならなくなったのを見逃していました。 そこで再びギアを軽くし、本来の軽快な脚の運び、より高速なペダリングを取り戻しました。
一方の野口さんも高橋さんに抜き返された時焦りました。 クランクを長くしたから、加える脚の力が少し小さくなくなったのを見逃していました。 そこで再びギアを重くし、本来の力強い脚の運び、よりパワフルなペダリングを取り戻しラストスパートです。

結果は? もちろんあなたの好きな方の勝利です!

別項で、高橋さんのようにクランクをくるくる速く回すペダリングを薦めましたが、なかには速い脚の回転は苦手だけれど脚力には自信があり、柔軟で腿の上下も大きくできるという方もいるでしょう。 そういう場合は若干長めのクランクがより相応しいということになるかもしれません。

1 乗車ポジション 2 ギアの選択とクランクの回転数
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uploaded:2006-03