ソウル
韓国の首都ソウルでは来年1988年の夏、オリンピックが開催されます。様々な開発が進む噂も聞かれ、その前に一度見ておこうと、冬休みに韓国へ。
ソウルでは伝統的な宿に泊まってみようと、オンドルのある旅館へ。ここが雲堂旅館です。門を入ると、庭に面して部屋が連なっているつくり。
そして、これが部屋の中です(写真は2枚を合成)。
シンプルな四角い部屋には、小さなテーブルとざぶとん、金庫。脇のサイドボードに照明スタンド。床には布団、床に座るとオンドルがほのぼのと温かい。
この界隈は、ソウルの中心部にあってかろうじて昔ながらの雰囲気が残っているようです。旅館の近所を散策してみましょう。
旅館の前には軽食かな、お店があります。表に出された看板の文字は赤と青で書かれ、これ以降もそんな看板をよく見かけます。
住宅を囲むコンクリート塀やレンガ塀の間に、コンクリートブロックを敷き詰めた路地が通っています。
すぐ横のブロックには超高層の建物が迫っています。
その勝手口とおぼしき扉の横には、使い終わった練炭が積まれています。リヤカーなんかがこの路地を回収にやってくるのでしょう。
こちらの扉の前にも使用済みの練炭がバケツに入れてあります。
それにしても、この木の扉の立派なこと。貴族の屋敷なのかと思わせますね。
ここは勝手口かと思いますが、ここにも立派な木の扉が見られます。
屋根を支える垂木の木口が並んだ上部も、リズム感があります。
ところで、韓国のまちなかでよく温泉マークの看板を見かけます。この路地でも発見。
この温泉マーク、温泉とか温浴施設に限らず旅館も示しているらしい。ここは『モーテル』と書いてあります。
路地を回ってきたら、ちょっと広めのところに出てきました。お店も並んでいます。
店先に置いてあるのはアイスクリームの冷凍機かな。何となく子ども時代に過ごした地域のよろずやを思い出して懐かしい。
そして、屋台も出ていました。これはおやつのホットクですね。温かくて、ほんのり甘くておいしい。
路地を歩いたらいったん旅館に戻り、夜は『コリアハウス』を訪れます。
『コリアハウス』は韓国の伝統文化を発信する施設。伝統芸能を見たり宮中料理を味わうなど、いろいろな体験が可能です。
というわけで、伝統舞踊を鑑賞。華やかな衣装の女性たちが太鼓をたたきながら踊ります。
そして、脇で音楽を奏でる楽隊。琴や笛などが見られます。
韓国ドラマが流行る以前のこの当時は知りませんでしたが、男性の貴族の帽子などは今ではお馴染み。
今度は農楽が始まりました。打楽器を賑やかに鳴らしながら、楽しげに踊ります。
帽子につけた色とりどりのポンポンが可愛い。
その中央に出てきた男性は、帽子に白く長い紐をつけて回しながらドラを叩き、踊っています。お見事。
コリアハウスの最寄りの地下鉄駅チュンムロ(忠武路)駅は、ちょっと変わっています。壁や天井が岩のようにつくられ、洞窟に潜っていく感じ。
そんな駅の壁には、映画館の宣伝ポスターがたくさん掲示されています。
現代劇から時代物まで。漢字も見受けられ、『失楽園』という文字も発見。
暗闇の中でわかりにくいですが、こちらはソウル駅。日本統治時代の1925年に竣工した赤レンガの駅舎です。
釜山
翌日、ソウルから釜山へ移動。列車は高速の『セマウル号』で、所要時間は4時間45分です。
釜山で訪れたのは、港の近くのチャガルチ市場。豊富な魚介類を扱う市場です。
路地の両側にはお店が並び、その間を台車を押す魚売りの女性が通っていきます。
周辺には魚介類だけでなく、いろいろな商品も並んでいます。こちらはいろいろな豆を売るお店。
中心部に近づくに連れて、露店がひしめき合い、魚介類の迫力が増してきました。おばちゃんたちが魚、イカ、タコなどを並べて売っています。
奥の店は韓国海苔ですね。
こちらはタコの専門店のよう。台の上にずらりと並べられているもの、ザルに積まれているもの。通りの脇には屋台もあったので、そこで刺身を食べてみました。サンチュで巻いて、醤油ではなくコチジャンにつけて食べます。なかなか美味しく、『これもありだな~』
市場の中心にはビルがあり、そこで辛子めんたいとカレイの干物を見つけました。故郷の北九州を思い出すラインナップに、迷わず購入。韓国と北九州は近いんですね。
再び屋外へ出て、港の方へ歩き始めます。
葉物野菜やニンジン、ジャガイモなどを積んだ台車もやってきて、狭い路地が押し合いへし合い賑やかです。
港に到着。漁船が係留されている港、その港を望むビル群、そしてその向こうに展望タワーが見えています。
カラフルな大漁旗を掲げた漁船もありますね。正面に見えるのは、港のすぐ対岸にある影島です。
このあたりは衣料品を山積みした店が並びます。露店もあります。上野のアメ横のようですね。
釜山は港の近くまで山が迫っている地形で、斜面地に建物が建ち並んでいます。写真は泊まったホテルの部屋の窓から撮ったもの。
さて韓国の旅はこれで終わりですが、日本に帰ってみてびっくり。釜山のチャガルチ市場で買った『干しカレイ』は思った通りの懐かしの味でしたが、『辛子めんたい』の方は今までに食べたことがないほど複雑で味わい深く、驚きの美味しさなのでした。
北九州出身の私、故郷の辛子めんたいにはそれなりの自信があったのですが、これを書いている30年以上経過した現在まで、釜山の市場のもの以上に美味しい辛子めんたいには巡り合ったことがありません。ああ、もう一度食べたい!