相川沿いを進む
立春も間近な一月末、春を感じたいと飛び出した先は房総です。暖かな房総には一足早く春が訪れます。その房総半島の中央よりやや南にある『をくづれ水仙郷』にはもう水仙が咲き乱れているとのことで、その水仙の香りを楽しみに房総にやってきました。
大きな道で水仙郷に向かったのではすぐに着いてしまうので、房総ならではの道を通ることにしました。このあたりには鄙びた林道が数多く残っているので、今回はその中の保田見(ぼてみ)林道に挑戦することにしました。
山間の風景
上総湊駅から相川沿いに南下すれば、ほどなく周りは山に囲まれ出し、小さな畑の中に民家がポツポツという風景になります。民家の軒先には白い梅がもう咲き出しています。
穏やかに上る
道は穏やかな勾配で上り、かつては茅葺きだったらしい民家の脇を過ぎて行きます。
山の中へ
15分ほど走ると廻りの雰囲気がガラリと変わり、一気に山の中という感じになりました。その道を、右手に相川の流れを感じながら隊列を成してどんどこと進みます。
岩見堂やぐら登り口
林が途切れ視界が開けたところに『岩見堂やぐら』という看板が現れました。市の文化財とのことなのでちょっと覗いてみることにします。ちょうど自転車を下りたところに通りかかったおじさんが、
『やぐらを見るんなら、脇にある鍵を外すと中に入れるよ。』 と教えてくれました。
岩見堂やぐら
登り口にはとても大きな木が立っていて、その下をくぐって上へ向かいます。細い道をえんやこらと2~3分も進めば、小さな庇だけが飛び出したような妙なものの前に出ました。これが『岩見堂やぐら』なのでしょう。
どれどれと中を覗くも、ネットが張られた正面の入口からは良く見えません。おじさんの言葉を思い出し脇に廻ってみると鍵が掛かっています。確か鍵を外すって言っていたよな~、と思い出しその鍵に手をやると、あ~ら不思議、掛かっていたように見えた鍵がすんなり外れました。
中に入ればこの『岩見堂やぐら』というのは、岩をくり貫いて作られたもので、神様だか仏様だかを祭るところだということがわかるのでした。しかし『やぐら』というのはなぜでしょう? 小高い所にあるから?
いよいよ保田見林道へ
『岩見堂やぐらって意外で結構面白かった!』 という声を聞きつつ先に進めば、道が大きくカーブしているところにある橋に到着。どうやらここがこの先の目当ての 保田見林道への分岐のようです。
保田見林道
橋を渡り突き当たりを右折すれば、道は徐々に狭まり、ちょっとした上りになります。10分も走ればもう民家はまったく見当たらず、深い山の中という雰囲気。そしてそこには厳しい上りが待っていました。
素掘りのトンネル
休みながらアヘアヘと上って(押して?)行くと、行く手には房総名物の素掘りのトンネルが現れました。
『お~、なんかいい感じ~』 とトンネルの手前で一休みしながら、トンネルの中を伺います。
ゴツゴツとしたトンネルの岩肌
ここ数日雨は降っていないと思うのですが、ここまでの上りの道にもちょっとぬかるんだところがあり、トンネルの中にも水たまりがあるので慎重に進みます。ゴツゴツしたトンネルの内壁が、ごく僅かな光を受けて微妙な模様を描き出しています。
トンネルの先は下り?
このトンネルの先にもトンネルが。そしてもう一つと三つ連続していました。
トンネルは大抵峠のてっぺんにあることが多いので、ここからは下りです。
『やった~、これから豪快なダウンヒルだ~』 先頭ミワプッチの喜びも束の間、道はすぐにまた上りへと転じ、再びアヘアヘともがき始めます。
道端の水仙
左手の視界が開け、少し先の山並みが見えるようになると、足元には水仙が咲き出します。こんな山の中にも小さな畑があるので、この水仙も人の手によって植えられたものなのでしょうか。
水仙の中を上る
可憐な水仙は心を和ませてくれますが、道は相変わらず上り続けています。時に押したり、時に乗ったりとの繰り返しで、水仙の咲く道を上り続けます。
『水仙、きれいだけど、上り、きつ~』 と先頭ペタッチが呻く。
頂上間近?
開けていた視界が再び木々に覆われるようになると、どうやら尾根に到達したようですが、ここも平なわけではなく、ちょっとしたアップダウンが続くのです。
『も~、限界~』 と先頭サリーナが騒ぎ出すころ、
保田見林道頂上
行く手の視界がぱっと開けます。そこには、生い茂った足元の草の向こうに房総の山々の眺めがありました。
『やった~、頂上だ~』 ここからの道は左手にずっと下っています。どうやらここが本当に保田見林道の頂上のようです。林道の入口の橋から6.5kmほど走りました。林道の出口まではあと1.5kmほどのようなので、ここの頂上はずいぶん後ろにあったんですね。
豪快に下る
頂上で一息付いたあとはいよいよダウンヒル。ビジターむねちゃんが、カサコソと残っている落ち葉を踏みながら一気に下の県道へ駆け下ります。
上りは四苦八苦したものの、下りはスイスイ、上り返しもなくあっという間に県道182号に出ました。県道に沿って志駒川が流れています。この川には志駒渓谷と呼ばれるところがあるのでちょっと覗いてみました。春秋なら周囲の木々がきれいだろうと思われるそこは、この時期は木々にはあまり表情がなく、川の水量も少ないのであまりパッとしませんでした。
大崩へ向かう
志駒渓谷のあとは県道を南下し、県道34号長狭街道で横根峠を越え、『をくづれ水仙郷』の看板がある枝道で水仙郷へ向かいます。道が狭まるとあちこちに水仙が現れ出しました。
水仙、菜の花、大崩の景色
道端の水仙が畑へとつながり、その向こうには菜の花も見えます。山間の民家は大きな屋根の田舎造りでいい感じです。
こんな風景を眺めながらどんどこと上って行きます。斜面に水仙、その向こうに三部咲きの白梅、道端では切られた水仙が桶に入れられ、その隣には料金箱が置かれています。
水仙郷の直売所
途中、をくづれ水仙郷のメイン会場となる佐久間ダム方面への分岐が現れますが、そちらは標高が低く水仙は終わりに近いのと、戻ってくるのに上りになることを考えて、今回はダム方面へは行かず直進します。
ほどなく大崩の公民館のところにある直売所に到着です。なぜかみかんや半干しの魚が売られています。おばさんの薦める七輪で焼かれた魚を味見、ん~ん、こりゃあなかなか行ける、と早々に買い込むミワプッチとマーコン。
をくづれ水仙郷
この直売所の付近には水仙の畑がいっぱい。なだらかな斜面の向こうには山々が連なり、いい雰囲気です。こうした水仙の咲く道をさらに上へと進みます。(TOP写真)
紅梅白梅
気分良く走れる道ですが、ここからも上り。そして激坂も登場! ハヒハヒと喘ぎながら上り詰めたところには見事な紅梅が。その向こうの白梅はいくつか開いた花とふっくらとした蕾み。
ちょっと休憩
時は正午過ぎ。『はらへった~、昼飯処までもたない~っ!』 とケロガメが停止。というわけで道端でおやつタイム。
黄色い水仙の中を下る
上ったり下ったりを繰り返し、蜜柑のなる木がある丘から開けた房総の山並みを眺められるようになると、道はいよいよ下りに転じました。
『ここの水仙は黄色ですねぇ。この道もすばらしい~』 とビジターのムネちゃんがカッ飛びます。
田舎道を行く
広い道に出るとそれは長狭街道から入った県道88号でした。ここからは『大山の千枚田』に向かいます。県道88号から田んぼの中の田舎道をどんどこ行きます。
『山の中もいいけど、こんな田んぼの中も気持ちいい~』 とサリーナが牽く。
大山の千枚田
田んぼの中をずっと行くはずが、曲がり角を間違えて大きな道に出てしまいましたがこれは愛嬌。その道を進めば千枚田への曲がり角に案内板が建っていました。そこからググッと上ると目当ての大山の千枚田に到着です。
千枚田の前で
田んぼには、雨が降ったのかそれとも観光サービスでか、水が入っていました。何段にも連なったここの棚田は、東京近郊ではめったに見られない規模のもので、千枚というのも少ししか大げさではないと納得させられます。
『なかなか見事じゃの~』 と感心しているのは、へたり込んでいるペタッチでした。
20%!
保田見林道に『をくづれ水仙郷』、そして『大山の千枚田』と本日のメインコースを終えた私たちは県道34号と88号の交差点にある鄙びた食堂で昼食をとった後、戸面原ダムのある湖に向かいました。
県道88号を行くのは少々味気ないので、大山林道と松節林道を使うことにしました。大山林道はダートでその入口は金束の交差点から県道を2kmほど上ったところです。そこまで県道を使う変わりに、交差点からすぐ山の中に入る道を行くことにしました。
ところがこの道が凄かった。路面は舗装されていますが勾配が凄い。10%は当たり前。なんと20%越えのところさえあるのです。ほとんどのメンバーが最初から戦意喪失、押し押し、押しとなってしまいます。その押し上げさえもきつい!
『うー、あー、オー』 と言葉にならないうめき声をあげつつ、ヨタヨタと這い上るケロガメでした。
大山林道
途中何度も休憩しつつ、なんとか大山林道に到達。この線は砂利道でぬかるんでいるところもありますが、走るのにはあまり問題ありません。しかし合流点から500mほどは上りです。
松節林道
道が下り出し、舗装路になると松節林道となります。こちらはちょっとしたアップダウンはあるものの下り基調で、空も開けてくるので気持ちよく走れます。
『ヤッホー、ここは快調~』 と先ほどまでへろへろだったケロガメが飛ばす。
戸面原ダム湖に架かる橋
下った先に赤い橋が現れました。戸面原ダムによって造られた湖に到着です。ダートの大山林道もなんとか走り抜けることができました。
ここで一息つき、先の行程を検討します。ここからは県道88号を下り、県道182号から鹿原林道へ入る予定でしたが、みんな 『もう林道はお腹いっぱい! 舗装路で駅に向かおうよ~』 というので、鹿原林道は次回ということになりました。
県道88号を下る
橋を渡り、県道を下り始めます。ここは交通量は多くないので安心して走れます。景色もまあまあで、普段のサイクリングならまずまずの道だと思いますが、細い林道を楽しんだこの日は、ちょっと物足りなさを感じてしまうのでした。
湊川にて
しかし駅までずっと下りの道はそれなりに快適で、傾きつつある日の光を浴びながら、13kmを45分で走り切りました。行きに通った駅の近くの湊川に架かる橋に到達すれば、上総湊に帰ってきたという実感が湧きます。
林道と水仙に棚田、菜の花と梅もありました。ちょっときつかったけれど、満足な一日のゴールとなりました。
◆ ひとこと by ケロガメ
今回の房総林道ポタは楽しかったですね。ジオポタの過去ログを読んで真冬の房総ポタに憧れていたのですが、腰を痛めて数日前まで痛みがあったので一寸心配でした。
房総は初めてです。o(^ー^)o
高崎からは朝一で出発しても集合時刻には間に合いませんので前日出発、1/30(土)~2/1(月) 館山の少し北にある大房岬(だいぶさみさき)にテントを張って参加しました。
このポタ、苦しくもありました。('A`;
短いとはいえ27%の勾配を体験しましたからね。
午前中はダートの登りばかり、昼食後いきなり登り勾配27%です。峠かと思ったら一寸緩やかになっただけ、その後には15%がありました。
もう、へろへろ、が、苦しいのはここまで。ここから上総湊駅までは殆ど下りでした。
ヤッパリ自転車の醍醐味は下りだよねぇ。~\(^0^)
来年も参加するかって?
をくずれ水仙郷は満開、菜の花も咲いていたし大山千枚田もよかったよね、暖かかったし、
でもぉ~・・・林道・・・ん~(27%+15%+...+ダート)・・・考えさせて (-_-;)