奥多摩駅
東京都の最西部に位置する奥多摩町は豊かな自然に囲まれていて、全域が秩父多摩甲斐国立公園に指定されています。 今日はその中にある青梅街道の旧道である『 奥多摩むかしみち』をメインに、紅葉と渓谷美を楽しみます。
ホリデー快速は始発の新宿駅から登山者やハイカーで超満員。立川で中央線の本線を離れ、青梅線に入って青梅あたりを過ぎれば、とても東京とは思えない景色が車窓に映ります。赤や黄色に色付いた山々。新宿から1時間半揺られると奥多摩駅です。
氷川大橋
周囲は360°山、そして下には赤や黄色の木々に囲まれた氷川渓谷! この渓谷はあとで眺めるとして、さっそく『 奥多摩むかしみち』に向かいます。
R411の氷川大橋で日原川(にっぱらがわ)を渡り、200mほど行けば『むかしみち』の標識があります。ここから青梅街道の旧道であるむかしみちが奥多摩湖まで続くのです。
羽黒坂
標識のところを入るとすぐ左手にコンクリートで舗装された坂道が続きます。羽黒坂です。この勾配はきつく、しょっぱなから押し。すぐに右手に羽黒三田神社の鳥居が現れます。羽黒坂の名はこの羽黒三田神社から付けられたものだそうです。
むかしみちはここから槐木(さいかちぎ)までしばらくの間(~2014年6月)水道工事のため通行止めなのですが、祭日は通行可としているようで、この日は通してもらえました。
山道を行く
羽黒坂を上って行き数軒の民家の脇を抜けると、道幅が狭くなり砂利道になります。ここはちょっとした山道という雰囲気です。むかしみちには『奥多摩ウォーキングトレイル』の標識があるようにハイカーが大勢いるので、無理をせず、ここも自転車を降りて歩きます。
このあたりには奥多摩湖にある小河内(おごうち)ダム建設のための資材運搬用の鉄道だった水根線の線路が残っているということでしたが、ハイカーや工事の人に気を取られていたからか、気付きませんでした。もしかしたら水道工事で撤去されたのかもしれません。
槐木からの下り
えっこらえっこらと進んで行くと小さなお地蔵さんがあり、その先で上から下りてくる舗装路に合流、槐木のトイレの前に出ます。ここからは再び自転車に乗って進みます。
檜村付近の紅葉
下りとなった道の脇には湧き水が落ち、いい感じの紅葉もぼちぼち見られるようになります。
檜村(ひむら)でむかしみちは階段になるので、いったん国道に出てこれを回避、大きくUターンして檜村橋に出ます。
檜村橋から多摩川上流を見る
檜村橋から見る多摩川は渓谷で、周囲の木々は赤や黄色に色付いています。
檜村橋からのむかしみち
橋の手前の橋詰バス停のところから再びむかしみちに入ります。ここからは多摩川沿いのごく穏やかな上り。
不動の上滝
700mほど行くと、木々の間の岩場に静かに流れ落ちる小さな『不動の上滝』が現れます。
上滝というからには下滝もあるのだろうと思いますが、このすぐ下に幅が広く落差の小さな滝があります。もしかしたらこれが下滝かもしれません。
不動の上滝付近の紅葉
この滝から道は穏やかに下ります。
むかしみちを行く面々
このあたりは多摩川側にちらちらっと視界が開け、そこは微妙に色が重なり合う紅葉。
多摩川沿いの紅葉
こんなふうに。
境の集落
ほどなく小さな境の集落に入り、
水根線の鉄橋
横を見れば上に水根線の鉄橋が見えます。
森の中のむかしみち
境からメインロードは国道に下りますが、むかしみちはその脇を上って行きます。
非舗装路となったむかしみちは白髭トンネルに入る国道を下に見て、こんもりとした森の中に入って行きます。
森の中の紅葉
この森の中で上を見れば、真っ赤になった木が。
白髭神社の鳥居
右手に階段が現れると、そこは白髭神社です。
白髭神社と大岩
自転車を置いてこの階段をえっこらと上れば神社の境内で、山側にはご神体の大岩がそそり立っています。
白髭神社前のむかしみち
白髭神社からは小さな見どころが連続します。
弁慶の腕ぬき岩
まずは『弁慶の腕ぬき岩』という高さ3mほどの岩で、弁慶がぶち抜いたのか、下に小さな穴が開いています。
耳神様
次は耳神様。案内板によれば、昔は耳の病気はどうしようもなかったので、ここに穴のあいた石(耳に似た?)をお供えしてご利益を祈ったのだそうです。
まわりで穴のあいた石を探してみましたが、残念ながらそんなものは落ちていませんでした。お供えしてある石にも穴のあいたのはなかったような...
白髭トンネル付近
耳神様の先でむかしみちは白髭トンネルを抜けてきた国道の下に出ます。
谷側には真っ黄色の大きな銀杏や真っ赤な柿の実が見え、このあたりの紅葉は盛りのよう。
奥多摩らしい民家
ここには数軒の民家があり、軒下には薪が積まれていて、いい感じ。
惣岳不動尊
さらに進むと惣岳(そうがく)不動尊です。これは成田不動尊を勧請したものだそうで、このすぐ西にトイレがあります。
惣岳不動尊近くの紅葉
紅葉は絶好調!
がんどうの馬頭様付近
この山側は切り立った岩で、崩落の危険があるのか、金網が張られています。そこに、渓谷に落ちて死んだ馬を供養した『がんどうの馬頭様』があるのですが、これはどれがそうなのか良くわかりませんでした。
しだくら橋
『がんどうの馬頭様』を過ぎると、吊り橋の『しだくら橋』に出ます。ここは惣岳渓谷で、渓流と紅葉がきれいです。
この橋は、3人以上で渡るな、とあるので定員は2人ということになります。この時はかなり渋滞していて、最大で5人くらい載っていたと思いますが、とりあえず落ちることなく無事でした。でも結構揺れて怖い。
しだくら橋付近
そこら中、紅葉、紅葉、紅葉!
牛頭観音様
しだくら橋の先は、縁むすび地蔵尊、馬の水飲み場、牛頭(ごず)観音様、むし歯地蔵尊と続きます。
道所橋から多摩川上流を見る
これらの小さな見どころの先に、道所橋(どうどころばし)が現れます。この橋は先のしだくら橋より少し小さな吊り橋で、この上からの眺めもすばらしい。
道所橋付近の惣岳渓谷
道所橋の先には紅葉と渓谷の絶景が。
道所橋付近にて
むかしみちには僅かですがサイクリストも来ています。これはソロ・ツーリングのお嬢さんが撮ってくれました。
すばらしい紅葉の道が続く
このあたりの紅葉はとにかくすばらしい!
紅葉の中のジオポタ
立ち止まっては写真を撮り、また立ち止まっては写真を撮りを繰り返しながら、紅葉の中を進みます。
紅葉の中のジオポタその2
いや~、ここは最高です。
西久保の見晴らし広場より
うねうねした道を進んで行くと、西久保の見晴らし広場に到着です。
ここは東側に眺望が開いていて、やってきた道とその上にある西久保トンネルが見えます。
西久保トンネル
道が折り返すとその先でむかしみちは階段となり、山奥へ向かいます。これはちょっと自転車では行けそうにないので、私たちは西久保トンネルを抜けて中山の集落に向かうことにします。
上に中山の集落
西久保トンネルの先には中山橋が架かります。その上から西を見れば、上に数軒だけの中山の集落が見えます。
中山トンネルへの上り
中山橋の先で道は国道に合流しますが、私たちはその手前で左折し中山トンネルに向かいます。ここはちょっとした上りですが、距離が短いので一気に上ります。
中山トンネルからの上り
中山トンネルの東でいったん国道に出ますが、すぐにトンネル際から南に延びる道に入ります。
ここから上の中山の集落まではきつい上りが続きます。ゆっくり上って行くと道はVターンして、
きついコンクリート舗装の上り
さらにきついコンクリート舗装の上りに。
上の中山の集落
トンネルの上を通過し、もう一度Vターンして、数軒だけの上の中山の集落に入って行きます。
上の中山の集落からの眺め
よたよた~、と上の中山の集落に到着。そこにはこんな眺めが待っていました。
お~、ビューティフル!
ここは鄙びた村落で、ここ本当に東京?という雰囲気。この集落の終わりで道は南から上ってくるむかしみちに出会います。
中山の先のむかしみち
民家の横をすり抜けるとその先は細い地道になり、本当にここ行くの? という雰囲気に。しかしここから水根に抜けるには、このむかしみちを行くしかありません。
しょっぱなから、これはかなりあやしい。谷側に転落防止用のガードが現れ、幅1mほどの地道を進みます。もちろん、ここからは完全に押し。しかしここが今日の最高標高地点なので、ここからは下り基調なのはありがたい。
山中の紅葉
上を見上げればこんなすばらしい紅葉が。
木々の合間に見える奥多摩湖
そして、木々の合間から奥多摩湖がちらりと見え出します。
佳境のむかしみち
このあたりからむかしみちは佳境に入ります。
道幅は60cmほどになり、山側には岩肌むき出しの斜面が迫ります。ここは自転車を押して歩くのがぎりぎりで、人がいるとすれ違えないほどの狭さです。しかも足下にはごろごろした小石がころがり、慎重に進みます。
佳境の紅葉
佳境だけあり、紅葉も佳境に突入。
佳境の紅葉の中を行く
出るのはため息ばかり。
佳境の紅葉その2
出るのはため息ばかりなり。
佳境の紅葉の中を行くその2
もう、ため息も出ません!
再び奥多摩湖
そうこうするうちに、ずいぶん下ってきたようで、奥多摩湖がだいぶ近くなってきました。
最後の上り
広葉樹林から針葉樹林に変わり、小さな滝が落ちるところまでやってきました。
ここからはかなりきつい上りになり、最後は階段とあって、ほんの少しですが担ぎも。しかしまあ、この上りはごく僅かなので、一気に上ります。
青目立不動尊から奥多摩湖を望む
階段を上り切ると、そこにはあの奥多摩湖の絶景が。
青目立不動尊から南東の山を見る
山々も美しい。
ここは青目立不動尊で、蕎麦が食べられるというのでお昼にしました。こんにゃくの刺身もおいしい。
青目立不動尊からの下り
蕎麦とこんにゃくを堪能したら、奥多摩湖に下ります。
むかしみちはお不動さまから先で非舗装の林道に入るので、私たちはここから舗装路で下ります。
水根沢の小さな橋
ポンプ所のところで向きを変えれば、そこには水根沢に架かる小さな橋が。
この橋の対岸には奥多摩湖まで遊歩道が続いているようですが、私たちは車道を下ります。
奥多摩湖
あっという間に奥多摩湖に到着です。目の前にあるのは上から見えた小河内ダム。
お~、なんとか無事にここまで到着しました、と笑みの面々。
奥多摩湖は多摩川がこのダムによって塞き止められできた湖で、竣工当時は水道専用貯水池としては世界最大規模だったそうです。ダムの上には塔が二つ建っていて、奥のそれは展望塔になっています。しかしこの先は残念ながら自転車通行禁止なので、ここで引き返すことにします。
氷川大橋から奥氷川神社の氷川の三本杉を見る
奥多摩湖からはまず出発地の奥多摩駅に向かいます。帰りはさすがに山上の青目立不動尊に上る元気はなく、国道で中山トンネルを抜けます。このあたりのR411は道幅が狭い上にこの時期はかなりの交通量なので、慎重に行きます。
トンネルを抜けるとすぐ、下の中山の集落から入るむかしみちがあります。来るときはここからがたいへんでしたが、トンネルを使えばあっという間なのです。でもトンネルはできるだけ通りたくないし、あの佳境のすばらしい紅葉を見ることもできません。
ここから再びむかしみちに入り、檜村から国道に出て奥多摩駅前までやってきました。
奥氷川神社の氷川の三本杉
奥多摩駅前には奥氷川神社があります。そこにある『氷川の三本杉』は三本の杉が癒着したものらしく、幹周り7.5m、樹齢は700年ともいわれており、樹高は50mほどで、これは東京ではもっとも高い木といわれているそうです。
氷川渓谷
奥多摩駅の周辺、日原川が多摩川に合流するあたりは氷川渓谷と呼ばれ、きれいな渓流が流れます。
ここには遊歩道が設えられていて、小さな吊り橋がいくつも架かっており、散策するのにうってつけのところですが、本日は残念ながらその時間はないので橋の上から眺めます。
奥多摩駅前から多摩川に沿って右岸を下る
奥多摩駅前からは多摩川に沿って下ります。
R411は車が多くたいへん走りにくいので、できるだけ走らないようにします。奥多摩駅から梅沢大橋までは多摩川の右岸に道があるので、これを使います。こちらは車が少なくて快適。
白丸トンネルの脇の旧道
梅沢大橋からはR411に出ざるをえませんが、白丸トンネルの脇に旧道があるのでこれを進めば、渓谷沿いに岩をくり貫いた素敵なトンネルがあります。
素堀のトンネルの北側
このトンネルを抜けると、上に登って行く階段が見えます。
数馬の切り通し
この階段を登り、さらに山道を登れば『数馬の切り通し』があります。
江戸時代は元禄年間に切り開かれたこの切り通しの場所は完全な岩で、相当な難工事だったと思われます。
数馬の切り通し付近の紅葉
江戸時代に思いを馳せたあと下に降りれば、そこにも真っ赤な紅葉が。
数馬の切り通しからはR411を進みます。すぐ先で白丸ダムに続く旧道に入ろうとするも、ここは車が多くて断念。白丸ダムの地下には魚道が造られていて、見学すればちょっと面白そうではあるのですが。
双龍の滝
鳩ノ巣駅の手前で枝道に入れば、双龍の滝に降りる階段があります。
双龍の滝は落ち口が二つに分れていることから名付けられたのでしょう。なかなかいい滝ですが、落ち口のすぐ上に道路の橋が見えて、これはちょっと残念。
雲仙橋
その先で国道を離れると、雲仙橋が架かります。
雲仙橋から多摩川上流を見る
下は鳩ノ巣渓谷で、ゴツゴツした岩場とそこを流れる激流がすばらしい。
鳩ノ巣大橋から多摩川上流を見る
この流れを見ながら進めば、次は鳩ノ巣大橋。
この橋の先で再び国道に戻りますが、すぐに
寸庭橋への下り
寸庭橋に向かう枝道に入ります。ここからは国道を離れるので安心して走ることができます。
しかし、ちょっとしたアップダウンの連続となります。
寸庭橋から多摩川上流を見る
寸庭橋は今回渡った多摩川に架かる橋の中でもっとも水面に近いものなので、ここから河原に降りたかったのですが、道がわからず断念。
紅葉と茅葺きの民家
寸庭橋から上るとすぐに、こんな民家が現れました。
真っ赤なモミジの向こうには茅葺きのいい感じの家が建っています。
林道丹三郎-寸庭線
この寸庭橋からの道はどうやら林道のようで丹三郎・寸庭線というらしいのですが、自転車で走るにはとてもいい道です。
丹三郎屋敷
その林道が吉野街道r45に合流すると、車が多くなります。多摩川を挟んで国道と対になるこのr45は、普段ならそれほどの交通量ではありませんが、紅葉の季節のこの日はかなりのものです。
ほどなく丹三郎屋敷に到着。これはかつては庄屋名主だったという家で築200年ほどとのこと。なんとここの地名はその名の丹三郎というから驚きです。立派な長屋門は東京都の歴史的建造物に指定されています。
愛宕神社
御岳駅の対岸になると川沿いには御岳渓谷遊歩道が続くようになります。川面にはカヌーを操る人などがいて楽しそう。ここは川辺に下りて遊歩道を散策すると面白そうですが、すでに日が大きく傾いてきているので、今回は残念。
軍畑駅の向かいから枝道に入りどんどこ行くと、吉川英治記念館の裏手に雰囲気のいい神社を発見。愛宕神社です。ここはお社まではすごい階段を上らなければなりませんが、そこからは青梅あたりを一望にできます。
この先も脇道を使ってどんどこと青梅駅へ。
今日は最高のお天気で、最高の紅葉が楽しめた日となりました。
愛宕神社からの眺め