渋沢駅
関東地方は6月5日に梅雨入りしました。これは平年より3日、去年よりも5日早いそうです。
梅雨時の花といえばアジサイ。神奈川県開成町の『あじさいの里』を勧めてくれる方がいたので、見に行くことにしました。この日は梅雨の合間を縫ったような快晴で、気温も30°Cあたりまで上昇しそう。そこでアジサイの前に涼しいところを走ることにしました。
丹沢の麓近くの林道三廻部線を経由して尺里峠を越えます。
水無川
小田急線の渋沢駅を出ると、すぐに水無川の流れに出会います。その上流に見えるのは丹沢の山々。
水無川の自転車道
この水無川には両岸とも自転車道があります。私たちは左岸を行きましたが、右岸のほうがより上流まで続いています。
ひと丘越える
水無川を離れ、ひと丘越えて三廻部(みくるべ)に向かいます。
四十八瀬川
三廻部の入口に流れるのは酒匂川の支流の四十八瀬川。この先にある林道三廻部線のゲートまではこの川に沿って上って行きます。
三廻部の集落裏
橋を渡るとすぐに上りになり、三廻部の集落に入って行きます。ここからは林道三廻部線の頂上まで、上り一本です。
集落の入口で右折しメインロードを進めば丹沢の山々が正面に見えるのですが、私たちは直進し、集落の裏にあたる道を進みます。ここの山側は少しだけ谷になっていて、竹林があります。
三廻部の茶畑
この裏道にはさしたる眺望はないようなので、途中から畑の中の道にシフト。この道からは茶畑と丹沢の山々とが楽しめます。
山奥へ向かう
三廻部の集落の外れから、林道三廻部線に続く道に入ります。病院を過ぎると人家がなくなり、ひっそりとした針葉樹林の中に入って行きます。
少々気温が高いこの日、木陰の多いこの道は涼しくて気持ちいい。
林道三廻部線へ
周囲が明るくなると木々は針葉樹から広葉樹に変わっていました。
林道三廻部線起点の水場
突然道端に『林道三廻部線起点』の標識が現れます。三廻部線には管理用のゲートがあるので、林道はそこからだと思っていましたが、実はこんななんでもないところにその起点がありました。
この標識の向かいには水場があります。さすがに山の水だけあり、冷たい。
四十八瀬川の谷
進行右手は四十八瀬川の谷で、さらさらという川のせせらぎが聞こえています。もうちょっと季節外れの感があるホーホケキョも。
林道三廻部線
ここからひと上りすると、車が数台駐車しているところに出ました。ハイカーのものでしょうか。
そこの標識には『上秦野林道起点』とあります。この先の道は三廻部線とは別の林道のようです。
林道三廻部線ゲート
あれれ、三廻部林道、どこいった? と思ったら、ここでクイックターンしていました。
このターンしたすぐ先に三廻部線の管理用のゲートがあります。
ゲート先の三廻部線
ゲートの先はさすがに枯れ枝が落ちていたり小石が落ちていたりと、路面は少々荒れ気味ですが、特に問題になるほどではありません。それよりなにより、ここは車が絶対に通らないから安心。
林道三廻部線頂上付近からの眺め
林道三廻部線は10%超えのところも少しはありますが、激坂はなく、7~8%のところが多い。平均勾配は5~6%といったところでしょう。勾配が比較的一定しているので上りやすい道です。
さて、えっこらよっこらした三廻部線もいよいよ佳境に。行く手の視界が開け、松田から小田原あたりなのか、眺望が得られるところに出ると、その少し先が頂上です。
下りの三廻部線
三廻部線の頂上はハイキングルートの交差点になっているようで、数人のハイカーが南の山から出てきて、北の山に入って行きました。
この頂上で一休みしたあとは、西の中津川方面に下ります。ここ数日降り続いた雨のせいか、こちら側の路面には水が流れているところがありました。
中津川側のゲート
ぐわ~っと下って管理用ゲートを越え、中津川沿いに出ます。上り側の四十八瀬川沿いは林道の細道でしたが、こちら側はいきなり視界が開け、広い道になります。
中津川沿いの快適な道
中津川沿いは最初は県道ですが、途中でその県道は山側にシフトし、川沿いは車の通らない細道になります。
田代橋より中津川上流を見る
これらまっすぐで穏やかな下りの道はとても快適です。
びゅ~んと下って中津川の田代橋に到着。
田代橋
ここまで走ってきたサイダー、サリーナ、プロちゃんに、このコースを推薦してくれたケイちゃんが合流。このあたりはケイちゃんの庭みたいなものらしい。
山間の景色
さて、ここからは尺里峠の入口になる虫沢の集落に向かうのですが、中津川を下りその支流を上るのがわかりやすく、アップダウンも少ない。
しかし、私たちは山側の道を使ってみることにしました。地形が複雑でちょっと面白そうだったからです。案の定、このルートには大きなアップダウンが。結局、景色は期待したもの以上ではなかったので、やっぱりここは川沿いを行った方が良かったかな。
虫沢の橋
ちょっとあえぎつつも虫沢の入口の橋に到着。
虫沢はこのあたりの集落の名称ですが、もしかするとこの中津川の小さな支流の名称も虫沢なのかもしれません。違うかな。
虫沢
ところで地図にはこのあたり一帯には『寄』という地名が付いています。神奈川県足柄上郡松田町寄。『寄』って『より』かと思ったら『やどりき』、『やどりぎ』、『やどろぎ』などと読むそうです。『三廻部』の『みくるべ』といい、このあたりにはむずかしい地名が多いですね。
虫沢の茶畑
さてさて、その虫沢の小川からはちょっとだけ激坂上りが。その激坂をなんとかこなすと、周辺にはきれいな茶畑が広がります。
虫沢の茶畑その2
この茶畑の間を縫って、徐々に高度を上げていきます。
茶畑がなくなると、いよいよ尺里峠への山道に突入。(TOP写真参照)
尺里峠へ
針葉樹林の中をえっこらよっこらして最後のヘアピンカーブを抜けると、
丹沢
パッと左手の視界が開け、丹沢が見え出します。これはいい眺め。
相模湾方面
南東に視線を映していけば、ちょっと霞んでいるけれど、相模湾が見えます。
この眺望があるところまで上れば、あとひとこぎで尺里峠に到着です。
尺里峠
尺里峠は木立に囲まれていて眺望はなく、これといったものはないのですが、ハイカーのための道しるべとその前に地元の方が立てたのか手書きで『ここは 尺里峠 第六天』とある立て札があります。
ところで、三廻部や寄もむずかしい読みでしたがこの尺里(ひさり)もかなりむずかしいですね。一説によればかつては久里だったけれど、この文字を台帳に書き写す際、久を尺と誤ってしまったので、その後ここは尺里となったとのこと。この説にはなるほどと思わせるものがありますね。
下りの地道
尺里峠からは下の集落にある旧高松分校に向かいます。そちらへの下り道は三本ありますが、私たちは一番東側の集落の外側を通るルートを選択。この道の入口部分は地道ですがその区間はわずか200mほどで問題なく、眺めのいいコースです。
その眺めは、西に箱根の山々と富士山。残念ながら今日は富士山は頭を雲の中にし、その裾野しか見えません。
旧高松分校
眺望を楽しみながら下って旧高松分校に到着。この学校は旧とあるように、2010年の3月で廃校になった小学校で、その最後年の生徒はたった二人だったそうです。
旧高松分校校舎
敷地はきれいに草が刈られており、一見、建物もまだまだ使えそうな感じで、何にも使われないのはちょっともったいない気もします。
校舎裏側の壁に貼られた鳥の絵
校舎の裏側に廻ってみると、外壁にかつての生徒が描いた鳥の絵がびっしり貼られていました。
子供はみんな天才だ!
見えない富士山とつづら折れ
校庭の木陰でお弁当を食べさせてもらって、旧高松分校を後にします。分校のすぐ先ではすばらしい富士山とつづら折れが見えるのですが、ここからも富士山は裾野がわずかに見えるだけで、つづら折れも木立に阻まれてごく一部しか見えません。
山ゆりの滝
そのつづら折れを慎重に下ると、道端に小さな滝が落ちています。簡単な標識が立っていてそこには『山ゆりの滝』とあります。こんな小さな滝でも夏には涼しげでいいですね。
酒匂川と箱根の山々
さらにどんどん下って酒匂川に出ました。その上流には箱根の山々が見えています。
開成町の水車
酒匂川の右岸は開成町で、その『あじさいの里』ではちょうどアジサイが見頃を迎えています。また開成町には田んぼが多く、そのための農業用水路もあちこちにあります。写真は『あじさいの里』の一角にある、小川に水を流すための水車。
田んぼと箱根の山々
アジサイ、どこに咲いているかな、とちょっとうろうろ。
あじさいの里
ほどなく田んぼの際にアジサイが並んだ道に出ました。
ピンクのアジサイと紫のガクアジサイ
ここはピンクのアジサイと紫のガクアジサイ。
青から紫のアジサイ
アジサイは日本原産ですが、ヨーロッパで品種改良されたセイヨウアジサイがあり、ここに植えられているのは後者だそうです。
アジサイとサイダー
あじさいの里の中核施設は『あじさい公園』で六月中は開成あじさい祭が行われています。そのあじさい公園まではすぐなのですが、開成町の隣の南足柄市千津島にはハナアオイ農道があり、そちらもハナアオイまつりの最中とのことなので、ハナアオイを先に見ることにします。
ハナアオイ農道
ここでいうハナアオイは一般にはタチアオイと呼ばれるものではないかと思いますが、ここでは南足柄市が使っているハナアオイと呼ぶことにします。
ハナアオイ農道は千津島東交差点から開成町金井島の県道720号を結ぶ通りで、道の両側にびっしりと、とまではいわないまでも、相当数のハナアオイが咲いています。
代表的な赤いハナアオイ
ハナアオイでもっとも目にするのはこの赤ではないでしょうか。
赤と白のハナアオイ
そしてこの赤と白のグラデーションのものもよく目にします。
ひらひらピンクのハナアオイ
しかし周辺を見回せば、いろいろな種類のものがあることがわかりました。これはかなり珍しいのではないでしょうか。ひらひらのピンク。これはもしかしてこれはハナアオイじゃあない?
白いアジサイ
ハナアオイ農道を辿ってあじさい公園にやってくると、そこにはもの凄い人が。周辺の道にはそれほど人出はないのに、ここだけは別格です。メインステージがあるので、特別な催しがあるのかもしれません。
その人ごみを掻き分けて出た道には白いアジサイが咲いていました。青から紫に変わっていくアジサイもいいけれど、この白も清楚で素敵です。
酒匂川自転車道
ハナアオイとアジサイのあとは酒匂川の対岸にある松田山ハーブガーデンのラベンダーを見に行くつもりでしたが、その直前には激坂があります。全員、もう上りはかんべん、というのでそれはまた次の機会ということにし、酒匂川自転車道を下ります。
この自転車道の起点は新大口橋の右岸、文命堤の公園で、上流部では川面近くを走るので、気持ちいい。
酒匂川自転車道その2
下流部は土手上になり、足元にアジサイが咲く古そうな松並木の間を行きます。こちらは木陰があって夏には好都合です。
酒匂川自転車道その3
そして振り返れば午前中正面に見えた丹沢の山々です。この自転車道は総じて幅員が狭いのでスピードを出すには不向き、ゆったりのんびりのジオポタ向きです。
富士見大橋より酒匂川と丹沢山地を見る
酒匂川の自転車道は河口までは延びていないようで、私たちは県道717号の富士見大橋から汗を流しにお風呂に向かいました。
今日の前半の林道三廻部線と尺里峠は見晴らしこそ少ないものの、ポイントで松田から小田原、丹沢から相模灘、そして箱根の山々と富士山が見え、木陰で涼しく、この時期走るのにぴったりでした。
後半の開成町付近はアジサイとハナアオイが楽しめ、酒匂川の自転車道も快適です。
全部ひっくるめると、このコースを走るにはこの時期が最高なのではないでしょうか。