関東では桜が終わり、新緑の季節です。その初々しい若葉を楽しもうとやってきたのは、房総半島の真ん中へんにある上総牛久駅。
この路線は小湊鐵道線で、電化はされておらず、車両はキハ200形という気動車だそうです。たった二両編成ですがワンマン運転ではなく、車掌さんが乗車しています。この車掌さん、駅では切符集めと切符切り、そして駅舎にポスターを貼ったりと忙しそう。小湊鐵道の駅は、その多くが無人駅なのです。
上総牛久駅からはまず高滝湖へ向かいます。
駅を出るとすぐに養老川の流れに出会います。この川の上流にあるのが滝と紅葉で有名な養老渓谷です。そこは新緑もよさそうなので、午後に訪れます。
養老川を渡るとほどなく、カントリーロードに。
上総牛久は小湊鐵道沿線では比較的大きな町なので、このあたりにはまだ民家が建ち並んでいます。
しかしその民家もすぐになくなり、周辺は田植えの準備中の田んぼになります。
「春ですね~、田植えの季節ですね~、ここは気持ちいい~~」と快調に飛ばすキルピコンナ。
田んぼを抜けるとほどなく、高滝湖に到着です。
養老川を塞き止めて造られた高滝ダムは1990年に完成した多目的ダムで、これによりできた湖が高滝湖です。
高滝湖ではブラックバズやワカサギ釣りが盛んだそうで、この日も何隻ものボートが湖面に浮かんでいました。
さて、高滝湖からは山に向かいます。今日のコースは新緑を楽しむというものですから、ほとんどが山の中になります。
周囲を見渡せば、足元には菜の花、そして山にはピンクから萌黄色になりだした広葉樹が見えます。
道が穏やかな上りになってくると、吉沢という集落に入ったようです。
かつては茅葺きだった大きな屋根の民家の庭先に、ちょっと早いようにも思えますが、鯉のぼりが泳いでいました。
その先の道脇に、なかなかプロポーションのいい鳳来寺観音堂が建っています。
方三間、寄棟の茅葺き屋根で、室町時代後期の建築とされているそうです。
ここには、菜の花の匂いが漂っています。民家の庭先には色とりどりのチューリップも。
鳳来寺観音堂からさらに南に進めば、徐々に山深くなり、初々しい新緑と、盛期は過ぎたもののまだ見応えのある桜の花がそこらじゅうに現れるようになります。
地図で見れば、このあたりにはゴルフ場がとても多い。しかし幸いなことに、道からはそれらが見えないのが救いです。
そうしたゴルフ場が終わるあたりになると、道は細くなり、いよいよ本格的な上りになります。
わっせ、わっせと上って行くと、近くの森が途切れ、向こうの山並みが見えるところに出ました。
その手前には白とピンクの桃の花が咲いています。
そのあと、道はほとんど山道という感じに。
ひーこらいいながなペダルを回し続け、超激坂は押し上げて、なんとかピークらしきところに到着。
あ~、しんど。
その少し先のカーブのところは、先に僅かに視界が開けています。ここはハイキングコースのようなものが道を渡っていて、それは山側にも続いているようです。その道を上ってみると、こんな眺望が。
どこまでも続く房総の山並み。
この眺望を楽しんだあとは、いったんr172に下りますが、すぐにまた山道風の道に入ります。
この道は基本的には上総中野まで下るのですが、その間にはもちろんアップダウンが。
こんなごつごつした地層がむき出しになった切り通しを抜け、
いくつかトンネルを抜けて、ようやく上総中野に到着。
上総中野からは穏やかなr177を南下して行きます。
「お腹がすいてヨロヨロです。タケノコご飯はまだですか~」 と腹ペコのキルピコンナ。今日の昼は市原タケノコ園で、タケノコ弁当をいただく予定なのです。
その市原タケノコ園の看板があちこちに立っています。このあたりには食堂がほとんどなく、ようやく見つけたのが市原タケノコ園なのですが、意外と派手に宣伝しているようです。
田代という地区にその市原タケノコ園はあります。これが着いてみてびっくり。なんと駐車場は満車で大型バスまで停まっています。
行くまでは、農家が片手間にタケノコ掘りをさせているんだろうと思っていて、本当に弁当があるんだろうか、と心配していたのですが、なんと現実は逆で、弁当は混んでいるので作るのに30分ほど掛かりますとのこと。
弁当ができる間はタケノコ山でも覗いていればいいだろうということで、ここで弁当を注文。
裏山の竹林は広くて立派でした。結構な斜面地によく手入れされた孟宗竹が並んでいます。
その中で、何組もの家族連れが、あちこちでタケノコを掘っています。子供は楽しいでしょうね。
タケノコを掘ったことのない人でもできるように、林には何人もの係の方がいて、掘り方を教えてくれます。
一組の家族の籠の中を覗かせてもらいました。右端のがおいしそう。
さて、私たちの弁当が出来上がったようです。弁当は三種類ありますが私たちのは一番安いもので、タケノコの刺身、タケノコの唐揚げ、タケノコご飯というもの。
刺身は採れたてのものでないとできないので、これを知っている方は多くないでしょう。ワサビ醤油で食べることが多いと思いますが、ここでは酢みそがかかっていました。歯触りを楽しむものですね。
でも、なんといってもタケノコは煮物とタケノコごはんじゃあないでしょうか。それはともかく、このタケノコたち、みんなおいしかったです。
おいしいタケノコをいただいたあとは、養老渓谷に向かいます。ここからはまた山道のような道を。
山は芽吹いたばかりの淡い緑と桜の薄いピンク、そして薄いオレンジ色が目立ちます。オレンジのものはカエデのようです。カエデの中には芽吹いた時から赤だったり、オレンジだったりするものがあるのです。
房総に平地はない! ただ黙々と上るのみ。
ここは標高差100mほどなので、エッコラヨッコラしているうちにピークに到達。
そしてr178に下ると間もなく、上総牛久を流れていた養老川に再び出会います。
ここの流れは浅く、渓流の趣。
この養老川に沿って北上して行くと、ほどなく、『養老の滝』入口に辿り着きます。この門から川岸に下ると『粟又の滝自然遊歩道』が始まります。私たちは自転車を押してこの遊歩道を行くつもりです。
ちなみに『養老の滝』と『粟又の滝』は同じ滝を指し、その正式名称は高滝ですが、このなかで一番よく用いられるの名称は『粟又の滝』だそうです。
この入口から入るともの凄い急な階段になるので、数十m北にある別の入口から下ることにします。
その別の入口を入ると最初はスロープなのですが、その後は階段。しかし、手前の門のところから階段を行くよりはずっと楽です。
この階段を下り切るとすぐ北に、粟又の滝が流れ落ちています。この滝は落差30m、幅30mだそうですが、いずれももう少し小さいように感じます。規模はともかく、三段になった緩やかな斜面を流れ落ちる様は、なかなか風情があります。
粟又の滝から下流に進んで行くとすぐに、小さな滝?がありました。
位置からすると千代の滝かもしれませんが、どうなんでしょう。
こちらは万代の滝(ばんだいのたき)。倒木があり、残念ながら近くに寄れません。
『粟又の滝自然遊歩道』は石で舗装されており、アップダウンがないので子供でも歩きやすく、川面が近いので気持ちいい。
芽吹いたばかりの木々は初々しく、ちょっと気恥ずかしそう。五月になったらもっと力強いものになるのでしょう。
この先に、ちょうど満開の真っ白なヤマザクラが咲いていました。
『粟又の滝自然遊歩道』の下流側は水月寺付近で終わります。そこからは、勾配は穏やかなれどちょっと長い階段を上らなければなりません。階段の途中で二~三度休憩して、ようやく自転車を担ぎ上げました。
さて、次はもう一つの養老渓谷の遊歩道である中瀬遊歩道に向かいます。
中瀬遊歩道の上流側の入口となる共栄橋は、r81から入るところがひどく分かりにくいのですが、ともかくその入口を入ると、連続したトンネルを抜けます。
この最初のトンネルはとても変わった形をしています。なにか、かつては二段にでもなっていたような。
トンネルを抜けると共栄橋です。
この左岸から中瀬遊歩道は始まります。
中瀬遊歩道の共栄橋付近は舗装されており、歩行者がいなかったので、ここは自転車に乗らせてもらいました。
『粟又の滝自然遊歩道』と比べるとこちらは、遊歩道が川面からより高い位置にあり、木々の種類のせいか、山の形状のせいか、少し閉鎖的な印象を受けます。
遊歩道がいったん途切れ、川の対岸に渡ります。するとそこにはもう舗装はなく、階段を上ったり、ぼこぼことあちこちから飛び出している木の根っこをよけながら進むことになります。この根っこをよけるのに気を取られていて、なんと弘文洞跡を通り越していました。戻ってやり直し。
弘文洞は、このあたりに多く見られる『川廻し』で造られたもので、岩をくり貫いたトンネルでしたが、1979年に突然崩落してしまったそうです。『川廻し』とは、川の流路を人工的に変えることで、ここでは耕地を造るために行われたとのこと。
『粟又の滝自然遊歩道』もこの中瀬遊歩道も川が浅いので、あっちとこっちの遊歩道を繋ぐときは、こんなふうに飛び石をたくさん並べます。
中瀬遊歩道の下流側は、戸面の出世観音の観音橋のすぐ南で終わります。
赤い二連の太鼓橋である観音橋ですが、鉄骨造なのがちょっと残念。
養老渓谷を充分に楽しんだら、次は本日の最大の難所、大福山への上りが待っています。
林道朝生原線を進んで行くと、桜の下の水仙が満開。水仙は1月ごろから咲き出しますが、これは遅咲きの種類なのでしょうか。この日は様々な花々を見てきました。椿、梅、桜、桃、コブシ、菜の花、チューリップ、芝桜、すずらん、ユキヤナギ、ヤマブキ、ツツジ。まるで一年中の花が一斉に咲いたような印象です。
どんどん上って、どんどん上って、林道女ヶ倉線に入れば、斜度はさらにきつくなり、かなりつらい。
左手の視界が開けてきました。ここから見える山は広葉樹が多く、初々しい新緑に包まれています。陽の光があれば、もっと鮮やかに写ったのですが。
平場が二度、三度と現れますが、なかなか山頂に辿り着きません。あともう少しと、へ~こらしながら、最後のふんばりです。
ようやく山頂付近となったようで、十数台停まれる駐車場とトイレが現れました。これは山頂へのアプローチのためのものでしょう。
その先で開けていた視界が閉じ、鬱蒼とした針葉樹の中を進んで行くとすぐ、右手に上って行くスロープが現れます。ようやく大福山の展望台に着いたのです。
スロープの先の階段を上って行くと、鉄骨造の展望台があります。この廻り階段を上れば、足はよろよろしています。ここまでで、かなり足に来ているのです。
展望台からの眺めは、一面真っ白の雲で覆われていて陽がないので、少し残念でしたが、それでも初々しい新緑の、どこまでも続く房総の山並みが楽しめました。
この展望台から100mほど西には、東屋があります。
ここでちょっとおやつ休憩をしてもよかったのですが、展望台で充分に眺めは楽しんだので、先を急ぎます。ここからはようやく、楽しい下りとなります。
どんどん下って、とはいかず、すぐに上り返しがあったりもしますが、ともかく、びゅ~んと久留里駅に到着。途中寄ろうと思ていた久留里城はすでに閉館時刻を過ぎていたので、また今度ということに。
久留里の街道にはほとんど飲食店が見当たりませんでしたが、駅前にポツンとタイ料理店があったので飛び込みました。足はよろよろですが、お腹はぺこぺこなのです。ここは本格的タイ料理で、おいしいかったです。もちろん料理をいただく前に、グビーッとビールで喉を潤しましたが。