冬の寒い日は街ポタに限る。1月も下旬となればさぞ寒かろうと、シリーズものになりつつあるツール・ド・23区の第五弾を。
これまで足立区、文京区part1&2、豊島区と走りましたが、今回は大田区です。
昨日は風が冷たく、湾岸の大田区はどうなることやらと心配しましたが、この日は風もなく、最高気温13°Cでポカポカ。ポタリング日和となりました。
JRの大森駅東口から裏道を使って、まず目指すは平和島。
平和島は東京湾に人工的に埋め立てて造られた島でしたが、さらに平和島運河が埋め立てられ、現在は陸続きとなっています。
その埋め立てられた平和島運河の部分が現在の平和の森公園です。
平和の森公園には広場やスポーツ施設がありますが、一部自転車乗り入れ禁止となっているので、自転車進入可なところを行くと、小さな池に出ました。
この池を横目に進めば、あっという間に公園を抜け、環状七号線に出ます。この環七の向こう側も平和の森公園で、フィールドアスレチックなどのゾーンがありますが、今回はこれには寄らず、平和島を東進して大井埠頭に向かいます。
環七に沿って進むと、平和島公園の先は首都高速1号羽田線の平和島ICです。
ここは、いかにも湾岸的な巨大構造物の陸橋でこの首都高速の上を渡って行きます。
陸橋のジェットコースターのようなループを下り終え少し行くと、平和島と大井埠頭を隔てる京浜運河を渡ります。
このすぐ近くに流通センターという名のモノレールの駅があることからもわかるように、周囲には物流倉庫らしき巨大な建物が並んでいます。
大井埠頭には平和島のような、島名はないようで、そこにある公園名も大井埠頭中央海浜公園です。
京浜運河を渡ってすぐ、この公園の森に入れば、京浜運河沿いには遊歩道が延びていて、いくつか彫刻が置かれています。
大井埠頭中央海浜公園は南北に延びる広い通りを跨ぎ、東西に分れており、京浜運河沿いの西のゾーンには『なぎさの森』という名が付けられています。
そのなぎさの森の『しおじ磯』までやってきました。対岸には大井競馬場の大きなスタンドが見え、その前をひっきりなしにモノレールが通って行きます。
通りの東側のゾーンは『スポーツの森』で、陸上競技場や野球場などがたくさん並んでいます。
その真ん中の道をのんびり行きます。
大井埠頭中央海浜公園を出ると、その南側のブロックの端にはこんな道が。
緑地の幅は狭いものの、その中を細い地道が延びています。周辺は人工的な巨大構造物ばかりなので、この対比はちょっと面白い。この細長い緑地は大井埠頭緑道と呼ぶらしく、先ほど通り抜けた大井埠頭中央海浜公園にもあるようで、さらにその北の八潮団地まで続いています。
次は東京湾野鳥公園。
湾岸施設の中に造られたここは、『どうしてこんなところに野鳥公園?』と言いたくなるようなところにありますが、水鳥を始め、結構いろいろな鳥が見られて面白いそうです。
今回は入口をちょっと覗いただけですが、そこにはたくさんの鳥の写真が掲げられていました。オオタカも見られるようです。
さて、野鳥公園の次は城南島へ向かいます。
今日は日曜日なので、平日ならわんさかいるトラックもご覧の通りで、交通量は極めて少なく走りやすい環境ですが、どうにもこの湾岸部は車道を走ろうという気になれず、私たちは歩道を行きます。
城南島の入口付近には海上輸送のためのコンテナがびっしり積まれています。
これらのコンテナがどこから来てどこへ行くのかと考えると、ちょっとワクワクします。
城南島先端は城南島海浜公園です。城南島は羽田空港のすぐ横にあり、海の中に羽田空港からこちらに延びてくる、建設中の赤い橋が見えます。しかしこの橋をよく見ると、実は建設中の橋ではなく、B滑走路の進入灯用の構造物でした。
現在羽田空港には四本の滑走路があり、ここから一番遠いD滑走路から離陸した飛行機が彼方に見えます。そして爆音が響いた後、C滑走路から離陸した飛行機がこちらにやってきました。
C滑走路から離陸した飛行機は城南島の真上を飛んで行くので、肉眼でもどこのエアラインのものかはっきり識別できます。これはANA機ですね。
こんなのが数分おきにやってくるので、ここは飛行機マニアにはたまらない場所になっているようです。
羽田空港の向こうに目をやると、うっすらと三角形の構造物が見えます。あれはいったい何かなと思っていると、ビジターのタッちゃんが、アクアラインの換気塔だと教えてくれました。
ここからあれだけの大きさに見えるのですから、もの凄く巨大なものなのでしょうね。
城南島海浜公園の東では東京湾を行き来する大型船が見られるかと思ったのですが、この日は公園でマラソン大会のようなものが開催されており、奥まで自転車で行くのははばかられたのでこれは断念。
城南島を後にし京浜島へ向かいます。
京浜島は城南島よりさらに羽田空港の近くです。
京浜島つばさ公園からは羽田空港にいる飛行機の尾翼がたくさん見えます。
京浜島つばさ公園は羽田空港に沿った運河沿いに細長く延びています。
そこをどんどこ行くと、うしろからB滑走路に着陸する飛行機がやってきました。
この着陸も数分おきに繰り返されます。私たちが公園の南端に辿り着くまでの間に、少なくとも二機は着陸しました。
京浜島も城南島も、飛行機を見るにはなかなかいいところです。
公園の南端からは細い地道の遊歩道になります。
ダートが苦手なレイナとクッキーは・・・
京浜島からは昭和島に渡ります。
昭和島に入ったすぐのところには、海辺近くを泳ぐ水鳥がたくさんいました。鴨や真っ黒な鵜らしきものも。
昭和島から本土に渡る橋は歩行者と自転車のための専用橋が架けられています。
その本土側には小舟がたくさん係留されています。その多くは漁船のようで、このあたりでもまだいくらか漁業がやられていることがわかります。
この歩道橋を渡るとそこはかつて呑川が流れていたところで、現在は細長い緑地が続く旧呑川緑地になっています。
旧呑川を離れ南へ向かうと、このあたりは現在は大森南という住所になりますが、かつては森ケ崎と呼ばれていたようで、その名を持つ施設があちこちにあります。
なんでもこのあたりは第二時大戦以前には鉱泉と海水浴場があり、ちょっとした保養地になっていたとか。
さらに南下すると現在の呑川を渡ります。先ほど旧呑川があったことからもわかるように、こちらは新呑川で、洪水を防ぐためにこの少し上流から直線化された新しい川というわけです。
穴守稲荷神社の横をかすめ、京急空港線を渡ったところで昼食です。ここは江戸前、ということで穴子でも。これ、なかなかおいしゅうございました。
さて、昼食が済んだら羽田空港の入口の弁天橋へ。弁天橋の先の羽田空港側に立つのは、真っ赤な鳥居。これはかつての穴守稲荷神社の大鳥居です。
空港のすぐ横に鳥居というのが、なんだか面白い。この鳥居には曰く付きの歴史があるのですが、それについてはここでは触れません。しかしこの鳥居は東京近郊のサイクリストにとってはなじみのものです。その理由は、ここが関東ではもっとも有名なサイクリングロードの一つ、多摩川サイクリングロードの起点だからです。
そんな有名な多摩川サイクリングロードですが、なんと私たちはこの下流域は走ったことがなく、これが初走行。
その多摩川サイクリングロードの様子はどうかというと、多摩川沿いは腰高のコンクリート塀が立ち、路面は少し波打っているところも。
塀の向こう側を覗くと、多摩川には漁船の溜まりがありました。
やはりこのあたりではまだ漁業が続いているのですね。
先に二連の斜張橋が見え出します。
これは一般道としては多摩川のもっとも下流に架かる大師橋です。
弁天橋付近では狭かったサイクリングロードは大師橋を過ぎるとぐんと広がり、路面状況も良くなり、とても走りやすくなります。
ここは河川敷が広がり、その中は運動公園のようになっています。
多摩川の対岸は神奈川県の川崎市。
先に密集した高層の建物群が見えてきます。
東海道本線をくぐるあたりで、多摩川は大きくうねります。これは一回うねってもう一度うねり出すところ。
ん〜ん、空が広くて気持ちいい〜
道はその後は少し狭くなりますが、走るには影響がない程度です。
多摩川サイクリングロードの下流域は歩行者もサイクリストもたくさんいて、かなり走りにくいと聞いていたのですが、私たちのようにのろのろ走る分には、この日の混雑の程度はあまり問題ありませんでした。
二本並んだ品鶴線と東海道新幹線の橋をくぐり、多摩川丸子橋緑地で小休止。
このすぐ先には青いアーチ橋の丸子橋が架かり、その先を東急東横線が通っています。
丸子橋と東横線の橋をくぐり抜けたところで、右手の高台に上ります。そこは多摩川台公園で、亀甲山(かめのこやま)古墳を始めとし、10ほどの古墳が密集しています。
亀甲山古墳は全長100mを超す前方後円墳で、4〜5世紀の築造。このあたりの首長の墓と考えられているそうです。
亀甲山古墳は柵で囲まれていますが、ほかの古墳はこんなふうに上れるような状態になっています。
これも古墳だよ〜って教えてもらわなければ、公園内のただの土が盛り上がったところに見えます。
たくさん古墳があるから園内は階段が多いのですが、亀甲山古墳のあたりのメインルートはなんとか自転車でも走れます。
多摩川台公園は国分寺崖線を成しており、武蔵野台地の中でも古い地層である下末吉面がここで一気に多摩川へ落っこちていきます。
そんな訳で、ここから多摩川方面の眺めは最高です。
多摩川台公園の北西端にある宝来古墳をかすめて進めば、小さな池がある宝来公園に出ます。池の奥はこんもりした森で、ひっそりしています。
この公園は高級住宅地として知られる田園調布の一角にあります。大正時代の終わりごろ、田園調布を開発した会社が武蔵野の自然を残すため、ここを公園用地として残したのだそうです。
宝来公園からは田園調布の放射状道路に入ります。銀杏並木のこの道沿いには大きなお屋敷が建ち並んでいます。
澁澤榮一の田園都市構想に基づき開発された田園調布では住宅建設に様々な条件を付しており、それは現在も田園調布憲章などによって受け継がれています。ちなみに西口分譲地は100坪が基本で、分割の場合でも最低50坪以上が要求されるようです。
放射状道路の突き当たりには田園調布駅が建っています。これは旧駅舎を復元したもので、2000年に竣工しています。
マンサード屋根の特徴あるこの建築は中世ヨーロッパの民家がモデルのようで、設計者は神宮外苑の絵画館や上高地帝国ホテルなどを設計した矢部金太郎。
田園調布は大田区の北西端にあり、これより北部は世田谷区となるので、ここから東にある洗足池へ向かいます。
洗足池はちょっとした大きさの池で、湖面にはボートが浮かび、いろいろな水鳥が泳いでいます。
こんなに大きな池なのに、ここに流れ込む川は見当たりません。かつてはこの周辺には農家が作物の洗い場として利用していたという湧水がたくさんあり、それらが流れ込んでいたといいます。現在も北千束の清水窪湧水などが主な水源となっているそうです。
この湖畔では梅が咲き出していました。白くてかわいらしいやつ。
歌川広重の名所江戸百景の中に『千束の池袈裟懸松』があります。日蓮上人はここで袈裟を脱ぎ松の木に掛け、足を洗ったと伝えられています。洗足池という名はここから来ているそうです。この袈裟を懸けられた松は当然もうありませんが、その後何代か代替わりをして、現在も元の場所に立っているそうです。
日本の歴史上の人物としてこの方を知らない人はまずいないでしょう。勝海舟。
勝は江戸の本所の生まれですが、晩年はこの近くの茅葺民家風の千束軒で過ごしたためか、墓はここにあります。明治維新後、西郷隆盛は千束軒を訪れて勝と歓談したといわれており、勝夫妻の墓の隣には、勝が建てた西郷隆盛留魂碑があります。
勝海舟夫妻の墓の横には紅白の梅が植えられており、紅梅にはメジロが遊びにやってきていました。
春を感じる一コマです。
洗足池のすぐ近くにもう一つ池があります。かつて洗足池は大池、そしてこちらは小池と呼ばれていたようです。
小池は少し前まで釣り堀として利用されていましたが、現在は親水公園として整備されています。
洗足池から流れ出した水は洗足流れとなり、今朝方下流を見た呑川に流れ込みます。その呑川は世田谷区の桜新町あたりを水源とし、東京湾に流れ込む、わずか15kmほどの短い流れです。
このあとはこの呑川に沿って下って行きます。呑川を下り出すとすぐ、レイナがこのあたりにSLが置いてある公園があると言います。それはすぐ近くのようなので覗いてみることにしました。
東調布公園。え、調布、いったいいつ調布まで来たんだ・・・ って、そんなわけはないのです。この調布はどうやら田園調布を指すらしく、東調布は田園調布の東という意味らしいです。
公園に入って男の子に『蒸気機関車、どこにあるの?』と聞いて見るも『え、蒸気機関車・・・』と、分からない様子。今の子供は蒸気機関車には感心がないのか、それとも蒸気機関車という言葉が分からなかったのか。
蒸気機関車D51は、公園の奥にひっそりと置かれていたのですが、見学時間外でフェンスの門が閉まっていました。残念。
東調布公園から呑川に戻る途中、こんな建物を発見。
唐破風のクラシックな姿をした銭湯です。こんな発見は街ポタならではですね。
さて、ツール・ド・大田区の最後の見どころ、池上本門寺です。
洗足池で足を洗った日蓮上人は、このあたりにあった池上宗仲の館で最期の数日を過ごすことになります。その時、裏山の上に建立された寺を開堂供養し、長栄山本門寺と命名したのがこの池上本門寺の起源だそうです。
そして時は幕末、1868年(明治元年)4月、西郷隆盛と勝海舟が小堀遠州の作庭と伝わるここの松涛園で、江戸城明け渡しの会見をします。その松涛園は秋のごく一時にしか見られないのでこの時は残念。ここの多くの建物は空襲で焼けてしまいましたが、戦火を免れた五重塔が夕日を浴びて赤く染まっていました。
池上本門寺の横には区立の池上会館があります。
この屋上は展望台になっており、この日はここからきれいな夕日が見られました。
さて、池上本門寺を出たら、あとは大田区の中心地である蒲田へ。
蒲田駅周辺は大きな繁華街で、かなり賑やかです。
そんな繁華街の中からベトナム料理店をピックアップ。海老の生春巻きに揚げ春巻き、青いパパイヤサラダ、ベトナム風お好み焼き、鶏肉のせおこわ、五目鍋、そしてデザートと相成りました。コストパフォーマンス抜群で、すばらしくおいしかったです。
大田区はこれまで羽田空港くらいしか行ったことがありませんでしたが、意外と面白かったです。
港湾施設が建ち並ぶゾーンは平日はとても走る気になれないところですが、日曜日はトラックもいなくて、まずまず安心して走れました。何といっても羽田空港の飛行機は魅力的だし、多摩川サイクリングロードもある。このあたりに古墳があるのは知らなかったし、日蓮上人や勝海舟を通して、歴史の勉強もさせてもらえました。田園都市なる田園調布と、ぐちゃっとした蒲田周辺の対比も面白かった。なかなか侮れない大田区でした。